モノづくり大好きライバーによるハッピーエンドの作り方   作:超かぐや姫!脳焼きの民

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配信形式の書き方がよく分からんので初見です。

いつも閲覧、感想、誤字報告ありがとうございます。


帰って来たかぐや

2032年8月初頭。

 

仮想空間ツクヨミ内にとあるニュースが公開された。

 

漆黒の背景に浮かび上がるのは、黄金色に輝く『Coming Soon』の文字列

 

そして、その背後にうっすらと浮かび上がる、一人の少女のシルエット。

 

そのシルエットは、2年前に彗星のように現れ、去って行った2か月限定の歌姫・かぐやを彷彿とさせるものであった。

 

『おい、これ...かぐやじゃね!?』

 

『嘘だろ、卒業したんじゃ...もしかして復帰するの!?』

 

『いや、あの卒業ライブで綺麗に終わったんだし、復活しないほうが物語としては美しいだろ。別人じゃないか?』

 

かつての熱狂を知る者たちの間で、期待と不安が激しく火花を散らす。

 

当然、かぐやの関係者であるいろPやMr.Mkの元に多くのメッセージが送られた。

 

両者はこれに関して一切の発言、匂わせ行為すら行わなかった。

 

その徹底した無反応こそが、かえって事態の異常性と、背後で動き出しているプロジェクトの巨大さを静かに物語っていた。

 

 

 

 

 

そして、2032年8月12日。

 

暦は巡り、夜空には1点の曇りもない満月が浮かぶ。

 

仮想空間ツクヨミ内の特設された巨大特別ライブ会場。

 

そこには、あの日以来、心のどこかでずっと「彼女」を待ち望んでいた数え切れないほどの観客が詰めかけ、サーバーが悲鳴を上げるほどの熱気に包まれていた。

 

誰もが確信していた。これは、かぐやの復活ライブ(推定)なのだと。

 

そして、時計の針が21時を回る。

 

静寂を切り裂くように、まばゆい月光の演出がステージを照らし出し、ついにその幕が上がった。

 

ライブの幕が上がる。

 

「かぐやっほ~!!!」

 

耳をつんざくような大音響と共に響き渡った、あまりにも懐かしい、弾けるような第一声。

 

約2年ぶりの、あの決まり文句。

 

次の瞬間、観客席からはツクヨミという世界そのものを揺らさんばかりの、地鳴りのような歓声が沸き起こった。

 

「月でのお仕事を終わらせて帰ってきたよ~~~!!!」

 

天真爛漫な笑顔。2年前と変わらぬ、いや、どこかさらに洗練された輝きを放つかぐやが、そこに立っていた。

 

物語は止まっていたわけではない。月でのお仕事を経て、伝説は今、新たな第一歩を踏み出したのだ。

 

そして曲が流れる。

 

曲名は『Reply』。

 

かつてかぐやの卒業ライブで歌った曲。

 

それを彩葉が完成させた真なる『Reply』。

 

「...おまたせ」

 

イントロの終わり、かぐやが小さく呟く。

 

その声に乗せて、2032年の夏、『Reply』が夜空を駆ける。

 

彩葉からかぐやへの返信であり、自分たち自身の過去への返答。

 

そして何より、あの日の別れを「終わり」ではなく「約束」へと変えるための、真実の旋律だった。

 

客席からは、もはや叫び声すら上がらない。

 

ただ、完成されたその音の美しさに圧倒され、誰もが涙を堪えながら、ステージ上でまばゆい光を放つ帰って来た歌姫(かぐや)の姿を凝視していた。

 

 

 

 

 

「いろいろ聞きたいことあると思うからこの後配信するね!!

みんな来ってね~~!!!」

 

復帰ライブの幕が下りる直前、かぐやは弾けるような笑顔で再会を約束し、まばゆい光の中に溶けるようにしてステージを後にした。

 

「かぐや~~!おかえり~!!!」

 

「待ってたぜ!かぐやちゃん!!」

 

「いろPと遠田ァの関係についてどう思う!!」

 

割れんばかりの拍手と、再会を祝う怒号のような歓声と、野次馬根性丸出しの声が飛び交う。

 

ライブ会場の熱をそのままに、舞台は復帰記念配信へと移る。

 

 

 

 

 

 

 

「かぐやっほ~!

みんな~ただいま~!!」

 

復帰ライブの余韻も冷めやらぬ中、始まった『かぐや復活記念配信』。

 

画面には、2年前と変わらぬ天真爛漫な笑顔を浮かべる歌姫の姿があった。

 

コメント欄は、サーバーが物理的な悲鳴を上げそうなほどの速度で埋め尽くされていく。

 

『待ってた!ずっと!!』

『おかえり~!!!』

『かぐやちゃ~ん!結婚して~~』

 

そんな熱烈な歓迎の濁流の中に、ひときわ目立つ黄金色のユーザーネームが流れる。

 

『帝アキラ:かぐやちゃん!おかえり!』

 

「帝いんじゃん!暇なの!?」

 

かぐやは食い気味に、一切の遠慮なしに突っ込んだ。

 

『帝への扱いが雑いwww』

 

『しゃーない、初対面で求婚してきたし』

 

『帝アキラ:お前ら酷いな...』

 

画面越しの帝の悲哀が伝わってくるようなコメントに、リスナーたちは爆笑の渦に包まれる。

 

初対面で、挙句の果てには実の妹の相方に求婚したことを未だに擦られ続ける帝。

 

「帝の話なんてどうでもいいの!」

 

かぐやは清々しいほどに帝を切り捨てる。

 

『帝なんてどうてもいいww』

 

『さらば帝www』

 

『帝アキラ:かぐやちゃん...まあ、今日の主役って訳じゃないしいいけどさ...』

 

コメント欄に流れる帝の哀愁漂う言葉を尻目に、視聴者の興味は核心へと移っていく。

 

『なんで2年前に卒業したの?』

 

あまりにも唐突だったあの卒業ライブ。

 

その理由を問うコメントに、かぐやは悪びれる様子もなく、ひらひらと手を振って答えた。

 

「えっとね~。月での仕事をほっぽり出して地球に来たら怒られちゃってね...

『せめて仕事の引継ぎはしろ!』ってさ。

だから一回月に帰って仕事を終わらせて、ちゃんと後任に引き継いでから帰って来たの!!」

 

かぐやは一点の曇りもない笑顔で、真実を口にした。

 

この配信の裏側で、遠田と彩葉は遠い目をしながらモニターを見つめていた。

 

「真実が奇想天外すぎて、どうせ誰も信じないだろう」

 

そう判断し、かぐやが本当のことを話すのを許可していたのだ。

 

誰が信じるものか。

 

ゲーミング電柱から生まれ、わずか2、3日で急成長し、ツクヨミを席巻したこと。

 

月での公務を完全放置して地球に遊びに来た、放置し、ガチのかぐや姫であること。

 

その上、地球に永住しようとしていたこと。

 

慌てふためいた月人たちが、なんとか彼女を連れ戻そうと画策したこと。

 

卒業ライブの日、ガチの月からのお迎えが襲来し、本当に月に帰ったこと。

 

仕事を終わらせ、地球に、彩葉と遠田の元へ帰って来たこと。

 

「...ま、仕事を片付けて、彩葉と匠のところに帰ってきたってわけ!」

 

胸を張って言い切る彼女の姿に、コメント欄は一瞬の静寂のあと、猛烈な勢いで加速した。

 

『設定盛りすぎワロタwww』

 

『月での引き継ぎってなんだよ、中間管理職かよw』

 

『だから卒業ライブの演出があんな感じだったのね』

 

視聴者たちは「最高のファンタジー設定」として爆笑し、熱狂している。

 

...しかし、その熱狂の渦中、かぐやの「致命的な失言」を耳ざとく拾い上げた視聴者がいた。

 

『匠って...もしかして遠田の...』

 

そう、この自由奔放な歌姫は、さらっとネットの海に遠田の下の名前を放流しやがったのである。

 

これで遠田匠の本名がネット上に公開された。

 

『Mr.Mk:かぐや...あとで、たっぷり「お話」があります』

 

突如としてコメント欄に降臨した、静かな怒りを湛えたMr.Mkこと遠田。

 

「あ...やっべ...やっちゃった

匠~ごめんよ~」

 

全く悪びれもせず、表面上だけ謝罪するかぐや。

 

それを見たかぐやは、テヘッ、とあざとく舌を出した。

 

『敬語&標準語の遠田で草。これマジでキレてるやつだwww』

 

『なにやってんだかぐやァ! 個人情報保護法を知れww』

 

『遠田匠く~ん!本名バレおめでとう! 見ってる~!?』

 

『でも、匠ィより遠田ァの方が言いやすいな』

 

「いや~、普段『匠』って呼んでるから咄嗟に出ちゃった。あはは!」

 

かぐやは反省の色を微塵も見せず、むしろ楽しそうに言い訳を展開する。

 

だが、その一言は、飢えた狼のような視聴者たちに新たなる絶大な餌を与えてしまった。

 

『普段から名前呼びだと...!?』

 

『何やってんだ遠田ァ!羨ましい...』

 

『遠田ァ!まさかのかぐやちゃんともデキてんのか!? 浮気か!!』

 

かぐやの無邪気言い訳により、視聴者の矛先は一気に遠田へと集中する。

 

コメント欄を埋め尽くす浮気疑惑と羨望の嵐。

 

それに耐えかねたのか、あるいは我慢の限界を超えたのか

――画面上のチャット欄に、これまでにない速度で文字が叩きつけられた。

 

『Mr.Mk:浮気なんぞしてへんわ!こちとら、いろP一筋や!!!』

 

静まり返るコメント欄。

 

そして、その直後、文字通り爆発した。

 

『公開告白(゚∀゚)キタコレ!!』

 

『惚気、ごちそうさまです』

 

画面を埋め尽くす祝福と冷やかしの嵐。

 

隣に座る匠の、あまりにも真っ直ぐで不器用な「いろP一筋」宣言。

 

彩葉の顔は、熟したリンゴを通り越して、今にも沸騰せんばかりの朱色に染まっていた。

 

心臓の音がうるさくて、耳の奥まで熱い。

 

だが、そんな甘酸っぱい余韻は、続くかぐやの爆弾発言によって一瞬で消し飛ばされた。

 

「匠は浮気なんてしてないよ!浮気したのは彩葉のほう!!」

 

「...えっ?」っ彩葉の口から、間抜けた声が漏れる。

 

彩葉には浮気なんぞした記憶も事実もない。

 

「彩葉さ! かぐやが月に帰ったあと、かぐやを捨ててヤチヨとライブしてたんだよ!! ひどくない!!」

 

衝撃の「浮気」の定義に、視聴者も彩葉も一瞬、点になった。

 

そこへ、追い打ちをかけるようにコメント欄へ関係者(ヤチヨ)が降臨する。

 

『月見ヤチヨ:や~い、負けヒロイン!!』

 

「はぁ~~~!?かぐやは負けヒロインなんかじゃないが!?

かぐやが負けヒロインならヤチヨだってそうじゃん!」

 

配信画面の中で、かぐやが顔を真っ赤にして地団駄を踏む。

 

どうやら彼女にとっての「浮気」とは、自分という唯一無二の歌姫がいながら、他の女(ヤチヨ)とステージに立ったという、クリエイティブ上の不貞行為を指していたらしい。

 

『【悲報】いろP浮気ものだった』

 

『ヤチヨの煽りスキル高くて草』

 

『あんなに美しいコラボライブした仲とは思えねぇwwww』

 

「匠はいいの!彩葉がヤチヨに盗られたんだよ!悔しくないの!?」

 

『Mr.Mk:いや...あれは浮気じゃないやろ...しかもヤチヨとライブしてたの付き合う前やし...』

 

『いろP:待ってかぐや!あれは...その...家賃と学費を、ふじゅ~を稼ぐために...』

 

「彩葉ひどい!!ふじゅ~の為にかぐやを捨てたの!?

愛よりお金を取ったんだね!! もういい、決めた! 明日のご飯、彩葉の分だけ抜きにするから!!」

 

彩葉の必死の抗議も虚しく、配信画面の向こうでかぐやが「ふんっ!」とそっぽを向く。

 

彩葉と遠田の胃をガッツリ鷲掴みにしているかぐや。

 

純粋だったかぐやは、いつの間にか「食事の献立」を交渉材料にするという、極めて世俗的で強力な武器を手に入れていた。

 

『いろP:それだけはご勘弁を!かぐや様!』

 

『いろPが尻に敷かれてて草』

 

『かぐやちゃんのおねだり以外にもいろPに効果抜群な技があったとはww』

 

『かぐいろてぇてぇ』

 

コメント欄の流速は、もはや人間の動体視力を置き去りにし、ただ「草」と「w」の弾幕と化していた。

 

そんな中、更なる爆弾が外より飛来する。

 

『大阪のおばちゃん:彩葉ちゃん...浮気だなんて...確かにうちの子は変やけど...』

 

「...は?えっ?」

 

彩葉の思考が停止した。

 

アカウント名『大阪のおばちゃん』。

 

そう、遠田母。

 

息子の名前が全世界に晒されたこの絶好のタイミングで、この「面白いこと」に首を突っ込まないはずがない人物の襲来である。

 

その正体を察した瞬間、モニターの向こう側で遠田が「ゲッ」と短く悲鳴を上げ、椅子から転げ落ちる音が聞こえてきた。

 

『遠田のおかん来たーww』

 

『身内に刺されてるぞ遠田ァ!』

 

「おばちゃん!久しぶり~~!!彩葉が浮気してるんだよ!ひどくない!?」

 

かぐやが能天気に、かつ最悪のタイミングで挨拶を返す。

 

彩葉は、かぐやの暴露以上に顔を真っ赤にし、キーボードを叩く指をガタガタと震わせる。

 

「浮気」という誤解を解かなければならないが、それ以上に「彼氏の母親」がこのカオスな生配信をリアルタイムで監視しているという事実に、彼女の精神的キャパシティは限界を迎えていた。

 

『Mr.Mk:出しゃばるなおかん!帰ってくれ!!』

 

『大阪のおばちゃん:実のおかんにして、共同研究者相手になんて口の利き方してんねん!』

 

『大阪のおばちゃん:彩葉ちゃんを泣かせるようなことしたら、次帰ってきた時あんたの分のご飯も抜きやからね?』

 

「あはは! 匠もご飯抜きだって! どんまーい!!」

 

かぐやの笑い声と、オカンの容赦ない家庭内制裁。

 

もはやこれは、2032年の『伝説の歌姫復帰配信』ではなく、全世界に公開された『遠田家の盛大な身内喧嘩』へと変貌を遂げていた。

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