悪女は"正解"を咀嚼する   作:ギャン吠えチワワ

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70話 桜ヶ崎カオリ-3

 

「本日もご覧いただきありがとうございます。ただいまより、■■■報道特別番組『新世界の記録』をお送りします」

 

 欠伸をしながらスマホを弄る。テレビからはくだらないニュース番組が垂れ流しにされている。昔は見れることも感動していたものも今では興味すら湧かない。それはあまりに日常になりすぎた。

 

「まず各国の状況についてお伝えします。国連事務局は本日、全機能の停止を正式に宣言しました。これによって国連安全保障理事会を含む全ての国際機関が事実上の解体となります」

 

 時の流れは早いもので美柑姉に引き取られて既に半年が経とうとしていた。あれから俺は学校にも行かずにモモと遊んでいた。それこそ1日中ゲームをしたり、映画を見たりした。たまには美柑姉に誘われてプラモデルを組んだりもした。文字通り堕落した生活だった。

 

「なんか海外の治安やばいらしいね。一度は海外旅行してみたかったから残念」

「ふーん。核を落とされた日本が発展し、落とした海外が落ちぶれる。なんていうか皮肉……だな」

「お姉ちゃんはどう思う?」

「興味あらへん」

 

 その一言でテレビが切り替わり、美柑姉の手でニュースからロボットアニメへと変わる。どうやら美柑姉にとっては世界情勢よりもアニメの方が大事らしい。

 

「ねぇ。朝からアニメは重いよ」

「別にええやろ」

 

 なにも不自由のない生活。なににも縛られることのない生活。それは俺がもっともほしかったものだ。そのはずなのに俺はこの生活に少しだけ罪悪感を覚えつつあった。

 

「なぁモモ。俺はそろそろ学校に行こうと思うんだけど……」

「どうして? いまさら行ってなにを学ぶの?」

「そりゃ社会性とか……」

「もう一生遊んで暮らせるだけの額があるんだよ。社会に出る必要とかあるのかな?」

 

 モモから返されたのは正論だった。なにもしなくても生きていける。そんな中で必死になる意味がどこにあるのか。今の言葉で俺自身すらそう思ってしまう。それなのに罪悪感が消えない。正しいことだと理屈では理解してるのに、なにもしない自分を肯定出来ない。

 

「学校に行くかどうかはさておき誰かに依存せえへんと生きていけへんのはよろしくないと思うで」

「そうだよ。それだよ!」

 

 美柑姉が俺のモヤモヤを言語化してくれる。結局のところ俺は2人に生かされてるに過ぎない。ただ寄生してるだけの虫。それが許せないのだ。

 

「だけど今の情勢で学校で学んだものがどこまで通用するんだろうね。世界がもうぐちゃぐちゃだし、今までの常識や価値観が通用しなくなっちゃってる」

「せやねぇ」

 

 あれから日本と中東以外が落ちぶれた。この2カ国だけは核融合炉という新技術を手に入れ、大きく文明を発展させた。しかしそれとは対照的に他の国が落ちぶれた。

 

 ■■国が核を落として以降、世界は疑心暗鬼となった。多くの国が責任をなすりつけあった。ハッキングされたとか他国のスパイの仕業だと聞くに耐えない言い訳のオンパレード。そんな中でクレカ情報や口座情報の一斉流出や送電インフラの機能停止などデジタル犯罪が多発した。その悪意のある攻撃に耐えられなかったのだ。

 

「いつ日本も諸外国と同じようになってもおかしくないしね」

「せやねぇ……まぁ学校は行かへんとしても少しは生きていく力を身につけさせた方がええかもしれへんね」

「お兄ちゃんになにさせるつもり?」

「少しうちの仕事の手伝いをしてもらおう思っただけや。まぁ教育の側面が強いもんやし、あんま成果は気にせんでええよ」

「えー! お姉ちゃんの仕事の手伝いとか私もやってみたい!!」

「そんなら2人でやってな。ただモモはあんまり口出ししてカオリの出る幕を奪わへんようにしとき」

「もちろんわかってるよ」

 

 それから俺達は定期的に美柑姉の仕事をいくつか肩代わりするようになった。

 美柑姉の仕事は多岐にわたっており、どれも非常に重いものだった。それこそ数百億円規模の融資の計画を組んだり、美柑姉の代わりに政治家との会食への出席。さらに美柑姉が組んだシステムのメンテナンスや彼女の抱える会社への発注作業……そして彼女の資産の帳簿付け。本当に色々なことを詰め込まれた。

 当然ながら最初は緊張で何度も吐きそうになったし、大きなミスもしそうになった。しかしその度にモモが完璧にフォローして事なきを得ていく。

 

 ここでも才能の差が突きつけられる。必死に食らいついていく俺と涼しい顔して簡単にこなしていくモモ。能力の差が実務という形でハッキリと突きつけられる。

 

 段々と俺の存在意義というものが曖昧になっていく。俺ははたしてここにいるだけの資格があるのだろうか。

 

『ねぇお兄ちゃん。どうして馬鹿みたいに頑張るの?』

「え?」

『私達に勝てるわけないのに頑張るの? 大人しく寄生しとけばいいのに』

 

 モモの発した言葉が俺の胸に強く突き刺さった。俺はいったいなにをしているのだろうか。どうしてこんな意味のないことをしてるのだろうか。それを自問自答していく。

 

『私だったら――お兄ちゃんくらいの才能なら首括ってるよ』

 

 心臓がバクバクと音を立てる。息が出来ない。呼吸がままならなくなる。ここでは俺の役割はない。俺は何者にもならない。

 

「お兄ちゃん!? 大丈夫!!」

 

 ()()のモモが慌てて駆け寄ってくる。顔をあげるとモモが2人いた。俺に気を遣うモモと俺を見下すように立つモモ。最近はよくモモの幻覚を見る。もちろん見下すように立ち、鋭い言葉を浴びせるのが幻覚の方だ。

 

 幻覚のモモは俺を責め立てるような言葉を吐く。俺の存在を否定する言葉を吐く。俺の無意識がモモの形を借りて、俺を否定する。

 

「大丈夫だからね。落ち着いて息を吸ってね」

「わ、悪い……」

「とりあえず部屋で横になって休んで。なにか必要なものとかある?」

 

 モモがあんな言葉を吐くはずがない。だけどモモにいつか見限られるのではないかという俺の中にある恐怖がモモの形を借り、俺を追い詰めていく。

 

「まずお兄ちゃんは色々と詰め込みすぎなんだよ。こんなに焦ることもないからゆっくりしよ。こんな仕事なんてやらなくても大きな問題にならないからさ」

 

 本物のモモは酷く憔悴(しょうすい)した顔をしていた。俺が見る幻覚のモモと違い、そこに余裕なんていうものはなかった。その顔を見る度にもっとしっかりしなければならないという思いに駆られる。

 俺はモモの兄なのだ。兄として手本になる振る舞いをしなければならない。

 

「――大丈夫。このくらいどうにでもなる」

「ねぇお兄ちゃん。なにがしたいの?」

「なにがって……」

「自立したら満足なの? 自立してなにがしたいわけ?」

「それは……」

 

 なんの言葉も返せなかった。なにかしたいわけでもない。ただ今のままではいけないって焦燥に近い感情が俺の中で蠢いている。このままじゃ正しくない。正しくないお前は悪だ。正しくあれと自分の中の自分が叫ぶ。

 

「私達から見捨てられるのが怖いの?」

「――!」

「私達ってそんなに信用できないかな?」

 

 モモが図星を突いたように一言を言う。俺の中に抱えてるものを理解した上で的確に抉る一言を言ってくる。

 

「このままでいいんだよ。何者かになる必要もないし、なにかを頑張ってないからいけないなんてこともない。やりたいようにやればいいんだよ」

「そんなわけがない!」

「あるよ。使命や役割を押し付けられるのは間違ってる。それは正しくない。私が否定する。自分自身であろうと自分を縛っていい理由なんてない」

 

 俺はその言葉を素直に受け止められなかった。あの母親との生活が今も俺の中で呪いのように纏わりついている。あの生活が今の俺を肯定させない。俺は過去から逃れられない。

 

「もっと気楽にいこうよ。なにをしても私はお兄ちゃんを嫌いにならないし、困ったことがあれば私がどうにかするからさ」

「……ああ」

「それにさ。こんなに思い悩むなんてお姉ちゃんに失礼だよ。お姉ちゃんだってお兄ちゃんを追い詰めたくて、仕事を与えてるわけじゃないんだよ。今のお兄ちゃんを見たらお姉ちゃんの方が自責で思い悩んじゃうよ」

「そうだな。悪い」

 

 モモの言うことは全て正論だ。モモは俺を縛り付けた魔物を殺し、俺を正しい道へと戻してくれる。まさしく英雄そのものだ。それなのに俺は俺自身の問題でモモを認められない。

 

 強い熱が宿る。理解出来ない熱だ。言い表しようのない熱が。

 

 きっと俺は今の現状で――モモを英雄として崇めるモブで終わることに満足しない。もっと奥深くに別の感情が渦巻いている。俺が自覚していない別のなにかが。

 

「ねぇお兄ちゃん。せっかくだし気晴らしにガブリエルで遊ぼうよ」

 

 ガブリエル。それは美柑姉が運用してるシステムの1つだ。そのガブリエルは簡単に言えばどんな質問にもチャット形式で答えてくる辞書だ。”隠し事が出来ない世界にする”という理念で設計され、ありとあらゆる情報にアクセスを可能にする。

 それこそアイドルの個人間のメールから防犯カメラの映像、各国首脳の現在位置から挙句の果てに個人のクレジットカード情報まで全ての閲覧が可能になる。

 なんでも答えてしまうのがガブリエル。モモはそんなガブリエルで遊ぼうって言っているのだ。

 

「……結局ガブリエルってどんな仕組みで動いてるんだ?」

「Lっていう超高性能AIを内蔵させてるんだよ」

「……ってことは一時期流行った生成AIのチャットサービスから検閲をなくしたようなものか?」

「そこが少し違うんだよねぇ。お兄ちゃんって生成AIの仕組みってわかる?

「ネットのデータを学習して、一番求めてそうな回答を予測で言うで合ってるか?」

「まぁ端的に言えばそうだね。だけどその方法だと対応力が落ちるのは理解できる?」

「ああ」

「Lはその課題を解決しようと別方向からアプローチして、開発されたんだよ。だから根本から設計が違う。それ故にチャットサービスとは完全に別物」

 

 俺達の仕事の1つにLのメンテナンスが含まれていた。もっともメンテナンスと言ってもログを漁って気になるところがあれば報告するだけの簡単なものだった。しかし俺は深く考えたことがなかった。そのLがなんなのかを。

 

「人間の脳って電気信号なのは知ってるよね?」

「もちろん」

「Lはお姉ちゃんの脳を全て解読して、データ化した上で複製した人工知能だよ。まぁ美柑姉の再現体みたいな感じ?」

「そんなこと……可能なのか?」

「お姉ちゃんは出鱈目だし出来るでしょ。生物学や脳科学にも精通してるらしいし」

「本当になんでもありだな」

「うん。私もそう思う」

 

 つまるところLは美柑姉そのものなのだ。だからなんでも答えられる。美柑姉ほどの天才ならばハッキング程度はお茶の子さいさいだ。美柑姉と同じ知能を持つからこそリアルタイムで全ての情報を抜き取れる。そういうことなのだ。

 

「そのLを質問に答えるという機能に特化させ、契約ユーザーに提供されたのがガブリエル。まぁお姉ちゃんの知識の貸し出しみたいなものだね」

「そのガブリエルでどう遊ぶんだ?」

「……ねぇお兄ちゃん。少しだけ気になってることがあるんだ」

「なにが気になる?」

「■■国はどうして日本に核を落としたのかな?」

 

 そんな好奇心が俺達を突き動かした。俺達は好奇心からPCルームへと足を踏み入れる。ガブリエルへのアクセスが許可された部屋。俺達だけに美柑姉が公開した部屋だ。

 俺達は今までガブリエルをあまり触ったことがなかった。いたずらに触れるのが怖かった。それほどまでの力のある――兵器だったから。

 

 その兵器を俺達は私的に……好奇心で使おうとしている。抵抗がないわけではない。ただ抵抗があるからこそ手を出したくなる。いけないと分かっているからこそ触れたくなる。まるで肝試しでもするかのように。

 

「どんな真相が返ってくるんだろうね」

「知らないほうが良いこともあると思うけどな」

「でも気になるじゃん。良い機会だし使ってみようよ」

 

 そうして俺達はパンドラの箱を開けた。触れてはいけないものに触れてしまった。世界を根本からひっくり返すことを――知ってしまった。

 

「ねぇガブリエル。■■国はどうして日本にミサイルを落としたの?」

『■■国はミサイルを落としていません。ハッキングによるものです』

「それは表向きの理由じゃないの?」

『いいえ事実です。マスターである桜ヶ崎美柑様の手によってシステムがハッキングされ、日本に放たれました』

 

 そんな時に扉が開いた。恐る恐る後ろを振り返る。そこには美柑姉がいた。美柑姉はいつものように優しく俺に言葉をかける。

 

「2人とも。ガブリエルになに聞いとるん?」

 

 背筋が凍る。生まれて初めて死を覚悟した。俺達は美柑姉の抱える秘密を知ってしまったのだ。生きて帰れるはずがない。美柑姉が俺達に向かって歩く。そして彼女の目にガブリエルのログが入る。

 正直言って実母の虐待もモモの親殺しも美柑姉に比べたら可愛いもんだ。美柑姉だけはやってることのスケールが違う。東京に核を落とした。個人で殺した数だけで言うなら世界一になってもおかしくないほどの大量虐殺。

 

「本当に美柑姉が……核……落としたのかよ?」

「ん……ああ。そのことについて聞いてたんか」

 

 声を震わせながら美柑姉に問いかけた。美柑姉の表情が少しだけ暗くなる。まるで思い出したくないことに触れられたかのような表情だ。だけど当時の俺はそのことに気付けない。

 

「せや。うちが落とした」

「なんで!」

「なんでって世界平和のためや。核だけが世界を平和にするんよ」

「……本気でそう思ってるのか?」

「腐った政治に無能な政治家と変わらない制度。それらが全て日本を蝕んで悪くする。そんなら核で全部吹き飛ばして、まっさらの状態から新しく作った方が早いやろ」

 

 なにを言ってるか理解出来ない。理屈は分かるが感情面で理解を拒む。しかし隣にいるモモは違った。まるで全て腑に落ちたように納得の表情を見せていた。モモは本質的に美柑姉と同じなのだ。だからこそ美柑姉のしたことが理解できてしまう。受け入れられてしまう。

 

「……たしかに合理だけで考えるなら正解だね。倫理を無視していいなら私でもそうする」

「モモ!?」

「あと海外で相次いだデジタル犯罪も――お姉ちゃんの仕業かな?」

「気になるならガブリエルに聞いてみたらええと思うよ。特に検閲はかけとらんし」「ふーん。隠したいってわけでもないんだ」

「こんな隠れてコソコソなんて小物のすることやろ。どないしてうちがそないことせえへんといけへんの?」

「……」

「それにうちがしたのは事実。そこから目を背けるなんて情けなさすぎるやろ」

 

 そうだ。本当に隠したいならガブリエルに検閲でも実装しておけばいい。美柑姉ならば、それが出来るはずだ。アクセスが出来た時点で知られてもいいことでしかなかった。これは美柑姉にとって知られたくないことでもなんでもないのだ。核を落としたというのは罪でも栄誉でもない。ただの事実でしかないのだ。

 

「実際問題として日本は豊かになったやろ? 他国と違ってきちんと学校も政府も機能しとるし、国に蔓延してた停滞感も完全に消えた。なにが不満なん?」

「ねぇお姉ちゃん。それが本当に理由?」

「……なにが言いたいん?」

「言ってることは理に適ってるし、正しいと思うよ。でも違和感があるんだよ」

「違和感?」

「なんていうか自分から悪を被ろうとしてる感じ。それが本当の理由じゃないよね」

 

 俺はモモの言ってる意味が理解できなかった。この大量虐殺者を前にしてモモだけは別のなにかを見ているようだった。

 

「まぁ隠したいなら暴こうとしないよ。そういうことにしといてあげるね」

「モモ。どこに行くん?」

「さすがに情報が重すぎるから1人で整理したいんだよ。夕飯には戻るから気にしないで」

 

 モモはそれだけいうと堂々と部屋を後にした。美柑姉もそれを黙って見逃した。俺は美柑姉に震える声で問いかける。美柑姉のしたことは到底許されることじゃない。紛うことなき悪だ。

 

「……遺族の前でも同じことが言えるのかよ」

 

 俺は美柑姉を信頼していた。だから本当にショックを受けた。まるで裏切られた気分だった。そしてなによりも本当に美柑姉が犯人だと受け入れたくなかった。だけど美柑姉は言い訳すらせずに、自分を正当化していく。

 

「そんなら逆に聞くけどあのままで未来はあったん? 問題の先延ばししか出来へん政治家に任せてた日本に未来があったとでも言うん? あの政治家に核融合炉を与えたとして適切に運用できたと思うん?」

「そうだとしても暴力で変わる社会はおかしい!!」

「なんもおかしくないやろ。暴力を悪とするのは権力者にとって都合が悪いからそうしただけやろ。カオリも随分と都合の良い存在として矯正されとるもんやねぇ」

 

 俺の吐く言葉はあまりに無力だった。俺の言葉はただの綺麗事でしかなかった。ただの綺麗事は美柑姉を断罪するには不十分だった。そんな綺麗事が通用するような存在ではない。

 

 もしもモモだったら別の切り口で否定できたのだろうか。ここにいるのが俺ではなく賢い誰かならば美柑姉の罪を糾弾できたのだろうか。無能な俺だからこそ美柑姉を詰められない。俺の経験も思想も全てが美柑姉に届かない。空っぽの俺では美柑姉には歯が立たない。

 

「それでも……罪のない人を巻き込んだ。それは間違ってる……はずだ。」

「せやね。そんで?」

 

 言葉に詰まる。教科書をなぞったような一般論が通用するような相手ではない。自分の言葉で――自分の意思で美柑姉を否定しなければならない。だけど俺にはなにもない。

 

「うちな。基本的にこの世界は大嫌いやで」

「だからって……」

「話は終わりや」

 

 美柑姉の行為は……母の虐待やモモの親殺しよりも俺の心に深く爪痕を残す。そして美柑姉は俺に危害を加えることなく部屋を後にした。ただ部屋に俺だけが取り残された。俺もしばらく立ち尽くした後に部屋に戻る。

 

 なにが正解でなにが間違いか分からなくなる。頭がぐちゃぐちゃになっていく。自分の立ち位置すら見失いそうになる。それなのに俺はなにもすることができない。自分がどうなりたいのかすらもわからない。

 

 それからはなんの変哲もない日々に戻った。誰も美柑姉の核落としには触れないまま。ただいつも通りの日常が進んでいく。まるでなにもなかったかのように。

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