悪女は"正解"を咀嚼する   作:ギャン吠えチワワ

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Ep2-八将攻略戦

 

 目を覚ます。眩しい光が眼球を突き刺す。軽い痛みに襲われたが、すぐに慣れていく。

 

 改めて自分の生を実感する。生きていたことに安堵する。まだ私はなにも成し遂げていない。生きてるならば負けじゃない。私はまだ戦える。

 

「ふわふわしてる……」

 

 柔らかいベッドに違和感を覚えた。普段は土の上にマントを広げて寝るのがほとんどだった。この柔らかさが気持ち悪い。昔は当たり前だった柔らかさが今じゃ受け入れられない。

 

「私って弱いな……」

 

 呼吸する度に全身がズキズキと痛む。その痛みに少しだけ眉をしかめる。初めて八将と対峙した。人外と言っても過言じゃないほどに強かった。だけど私は勝った。着実に力がついてきている。でも喜んでもいられない。あの程度に苦戦してるようじゃお兄ちゃんには遠く及ばない。

 私はベッドから抜け、重い体を引き摺りながら一階に降りる。善意で一時的に場所を貸してくれたのだろう。きっと支払いはまだのはずだ。日頃から戦場で死体漁りはしてるのでお金はある。どのくらいお世話になったかわからないけど、少し高いくらいならば払えるはずだ。

 

「お金はもう頂いてるよ」

「え?」

 

 私の目が点となった。この時代で誰かが建て替えるなんてありえない。強盗に遭えば、遭う方が悪い。殺されたら弱いのがいけないという論理がまかり通るような殺伐としてるのが今の時代だ。そんな中で誰かのためにお金を使うような善人がいる現実を受け止められなかった。

 

「あそこの青年さ」

 

 金髪の青年が私に向かって笑顔で手を振ってくる。状況が飲み込めない私はとりあえず愛想笑いで返す。意図が読めなくて少し気持ち悪い。この男は本当に同じ人なのだろうか。

 

「5日も寝てたから起きないんじゃないかと心配したよ」

「建て替えていただき、ありがとうございます。いくらでしたか?」

「お金はいいよ。あそこで君が八将を討たなければ死んでいたのは俺の方だったからね」

「そうですか……ならお言葉に甘えますね」

 

 体は重いが動く。私はそのまま宿屋を後にしようとした。もう5日も休んでしまった。そんな怠惰が私に許されるはずがない。すぐに戦場に戻って経験値を積みたい。大丈夫だ。ちょっと死にかけただけ。頭も回るし手も足も動く。それならば休む理由はない。戦わなければならない。

 

「……死にかけたんだ。もう少しゆっくりすべきだよ」

「慣れてますから」

「慣れてる?」

 

 服を捲り上げて傷を見せる。その傷を見て彼が絶句する。なにか言われたら体を見せる。それが黙らせるのに一番都合が良い。

 

「このくらいで足を止めるわけにはいかない」

「……いつか死ぬぞ」

「この世界は死にかけずに強くなれるほど甘くない」

 

 私にも最近スキルという異能が発現した。身体能力強化というありふれたもの。しかし充分に使いこなせていない。もっと場数を踏んで感覚を慣らさなければならない。こうしてる1秒すら惜しい。私は巨人族の異形児だ。つまり欠陥品。誰よりも頑張らなければならない。休むなんて贅沢は許されない。私が許さない。

 

「なにが君をそこまで駆り立てる?」

 

 彼が私の腕を掴む。かなり強い力だ。もしかしたら私よりも強い人なのかもしれない。もしかしたら戦場でまた会うかもしれない。強い人は生き残る可能性が高いから顔合わせの機会も自然と増えていく。

 

「復讐心」

「そうか」

 

 彼の手が離れる。私は彼に背を向けて宿を後にしようとした。彼が私を呼び止める。その声で足を止める。振り向くと名前も知らない彼が真剣な目で見ている。その視線に少しだけ魅入られる。彼はとても綺麗な瞳をしていた。宝石のように美しい青の瞳。

 

「俺はカミーラ。勇者カミーラ」

「そうですか」

「魔王を倒して誰もが笑える世界にしたい。そのために君がほしい」

「他の人に当たってください。世界平和とか私は興味ありませんので」

 

 そうして私は勇者を自称する青年と別れた。彼と別れてからはいつもの日常に戻る。戦場に行って、死にかける。傷が癒えたらすぐに戦場に戻る。またいつものように死にかける。戦場は相変わらず地獄だ。最近は魔物だけではなく、魔族も戦争に顔を出すようになった。魔物と魔族の違いは知性の有無。それだけのただの化け物だ。しかし知性がある分少しだけ滑稽でやり辛い。

 

「……疲れた」

 

 今日の戦争は一段と過酷だった。戦争が始まってから2時間もすれば軍はほぼ壊滅。そこから残された人だけで死に物狂い戦って、全員殺して生き延びた。生き残りも片手で数えられる程度。それも無傷で五体満足なのは私だけ。

 

 そして私は戦場を後にして拠点にしていた街に戻る。しかし街に人はいなかった。倒壊した建物に地面に転がる死体。見慣れた光景がそこにはあった。

 

「……やっぱり壊れちゃったか」

 

 珍しい話じゃない。この時代では国なんていうのは3年持てば良い方だ。街はそこそこあるが、どの街も明日滅んでもおかしくない。帰ってきたら街はありませんでしたというのはありふれた光景だ。きっとこの街も倒し損ねた魔物が流れ込んできて滅びたのだろう。

 

「次の街。探さなきゃ」

 

 それから月日が過ぎていく。気づけば私は20歳になっていた。装備も当初とはかなり変わった。服装は銀色の籠手に白いドレス。そこにフード付きの赤いケープという少しだけお洒落を意識したものになった。もっとも赤いケープも今じゃ元の赤色なのか返り血の赤なのか分からないが。

 

 ただその頃には私に”赤ずきん”という肩書きがつき、戦場で死にかけることは滅多になくなった。今の私じゃ八将にでも出くわさない限り擦り傷すら負うことはない。その頃には妖精さんは私から興味を無くしたのかいなくなっていた。少し悲しくはあったけど、どこかで会えるだろうと思えたから辛くはなかった。

 

 そして私も次第に戦場には顔を出さなくなった。理由は単純明快。得られるものがなくなったから。雑魚をいくら殺しても強くなるわけではない。別に私は人類のために戦ってるわけでもない。ただお兄ちゃんを殺すためだけに戦ってるのだから。

 

「ルカ」

「またあんた?」

 

 あれから勇者を自称する青年のカミーラとは顔見知り程度の仲にはなった。戦場で何度も顔を合わせていたからだ。彼は私と同じくらい強い。戦場に頻繁に顔を出して生きているということはそういうことなのだ。知り合った人が大体死ぬ今のご時世では私の数少ない友人だ。

 

 ただ最近は少しだけ疑問に思う。なにせカミーラは出会った時から姿が変わらない……というより老いていないのだから。しかし私には関係のないことだ。他人のプライバシーを詮索する趣味なんてない。どうせなんか特殊な種族なのだろう。

 

「明日。八将の一員である糸使いのアリスの討伐に行く」

「メンバーは?」

「大賢者ウォン、聖騎士キッド、魔術師スター、盗賊王ジャン。それと俺」

「私が入っても6名。たしかに大勢で行っても邪魔なだけだし妥当か」

「来るか?」

「うん。付き合ってあげる」

 

 相手が八将ならば多少は得られるものもあるだろう。それに私の知らないところでカミーラに死なれても寝覚めが悪い。だからその討伐戦に私が参加しない理由はなかった。

 

「前衛は俺、戦乙女ルカ、聖騎士キッド。中衛は盗賊王ジャン。後衛は大賢者ウォン、魔術師スターで考えている」

「詳細はみんなが揃ってから聞くよ」

 

 後日。作戦会議が開かれる。最初は期待していたが、そんな期待は完璧に裏切られた。なにせカミーラ以外の全員が弱いとひと目見ただけで分かる。それこそ私ならば10秒も貰えれば余裕で皆殺しにできる。

 この程度で八将を倒すなんて、あまりに見通しが甘い。間違いなく作戦は失敗する。一度八将と戦った私だから言える。これは舐め過ぎだ。

 

「ルカ。なにか不満でもあるのか?」

「べつに」

「あるならはっきり言ってくれ」

「それなら遠慮なく。正直言ってそんな作戦なら無駄。配置と方針だけ決めて、あとは各々が出来ることをすればいいでしょ」

 

 戦うならその方が良い。こいつらはすぐに死ぬ。つまりこいつらが生き延びる前提の陣形や策など機能するわけがない。もしそれを軸としたら間違いなく瓦解する。

 

「あのなぁ……」

「初めて顔合わせしたけど正直言ってカミーラ以外は全員足手纏い。そいつらが生存すること前提に作戦を組むなんてバカでしょ」

「ルカ!」

「作戦なんて勝手にやってよ。私は勝手に動くから」

「……わかった」

 

 後衛や中衛に気を遣って引くべき時に引けない。あまりにやり辛い。彼らが生き残ることで八将に負担を強いられるならば悪くないだろうが、彼らでは八将相手じゃ敵とすら認識されないだろう。

 

 私達はアリスが拠点としている街を目指す。アリスだけは八将でも少し有名人だ。八将の中でも唯一居場所が割れている。だがそれ故に強い。位置がわかるのに誰1人として攻略できない。軍を派遣しても返り討ちにする。それがアリスという存在。恐らく八将でもトップクラス。

 

「あら。こんにちは♡」

 

 街に足を踏み入れると同時にアリスが私達を出迎える。アリスの姿は12歳前後の金髪碧眼の女児。顔は相当整っており、容姿に関心のない私ですら可愛いと思ってしまうほどだ。それが命取りになった。

 

「随分と弱いのねぇ♡」

 

 アリスは一言で言うならば隙がない。紛うことなき強者であり、勝ち筋というものが見えてこない。それこそ前に対峙したショウとかいう八将とは比べ物にならない強い。最初にアリスは手を挙げた。それと同時に1人の首が落ちる。

 

「スタァアアアアアァァァァ!」

 

 瞬きする間もなくスターが殺された。あまりに呆気なく、唐突に目の前で首が落ちた。一気に絶望が伝播して、陣形が崩れていく。アリスが追撃と言わんばかりに私に距離を詰めてくる。本当に息吐く暇すら与えてくれない相手だ。

 

「あら? 見切られちゃった?」

 

 私は接近してきたアリスの頭に容赦無く戦斧を叩きつける。そこに迷いはない。ここで確実に殺す。どんなに可愛らしいような見た目でも性格は下水を煮詰めたような外道。躊躇う理由もない。

 

「夜堕とし!」

 

 渾身の一撃にアリスは眉すら動かさない。さすが八将。そこらのモブとは格が違う。攻撃は当たるが手応えというものがまるでない。当たっているのにダメージになっている感覚がまるでないのだ。

 

「ごめんね。私はそういうの効かないの♡」

「くっ!」

「憎しみの糸」

 

 アリスの攻撃は異名通り糸による攻撃だった。彼女の振るう糸はまるで斬撃。糸に触れるだけで瓦礫が豆腐のように切断されていく。掠れば手足程度は簡単に落ちるだろう。私は瞬時にしゃがんで避ける。あまりに攻撃が速い。気を緩めたら一瞬でお陀仏。動きに無駄というものがない。それこそ戦闘において彼女に匹敵する人物などいないとすら思えるほどに。

 

「カミーラ!」

 

 しゃがむと同時に私は彼の名前を呼ぶ。私がしゃがめばアリスと彼との間に遮蔽物はない。私を飛び越えるように走れば攻撃が届く。

 

「ああ!」

 

 意図を汲んだカミーラが距離を詰めて、アリスに目掛けて剣を振るった。しかしその程度で倒せるならば八将なんて呼ばれ方はしない。アリスはカミーラの攻撃を軽々と糸で受け止めた。

 

「この剣は怖いわ」

「おい! 後衛……」

「あの雑魚なら私が殺しちゃった♡」

 

 アリスが糸を手繰り寄せる。糸の先端にはジャンの生首が付けられている。私達がアリスに気を取られてる間に既に1人殺されていた。やはり足手纏いだった。あの程度じゃ戦力にすらならない。

 

「ああ……あぁ……」

「カミーラ! 泣くのは後!」

「ほら次♡」

 

 キッドの上半身が落ちる。ウォンの首が吹き飛ぶ。あっさりと人が死んでいく。いつもの戦場だ。昨日同じ釜の飯を食べた仲間が死ぬ。そんなの日常茶飯事過ぎて今じゃ涙すら流れない。そんなことに気を向けたら私が死ぬ。今は戦いに集中しろ。

 

 生き残ってるのはカミーラと私だけ。それは運が良いわけでも生かされてるわけでもない。単純に私達にはアリスの攻撃を捌く技量があった。しかし他の人にはそれがなかった。ただそれだけの差だ。別に彼らが弱いわけじゃない。むしろ強い部類だとは思う。きっと幼少期から武術の鍛錬をし、戦場にも何度か足を運んで戦果を上げたのだろう。しかしその程度。そんな努力で八将に勝てるわけがない。

 

 腕が破裂するまで武器を振るい、戦場は日常となり、戦い以外の全てを削ぎ落とすようでなければ目の前の化け物に敵うはずがない。いや、そこまでしても目の前の化け物には届かない。

 

「月蛇!!」

「遅いわよ♡」

 

 攻撃の隙がない。私が戦斧を振り下ろすよりも攻撃の方が速く、受けに回らざるを得ない。ただでさえ不死身。その上に戦闘能力が高い。やばい。勝ち筋がまるで見えてこない……

 こないだの八将とはあまりに格が違う。同じ八将でもここまで違うものなのか。

 

「くそくそくそ!」

 

 カミーラが取り乱して剣を振るう。当然ながらそんな読みやすい攻撃はアリスに通じない。アリスはそれを容易く見切って受け流す。だめだ。このままだとカミーラまで殺される。それはまずい。私がどうにかしないと!

 

「随分と乱雑な剣技ね」

「カミーラ! そのまま抑えてて!」

 

 私はすぐにアリスの背後を取り、カミーラと挟み撃ちにする。無防備の背中。そこを目掛けて戦斧を……

 

「あぶなっ!」

 

 すぐにバックステップで避ける。頭上から糸で作られた弾が凄まじい勢いで降り注ぐ。糸弾は地面にヒビを刻み、足元を崩していく。

 なんて汎用性の高い攻撃手段だ。あまりに手数が多く、処理しきれない。それに今の攻撃はわざと私に隙を見せることで攻撃を誘わせた。スキル頼みではなく戦闘経験も豊富。やはり強い!

 

「釣れないわねぇ♡」

 

 斬撃の糸に弾丸の糸。さらに糸が刺されば手繰り寄せて距離を詰められる。自分が出来ることを熟知し、相手の動きを常に頭の片隅に叩き込んでいる。その上に不死だ。こんなのどう攻略しろというのだ。あまりに理不尽。

 

「どうすれば……」

 

 アリスと距離が詰められないのが現状。それなのにカミーラが落ち着くまでの時間を私が稼がないといけない。そんな焦りから私の動きも雑になる。だめだ。落ち着け。落ち着け。

 

「うおおおおおおおお!」

「ばーか♡」

 

 アリスの正拳が特攻したカミーラの顔面に叩き込まれる。それと同時に黒いハートが舞った。なにかのスキルだろうか。あまりに嫌な予感がする。しかも今のたった一撃で彼がフラフラとした足取り。意識が半分飛びかけている。追撃されたら殺される。

 

「そのまま死ーね♡」

「ちゃんとして!」

 

 私はすぐさまカミーラを抱えてアリスと距離を取る。糸ばかりに気を取られるが、格闘術も怖い。殴り一発で竜を落とす威力は確実にある。むしろ糸よりも殴りの方が単純な威力は上。カミーラだから耐えられたけど、普通の人間が受ければ肉が爆散している。

 

「お、俺は……」

「泣き言は後にして。私とカミーラだけで倒すよ」

「へぇーまだ勝てる気でいるんだ♡」

 

 いくら攻撃しても手応えがない。もしかしたらこいつは霊的ななにかなのかもしれない。そうだとしたら私の攻撃は通用しない。攻撃が通るのはカミーラの持つ聖剣カリバーンのみ。あれは斬れないものならば確実に斬る剣。アリスは私がいくら叩いても壊れなかった。ならば斬れないものだ。カリバーンは通用する。

 

「あ、ああ……そうだな」

「私が陽動に回る」

「……わかった」

「カミーラ。信じてる」

 

 彼にはその言葉が一番効く。戦えやしっかりしろなんていう言葉よりも、動かなければ私が死ぬと思わせる言葉の方が彼は動く。

 

銀砂斬(シルバーサンド・スラッシュ)!」

「お馬鹿さん♡」

 

 振り下ろした一撃は呆気なく受け止められる。それこそ私の想像通りに。

 

「そっちこそ」

「きゃっ!」

 

 そのまま力任せにアリスを吹き飛ばす。攻撃は効かない。しかし衝撃は伝わる。ダメージにはならずとも怯ませることくらいはできる。ならば私に出来るのはひたすら攻撃を叩き込み、動く隙を与えないこと。もう後先のことは考えない。全てを出し尽くす!

 

「あなた……強いわね!」

「そりゃどうも!」

 

 そのまま連撃を叩き込む。アリスの頭を叩いて思考を鈍らせる。体力を考えずに常に全力で動けば相手の攻撃は避けられ、こちらの攻撃は当てられる。充分に勝てる相手だ。

 

「カミーラ! いま!」

「しまっ……」

「星返し!」

 

 カミーラの攻撃がアリスの腕を跳ねた。その瞬間にアリスは後ろに跳ねて遠くに逃げていく。

 

「逃げるな!」

「逃げるわよ。だって死にたくないもの♡」

「くそっ!」

「どんなに雑魚でも私を殺す手段がある相手とはやりあいたくないの。さようなら♡」

「待て!」

 

 私よりも動きが早い。彼女を追う手段がない。不利になったら退く。その判断があまりに早すぎる。

 

「追う?」

「……いい。あれがただ逃げただけとは思えない」

「そうだね」

 

 逃げた先に別の八将。最悪は八将より上の四天王がいる可能性もある。そしたら私たちの方が殺される。ここで追うのは自殺行為でしかない。それに私も体力の限界だ。もう足も上がらない。

 

「ルカ」

「なに?」

 

 幸いにも目立った怪我はない。今の私なら1人でも全力を常に維持出来るならば八将は辛うじてどうにかなる。アリスのような不死でもない限りは。そう体感する戦いだった。

 

「俺は勇者なんだ……なのに皆を守れなかった」

「私は言ったからね。全員足手纏いだって」

「ルカはこうなることが分かってたのか?」

「明らかに弱かったもん」

「そうか……」

 

 止めてもよかった。だけど面倒臭かった。彼らと揉めることも役に立つというカミーラを説得するのも。だから止めなかった。

 

 彼らは私が殺したようなものだ。もっともそのことに罪悪感など覚えないが。

 

「……ルカ。頼む」

「なにを?」

「俺と一緒に魔王を倒してくれ」

「前に嫌だって言ったよね?」

「わかってる……だけど魔王を倒すにはお前の力が必要なんだ」

 

 彼が一度断った私を誘った理由もなんとなくわかる。彼の集めた仲間は八将に手も足も出ずに殺された。彼と匹敵するくらい強くないと役にすら立たない。だから彼と同じくらい戦える私を頼ったのだろう。

 

 お兄ちゃんも憎いが、当然ながら元凶である魔王も憎い。私の復讐対象だ。しかし魔王は眼中になかった。どう足掻いても勝てないと分かっていたから。だから当時カミーラに誘われた時は相手にしなかった。だけど今は違う。

 少しでも戦力が欲しい。私に未来はいらない。お兄ちゃんを殺した後の負け戦という名の自殺くらいなら付き合ってもいい。

 

「……私の復讐に手を貸してくれるなら協力してあげる」

「相手は?」

「四天王ロキ。私のお兄ちゃん」

 

 昔は八将だったお兄ちゃん。しかし今は四天王まで上り詰めている。当時よりも何倍も強くなっているだろう。それこそ今の私だけで勝てるか怪しいほどに。

 カミーラならば邪魔にはならない。傍にいて損はないだろう。だから私は彼を使うことにした。彼が私を使うように。

 

「わかった」

「それならこれからよろしくね。カミーラ」

 

 そうして私に仲間が出来た。

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