転生したらドンちゃんのママになりました ~娘がティアラ三冠取ったあたりで本格化が来てしまったのでメイクデビューするウマママさんじゅうぴーさい~ 作:雅媛
さて、眩しい太陽と白い砂浜の裏側で、若者たちの間で複雑怪奇な『多角関係』が勃発していた。
今回の合宿において、大人のトレーナーさんたちを除けば、我が家の長男・レーくんは事実上の『黒一点』である。
父親譲りのイケメンで頭も良く、何より日頃からアクの強い姉妹たちに揉まれまくっているおかげで、女性に対する気遣いやエスコートは完璧。シスコンという不治の病さえ除けば超優良物件なのだから、年頃の女の子にモテるのは当然の理だ。
案の定、ヴィルシーナさんの可愛い妹たち、ボーイッシュなシュヴァルちゃんと小悪魔なヴィブロスちゃんは、すっかりレーくんに懐き、わかりやすい好意の視線を向けている。
だが問題は、当のレーくん本人の矢印が、一番上の『ヴィルシーナさん』に向かってしまっていることだ。
そしてさらに悲惨なことに、ヴィルシーナさんは自身の担当トレーナーさんにガチ恋レベルで首ったけであり、レーくんからの不器用な好意には1ミリも気づいていないのである。
いやぁ、青春してますねぇ。
ボクの『暗黒の青春』とは大違いだ。
「じゃあ、ちょっと皆で島の散策に行ってきます」
「いってらっしゃーい」
水着姿の美しい三姉妹に両脇と背後をガッチリ固められ、サマーウォークへと出発するレーくんをパラソルの下から見送る。
……まあ、修羅場になって刺されたり、『三等分』にされたりしない限りは、それもレーくん自身の自己責任ということにしよう。頑張れ長男。
そんな感じで、若者たちの恋のから騒ぎを対岸の火事として楽しんでいたボクだが、隣にいるドンちゃんは気が気でないらしかった。
どうせ夫の遺産は最終的に下の妹たちが適当にかっさらっていく未来しか見えないのに、本気で家督争いをしている次女と長男。だが、ドンちゃんも本質的にはブラコンなのだ。
「マ、ママ! レーがたぶらかされていないか、わたくしたちもこっそり後を追いましょう!!」
不器用な愛娘がそんな可愛いことを言って立ち上がったので。
ボクはドンちゃんに用意しておいた最高にキュートでおしゃれな水着を強引に着せ、そのまま通りかかった彼女の担当トレーナーさんの背中へと力いっぱいドンと押し出しておいた。
「キャアッ!? と、とれーなーさんっ!?」
「おっと、ジェンティル!? わわっ、すごい可愛い水着だな……」
「~~~~っ!!」
弟の心配より、お前も当事者としてしっかり自分のデートをしてきなさい。
そんな感じで、長女のブルーちゃん夫婦も夫婦水入らずの散歩へと送り出し、ボクはパラソルの下で小さい娘たちと孫のお世話をして、平和で楽しい時間を過ごしていた。
「俺の妖精さん! 子供たちも出払ったことだし、俺たちも熱いデートをしようじゃないか!! ほら、とびきりの水着を用意したぞ!!」
突如乱入してきた夫が、意気揚々と差し出してきたのは、布というよりただの『紐』にしか見えない極小のマイクロビキニだった。
ボクは無言で夫の鳩尾に踵落としを決め、そのまま砂浜に首まで垂直に埋めておいた。波打ち際のテトラポットの代わりくらいにはなるだろう。
なお、レーくんの複雑で胃の痛くなるような恋愛模様は、しばらく続くのであった。
ママとしては、シュヴァルちゃんでもヴィブロスちゃんでも、将来どっちの娘さんを連れてきても大歓迎だと思っている。
ただ、ヴィルシーナさんだけは絶対に見込みがないから、早く諦めたほうがいいと思うよ。