俺達は雪山を抜けた。雪山を抜けると同時に吹雪は晴れ、緑の大地が視界に飛び込んできた。その光景に俺達は目を輝かせる。雪一色の白に交じる緑。その光景はこの上なく幻想的で壮大なものだった。
「あっつい」
ルイス姉が厚手のコートを脱ぎ捨て、収納でしまっていく。ここの気温は極寒の雪山とは打って変わり、非常に暖かい。まさしく春日和といった過ごしやすさで眠くなりそうなほどだ。
「なんていうかまるで別世界に来たみたいだな……普通はこんなのありえねぇだろ」
「地下に白竜の死体が埋まっとるからそうらしいで。詳しくは知らへんけど」
「死体だけで環境を変えるとかやべぇだろ」
そんな存在が支配していた竜の時代。英雄譚では何度も読んでいたつもりだが、こうして現代まで影響力が残ってると思うとゾッとする。
「ちなみにロストベリーの持ち手部分は黒竜の骨を使用しとったし、改修するに当たって刃部分も黒竜の骨にしたで」
「今まで何で持ち手だけだったんだい?」
「昔に作った時はそこまで加工する術がなかったんよ。ロストベリーはうちが鍛冶の素人の時に打った子やしな」
「……それでも十分にクオリティは高いと思うけどね」
改めてロストベリーの事を意識する。ロストベリーの素材は黒竜だ。色竜の一角ともされた黒竜の骨だ。ただの死体ですら環境を変えてしまう力を発揮する。俺ははたしてロストベリーという武器を活かしきれているのだろうか。
魔王になるためにはロストベリーのポテンシャルを最大限に発揮しなければならないのではないか。
「さてと。これからカオリを魔王にするわけだけど勝算はあるわけ?」
「モモの出方次第やろ。問題はモモがどこまで魔王を億劫に思ってるか次第ってところやね」
カミーラの提案で俺は傍観者から当事者へと格上げされた。俺はこれから自分に魔王が務まると認めさせなければならない。ルイス姉よりも俺を魔王にした方が都合が良いと思わせなければならないのだ。それはそれで求められるもののハードルは相当高い。そのハードルを乗り越えるからこそ英雄だ。
「まぁモモをこのまま魔王にしとくのは気掛かりなところがあるし、カオリが魔王になることには軽く手を貸したるよ」
「気掛かり? モモとの話を聞いてた感じだと相当賢いし、問題はないように思えるけど……」
「能力的な懸念点はあらへんよ。ただ8歳児にそこまで背負わせるのに少し抵抗があるだけや」
「なるほどね」
大人びて見えるがモモだけは本物の幼女。ルカのように後天的に幼女となったわけでもなければ、メイのように趣味で幼女をしてるわけでもない。まだ生まれて8年しか経っていないのがモモだ。それが魔王をしてるというのはおかしな状況なのだ。
俺達は山を下り、緑の大地を歩いて魔王城が佇む王都へと足を踏み入れた。幸いにも王都はカミーラがいるお陰もあり、顔パスで入ることが出来た。
「なんか思ったよりエルフ差別が酷くないね」
「直接的な面識がないから恨みにならへんのやろ。王都まで辿り着けるエルフは滅多におらへんし」
「なるほどね」
魔族の街は全体的に質素な街だった。風が突き抜けそうな木造建築にデコボコな道路。一目見た感じでは発展途上という印象を強く受ける。しかし不思議と暗さはない。子どもは公園ではしゃぎ、市場はがやがやと賑わっている。
「野草酒?」
「最近やってきた聖女様のおかげだね。彼女の活躍で野草からお酒を蒸留する技術が確立されて、一気に流通するようになったのさ」
「……ルイス。なにしたわけ?」
「うちは魔族領に足を踏み入れたことは数回しかあらへん。その聖女様はうちじゃないで」
「ていうか数回は訪れたことあるんだ……」
その聖女という言葉は気掛かりだ。この世界における聖女とはルイス姉個人を指す肩書き。ルイス姉に並び立つという宣戦布告に等しい。そんな真似をするのはリアルくらいなものかと思っていたが……
「ところで野草酒って美味いのか?」
「うちも少し気になるで」
「ルイス姉。金くれ」
「……魔族領でエルフや人間の通貨って使えるん?」
言われてみれば怪しい部分でもある。こうなるならばモモに少しお金を貰っておけばよかったと後悔する。
「安心していい。魔族の間ではお金は一般的ではない」
「どうして?」
「数代前の魔公がやらかしたみたいでね」
やらかしたからお金がなくなる。その意味が直感的に分からなかった。ただ1人のやらかしでお金が消失するなんてことはありえるのだろうか。
「その魔公はとても優しく賢い人だったらしい。それこそお金という概念を持ち込んだのも彼だったと聞いているよ」
「……そんな人がなにをしたわけ?」
「民に求められるままお金を刷ったんだ」
「その結果としてハイパーインフレーション起こして貨幣の信用が失墜ということやね。初のお金でそれをやられたら流行らへんな」
国内で買える物も少ないし、このような寒冷地では農産物や木材の生産量が少ない。貨幣を増やしても市場の商品は増えない。住民に金を配れば、限られた食料や燃料へ需要が集中するだけ。どう考えても地理と貨幣の相性が悪すぎる。これは物々交換に近い形になるのも妥当というものか。
「この地理の問題をどうにかしないと魔族は先細るばかりだよ」
「エルフと交易を持てたら良いけど……ここまで来るのが無理だもんね」
「せやね。もう大人しく土地を捨てて、エルフに派手な戦争仕掛けて土地を取るしかあらへんと思うわ」
そしてモモがその問題に気づかないはずもない。まさしく開戦まで秒読みな状況だ。それを踏まえると魔族とヤミ国の同盟は上手くいくような気がしなくもないが……モモの『ヤミ国を支持しない』の一言が不穏だ。
「初歩的なことを聞きたいんやけど、魔公と魔王はなにが違うん?」
「魔公は魔族の長。それに対して魔王は絶対的な魔族の王」
「うーん……そのどこが違うの? 私には同じようにしか思えないけど……」
「まず前提として魔族は暴力至上主義。強い人の言うことが正しいという理屈で成り立っている」
なんだ……その物騒な主義は。明らかに文明人のやることではない。それでは蛮族の国ではないか。そんなツッコミを内心でしてしまう。
「魔公はもっとも武力のある派閥の代表がなるんだ」
「それじゃあ魔王は?」
「個人で全国民が総出になっても勝てない存在に与えられる地位だ。誰も勝てない暴力だからこそ絶対的に正しく、なにを言おうが支持される。それが魔王だ」
「……徒党すら組まずに暴力だけでなるのが魔王の条件ね」
「ウシカゲを除けば、魔王になったのは後にも先にもモモ1人。魔王というのは存在するだけで、実際に席に就くものはいなかったのさ」
しかし街を見ても恐怖政治をしているような雰囲気はない。暴力至上主義という過激な言葉からは想像もつかないほどに平和だし、魔王が支配しているようには思えない。もっともモモだからそのようなことにはならないと分かってはいるが……それでも魔王の意味を聞いた後にはそう思わずにはいられない。
「モモはそんなもんにうちをしようとしてたんか」
「魔王の言うことは絶対だからね。魔王がその人の方が魔王に相応しいといえば、それで成り立つのさ」
そんな俺達の前に1人の魔族が行く手を阻むように立ち塞がった。その魔族を前にして俺達は足を止める。
「俺達になにか用か?」
彼は悪魔のような姿をしていた。山羊の角に蝙蝠のような翼……そして鋭い鉤爪。見るからに強そうな魔族。俺達は目の前の存在に少しだけ警戒する。
「……貴様らが聖女ルイス一行か」
「なんや?」
「彼はベック。魔王モモの側近だよ」
カミーラが目の前に現れた魔族の紹介をした。てっきりチンピラの類かと思っていたが、想像以上に大物が出てきたものだ。モモの側近ということはこの国のナンバー2なのだろう。その立場を考えれば敵ではないのだろうが……
「あんた。少し言葉遣いがなっとらんのちゃう?」
「む」
「選民思想が漏れ出てきっしょいで。うちらはお客様や……頭を垂れや」
ルイス姉が俺達の感じていた違和感を言語化してくれたが……言葉が強い。さすがにそこまで喧嘩を売れとは思っていない。本当に彼女は穏便に済ませるということを知らないのだろうか。
「……言葉遣いとはどういう意味だ?」
「ん?」
「すまない。余にはなににキレているか分からぬ」
俺は頭を抱える。これは最悪な状況だ。あまりに2人との相性が悪すぎる。俺はルカの方に助けを求める視線を送るが、興味すら示さない。まるでどうでもいいと言わんばかりに上の空である。そして俺が視線を強く送り続け、ようやく重い腰を上げて一言だけ言った。
「もう面倒だし、暴力至上主義に則ってボコせばいいじゃん。そしたら態度も改めるんじゃないかな」
「せやね。暴力がここでは許されてるんやもんな」
ルイス姉が戦闘態勢に入る。ルイス姉が本気ならばこの程度の魔族は5秒もかからないだろう。気持ち良くぶん殴り、遺恨も残らない。素晴らしい解決策だ。
そう思ってると奥の方から1人の男が呆れた顔をしながらやってきた。
「ベック。君はモモ様から待機の指示が出ていたはずだ」
「余は魔王様の側近だ。魔王様と面会するならば見定める義務がある」
その人の存在に俺は少しだけ目を疑う。なにせ現れたのは魔族ではなく、肌の黒いエルフだったのだ。ここにエルフがいるとは思わなかった。ただ恐らく彼はエルフではない。なにせ肌が黒いのだ。それはきっとダークエルフだ。
「ダークエルフか」
「ダークエルフってなに? 肌が黒いだけのエルフじゃん」
「え……」
「さすがにうちでも今の発言は引くで。肌の色でどうこう言うのは駄目やろ」 「え? 俺が悪いの?」
「カオリが悪いで」
全員が俺に冷ややかな目を向ける。どうやらダークエルフという概念がないらしい。あくまで褐色肌のエルフということらしい。どうも腑に落ちないが、そういうものだと飲み込むしかない。
しかし魔族とエルフは犬猿の仲だ。彼がダークエルフではないとなると、普通のエルフが魔族領にいるということになる。そのことが俺にはにわかに信じられなかった。
「ここは暴力至上主義。魔王モモが認めたらエルフだろうがみんな受け止めるし、彼も強いから認められたのさ」
「なるほど」
そんな彼の存在にはルイス姉ですら少なからず驚いていた。もしかして知り合いだったりしたのだろうか。
「こちらの者が失礼を働き、申し訳ありません。どうか寛大な心でお許しいただければと思います……聖女ルイス様」
「あんた。死んだと聞いとったんやけど?」
「ルイス姉。そこのエルフは……」
「十二座三の座フレイム。モモが魔王として宣戦布告した時に討ち取られたエルフや」
「ああ!」
その指摘で思い出す。魔王復活の噂でルカが調査のために動く切っ掛けとなった事件だ。その事件で殺されたのが彼だったという話だろう。今思えば相当昔のように思える。
「はい。そこで私は魔王モモ様に見逃され、そして彼女の思想に感銘を受けました」 「そんで仕えてるってわけか」
「その通りでございます」
俺は2人に聞こえないように耳打ちでルカと会話をする。彼を見て少しだけ興味があった。
「なぁフレイムって強いのかな?」
「スキルだけは強いよ。それ以外は大したことないけどね」
「どんなスキル?」
「炎のスキルだよ」
炎。たしかにそれは強力なスキルだ。それこそ有象無象が相手ならば簡単に制圧できるし、場合によっては戦況も大きく変えるだろう。しかしルカの口振りから察するにエメラルドやアリスのような存在には一歩届かずといった感じか。
「それでフレイムがうちになんの用や?」
「この度は魔王モモ様から城へご案内する任を受け、お迎えに上がらせていただきました。どうか一緒に来てくださいますか?」
◆ ◆ ◆
それから俺達はフレイムに案内されるがままに城に招かれ、内部を歩いていく。黒の石で作られた城は魔王城と呼ぶに相応しい厳格さを感じさせられた。この城を歩いてるとまるで自分が勇者になったような気分になってくる。
「まるで勇者パーティー御一行になったみたいだな」
「せやね。ところでこのパーティーで魔王モモに挑んだら勝てるんかな?」
「逃げるならまだしも勝つのは無理でしょ。それはルイスが一番よく分かってるんじゃない?」
「せやね」
長い廊下を歩きながら2人が物騒な冗談を言い合う。しかしルイス姉とルカの2人が口を揃えて勝てないと断言する。そう評されるモモをどこか誇らしく思う。もし敵ならば怖く思うところであるが、そういうわけではないのだから安心して話を聞ける。
「相手が魔王ウシカゲだったらどうだ?」
「は? 負けるわけないじゃん」
「うちは彼について知らへんから多くは語らへんけど、さすがにこのメンツで負けるところが想像つかへんで」
まさかの即答である。歴史上の魔王よりもモモの方が評価されてることに苦笑いしそうになる。
「そういえばカミーラ。どうしてハートなんか名乗ってたの?」
「四天王のルールさ。本名はなるべく知られてはいけないというのがあって、魔王モモより与えられた名を名乗ることが推奨されてるんだ」
「なんで?」
「利用されることを警戒しとるんやろ。例えば封印瓶って道具は名前を知っとる相手を閉じ込められるみたいやし」
「なにそれ! つっよ! どういう理屈?」
「知らへん。竜の時代の遺物はそういうわけわからへんものが多いんよ」
その話を聞いて少しだけゾッとした。つまるところ封印瓶を使われたら戦闘力に関係なく負けが確定する。俺は偽名とか使ってないけど平気だろうか。そもそもルイス姉は普通に本名を言っているが……
「ルイス姉は対策しないのか?」
「うちの真名は前世の名前扱いになっとるからな。ルイス・ラスティアじゃ無意味や」
「あーそういうこと」
その言葉を聞いて少しだけ安堵した。なにせルイス姉は俺達の生命線である。彼女がいなければ、どう転ぶか分かったものではない。もちろんルイス姉はルイス姉でなにを考えてるか分からない部分はある。しかし俺達に危害を加えることは絶対にないのも事実であり、なにかあったら必ず助けてくれるという安心感もある。
「恐らくモモも苗字は誰にも伝えとらんと思うで。カオリも苗字は名乗らへんようにしとき」
「わかった」
「ていうか私は思いっきり本名を名乗ってるけど大丈夫かな?」
「……多分やけどルカにはそういうの効かへんと思うで。根拠はないけど不思議とそんな気がするで」
「わかる」
そんな話をしてると大きな扉の前に辿り着く。そして扉はフレイムの手によって開かれる。その扉の先は大広間だった。その大広間の奥には玉座が置かれていた。
その玉座に座るのはモモ。ここまで退屈そうな顔をしていたモモは俺達を見るなり、一気に笑顔になった。
「待ってたよ。次期魔王……ルイスお姉ちゃん」
「せやね。その返答もせえへんとな」
その言葉でルイス姉が一歩だけ前に出る。モモがこう来ることは分かっていた。俺達はその返答を既に決めている。
「うちは魔王にはならへん。もっと相応しい人がおる」
「ふーん。誰かな?」
「そこのカオリや」
ルイス姉に促されるまま俺も前に出る。モモの冷たい視線が俺を射抜く。その視線で身体が硬直する。目の前にいるのは妹ではなく魔王だった。その鋭い眼差しが緊張を走らせる。
「ああ。俺が魔王になる」
「お兄ちゃんに魔王が務まるのかな?」
冷たい声が響いた。一触即発の空気に息が詰まる。モモは常に公平だ。例え身内であろうが甘やかすような真似はしない。公私を分けた上で正論で詰めてくる。
「そもそもお兄ちゃんが魔王になると私になんのメリットがあるのかな?」
「モモ」
「ん?」
「その言動はメリットがないと魔王にしないっていう言質だ。つまり――ルイス姉が魔王になることでお前にメリットがあるってことでいいんだな?」
全て打ち合わせ通りだ。ルイス姉が言った通りだ。モモは確実に損益の話をすると踏んでいた。もし得がないならば魔王にしないというのならば、ルイス姉を魔王にするのに思惑があることの証明になる。思惑があるのならば、怪しいから飲めないという突っ撥ねる理由が出来る。
「そうだよ。ヤミ国の公爵でエルフの聖女。そんなお姉ちゃんなら魔王になれば三カ国の間を取り持てる。魔族にそういうメリットがあるから、私はお姉ちゃんを魔王にしたいんだよ」
「あくまでモモ個人じゃなくて魔族全体の話ってことか?」
「そういうこと」
「しかしそれにルイス姉を巻き込むのはどうなんだ? ルイス姉は魔王になりたくないと言ってるぞ」
「分かってるよ。でも私はお姉ちゃんに魔王になって欲しい。ただのエゴだよ」
一歩も譲らない。俺は進化したロストベリーに手をかける。ここでモモを負かして魔王として認めさせる。それが一番手っ取り早い。誰もが勝てないと評した魔王モモに勝つ。それは一番英雄へと近づく道だ。
「……モモ」
しかしすぐに手を離す。ここまで俺は多くの戦いをくぐり抜けてきた。その経験があるが故に実力差がハッキリと分かる。どう足掻いてもモモには勝てない。付け入る隙というものが一切ない。今の俺がモモに喧嘩を売るのはただの無謀だ。身体侵食を使用した上で10秒も持たない。
「そもそもさ。私みたいな子どもに王様の地位は重いんだよ。子どもに全部背負わせて恥ずかしくないわけ?」
「だから俺が魔王になると言ってる」
「やれやれ。魔王は誰でも出来るってわけじゃないんだけどね」
そんな会話の中でルカが手を叩く。それで全員の視線がルカに集まる。
俺達も最初からこの場で全て解決するとは思っていない。モモが素直に応じるなんて考えていない。最初から俺達の落とし所は別にある。
「とりあえずさ。このままだと平行線だし、一度お互いに頭を冷やしたらどうかな?」
狙いは延長だ。今回の落とし所は俺を魔王にするという意見で場を掻き乱すこと。そして場を掻き乱してメイとの会談までにモモを魔王の座に座らせる。それがルイス姉の語った計画だった。
「そうだね。とりあえず――そっちの思惑に乗って保留にしといてあげるね」
「え?」
「どうせ裏でお姉ちゃんが絵を描いてるんでしょ。好きにしなよ。私は素直にそのシナリオで踊ってあげる」
モモが呆気なく手を引く。まるでモモの手のひらで踊らされているようで不気味だ。しかしこの場は従うしかない。そもそも俺達が用意したゴールラインだ。そこに大きな不都合はないはずだ。
「あ、そうだ。お姉ちゃん達に1人だけ紹介しないといけない人がいるんだった」
モモがわざとらしく思い出した仕草を見せる。その言葉に嫌な胸騒ぎを覚える。
「入っておいで。
その言葉で俺達の後ろから現れたのは金髪のエルフだった。灰色の修道服に身を包んだエルフ。その顔を見てルカとルイス姉の表情が変わる。空気が今まで以上に張り詰めたものとなる。
「お、お、お久しぶり……というほど時間は経っていませんかね?」
「リアル!!!」
ルカが咆哮をあげる。それに対してモモが視線で諫める。あのルカを視線で支配したという事実に鳥肌が立つ。それはルカですらモモに恐怖を覚えたということに他ならない。
「今の彼女は魔族の聖女で私の駒だから手出ししないでね。それは宣戦布告とみなすから」
モモが静かに歩く。そして俺達の横を素通りして、リアルの隣に立つ。
俺もリアルのことは聞いている。彼女はテロリストだ。そんなテロリストとモモが手を組んでいる。その事実で脳が混乱してくる。モモの狙いが一切読めない。モモはなにを考えているのだ。
「まぁともかく部下に死者蘇生を使わせて色々と暗躍していたリアルは私の傘下となりました。遺恨はあると思うけど、よろしくね」