変身ヒロインの内なる敵だけど乗っ取りとか考えてない。いやマジで   作:三重雑巾

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代役のお願い

人の心に巣食う悪魔、ネガデビル

それを倒すべく開発されたルミナス・ギアと、それを使うことで変身できる閃光戦姫。

 

これだけなら簡単な相関図で、分かりやすい対処療法。

風邪を引いたから薬を飲む。悪人が出たから逮捕するようなもの。

 

ではちょっと視点を変えてネガデビルに対抗できる唯一の力。

そんな閃光戦姫の力の源は一体何なのだろう?

聖なる力?魔法の力?化学の力?いずれも不正解。

 

答えは簡単、同じくネガデビルだ。

とは言っても、自由に暴れさせてる訳ではなくルミナス・ギアの力によって隷属、制御して力だけ搾り取るという我々ネガデビルからすると真っ青な仕組みだ。

 

しかし、例外もある。

閃光戦姫フレイムルビーのネガデビル……を務めさせて頂いている私だ。

 

フレイムルビーの使うルミナス・ギアは試作品、というかネガデビルの制御が全くできてない欠陥品なのだが私が率先してネガエネルギー……まぁ力の源を納品しているお陰でバレずに暮らせている。

 

他のネガデビルなら身体を乗っ取ったり色々と暴れるのだろうが私はこの適度な温度の空間が気に入っているのだ。椅子と机に宿主……フレイムルビーが食べた物を味わえたり、見聞きした物を各種媒体で楽しめる便利空間だ。少し狭いがそう易々と出たりはしない……おや、来客のようだ。

 

 

「また来たのか、フレイムルビー」

 

「……また来ちゃった♪」

 

 

テヘッとわざとらしい表情を浮かべて尋ねてきたのは桃色の髪色と活発そうな顔つきが特徴的な私の宿主、フレイムルビーだ。

どうやら睡眠中だとごく稀にここに繋がるらしく、時々顔を合わせる事がある。とは言っても、ここから現実へ記憶は持ち越せないから意味は無いが。

 

 

「というかちゃんと名前で呼んでよー!私には『日向 苺』っていう分かりやすくて美味しそうな名前があるんだからさー!」

 

「私は閃光戦姫のフレイムルビーに力を捧げてるんだ。呼び名くらい好きにさせてくれ」

 

 

来客用(苺専用)のカップにジュースを注ぎ、彼女が今日現実で食べていたショートケーキを出す。精神世界ではあるが、フレイムルビーが現実で知覚した物しか出せないという都合上、彼女にとっては二度美味しい体験だ。……私の分が無くなったが。

 

 

「いやぁ現実で目が覚めると綺麗さっぱり忘れちゃうけど夢の中ならではだよね〜こういうのは!」

 

 

本当なら私が今晩食べる予定だったケーキだが、所詮私は居候だし元々は彼女の財布で買った物だ。こういう時ぐらいは譲るのが立場相応だろう。

 

 

「あ、そうそう。私なんか1ヶ月ぐらい起きれなさそうだから代わり頼める?乗っ取りとかできるでしょ?あっ私のケーキ返してぇ〜」

 

「……話が急すぎて理解が追いつかない。詳しく教えろ。あとこれは相談料として私が貰う」

 

 

事情が変わった、ケーキは貰う。話は聞く。

……うおっスポンジがふわふわだし甘さもくどくない。さてはこれかなりいいケーキだったな。

 

 

「いやぁこの前なんかいい感じにすっごいネガデビル倒したじゃん?」

 

「アレは大変だったな。こっちも数週間分の貯蓄がなくなって追加でネガエネルギーを必死に絞り出したからよく覚えている」

 

「あの時の反動…的な?」

「的な、じゃないが?」

 

「だからといってお前が起きれないのはおかしいだろう。せめて筋肉痛とか、いやその前にネガエネルギーを増産した私の方が過労で倒れてもおかしくないが?」

 

 

あまりにもあまりな理屈につい捲し立ててしまう。だが、確かにあれは激戦だった。『フレイムルビー』『アクアサファイア』の両名が限界まで力を絞りきった上での勝利。もしかしたらその時の負担が今になって響いた、のかもしれない。しかし……

 

 

「……本当にいいのか?私はネガデビルだぞ?」

 

「いいからお願いしてるの。あ、宿題とかもよろしくっ!あとネガデビル出た時もよろしくー」

 

 

頭痛がする。いや、あくまでここは精神世界だから頭痛などの生理現象は気の所為なのだが、知識としてこういった時は頭痛がすると知っている。信頼は嬉しいがそれはそれとして色々と体よく押し付けられている気もするが……悪くない。ケーキのイチゴおいしっ

 

 

「期間は?」「1ヶ月前後かな」

「勉強は?」「分かりやすくノートにまとめて貰えると助かります!」

「お小遣いは?」「あるだけ使っていい!けどお手柔らかに……」

 

「分かった。お前が目覚めるまでの間はお前の真似をしてやる……が、私も美味しい思いをさせて貰う」

 

 

私の言葉を受けてフレイムルビーはサムズアップ。いやぐっじゃないよぐっじゃ。ネガデビルに肉体乗っ取らせようとするの多分コイツが初めてだろ。

 

だがしかし、こうなれば私の望みも叶う。

フレイムルビーには悪いが彼女には犠牲になって貰おう。そう私の……

 

 

『フレイムルビーがあまり見ないジャンルの作品を見たり私が食べたかった物を食べる計画』の犠牲にな。

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

・現実

 

 

「……おお」

 

 

これが眠りから起きる感覚。

なんとなく分かってはいたがやはり精神世界と違う。

 

「おお!」

 

ベッドから降りて手足を軽く動かす。

夢とあまり変わらない筈だが、初めての現実はこうも高揚感があるのか。カーテンを開けて日光を浴びる。窓も開き、肺一杯に新鮮な空気を取り込む。あの狭くて室内灯しか明かりのない空間とは全く違う。

 

 

「これが、現実……!」

 

「苺ー!起きたなら降りてらっしゃーい」

 

「あっ」

 

 

母親の声で一気に現実に引き戻される。そうだ、私は今は『日向 苺』だ。彼女の真似をやり切った上で私の目的成し遂げなくてはいけない。そのことを胸に刻み込んで、深呼吸。

 

さぁ、現実の始まりだ。




ネガデビル
人の心に潜む悪魔。
宿主の負の感情を糧にして、ある程度育てば現実に現れる。
フレイムルビーのネガデビルはとても珍しい穏健派。
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