転生したらドンちゃんのママになりました ~娘がティアラ三冠取ったあたりで本格化が来てしまったのでメイクデビューするウマママさんじゅうぴーさい~   作:雅媛

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13 宝塚記念

 無事に6人目を出産し、1年間の産休を経て。

 ボクのターフへの復帰戦は、なんとシニア級の夏のグランプリ、『宝塚記念』に決まってしまった。

 

 産後すぐだというのに本格化の余韻はまだバリバリに残っており、身体はすこぶる軽い。とはいえ、復帰戦がいきなりグランプリ競走というのは無謀が過ぎる気がしたのだが……。

「どうしても、ママと一緒に走りたいのですわ……!」

 愛するドンちゃんに上目遣いでそんなことを言われてしまえば、親として断れるはずがないのである。

 

 当日、パドックは異様な熱気に包まれていた。

『祝! 産休明け・経産婦合法ロリウマ娘復帰!』というとんでもない属性のメガ盛り状態がスポーツ紙やSNSでバズり散らかした結果、ボク目当ての観客がアホみたいに押し寄せていたのだ。夫がクソでかい横断幕を作って泣きながら振っているのが見える。

 まあ、復帰戦を宝塚にしたいなというのを流したら人気投票がそこそこ集まったおかげでこうやって出れているので、適当に手を振ってやり過ごすことにした。

 

 さて、肝心のレースだが。

 今回の宝塚記念には、ウマ娘界随一のトリックスターにして、宝塚記念2連覇がかかっている『ゴールドシップ』ちゃんが出走していた。

 ドンちゃんは彼女を強烈にライバル視しており、スタート前から二人の間で激しい火花が散っている。というか、発せられる闘気の圧力が凄まじすぎて、隣にいるママはすでにちょっと涙目である。お家に帰りたい。

 

 そして、事件はレース後半のコーナーで起きた。

 

 勝負どころで前に出ようとしたドンちゃんが、外からゴルシちゃんに対して、得意の『体当たり』をかましたのだ。かつてジャパンカップでマックちゃんの子のオルフェちゃんを弾き飛ばした、あの伝説のパワープレイである。

 いけるぞドンちゃん! と横から応援したのも束の間。

 

 ──ドゴォッ!! 

 

 なんと、ゴルシちゃんはドンちゃんの渾身の体当たりをビクともせずに耐え抜き、あろうことかそのままの反動でドンちゃんを外側へと弾き返したのだ。

 

「えっ」

 

 そして不運なことに、弾き返されたドンちゃんのさらに外側の軌道を、ボクが走っていたのである。

 ビリヤードの球のように弾き飛ばされてきたドンちゃんの巨体が、体重の軽いボクにモロに直撃した。

 

 ぽーーーんっ!

 

 面白いぐらいに跳んだ。

 自分でもびっくりするくらい綺麗な放物線を描き、ボクの身体は外ラチのギリギリまで吹っ飛んでいった。当然ながら、そんな物理的な大クラッシュを経て勝負になるはずもなく。ボクの記念すべき復帰戦は、ボロボロの順位で幕を閉じることになったのである。

 

 レース後の控室。

 

「ママーーーッ! わたくしのせいで、本当に、本当に申し訳ありませんでしたわぁぁぁ!!」

 

 普段は自信満々で女王の風格を漂わせているドンちゃんが、ボクにすがりついてボロボロと大泣きしながら謝ってきた。

 可愛い娘のこんな姿を見せられては、怒る気にもなれない。ボクは泥だらけの姿のまま、自分より30センチ以上も大きな娘の頭を「よしよし」と優しく撫でてやるのだった。




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