魔法科高校の飛び級生   作:湯っ娘

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第八話

 定期試験が無事に終わり、学内ネットで成績優秀者が発表された。

 あやめは見事総合成績で次席となり、吉祥寺が追随するように三席に収まった。━━ 将輝は相変わらずの主席である。

 クラスメートから賛辞の言葉を贈られていると、情報端末に通知がくる。あやめは届いた通達に顔を強張らせた。通達の内容は九校戦のメンバーについてだ。当然と思うべきか、次席のあやめはメンバーとして採用されたらしい。

 放課後に控える九校戦の会議に若干の鬱屈を覚えながらあやめは人知れず深呼吸をした。今から憂鬱になっていても仕方ない、気持ちを切り替えようとあやめは努めて以後の授業に集中した。

 放課後になると同じく通達が来たであろう生徒たちが会議室に集合する。席は決められていないのか、三人ずつに用意された席にそれぞれが好き好きに座り会議が始まるのを待っている。

 一体誰と座ればいいのかとあやめはその場に立ち尽くした。基本的にクラスで話す相手が愛梨たちや吉祥寺のみなため、悲しいことに友達と言える友達があやめにはいなかった。

 あやめがこんなことならもう少し他のクラスメートとも仲良くなるべきだったかと内心で猛省していると吉祥寺にちょいちょいと手招きされる。吉祥寺と将輝はいつも通り二人で座るようで、そこに加わるのは女子生徒の視線が気にならないでもないが、背に腹は代えられないというものだろう。ありがたくあやめは座らせてもらった。

 開始の時刻が近づくと、生徒会の面々と部活連会頭、風紀委員長がゾロゾロとやってきて席についた。時間ギリギリにやってきたのは他の生徒に気を遣わせないためだろう。

 生徒会長の羽田は開始時刻が来たのを確認して、号令をかけた。

「それでは九校戦準備会議を始める。早速だが、九校戦の担当種目を連絡させてもらう。」

 羽田がつらつらと種目ごとに選手を発表していく。将輝は新人戦アイス・ピラーズ・ブレイクと新人戦モノリス・コード。吉祥寺は新人戦スピード・シューティングと新人戦モノリス・コード。愛梨は本戦ミラージ・バットと新人戦クラウド・ボール。栞は新人戦スピード・シューティングと新人戦アイス・ピラーズ・ブレイク。沓子は新人戦バトル・ボード。あやめは新人戦アイス・ピラーズ・ブレイクに出ることとなった。

 どうやら種目の掛け持ちはしなくて良いらしい。あやめはほっとした心地で息をついた。

 練習についての通達がなされると会議がお開きとなり、解散になる。明日からの練習にあやめが静かに闘志を燃やしていると、羽田に声をかけられた。

「三矢さん。少しいいか。」

「は、はい。何でしょうか。」

 あやめは何だか嫌な予感がして顔を引き攣らせた。

「実は三矢さんの担当種目選びには難航していてな。君自身の意見も聞きたい。」

「難航と言いますと......?私の担当種目は新人戦アイス・ピラーズ・ブレイクでは?」

 まだ本格的な決定ではないのかとあやめが尋ねると羽田は頭を振った。

「いや、新人戦アイス・ピラーズ・ブレイクの出場については確定と考えてもらっていい。問題は掛け持ちする競技の方だ。」

 掛け持ちは結局することになるのかとあやめは残念感を拭えなかったが、主席と三席が掛け持ちをしているのに次席のあやめが掛け持ちをしないというのも変な話だったかと納得した。

「案としては二つ。新人戦ミラージ・バットに出てもらうか、本戦クラウド・ボールに出てもらうかだ。」

 ミラージ・バットには各校の女子のエースが当てられやすいと聞く、できれば遠慮したいところだが、クラウド・ボールの方は新人戦ではなく本戦だ。適性がある種目とはいえ流石のあやめも各校選りすぐりの二、三年の選手と混ざって優勝を望めるとは思えない。どっちもどっちで選びたくない二択だった。

「三矢家の魔法特性的に本戦でもクラウド・ボールなら十分に決勝まで望めると私は考えている。」

 優勝、ではなく決勝と羽田が言ったのは恐らく第一高校の三年、十師族の七草真由美が本戦クラウド・ボールに出場してくると察しているからだろう。

 あやめが本戦クラウド・ボールで準優勝する見込みがあるなら、他の三年の有力選手は別の競技に回した方が良いという判断は概ね間違っていない。

「だが、まだ一年生だ。他校の選手と比べて経験が少ない三矢さんには厳しい戦いになるかもしれない。」

 羽田の言う通り、継続して出場している他校の選手と比べて初出場で経験が少ないあやめは不利になるだろう。

「そして新人戦ミラージ・バットを選ぶ場合はできるだけ優勝を目指してもらう形になる。」

 何とも理不尽な二択にあやめが悩んでいるとそれを見かねた吉祥寺が横から助け舟を出す。

「クラウド・ボールは試合回数が多いから消耗を少なくしつつ勝つ必要があって、ミラージ・バットは試合に出るのは二回だけだけど、一試合が長いからペース配分が重要になると思う。どっちが得意かで選んだら良いんじゃないかな。」

 吉祥寺の噛み砕いた説明を受けてあやめはなるほど、と頷いた。

「ありがとうございます、真紅郎くん。では、新人戦ミラージ・バットの方に出場したいです。」

 二、三年に囲まれての本戦で消耗を抑えつつ戦うというのは無理がある。あやめは消去法でミラージ・バットを選んだ。

「わかった。では、そのように手配しておく。技術スタッフと掛け持ちさせて悪いが、よろしく頼む。」

「はい、精一杯務めさせていただきます。」

 第三高校ではCADを調整できる生徒が少ないためあやめも技術スタッフとして駆り出されることとなったが、CADエンジニアとしてのあやめの腕はアマチュアの域を出ない。流石にエンジニアとしては無理だと何とか拒否して吉祥寺のアシスタントという枠に収まった。

 これから襲い来るであろう怒涛の忙しさに背中が丸まりそうになるのを堪えてあやめはぎゅっと拳を握った。

(頑張ろう......!)

 

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