コネクティング・アーカイブ   作:魚か?

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 徹頭徹尾個人的シリーズそのニです。ガヴ×レイサと同じように好きにやります。正直ソシャゲ二つの設定を全て上手く調理するのは難しいので、展開の妄想とかを好きにしていただいた方がブレーンストーミング的に助かるまであるかもしれない。
 ちなみに、作者の推しはレイサとシェフィです。


第一章:アビドス自治区の奇妙な一日
第1話『謎の少女と見知らぬ土地』


 

    ◆

 

 身体を前に倒し、地面を駆けるようにペダルを漕ぐ。吹き抜ける風が耳を撫で、シロコは思わず口元を緩めた。

 ここは一面砂漠のアビドス学区。他の学区なら決して許されない車道ど真ん中のツーリングですら、誰にも咎められることはない。少し感覚がズレていると感じることの多いシロコにとって、それは非常に快適なことであった。

 ガヤガヤとした喧騒はなく、ただ風と砂があるのみで、彼女はこの街を故も知らずに越えて行く狼なのだと錯覚する。耳を澄ませば僅かに鼓膜を揺らす音が──

 ドォォォン!!!

 突然の爆発音。シロコは急ブレーキを掛け、すぐさま音のした方角に顔を向ける。

 右方向、いくつかの家屋のさらに先。音の原因は砂漠にある。シロコはロードバイクから降り、目的地へと駆け出した。

 アビドスの砂漠は岩石砂漠の類だが、住宅街付近は嵐によって巻き上げられた砂が降り積もった砂丘である。そのため非常に走りづらく、さしものシロコもこれには多少の時間を食わされた。ようやく二つ目の砂丘の頂点を越えた所で、彼女は奇っ怪な物体を踏みつける。

 

「岩?」

 

 岩。それも中々にサイズの大きい、岩肌と言ってもいいものだった。それが砂丘の頂点近くに鎮座しているというのだ。嵐が巨岩を運んだというのならもう少し数がまばらにあってもいいものだろうが、三つの塊のみが密集しているように見える。

 シロコは狐につままれたような感覚を覚え、注意深くじろりと岩群を睨みつける。しかし、返事が返って来ることはなかった。

 

「……気のせいかな」

 

 爆発音に聞こえたのは近くの砂丘が崩れた音かもしれない。シロコが適当に結論づけ学校へ急ごうと奇っ怪な岩から顔を背けたその時、それは唐突に激しく振動を開始した。周囲の砂はあまりの振動に耐えきれず、まるで波を作っているように見える。

 

「急に、何っ!?」

 

 シロコは対応しきれずに吹き飛ばされ、元いた住宅街とは逆方向の砂上に尻もちをつく。視線を先程の岩に戻すと、それらがすでに岩でなくなっているのを理解した。

 まん丸とした図体に質量のある腕、中心を蠢く二対の朱い光。そいつらは恐らく、生物であろう。

 

「──グオオオオオッ!」

 

 シロコはとっさに愛銃を構えて発砲する。その全弾が一体のゴーレムに命中し、足元から崩れる乾いた音が砂丘に響いた。

 

「まず一匹」

 

 最初こそ驚いたが、遠くからそいつらを一瞥し、要はバードハンティングのようなものなのだと気付いてからはむしろ冷静であった。ゴーレムは大して移動速度が速い訳でもないし、それより簡単とすら思える。

 続けざま、二体目に発砲。こちらも問題なく命中。

 

「これで二匹」

 

 息を吐き、最後の一体に照準を向ける。引き金に人差し指を掛けて──足に鋭い痛みを感じ、ガクンと視界が揺れた。シロコは身体に力を入れることが出来ず、愛銃を手放して砂に伏す。

 すると周辺の砂が不規則に流れ、思わぬ伏兵がその正体を現した。焦茶の皮膚を纏ったヘビのような生物だ。

 

「……力が、出ない」

 

 何かを吸い取られた? それが何なのかまでは分からないが、失った感覚がシロコにその事実を伝えていた。

 ゴーレムがのそのそとシロコに近づく。既に四肢に感覚はなく、ピクリとも動かない。いつもであれば簡単に距離を離せるというのに、現実は非情である。

 

「ダメか」

 

 目前まで近づいたゴーレムは太腕を大きく振りかぶった。今のシロコにこれを避ける力はない。

 しかし、頭と口はまだ動く。

 

「ドローン! 私を爆破して!」

 

 ババババと風を切る音を鳴らしゴーレムの向こうから飛来したそれは、その両翼に積まれたミサイルを余すことなくシロコのいる場所に撃ち込んだ。

 

「──グオオオオオッ!」

 

 凄まじい音が彼女の鼓膜をつんざく。そうしてゴーレムもヘビも粉々に砕け散り、その場にはうつ伏せのシロコだけが残った。

 

「……ありがとう、一箇所に集まってくれて」

 

 ここで死にはしないだろうが、ミサイルをもろに食らってしまっては、時間通りに集合することは叶わないだろう。そんなことを考えながら呆然としていると、背後から誰かの声が聞こえてきた。

 

「この辺りで爆発音が鳴ったはずなのですが……」

 

「何かないか探してみよう!」

 

「そうですね、主様」 

 

 二人の声だ。一際落ち着き払った音と、飾り気のない無垢な音。この辺りで聞いた覚えはない。

 

「君、どうしたの?」

 

 後者が声を掛けながら、シロコの正面でしゃがみ込む。青いマントを羽織り、大きな剣を一本腰に提げているようだ。彼が着用した金属の擦れる音を聴いているにも関わらず、シロコはなんだか身体の力が更に抜けていくような感覚を覚えた。

 

「コッコロちゃん! ケガをしてる人がいるよ!」

 

「……なるほど、その通りでございますね。魔物に襲われてしまったのでしょうか」

 

 もう片方がシロコに近づいた。視界の端に棒の先のようなものが映る。

 

「では主様、お力をお借りしてよろしいですか?」

 

「もちろん!」

 

 その子の合図で彼は立ち上がり、剣を抜いた。銃は携帯していないようだ。

 

「はぁっ──!」

 

 彼が力のこもった声を出すと、その場にいる全員の身体が光り出した。シロコは突然の事に驚き、身体を転がして仰向けになる。

 

「……身体が動いた?」

 

 一切命令を聞き入れることのなかった身体が容易に動き、彼女の姿を知る。彼と同様に制服やシャツのような見知った衣服を着ておらず、銃も持ち歩いていない。

 

「参ります!」

 

 シロコは自分すら気づかぬ間に、すっかり彼女に釘付けだった。

 槍を握る小柄な少女が啖呵を切ると、周囲をいくつかの若草色の光が泳いだ。滑らかな銀の髪、その上を流麗に飾る白い花。宝石のように透き通った穂を輝かせ、一体彼女は何を想うのだろうか。

 

「舞い上がれ、《オーロラブルーミング》!」

 

 彼女はくるくると回り、やがて両腕を力いっぱい大きく広げた。

 瞬間、その身体は撫子色に咲き乱れ、シロコの世界が清翠に染め上げられていく。若葉の旋風が、新花の吹雪が、その絶え間ない息吹が、流れ着いた時からずっと変わらないアビドスを変えたのだ。つまりそれは、息が止まる程に美しい魔法であった。

 

「……どうでしょうか。ご気分はいかがですか?」

 

 宙を踊り、まさしくこの花のように空に舞い上がった心に、シロコは頬を伝う涙で気が付いた。

 

「……い」

 

「はい?」

 

「すごい!」

 

 シロコは跳ね起き、銀髪の少女の槍を握った両手に自分の手を重ねた。

 

「何をしたの? アビドス砂漠にこんなに植物が生えるなんて! こんなの、見たことない!」

 

「ええと……これは治癒魔法でございます。植物は私の生命のイメージを具現化したものですね」

 

「魔法? 具現化?」

 

 慣れない単語の大雪崩に、シロコは首を傾げる。対する銀髪の少女も、おっかなびっくりな様子で言葉を紡いだ。

 

「もしや、魔法をご存知ないのですか?」

 

「ん。そんなの知らない」

 

 シロコは変に飾らず、正直に返答した。あなたはすごいことをしたんだよ、という称賛の意を込めて。しかし、シロコの意図に反して彼女の表情は更に曇った。

 

「つかぬことをお聞きしますが……ここはどこなのですか? もしや、アストライア大陸でも、エルピス島でもないのでしょうか?」

 

 

 

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