転生したらドンちゃんのママになりました ~娘がティアラ三冠取ったあたりで本格化が来てしまったのでメイクデビューするウマママさんじゅうぴーさい~ 作:雅媛
いざ、夏合宿である。
とはいっても、今回はトレセン学園のトレーニング施設などを利用するわけではない。ボクの方には産まれたばかりの赤ちゃんがいるし、ということで、思い切って南の無人島を丸ごと貸し切ってプライベートキャンプを行うことにしたのだ。
参加者は当然、我が家の子供たち全員。それに加えて、今年なんと長女のブルーちゃんが産んだ子供ボクから見れば『孫』にあたる、デルタちゃんも一緒である。
「……孫と叔母が同い年って……」
ドンちゃんには散々呆れた顔でツッコミを入れられている。
だが、産んじゃったものはしょうがない。ブルーちゃんも立派な母親なのだ。
「まあまあ。ボクもまだまだ若いし(見た目が)、あと2、3人くらいは産んでもいいかなって思ってるし」と笑って返したら、かつてないほどドン引きされた。悲しい。
パラソルの下で、ボクはのんびりと授乳タイムを満喫している。
娘のアトラちゃんに母乳をあげたり、ついでに孫のデルタちゃんにもあげたり。そのどさくさに紛れて「俺も! 俺の妖精さんの極上ミルクを!!」とおっぱいを吸いに来ようとした夫の首根っこを掴み、砂浜に頭から垂直に埋めたりしながら、穏やかな夏合宿の時間は過ぎていく。
特に、妹と姪っ子という『年下』の存在が一気に増えた四女のヴィルちゃんは、すっかりお姉ちゃん風を吹かせて積極的に面倒を見てくれている。微笑ましい光景だ。
「あの……ドナさん。本当に私達まで参加してよかったのでしょうか?」
「全然! 大歓迎だよ!」
恐縮した様子で声をかけてきたのは、ドンちゃんの最大のライバルであったヴィルシーナさんだ。今はマイル路線を走っているので、直接衝突する機会も無くなったのもありちょうどいい関係になっている。
ドンちゃんに「夏合宿、一緒に走りたい子がいるなら連れてきてもいいよ」と言ったら、ちゃっかり彼女のところの三姉妹をまるごと連れてきたのである。
帽子が似合うボーイッシュな次女のシュヴァルちゃんも、小悪魔系の末っ子ヴィブロスちゃんも、水着姿がとっても可愛い。
ヴィブロスちゃんは「末っ子」なので、年下の赤ちゃんたちに興味津々で、ゆりかごを覗き込んではしゃいでいる。アトラちゃんもデルタちゃんも、周りのお姉ちゃんたちからチヤホヤされてキャッキャと楽しそうだ。
ドンちゃんとしても、ヴィルシーナさんたちという絶好の併走相手が増えて大助かりだし、何の問題もない完璧なバカンスである。
……ただ一つ問題があるとすれば。
女だらけの空間で、一人だけ男の子である長男のレーくんが、若干所在なさげにしていることだ。
ふと視線をやると、レーくんは砂浜で妹たちと遊ぶヴィルシーナさんの姿を、顔を赤くしてジッと見つめていた。
なるほど。生粋のシスコンである彼にとって、面倒見の良さが服を着て歩いているようなヴィルシーナさんの『圧倒的お姉ちゃんオーラ』は、どストライクなのだろう。これは彼の初恋かもしれない。
(でもね、レーくん……)
ボクは心の中で、そっと愛息子の肩を叩いた。
ヴィルシーナさん、あんなに優等生で優しいお姉ちゃんなのに、自分の担当トレーナーさんにすっかり首ったけの激重感情持ちだからね。多分、キミが入り込む隙間は1ミリもないと思うよ。強く生きて。