変身ヒロインの内なる敵だけど乗っ取りとか考えてない。いやマジで   作:三重雑巾

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新生活もあって投稿が遅れました
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食事と腹ごなしの運動

校舎に1日の終わりを伝える鐘が響く。

授業はやはり、フレイムルビーの記憶通り退屈な物だった。だが、彼女との約束もあるので授業の内容はしっかりとノートに書き記しておいた。

 

……余談ではあるが、それ以前の内容が落書きだったり問題を解くのを放棄していたりと散々なモノではあるが……うん。そこは私の管轄外だ。

 

 

「苺、放課後なんですが……」

「今日は無理ー!また誘ってー!」

 

 

クラスメイトからの誘いを日向 苺として上手く躱し、急いで目指したのは校門。いや、正確には校門も通過点に過ぎないのだが細かいことは捨て置いておこう。

 

駆ける足はより速くなる。上がる息はより熱くなる。

 

それも仕方がない。私が代役を引き受けたのも、全ては『好き勝手に現実堪能する計画』の為の布石なのだから。

 

私が元居た場所……便宜上、精神世界と呼ぼう。

念じれば宿主が知覚した物を知覚した分まで取り出せるし、少しは模様替えもできる。ついでに宿主の知識記憶も本という形で読み取る事も可能だ。

記憶に関してはこちら(精神世界)に重大な異変が無い限り滅多に読まないが。

 

しかし……

手を伸ばせば届くような天井、一定の明るさと位置から変動しない照明、両手を伸ばしてギリギリ当たらない程度の四方の壁。試行錯誤したが狭さと風通しだけはどうにもならなかった。

 

再現された食事に関しても、1度食べればそれっきり。そもそも宿主が食べてない物は幾ら私が食べたいと願っても出てこないのだから、知識として知ってしまえば永遠に生殺しだ。そう、だから。

 

 

「だから私は暴飲暴食をする……!」

 

 

覚悟と熱意を持った私は、逸る気持ちを抑えきれずに校門を駆け抜けていった。

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

 

「いらっしゃいませー」

 

 

という訳で私は早速学校から徒歩十数分の距離にある蕎麦屋に来ていた。フレイムルビーも時々訪れていたが頑なに素麺しか頼まなかったのが印象的だ。そう、蕎麦屋で素麵をだ。

 

なぜ素麺なんだよと、蕎麦屋なのに何故蕎麦を頼まなかったのか理解に苦しむ。せっかく豊富なメニューがあるのに来るたびに同じ料理を注文するせいですっかり素麺のイメージが私の中で定着してしまった。

 

 

「本当に分からん……」

 

 

メニューには天ぷらセットやかき揚げ蕎麦といったポピュラーなものが多く、店の方も蕎麦を推してるようなメニュー表の構成になっている。がしかし、厄介なことに私の視界の隅で、一際存在感を放つメニューが存在した。

 

 

「───素麺」

 

 

忌々しいその名を口にした。

意識しないようにすればするほどドツボに嵌っていく。いっそ一回頼んでみればいいか?いや、せっかく現実に出れる間の一食をそんな形で使いたくはない。だが……しかし……。

 

決して素麺が憎い訳ではない、が。

 

そして私は……

 

 

 

 

 

「お待たせしました。ご注文の品は以上でよろしいでしょうか?」

 

「……はい」

 

 

眼前にあるのは蕎麦とは似ても似つかない、白く艶のある麺とそれを食べる為に用意された濃い色の汁。そうだ、私は素麺に負けたのだ。気づいた時には頼んでいたのだ。

 

頼んでしまったものはしかたないとちゅるちゅると素麺を啜る。

いつも通りの味で美味い。それは認めよう。しかし、別のを頼めばよかったな……という後悔の念も僅かにある。

 

 

「うう……」

 

 

ネガデビルは人間の悪感情を糧としているが、そのネガデビル自身が後悔の念を抱くことになるとは思いもよらなかった。あっちょっとネガエネルギー出るっ。

 

 

「ご馳走様でした」

 

 

両手を揃えて、軽く一礼。

美味しかったが、精神世界で食べるよりも僅かに違った気がする。味・温度・食感の事ではなく、場所やシチュエーションが整っているとただ食べるよりも気分がいい、気がする。

 

 

「──────!!!」

 

 

そんな事を考えていると、形容しがたい悲鳴が外から聞こえた。

食後の何とも言えない絶妙なひとときを堪能していた私は、ため息を漏らしつつ会計を済ませ店を出る。

 

 

「……面倒事は御免だぞ」

 

 

悲鳴の現場に駆け付けた私の視界に映ったのは、黒い翼が生えた異形の人型、鳥の姿を模したネガデビル。背中の大きな翼で空を飛び、建物や人を襲っている。

 

……正直、最悪なタイミングだとは思う。

予定していた物を食べ損ねて私は今、そこそこ腹が立っている。いや、素麺は確かに美味しかったしお腹は一杯だけど腹は立っているのだ。それと強いて言うなら、食事の余韻を壊されてムカつく。うん。

 

 

「……報いは受けて貰う」

 

「───閃光転身(せんこうチェンジ)

 

 

その掛け声と共に手中のルミナス・ギアが起動する。

頭上に出現した赤い魔法陣が全身を包み込み、次第に赤い衣装とSFチックな装甲を纏った姿に変化していく。

 

本来なら変身が終えるまで待つのだが、待つ必要も無い。

変身途中ではあるが足に力を込めて、地面を力強く蹴る。すると肉体が弾丸の様に弾き出され、一瞬でネガデビルの懐へ飛び込んだ。

 

 

「『閃光戦姫フレイムルビー』」

 

「貴様が噂の……!」

 

 

拳と拳が激突する。

名乗ると同時に嫌そうな反応をされたのだが、どうやら向こうはこちらを知っているらしい。徒手空拳による格闘の応酬を繰り返すこと数回、翼を使った突風に身体を飛ばされ距離を離されてしまう。

 

 

「翼があるヤツは少しやりづらいな」

 

 

だが、本番はここからだ。

再び足に力を込め、地面を蹴って加速する。引き離された距離が一瞬の内に縮まった。

 

閃光戦姫は固有の得物とネガエネルギー由来の能力、その二つを巧みに操って戦う。

例えとしてアクアサファイアは弓と水。弓は時にクロスボウに、水は高圧のウォーターカッターで攻撃、膜状に展開することで防御に転用したりと実に多彩だ。

ならフレイムルビーはどうか?

 

 

「ふん!」

 

 

火炎を纏った一太刀が、ネガデビルの胴体を切り裂いた。

 

フレイムルビーの武器は剣と炎。

しかし、日向 苺は閃光戦姫としての才能はめっきりなかったのか剣は剣、炎も手足や武器に纏わせるのがやっとという体たらくだった。

 

だからこそ、弱みは明確。

 

ネガデビルが翼を使い、空へと逃げる。近接武器が相手なら当然の選択だろう。

 

 

「これでも喰らいな!」

 

「っ……」

 

 

更にネガデビルが翼を羽ばたかせると、羽根が豪雨のように降り注いだ。

やられるつもりは無いので可能な限り剣で防いではいるが、このままでは埒が明かない。

 

この状況、フレイムルビー(日向 苺)であったなら打てる手は片手で数える程しかなく、どれも博打と呼んでもいい確実性のないものばかりだ。

 

 

「お前ではここまで届くまい!アハハハ!!」

 

「……」

 

 

だけど、私は日向 苺じゃない。

剣が解け、鞭のように姿を変える。蛇腹剣、剣と鞭を両立させた稀有な武器。射程は……とりあえずあいつを倒すだけなら十二分に足りている。

蛇腹剣を振り回す事で降り注ぐ羽根を弾き、一瞬の隙を突いてネガデビルへと蛇腹剣を走らせる。

 

 

「なっ、刃が…!?」

 

 

ワイヤーと刃で形成された蛇腹剣がネガデビルの足に絡みついた。ネガデビルも抜け出そうと四苦八苦しているが、結果としてより深く刃が食い込むだけだ。

 

 

「だけどこんなのすぐ抜け出し「いいや終わりだ」て…何!?」

 

 

手首を捻り、長く伸びた刀身とワイヤーを柄から切り離す。すると、蛇腹剣として繋がっていた刃の1つが次第に赤熱し……爆ぜる。

 

爆ぜる。爆ぜる。爆ぜる。爆ぜる。爆ぜて、爆ぜる。

 

刃一つ一つが爆弾のように弾けていき、爆発の衝撃でまた別の爆発、その衝撃で再び別の爆発が連続していく。

 

爆炎。

無茶な応用ではあるが、ネガエネルギーの源である私自身(ネガデビル)が扱えばなんてことはない。

 

 

「やめろ!やめろ!!」

 

 

そのまま連鎖していく爆発がネガデビルへと到達し……一際大きく、炎が爆ぜた。花火と呼ぶには少々厳つすぎるだろうか。そんな事を考えながら変身を解いていて、ふと思う。

 

 

「……食後の運動には、少し物足りなかったな」

 

 

 

 

 

もう少し歯応えがあって欲しかったが……しょうがない。

 

……珍しく戦ったからか、無性に甘いのが食べたくなってきた。急いでスマホで検索をかけてみる。事後処理とかはアクアサファイアの方でやってくれるだろう。そう思いながら行ってみたいと目を付けていたクレープ屋のホームページにアクセスして、私は目を見開く。

 

 

「今日、休みなの……?」




閃光戦姫
ルミナス・ギアを介してネガエネルギーを纏い戦う戦士。
ネガエネルギーを利用した特殊能力や武器を使ってネガデビルと戦う。
変身の際に形成されるアーマーや武器はネガエネルギーや戦姫の性質を基にルミナス・ギアが自動でデザインし出力している。
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