転生したらドンちゃんのママになりました ~娘がティアラ三冠取ったあたりで本格化が来てしまったのでメイクデビューするウマママさんじゅうぴーさい~ 作:雅媛
さて、本格的にトレーニングを始めるにあたり、娘の周りにも一度しっかりと挨拶をしておこうと思う。
あまり親が干渉しすぎるのも過保護かとは思うが、礼儀やご挨拶は社会人の基本だ。
手始めにターゲットとしたのは、担当トレーナーさん。
ドンちゃんをトリプルティアラに導いた立役者であり、ひょんなことからボクの担当にもなってくれた奇特な人物だ。
そして何より愛娘が絶賛ドハマり中の、初恋の相手でもある。
本人は上手く隠しているつもりだろうが、ボクから見れば、ドンちゃんがトレーナーさんのことを「好き好き大好き、ずっと一緒にいたいですわ!」と思っているのは丸わかりである。伊達に前世から人間をやっているわけではないし、これでも母親だからね。
可愛い娘の初恋相手となれば、親としては当然、どんな男なのか把握しておく義務がある。
というわけで、まずはトレーナーさんの身辺調査を徹底的に行った。前世の知識を駆使して株で蓄えた金さえあれば、有能な興信所を雇うなど造作もないことなのだ。
数日後、分厚い報告書に目を通した結果は……二重丸。
真面目で誠実、ギャンブルもせず、休日はウマ娘のレース研究かドンちゃんとお出かけ。過去の交際歴もクリーンという、絵に描いたような好青年だった。これなら娘を任せても何一つ文句はない。
ちなみに、報告書を横から覗き見た夫が「どこの馬の骨ともわからん男に俺の愛娘はやらん!!」とギャーギャー喚き散らしていたが、夜の寝室でブルマ姿のまま徹底的に『うまぴょい』してしなびるまで搾り取り、物理的に黙らせておいた。当分は腰が立たないだろう。
さて、親からの承認は下りたものの、肝心の二人の関係は一向に進展する気配がない。
ドンちゃんはドンちゃんで、甲斐甲斐しくトレーナーさんの世話を焼いたりアタックしたりしているのだが、いかんせん無駄に『ツンデレのツン』を出しすぎているのだ。「べ、別にトレーナーのために淹れた紅茶じゃありませんわ!」みたいな古典的なムーブを令和の世でやっている。
おまけにトレーナーさんは極めて真面目な性格ゆえ、「担当生徒に手を出すなんてとんでもない」という理性が強固に働いており、完全に暖簾に腕押し状態だった。
このままでは埒が明かない。ここは一つ、大人の女性として、そして同じ担当ウマ娘として、ボクが一肌脱ぐとしよう。
ある日のトレーニング後。
ボクは学園のカフェテリアで、トレーナーさんと向かい合って座っていた。
「トレーナーさん。ちょっと、ドンちゃんのことでお話し聞かせてほしいんですが?」
「はい。ジェンティルのことなら、何でも聞いてください」
最初はドンちゃんの普段の様子や、彼女の不器用な好意についてやんわりと仄めかすつもりだったのだ。
しかし、話をしているうちに、彼の抱える仕事の悩みやデータ分析の話題になってしまった。ボクは社会人経験者として、そして学園時代に生徒会の庶務としてあちこちの裏方を回していた経験から、「あ、そういう手続きならこの部署を通すと早いよ」「そのデータ管理なら、エクセルでこういうマクロを組めば一発だね」と、的確すぎるアドバイスを連発してしまったのだ。
「す、すごいですドナさん! ずっと一人で悩んでいた事務仕事が、一瞬で解決しそうです……! ドナさんは本当に頼りになりますね!」
「えっ、あ、いや、そんな大したことじゃ……」
パァァッ、とトレーナーさんの顔に尊敬と親愛の入り混じった輝きが宿る。
年上の包容力(見た目はロリ巨乳だが)と、実務能力の高さが、彼のストライクゾーンの変なところを突いてしまったようだ。なんだか、ドンちゃんそっちのけで彼との心の距離が縮まってしまった気がする。
「──ママ?」
「──おい、俺の妻になんて顔を向けているんだ貴様」
背後から、地を這うような低い声が二つ響いた。
振り返ると、完全に目が笑っていないトリプルティアラウマ娘と、なぜか腰を押さえながら鬼の形相で睨みつける夫が立っていた。
「ち、違うのよドンちゃん! あなた、これは誤解で──!」
「ママ!? なにわたくしのトレーナーをたぶらかしてますの!? やはりライバルとして叩き潰すしかありませんわね!!」
「俺の妖精さんに気安く話しかけるな泥棒猫! いや泥棒トレーナー!!」
結局、娘の恋路を応援するはずが、ドンちゃんと夫の両方からクッソ怒られる羽目になったのだった。しょんぼりである。
ちなみにトレーナーさんは主人公に異性としては全く興味がありません。
ロリコンではないので。あとロリコンはトレーナーになれないので。
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