モノづくり大好きライバーによるハッピーエンドの作り方   作:超かぐや姫!脳焼きの民

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本日二度目の投稿なので実質初見。


目指すべきはハッピーエンド?

人は自身よりパニックな人を見ると冷静になるらしい。

 

彩葉はこれを身をもって体感していた。

 

目の前には

 

急成長し、少女の姿を持った赤ん坊。

 

そして泡を吹いて倒れている遠田。

 

「ねぇねぇおなかすいた~

 

ミルク~」

 

再度、飯を要求する少女。

 

ただし冷静になれたからと言ってすぐに動き出せるわけではない。

 

少女が3度目の要求を口に出す直前。

 

「お引き取りください」

 

彩葉は子育て用品を段ボールとビニール袋に入れて突き出す。

 

「てか怖っ!

何ですぐデカくなんの?怖っ」

 

「ふぅ~

まぁ今どきは何もかものスピードが速いんですわ」

 

つい3時間前まではよちよち歩きが限界だった赤子の発言ではない。

 

そんな言葉を聞いても彩葉は冷静である。

 

彼女の数少ない平穏を脅かす得体のしれないイレギュラーは即刻排除すべきである。

彼女はそう理解していた。

 

少女の腕を掴み外へ連れ出そうとする彩葉。

 

全力で抵抗する少女。

 

草木も眠る丑三つ時の綱引き大会結果は引き分けであった。

 

少女は反動で窓まで転がる。

 

そして彩葉は尻もちをついた。はずだった...

 

「い、一体なn...

ぐぇぇ」

 

彩葉の下から潰されたカエルのような声が聞こえる。

 

優秀な読者ではなくてもわかるだろう。

 

やっと目を覚ました遠田に追撃が入ったのである。

 

「わっだっ大丈夫?」

 

「大丈夫で~す...」

 

「頭痛い~助けて~」

 

遠田は無事らしい。力なく手を振る。

 

一方、少女は頭を強くぶつけたらしい。

 

「私、子供助けてる暇なんてないよ...」

 

嘆く彩葉の前で少女の腹の虫が鳴いた。

 

一拍おいて彩葉の腹の虫も共鳴して鳴く。

 

「助けて~」

 

少女は己のかわいさを自覚してるかの如く彩葉に助けを求める。

 

酒寄彩葉は心優しい女の子である。そして頼み事を断れないちょろ葉なのである。

 

そんな中。

 

「俺も腹減ったしなんか買ってこよか?」

 

彩葉たちのやり取りの間に完全復活を果たしたらしい遠田が声をかける。

 

「いや流石に悪いよ。私が行く」

 

「なに?どこか行くの?

私も行きたい!!」

 

ということで何故か3人で最寄りのコンビニまで行くことに。

 

少女は目に映るものすべてが珍しいのか、

「これ何?あれ何?」といちいち立ち止まる。

 

楽しそうなのは少女だけだった。

 

遠田は平静を装っているが、

ホラー展開(遠田目線)とヒップドロップ(遠田目線)のダメージが明らかに残っている。

 

そして彩葉は。

 

(なんで私が保護者ポジなんだよ……)

 

ゲーミング電柱から産まれた急成長する元赤子。

 

どこからどうみても厄介ごとの塊である。

 

コンビニでオムライス、ガパオライス、コンビニ弁当を購入する。

 

レジで表示された金額を見て、彩葉は小さく呟いた。

 

「1,176円...11食分...」

 

「嘆くぐらいならこっちで出したのに」

 

「いやいや。おむつとか食料とか買ってもらっといて、ここまで甘えるのは流石に無理」

 

苦学生である。

 

でも、だからこそ。

誰かに寄りかかり続ける自分にはなりたくなかった。

 

その意地で、自分と少女の分を払った。

 

部屋に戻り、食事を始める。

 

二人の様子をじっと見ていた少女は、

見よう見まねでスプーンを握る。

 

ぎこちなく、オムライスを口へ運ぶ。

瞬間。

 

少女の口内が幸福で満たされる。

 

「すっごい!何これ?!すっごい! ん~っ」

 

少女はあまりの美味しさにオムライスをがっつく。

 

「オムライスっていうんや

おいしいやろ」

 

少し困惑している彩葉を置いて遠田が誇らしげに答える。

まるで自身が作ったかのような感じである。

これはコンビニで売っている市販品だぞ。お前が誇るもんではない。

 

「あなたどこからきたの?」

 

そんな2人を放っておいて彩葉は少女に問う。

至極全うな質問である。空から降ってきてゲーミング電柱から産まれてくる少女は明らかに地球産ではない。

 

そんな質問に少女は月を指さす。

 

「まじで言ってる?月??そんなことある?」

「かなぁ...」

 

遠田がツッコむ。珍しいこともあるもんだ。

明日はゲーミング電柱が降るかもしれない。

 

「で?宇宙人は何しに来たの?

侵略?」

 

「う~ん

なんかあんまよく覚えなないんだけど~

とにかく毎日超~つまんなくて

楽しいところに逃げた~い!

って思った気がする。」

 

「うんうんわかるで。

つまらんのはあかんもんな」

 

「逃げんな~

遠田は同意すんな~」

 

「「え~なんで~」」

 

正常なのは彩葉のみである。

 

 

「あのさちなみにこれに心当たりは?」

 

彩葉がタブレットに竹取物語のワンシーンを少女に見せる。

 

少女に竹取物語の説明をする彩葉。

 

しかし少女はタブレットではなくガパオライスに目を奪われている。

 

そして簒奪しようと手を伸ばした瞬間。

 

「そんなに腹減っとるならこっち食べ

食いかけでわるいけどな」

 

と遠田がコンビニ弁当を差し出す。

 

遠田はコンビニ弁当の野菜や漬物から食べ、メインディッシュを後に残す人間である。

そのため揚げ物や白米といった食べ応えのあるものが残っている。

 

少女は遠慮なくコンビニ弁当を簒奪し、

 

「じゃあ彩葉はこのおじいさんなわけ?」

 

少女よそれはまずい。

酒寄彩葉はぴちぴちの17歳、花の女子高生である。

そんな彩葉をおじいさん呼びは大変失礼である。

 

しかしもっと失礼なバカがここにはいる。

 

このやり時を聞いて腹を抱えて崩れ落ちている遠田である。

 

「80年後の姿でもみえちゃってるのかなぁ

違うよ?

あと遠田笑うな!」

 

「ってなんで私の名前??

そんでこんなん絶対かぐや姫じゃない!

いやその前にえっと...」

 

彩葉は真面目な人間である。

日頃から遠田の対応で慣れているとはいえこの少女の相手はしんどいようだ。

 

「んで。お話はどうなるの?」

 

「え~お迎えが来て

翁たちが引き渡すまいと戦うけどむなしく

姫は羽衣を着せられて地球のことは忘れる...で帰る。

これで終わり。めでたし」

 

「月に帰って終わり?! なにそれ超~バッドエンドじゃん!

これかぐや姫絶対不幸じゃん!」

 

「御伽噺やからって考えてなかったけど、なかなかにバッドエンドやな」

 

遠田便乗。

遠田とこの少女は似た者同士のようだ。

 

「しかもいい話風になってるのが余計許せないよ!」

 

少女の怒りは収まらない。

 

遠田も頷いている。

 

遠田便乗するな。便乗するなら帰れ。

 

「これはこうゆうお話なの」

 

「バッドエンドやだやだ

ハッピーなのがいい~!」

 

「どうしようもないじゃん暴れたって歌ったって

決まってることが変わるわけがないし...

受け入れて覚悟するしか...ない」

 

駄々をこね、歌いだす少女。

 

どこか諦めたような声の彩葉。

 

そこに悪魔の囁きが

 

「じゃあ自分でハッピーエンドにすればええ。

竹取物語はバッドエンドかもしれんがあんたのエンドはまだ決まってないやろ?」

 

笑い、娯楽、ハッピーエンドの悪魔遠田降臨。

 

「確かに!!

決めた!自分でハッピーエンドにする!!

そんでハッピーエンドまで彩葉と遠田も連れてく!

一緒に!」

 

「あっ俺は苗字呼びなんか」

 

遠田お前の苗字は呼びやすいのだ。

諦めろ。

 

 

「ハッピーエンド要らない。普通のエンドで結構です。」

 

即答だった。

 

「ウソウソウソ、そんなわけないでしょ~」

 

少女が笑う。

 

その横で。

 

「悪い。ちょっと眠いから寝るわ」

 

遠田が立ち上がる。

 

誰も止めない。

 

止める理由もない。

 

けれど。

 

その背中は、どこか静かだった。

 

いつもの軽さが、ほんの少しだけ足りない。

 

扉が閉まる。

 

部屋には、少女の笑い声と、

彩葉の小さなため息だけが残った。

 

 

 

遠田の恋愛観は

酒寄彩葉に一目ぼれしてからの1年半の間で変化があった。

 

なぜ酒寄彩葉に笑っていてほしいのか?

 

なぜ酒寄彩葉を心の底から笑わせたいのか?

 

その答えは単純なものであった。

 

好きな人(酒寄彩葉)には幸福でいてほしい。

 

ただそれだけの純粋な願いであった。

 

そしてそれが遠田自身では叶えることができないと

 

どこかで気づいてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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