【悲報】ワイ、化け物になってしまった模様 作:rat cat
日間ランキング2位に入ってて驚いています。
しかもオリ日間1位!?
-追記- 日間1位になってしまった...マジで嬉しい!
.......ちなみになんですけど今怪異のアイデアを活動報告で募集してます!
気軽にコメントしに来てください!
線路の奥から金属がゆっくり擦れるような音が近づいてくる。
「来るぞ」
先程の戦闘の緊張がまだ体に残っているみたいで指に力がうまく入らない。
私はもう一度刀を強く握り直した。
音が近づくにつれて線路の闇がゆっくりと揺れ、暗闇の奥からだんだんと黒い塊が見えてくる。
「電車?」
しかし数秒後にその認識を改めさせられることになった。
なぜならライトからは光ではなく影が飛び出していて、車体は子供が遊んだおもちゃのように歪んでいたからだ。
そんな列車がゆっくりとホームへ滑り込んできた。
「窓に何かいる...?」
「あれは...」
人影だ。それも一つや二つではない。
黒い輪郭が窓の内側に張り付くように蠢いている
まるで満員電車に詰め込まれた人間みたいだ。
「......被害者か」
彼が小さく呟く。
さっきの影たちと同じだ。
被害者達は死ぬことすら許されず縛り付けられている。
だから必ず解放して...楽にしなければならない。
「そろそろ止まるわ...構えて」
「あぁ」
電車は金属音を立てて私たちの前にゆっくりと停止する。
中の影達は今すぐ出たいのか扉付近に集まっている...しかし、ドアは開かない。
「...?何かから逃げ出したいように見えない?」
「言われてみれば...そうだな」
その時、錆びた蝶番のような音が響かせながら先頭車両のドアが開いた。
暗闇の中から何か小さな影が現れる。
「親玉にしては随分と小さいな」
「あれは...」
私は目を見開いた。
何故ならその小さな影の正体は...赤ん坊だったからだ。
「...悪趣味な野郎だ...」
どうして赤ちゃんが正体なのだろうか
まだ歩けないはずの小さな体の肌は黒く、影のように揺れている。
さらに背中からは黒い糸のようなものが何本も伸びていて、その先は影や電車の床にも繋がっていた。
糸は車体へ広がっていき、車両全体へ絡みついている。
それが示している意味は.....
「融合...してしまったのね...」
「あぁ..そいつはもう人間じゃねぇ...ただの怪......」
赤ちゃんが急にこちらを向き、わたしは目があってしまった。
「まずいッ」
その瞬間。
『あ゛次.....あ゛あ゛あ゛は終点...あ゛あ゛あ゛トママラらららあ゛』
ホームに満ちていた闇が、急に重くなった。
胸の奥を、誰かの指で掴まれたみたいに息が詰まる。
刀を構えたまま、私は一歩よろめいた。
「....ッ!」
視界が揺れる。
そして、急にあたり一面が暗くなった。
突然鼻の奥に古い機械油のような金属の匂いが入ってきた。
(ここはどこ?さっきまでホームにいたはずだけど...)
叫んで位置を知らせようにもさっきから息が苦しい...まるで肺がまだうまく動かないみたいに、空気がうまく入ってこない。
それに何処かに閉じ込められているようで指一本も動すことが出来ない。
(寒い)
それが最初の感覚だった。
体から冷たいロッカーの壁が体温を奪っていくのを感じる。
何が起こったのかを確認しようにも、目を開けているのか閉じているのかさえも分からない。
声を出して彼に助けてもらおうとするが...
「だぁ...れ....か..」
喉が震えてうまく声が出ない。確かに叫んでいるはずなのに...
「ぁ..」
何度やっても声がうまく出ない。
まるで肺が弱ったように息が続かない。
何度も何度も何度も何度も叫んでいるうちに声が枯れてしまった。
もう閉じ込められてからどれくらい時間が経ったのか分からない。
半ばあきらめかけていたそのとき、遠くから音がした。
鉄の塊が動くような低い振動。
電車だ。
でもここは人が少ない駅で
ロッカーの扉は閉じている。
光は入らないし、誰にも気づかれないだろう。
あまりの無力感に息が小さくなったその時。
ヒタヒタと何かが近づいてくる音が聞こえてきた。
それはまだ形を持たない、駅で生まれたばかりの怪異だ。
C級にもなれないほど弱いし不完全なただの漂うだけの存在。
もうすぐ時間が経てば自然消滅しかねないほどちっぽけな存在は、同じく
ロッカーの中で消えかけている小さな命を見つけてしまった。
怪異がロッカーへ近づいた来たのを感じる。
目の前に止まったそれは金属の隙間からギシギシと音を立てながら黒いものを染み込ませた。
そしてロッカーの扉をこじ開けた怪異は赤ちゃんへ触れ、
その生命力を己の力に変ようと吸収を始めた。
だが...予想も出来ないことに...怪異の方が飲まれ始めた。
この世に生まれたばかりの怪異と、この世で最も純粋な怒りを持った存在なら後者の方が強かったのだろう。
『...次ハ.......ギィヤァァァァァッ!!……終点.........ンギィィィアァァ!』
壊れたアナウンスと鳴き声が混じったような不協和音が駅へ広がった。
それは...0番線の怪異が生まれた瞬間だった。
「……ッ!!」
あまりのストレスに思わず膝をつく。
「....今の....」
今のは....記憶の追体験だろうか。途中から私ではなく赤ちゃんに移り変わっていたが...
もし今のが本当なら...
「...駅の......ロッカーに......」
「ロッカー事件は2年前くらいに新聞で小さくニュースになっていたが...まさか0番線の正体だとはな...」
「だが情は掛けるなよ」
赤ん坊がまた泣いたその瞬間、電車のドアが一斉に開いた。
押し出されたように黒い人影がホームへとなだれ込み、私たちを囲む。
「来た!」
影が一斉に動く。
私は刀を振うが、床に散りすぐに形を取り戻す。しかしその速度はさっきよりかなり遅い。
だが、さっきまでのように壊せる光源もないので意味がない。
「クソ!」
彼の向いた方を確認すると
先頭車両以外は切り離し、本体が乗った車両だけが動き始めていた。
「逃げられるぞ!」
彼が投げ飛ばした影が弾ける。
「本体はあれだ!」
彼が先頭車両を指す。
「止めるぞ!」
彼は線路へ飛び降りると影が一斉に彼へ向かう。
私はその前へ出る。
「行って!」
刀を振い、彼に向かっていく影を斬り時間を稼ぐ。
背後から影が迫るが...私は刀を掲げた。
刀からハリネズミのように針が伸び、全ての影を拘束した。
仕組みは単純で霊力を刃にして、その場で動いている物を全て貫く。
さっきまでは彼がいたためフレンドリーファイアする可能性があったため使えなかった。
斬っても斬っても再生してしまうなら拘束して時間を稼いだ方が良い。
「後は...任せたわ」
◆◆◆◆
ホームに広がっていた黒い霧がゆっくりと薄れていく。
レールの間に溜まっていた影がまるで油が水に浮くみたいに表面へ滲み出た。
「........逃げられると思うなよ!」
低く呟き俺は踏み込んだ。
彼女が影を足止めしている内に確実に仕留めなければならない...
さっきは彼女の前だからカッコつけていたが影を奪われた部位は上手く力が入らないし痛い...
だが、それがどうした!
さっきから彼女に庇われてばかりなんだ。
ここで仕留めれないならもう死んでしまった方がマシだ!!
砕けた蛍光灯を踏み砕きながらホームを蹴った。
カン、カン、カン、と乾いた足音がトンネルを反響する。
戦局が不利だと察した赤ん坊の怪異が煙みたいに崩れながらゆっくりと加速し始めた。
時速は推定30km
「......逃すかよ!」
列車はもうトンネルの奥へ入ってしまった。
もし地下鉄の本線へ出られればその地点で終わっちまう!
俺は線路へ飛び降り、鉄のレールが足の裏に硬い振動を返す。
足を動かす度に線路の間に溜まった水たまりが靴に跳ねた。
列車とは200m離れている。
時速も100kmを超えたか
追いかけるために足に霊力を注ぎ込む。側から見たら瞬間移動と勘違いしてしまうかもな。
列車との残り距離はどんどん縮まる。
列車もこのままではやばいということを察したのか、向こうも全ての力を速度に変換し始めた。
また距離が離れ始めた...
「止まれ!」
喉に霊力を乗せて、そう叫んだ。
奴は逃げることに必死で体を霊力で守っていなかった。言霊対策をしていないとはとんだ間抜け野郎だ。
その声を聞いた影が一瞬だけ止まり、すぐ走り出す。
でもそれだけあれば十分だ!
俺の体は列車の上に着地した。
俺に気づいた赤ん坊が影を伸ばしてきた。
それが腕にまとわりつくと、その部位は冷たくなっていく。
こいつまた俺の影を吸収し始めやがったッ!!
だが...
「無駄だッ!!」
俺はそのまま奴の体を掴むことに成功した。
『ギャアァァァァあゝああ』
赤ん坊の声が響く。
頭の中で小さな顔が浮かぶ。
「......」
俺はそれを黙って見た。
トンネルに泣き声が反響する。
奴は必死に逃げようともがく。
が...もう遅い。
俺は左手を差し出して
黒い霧を一点へ引き寄せ、影の塊を小さく丸めた。
黒い影の中から手のひらに乗るくらいの小さな身体が出現した。
「ようやく鬱陶しい影が剥がれたな」
赤ん坊の小さな手が空を掴む。
その身体はまだ生きているように見えるが...
こいつはもう人間じゃない。
優しい彼女なら躊躇しただろうが...俺は殺す。
「悪いな...終わりだ」
俺は赤ん坊を持ち上げ
「来世は...幸せに生まれてこいよ」
拳を振り抜いた。
0番線の怪異は赤ちゃんと怪異が融合した存在です。
生まれたての怪異だから良かったけどもし1年後ならやばかった。
赤ちゃんの人生を振り返ると
ロッカーに閉じ込められる → 怪異と融合 → こっそり人を殺しながら成長 → わざと噂を広げるために犠牲者を外に出す → Tちゃん捜査にくる → かつて自分がされたように閉じ込め → イッチに気づく → やばい → あかん閉じ込めたから戦うしかないィ! → 出てけ!(癇癪) → 詰み
可哀想...
ちなみに更新が開いた理由なんですけど...Tちゃんの口調と心情描写、地の文が死ぬほどむずかったからなんすよね...
丁寧系キャラに安易に挑戦するんじゃ無かった....
誰か良かったら書き方のコツを教えてください。