ARC-V、なのか…?   作:鳩シンクロ

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■投稿予定
 ・榊遊矢がEM魔術師オッドアイズではなく糾罪巧を握ってしまった世界
  1.榊遊矢が糾罪巧を握ってしまった世界【糾罪巧】
  2.柊柚子の恋心(圧)【ヘカトンケイル】
  3.権現坂昇の新しい友人【キラーチューン】 ←今ココ

 ・榊遊矢がEM魔術師オッドアイズではなく獄神を握ってしまった世界
  1.これもうズァーク覚醒してるだろ【獄神】
  2.ユーリの青春アカデミア【アルトメギア】
  3.ユートの侵略大作戦【ドゥームズ】
  4.ユーゴの華麗なドルオタ生活【エルフェンノーツ】

 ・おまけ
  1.ストロング石島のストロングな日々

書いては消し、書いては消しを繰り返してたら遅くなっちゃいました……すみません。
書き始めから完成までで間がかなり空いてるせいで通してみると違和感出てるかも。
タイトルだけ先に思いついてその先は一切考えてなかったせいで本当に書くのが難しい……。

書いてる途中にキラーチューンの設定とか載ってるヴァリアブルブックEX6が出たり(糾罪巧とヘカトンケイル、獄神シリーズも載ってるぞ!みんなも買おう!)MDにキラーチューン実装されたり……。まあ結局公式設定はあんまり混ぜ込めてないんですが。
これ以上時間かけたら一生投稿しなさそうだったのでひとまずこの内容で行きます。
権ちゃんの口調難しいっピねぇ……。

■注意事項
大変申し訳ないのですが、キラーチューンを権現坂に握らせるためにストーリーの都合上対戦相手が完全オリキャラになります……!
権ちゃんスタンダード次元でのデュエル回数少ないねん……しかも遊矢と柚子が勝っちゃったから刃戦も無くなっちゃったし(自業自得)


権現坂昇の新しい友人

デュエルモンスターズの精霊は()()()()

人々が思っているよりももっと身近に。ずっと傍に。

例えば、自らのカードを窓の様にして、いつか運命のパートナーと出会える日を夢見て。

例えば、精霊体*1のまま主の隣で一緒に一喜一憂したり。

例えば、バイト仲間の正体は実体化した精霊だったり。

例えば、田舎のじいちゃんが山で拾ってきた犬(夏毛の狸)が実は犬でも狸でも無くて精霊だったり。

例えば、例えば、例えば―――

 

****

 

拝啓、精霊界の皆様。

私です、キューです。

冬の寒さから解放され、春の陽光にまどろむ日々の中で聞く春うたロックの得も言われぬ快感を味わうために遠路はるばる人間界に足を運んだ私ですが

 

「おう、さっさとそのカバンにありったけのレアカード詰めろよ店員サンよぉ。……ああ、そこのショーケースだけじゃなくて奥の金庫にも仕舞ってんだろ。隠すなんて馬鹿なマネはやめとけよ? じゃねぇとこのガキの頭ぶっ飛ばすからな。」

「ヒョエッた゛、た゛す゛け゛て゛ぇ゛……!」

 

――――――現在、絶賛強盗の人質にされています。

 

(ほげぇぇぇ!? なんで新譜見に行く前にちょっと寄っただけのカードショップで強盗に巻き込まれちゃってるの私!? どんな確率!? こんなことになるなら宝くじ買っておけば良かった!!! ってちがぁーう! た゛す゛け゛て゛み゛ん゛な゛ぁ゛ー゛!!!)

 

 黒ずくめの恰好に目出し帽で外見情報を封鎖した男に拳銃を突き付けられながら、私こと《キラーチューン・キュー》は内心泣きわめきながら精霊界でお留守番をしている仲間達へ助けを求めていた。

 

(うぐっ、こっこんなヤツいつもならちょちょいのちょいなのに……! 私が人間界だと力をだせないタイプの精霊だからってチョーシ乗りやがって! あっちょ、銃口こっち向けないで怖いから!!!)

 

 人間界へ来た精霊にはいくつか種類があり、人間界でも問題なく元の力をふるえるタイプと見た目通りのフィジカルまで弱体化してしまうタイプが居る。人型や妖精型の精霊は後者が多い。ついでに言うと人間界で一定以上のダメージを負った精霊は精霊界へ強制送還されるため、ここまで怯える必要はないのだが、キューは新譜が手に入れられなくなる可能性のせいで気が動転してしまっていた。

 

「つ、詰め終わりました……」

「げーっげっげっげ! なかなか物分かりが良いじゃねぇか! それじゃあオレサマはさっさとオサラバさせてもらうとするか!」

(あっ、これでやっと解放される……?)

 

 おずおずと店員から差し出されたレアカードが詰まったカバンを受け取り、強盗はこれで退散する。かと思われたが、銃口はまだキューの頭に添えられたままだ。

 

「ガキ、テメェには途中まで一緒に来てもらうぞ。店出た途端にサツにつかまるのはカンベンなん

でな」

「…………………………ぁい……」

(にゃんでぇーー!!? いいじゃんここで解放してよ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛)

「おら、行くぞガキ……あでっ」

 

 レアカードが詰まったカバンを掴み意気揚々とカードショップの自動ドアをくぐった強盗は、()()()()()()()()()

 

「む、すまない。大事ないだろうか」

 

 ぶつかったのは白い壁ではなく、厚く固く鍛え上げられた肉体を白の学ランで包んだ漢。権現坂昇だった。

 

****

 

「む、すまない。大事ないだろうか」

「おっ、おう。気を付けやがれ! ってあぶねぇ!?」

 

 偶然目に入ったカードショップへ入ろうとして、中から出てきた人物にぶつかってしまった権現坂は自身の注意不足を謝罪し、そして、強烈な蹴りを繰り出す

中から出てきた人物はとっさに飛びのくが蹴りによって発生した風圧により、着地の際にわずかに体が流される。

傍に立っていた少女(キュー)は突然の事態に目を白黒させて立ち尽くしている。

 

「てンめぇ! 何しやがる!? 急に頭狙って蹴ってくるとかジョーシキってもんがねェのか!?」

「強盗に常識を問われる云われは無い。さっさと盗んだカードを返して出頭しろ。

 この(おとこ)権現坂。犯罪行為、ましてや幼気な少女を脅し、人質にするような外道に与える慈悲なぞ持ち合わせておらんのでな。自ら出頭しないようであれば、俺自らが警察に貴様を届けてくれよう」

「オレサマが強盗だとォ!? どこにそんな証拠があンだよ!」

 

 あまりに無理のある強盗の自己弁護に権現坂は思わずため息を吐き、淡々と事実を指摘する。

 

「はぁ。黒ずくめの衣装に目出し帽と、異常に膨らんだカバン、締めに咄嗟に隠したようだが拳銃を持っているだろう。これだけ状況証拠があって強盗ではない可能性の方が有り得ないだろうが」

「チィッ、よりによってぶつかったのが名探偵だとはな……っ!」

「うわっ、びっくりするくらいバカ」

「あ゛あ゛ん゛?」

「ぴぇっ」

 

 あんまりにもあんまりな強盗の結論に思わず素直な感想がこぼれてしまい強盗に凄まれ、権現坂の影へと隠れるキュー。

しかし強盗はニヤリと口元を歪めてその手に持つものを見せびらかすように掲げる。

 

「ムカつく、ムカつくぜ……! ハッ、だがしっかりと盗らせてもらったぜ、クソガキ!」

「なっ、それは俺のデッキ……まさか先ほどの一瞬で盗ったというのか!?」

「げーっげっげっげ! あばよガキども!」

「待て!」

 

 出会い頭の一閃を避けながら、強盗は権現坂からデッキを強かにも盗んでいたのだ。

盗んだデッキを見せびらかし動揺を誘った一瞬で強盗は身を翻し捨て台詞を吐きながら()()()()()()()逃げ出す。

すかさず確保へ向かおうとする権現坂だったが、往来の激しい車道を前にして一瞬足を止めてしまう。強盗はむしろ好都合と言わんばかりに車の隙間を縫い、飛び越え車線の向こう側へと逃げ切ってしまう。

 

「ぬぅ、逃がしてしまったか……!」

 

 奥歯が砕けんばかりに無念さに噛み締める権現坂へと、おずおずとキューが声を掛ける。

 

「あ、あのっ。ごめんなさい……! 私のせいでキミのデッキが……」

「どうか気に病んでくれるな。これは俺の落ち度だ。親父殿であれば最初の一撃で完全にヤツを仕留めていた。

 ……しかし、奴は一体どこへ逃げるつもりなのだ?」

「……私なら、アイツがどこに逃げるつもりなのか分かる、かも」

「本当か!? いや、しかし……その、まだ休んでいた方が良いのではないか?」

 

 自分のデッキが盗られたというのに、権現坂がキューに向ける視線はどこまでもキューの心身を慮る気持ちのみ。

まっすぐ誠実で真摯なその思いやりにキューは動転し続けていた気持ちを落ち着ける。

フラットに戻した心で自分に問う。

 

―――私は誰だ?

ジュークジョイント“Killer Tune(キラーチューン)”切っての可愛い代表! そして可愛いを愛するDJキラーチューン・キューだっ!

 

―――そのキュー様が何をした? 何ができた?

無関係の一般人を巻き込んで、迷惑をかけて……何も出来てやしないっ!

 

―――それでいいの?

良いわけあるかっ! そんな可愛くない事、許せるわけないっ!!!

 

―――じゃあ、どうするの?

そんなの、決まってる。

 

「私の名前はキュー。世界で一番『可愛い』が大好きなDJ。

 そんでもって、やられっぱなしは―――可愛くないっ!

 だから、私にもキミのデッキを取り戻す手伝いをさせて。これは私のケジメだから」

 

 先ほどまでの顔を青くして震えていただけの弱者は消え去り、権現坂の前に立っているのは自分の譲れないもののために吠え戦う意志を全身全霊で示す表現者だった。

 

「―――あい分かった。俺の名前は権現坂昇だ。俺のデッキを取り戻すために力を貸してほしい」

「うん! 私の事はキューって呼んで! よろしくね権ちゃん!」

「ご、権ちゃん? う、うむ……こちらこそよろしく頼んだ、キュー殿!」

 

 キューは早速、権現坂からデュエルディスクを借りるとマップ機能とブラウザ機能を起動し次々と画面を切り替えては情報を脳内へと叩き込む。

そしてわずか1分足らずで舞網シティの地理情報を把握したキューはデュエルディスクを権現坂へと返す。

 

「オッケー! だいぶ絞れた!」

「も、もうかっ?!」

 

 にっ、と笑ってキューは権現坂の手を引いて走り出す。

 

「ほらほら急ぐよ権ちゃん! 私の考えが正しければ時間はあんまり無いよ!」

「あい分かった! 道案内は頼んだぞキュー殿!」

 

 小さな少女に手を引かれ、学ランの少年が走る。走る。走る。

―――目指す先は、廃工場。

 

****

 

「ここだよ。多分あの強盗はここに逃げ込んでいるはず」

「ふむ……ああ、確かにとうの昔に封鎖された工場にしては新しい痕跡が多すぎる。地面を覆いつくす雑草の一部に、踏み固められて日常的に出入りしているのであろう通路が出来てしまっている。どうやら普段からここを根城にしているのであろうな。

 アレを見ろ、通路に残された足跡のサイズから見て、あの強盗がすでに中に居るのだろう」

 

 キューに手を引かれたどり着いたのは20年以上前に権利者の夜逃げにより使用が停止され、『誰のものか分からない』所有者不明土地となってしまい行政も手を出せずに放置され続けている廃工場。一見、人の手を離れて長い廃工場だがよくよく観察すると権現坂の指摘の通り生い茂る雑草や積み重なった埃の中に人の痕跡が見え隠れしている。

さて、あの強盗に一泡吹かせるにはどれが一番いいか。とキューが策を練る中、ここまでわかれば十分。と言わんばかりに権現坂はずんずんと固く閉ざされた門の前まで進んでいく。

 

「あっちょ、権ちゃん?!」

「なに、ここまでわかれば十分よ。ここから先に小細工は不要。

 それにあの強盗に一泡吹かせたいのは、キュー殿だけでは無いからな」

 

 そして権現坂は足を肩幅に開き、()()を作る。

 

「あ、あれ??? 権ちゃんもしかして……」

「ふっ、そのもしかして。だ」

 

 ハァッと裂帛の気合と共に放たれた蹴撃は、バリスタを思わせる鋭さと威力を持って鋼鉄の門に激突し、鋼鉄の扉を廃工場の奥深くまで蹴り飛ばした

 

「……………は???」

 

―――そして奇跡的にも、先ほどまで門の役割を果たしていた鉄板の飛来ルートからはギリギリ離れていたために無傷ではあるが暴力的なまでの爆音と扉が重機も無しに弾け飛ぶ埒外の現実に晒されて間抜け顔を晒す強盗が、そこに居た。

 

「……アッハッハッハ!!! さいっこうだよ! 権ちゃん!」

「ふっ、これも迅速に居場所を探り出したキュー殿の力あってのものよ」

 

キューは強盗の間抜け顔にご満悦、権現坂もどこか自慢そうな雰囲気を滲ませており年相応の少年らしさを見せている。*2

たっぷり十秒ほど呆けた面のまま固まっていた強盗だがようやく我に返りとっさに抜いた銃を撃つ……が、

 

「ヌゥンッ!」

「ヒョエッごごごご権ちゃん?!」

「うっそだろ、オイ……!」

 

権現坂の鋼鉄で出来た特別製の下駄によって防がれる。

異常といえるほど身体スペックから繰り出される理不尽なまでの現実に思わず冷や汗をかく強盗。

しかしベルトに下げたデッキの存在に気づきニヤリと口元を歪めて強気に出る。

 

「あーもう、コイツは効かねぇか。ンならコッチだ。

 もっともテメェにデッキがあれば……だがなァ?」

「むう……!」

 

「あっ、そこは大丈夫だよ。権ちゃん」

 

そう、いくら身体スペックが勝っていようがデッキが無いのであればデュエルは出来ない。

忌々し気に、口惜し気に唸る権現坂へとあっけらかんとキューが告げる。

 

「言ったでしょ、権ちゃんのデッキを取り戻すために力を貸すって。私の……ううん。()()()の力、ちゃーんと使いこなして見せてね?」

 

ふわり、とキューを中心とした柔らかい風が吹き、キューの体をカードへと変え権現坂のデュエルディスクへとセットされる。

 

「これは……!」

「うげっ、あンのチビガキ、カードの精霊だったのかよ。初めて見たわ」

 

目を点にしている権現坂とは対照的に、どこか訳知り顔の強盗。

お互いに膠着しかけた隙間を埋めるようにデッキからキューの声が響く。

 

『ほらほら、ぼーっとしてないで行くよ! あんの強盗を私たちの可愛いすり潰す……!』

「おおっ、きゅキュー殿その状態でも喋れるのか。

 うむ、キュー殿の力お借り申す!」

 

「「デュエル!」」

 

権現坂昇 LP4000

VS

強盗 LP4000

 

****

「俺のターン! ふむ。

 これは……そういうことか」

 

 権現坂は手元の5枚のカードを見て、瞬時にキュー達(キラーチューン)のコンセプトを把握する。

 

「手札から《キラーチューン・キュー》を通常召喚!

 召喚時の効果でデッキからチューナー1体を特殊召喚できる!

 《キラーチューン・ロタリー》を特殊召喚!」

『よいしょー! さぁ! アタマっから飛ばしてくよッCom on! ロタリー!』

『あら、あたし?』

 《キラーチューン・キュー》星3/光属性/天使族/攻 900

 《キラーチューン・ロタリー》星1/光属性/サイバース族/守 800

 

 人間界用の私服からキラーチューンとしての衣装に着替え、元気よく権現坂の手札から飛び出したキューに引っ張られてデッキからゴシックな衣装に身を包んだ少女、ロタリーが呼び出される。

 

「キュー殿の制約により、このターン俺はチューナーモンスターしか特殊できなくなる」

「げーっげっげっげ! 知らねぇのか? シンクロ召喚ってのはチューナーとそれ以外のモンスターが必要になるんだぜ!」

「試してみるか?」

「あァ?」

 

 権現坂は高らかに宣言する。

 

「レベル3《キラーチューン・キュー》とレベル1《キラーチューン・ロタリー》でチューニング!

 シンクロ召喚! 響かせろ! レベル4《キラーチューン・トラックメイカー》」

『YO! YO! オマエラ今日も今日とて盛り上がってるかぁ!?』

 《キラーチューン・トラックメイカー》星4/光属性/機械族守2500

 

「ンなッ、チューナー同士でシンクロ召喚だとォ?!」

 

 ―――キラーチューンは異色のシンクロテーマである。

あらゆる効果にチューナーモンスターしか特殊召喚できなくなる制約をつけられた代わりに、メインデッキのモンスター及びエクストラデッキのモンスター全てがチューナーモンスターで構成された、チューナーモンスターだけでシンクロ召喚を行う常識破りのDJ集団。それがキラーチューンだ。

 

「特殊召喚に成功した《キラーチューン・トラックメイカー》、そしてS素材として墓地に送られた《キラーチューン・ロタリー》と《キラーチューン・キュー》の効果を発動!

 逆順処理により《キラーチューン・キュー》の効果から処理を行う!

 1つ目! 《キラーチューン・キュー》の効果で相手のデッキの上から2枚をめくり、その中から1枚を除外し、もう1枚をデッキの一番上か一番下に戻す」

『おらっ、デッキ見せろ!』

「うぉっ、オレサマのデッキが……!」

 

 キューの効果により強盗のデッキトップからカードが2枚がひとりでに飛び出し、両プレイヤーへと公開される。

 《グレイドル・インパクト》永続魔法

 《戦線復帰》通常罠

 

「グレイドルか……。

 《グレイドル・インパクト》を除外し、《戦線復帰》をデッキの一番上に戻す」

「あっ、コイツデッキトップ固定しやがった! カス!」

 

公開されていた《グレイドル・インパクト》が虚空へと追放され、《戦線復帰》が再び強盗のデッキトップへと戻っていく。

 

「2つ目! 《キラーチューン・ロタリー》の効果で相手の手札を全て確認し、その後、デッキから「キラーチューン」魔法・罠カード1枚を手札に加える事ができる。

 さあ公開してもらおう!」

『ごめんなさいねぇ』

「ぐぬぬぬぬ……!」

 

 キューに続けて放たれたロタリーの効果により強盗の手札が公開される。

 《グレイドル・アリゲーター》効果モンスター

 《グレイドル・コブラ》効果モンスター

 《グレイドル・スライムJr.》効果モンスター

 《大波小波》通常魔法

 《ヴァーチュ・ストリーム》通常罠

 

「うむ、確認した。

 その後デッキから《ジュークジョイント“Killer Tune”》を手札に加える」

 

 スイ、と公開された手札が元の非公開情報へと戻った後、おまけとばかりに権現坂のデッキからカードが1枚手札へと収まる。

 

「おまけみたいにサーチするな! オカシイだろ!?」

「3つ目! 《キラーチューン・トラックメイカー》の効果でデッキから《キラーチューン・シンクロ》を手札に加える」

『YEEEEEEAH!!!』

 

 トラックメイカーの効果によりさらにデッキからカードが1枚権現坂の手札へと収まる。

 サーチに次ぐサーチにより権現坂の手札は展開しているにも関わらず、初期の5枚を通り越し6枚へと増えていく。

 

「……ナァ、自分で使っててなんかオカシイと思わねェ?」

「………………まあ、うむ。その、なんだ。

 ……まだ終わりではないのだ」

『HEY! HEY! サガってんじゃねぇぞGUYS!!!』

 

 二人の間に流れた微妙な空気を押し流すようにトラックメイカーのDJプレイが爆音で鳴り響く。こほん、と咳を一つ。気を取り直してデュエルを続ける。

 

「手札からフィールド魔法《ジュークジョイント“Killer Tune”》を発動!」

 

 廃工場の現実を上書きするようにネオンぎらつく地下ライブハウスへとテクスチャが塗り替えられる。

 

「《キラーチューン・トラックメイカー》をリリースして《ジュークジョイント“Killer Tune”》の効果を発動! デッキから「キラーチューン」モンスター1体を選び、手札に加えるか特殊召喚する。

 俺はデッキから《キラーチューン・レコ》を特殊召喚」

『あいよー』

 《キラーチューン・レコ》星3/炎属性/悪魔族/守 800

 

 BYE!と高らかに退場するトラックメイカーと入れ替わりに、レコード盤を模した大小2つのお団子髪型の少女がスルっと登場する。

 

「さらに、特殊召喚に成功した《キラーチューン・レコ》の効果を発動し、デッキから《キラーチューン・ミクス》を手札に加える」

『へい、かもん!ミクス』

 

「さらに! 《ジュークジョイント“Killer Tune”》のもう一つの効果!

 自分は通常召喚に加えて1度だけ、自分メインフェイズにチューナー1体を召喚できる。

 《キラーチューン・ミクス》を通常召喚!」

『やはー!』

 《キラーチューン・ミクス》星2/風属性/戦士族/攻 100

 

 レコの効果によりサーチされたキャノンケーブルを模した髪型の少女が手札に加わりそのまま場へと踊るように飛び出す。

 

「召喚に成功した《キラーチューン・ミクス》の効果でデッキから2枚目の《キラーチューン・レコ》を手札に加える」

『踊れ踊れー!』

『またあたしー?』

 

 まるで尽きることのない源泉のように手札が再び6枚へと戻る。

 

「仕上げだ! 場のレベル2《キラーチューン・ミクス》と()()のレベル3《キラーチューン・レコ》でチューニング!」

「手札からだとォ!?」

 

 ―――キラーチューンは異色のシンクロテーマである。

本来、場のモンスターを素材にする必要があるシンクロ召喚だが、キラーチューンはその常識すら踏み越えていく。

 

「シンクロ召喚! 闇を(はし)れ! レベル5《キラーチューン・リミックス》」

『あーあ、楽しくいたかっただけなのにね』

 《キラーチューン・リミックス》星5/闇属性/戦士族/守2000

 

 陽気に踊って場を盛り上げていたのが嘘かの様に、静かに両手のプラグ型のガトリングを構えるミックスの武装形態。リミックスが現れる。

 

「カードを2枚伏せてターンエンドだ」

権現坂昇 LP4000 手札5 → 3

 

「オレサマのターン!」

強盗 LP4000 手札5 → 6

 

「《グレイドル・アリゲーター》を召喚! そして手札から―――」

『Gurrrr』

 《グレイドル・アリゲーター》星3/水属性/水族/攻 500

 

 鮮やかなグリーンとシルバーの入り混じるワニを模した寄生生物が低い唸り声と共に現れた、その瞬間。

 

「ここだな。《グレイドル・アリゲーター》の召喚成功時に《キラーチューン・リミックス》をリリースして効果を発動!

 墓地の《キラーチューン・レコ》《キラーチューン・ミクス》の2枚を選び、《キラーチューン・レコ》を特殊召喚し《キラーチューン・ミクス》を手札に加える。

 続けて前のターンから場に居たレベル3《キラーチューン・レコ》と手札のレベル2《キラーチューン・ミクス》でチューニング!

 シンクロ召喚! 闇に貫け! レベル5《キラーチューン・レッドシール》!

 まだだ! 特殊召喚に成功した《キラーチューン・レコ》、S素材となった《キラーチューン・ミクス》の効果をそれぞれ発動!

 《キラーチューン・ミクス》の効果で場の《グレイドル・アリゲーター》を破壊し、《キラーチューン・レコ》の効果でデッキから《キラーチューン・クリップ》を手札に加える」

 『うん。終わらせよう』

 《キラーチューン・レッドシール》星5/闇属性/悪魔族/攻1700

 

「―――はァ??????」

 

 権現坂の行動が差し込まれたことを認識した瞬きの間に、権現坂の場・手札・墓地が凄まじい勢いで回転し、結論として

 召喚したばかりのワニを模した寄生生物は爆散し

 権現坂の場には新たなシンクロモンスターが巨大なトーンアームを構えて出現し

 権現坂は手札が1枚増えていた。

 

「いや、ちょっ、はァ??????」

「ターンエンドか?」

「カードを、……3枚、伏せる。

 ……ターンエンドだ」

 強盗 LP4000 手札6 → 2

 

 目の前で起きた情報が処理しきれないのか、呆然とした面持ちの強盗は半ば条件反射的に手札のカードを確認した後に今取れる最善を実行してターンを渡そうとする。

しかし、ここでまた権現坂の行動が挟まる。

 

「エンドフェイズに《キラーチューン・シンクロ》を発動! それにチェーンして墓地の《キラーチューン・レコ》を対象に《キラーチューン・プレイリスト》を発動!」

 

 権現坂の場に伏せられていた2枚のカードが開かれる。

 

「《キラーチューン・プレイリスト》の効果により《キラーチューン・レコ》のS素材として墓地へ送られた場合に発動する効果を適用し相手の伏せカードを破壊し、《キラーチューン・レコ》を手札に戻す」

 

 強盗の場にブラフとして伏せられていた《大波小波》が粉砕される。

 

「《キラーチューン・シンクロ》の効果でデッキから《キラーチューン・キュー》を手札に加える。

 その後、場のレベル3《キラーチューン・レコ》と手札のレベル3《キラーチューン・キュー》でチューニング!

 シンクロ召喚! 轟かせ! レベル6《キラーチューン・ラウドネスウォー》!」

『YAーHAー!』

 《キラーチューン・ラウドネスウォー》星6/光属性/機械族/守3000

 

 もはやライブ設備そのものと一体化したトラックメイカーの強化形態。ラウドネスウォーが音を暴れさせる。

 

「S素材となった《キラーチューン・レコ》の効果を発動し、相手の伏せカードを破壊する」

 

 伏せられていた《ヴァーチュ・ストリーム》が砕け散る。

これで強盗の場に残されたカードは伏せカードが1枚のみ。そしてそれはキューによってデッキトップが固定され、ロタリーによって手札が全て公開情報となったことにより《戦線復帰》であることが確定する。

 

「俺のターン! ドロー!」

 権現坂昇 LP4000 手札5 → 6

 

「《キラーチューン・レコ》を通常召喚。

 召喚時の効果でデッキから《キラーチューン・ミクス》を手札に加える!」

『いえー、どっこいしょー』

『私が重いみたいだからその掛け声やめてね!?』

 

「場のレベル3《キラーチューン・レコ》と手札のレベル2《キラーチューン・クリップ》でチューニング!

 シンクロ召喚! 闇に(つんざ)け! レベル5《キラーチューン・クラックル》!」

AHHHHHHーーーーー!

 星5/闇属性/雷族/守2000

 

 脳を直接揺さぶるような音圧でデジタル・ハードコアなノイズをばら撒く巨大スピーカーを銃器の様に構える少女が空から地面を殴るようにして現れる。

 

「S召喚に成功した《キラーチューン・クラックル》、S素材となった《キラーチューン・クリップ》と《キラーチューン・レコ》の効果をそれぞれ発動!」

「チィッ、またバック破壊かよ! チェーンして《戦線復帰》を発動!」

「さらにチェーンする!

 墓地の《キラーチューン・レコ》を除外して《キラーチューン・レッドシール》の効果を発動! 《戦線復帰》の効果は無効だ!」

「なンだとォ!?」

「チェーン解決だ!

 《キラーチューン・レッドシール》で《戦線復帰》を無効にし、《キラーチューン・ミクス》の効果で《戦線復帰》を破壊!

 《キラーチューン・クリップ》の効果で相手のEXデッキの裏側のカードをランダムに1枚除外する!」

「やっやめっ、オレサマの《グレイドル・ドラゴン》がッ!!!」

 

 先のターンで既に見たレコの魔法罠破壊。それを回避し更に壁となるアリゲーターを蘇生させようと強盗が行動を差し込むが、それすらもレッドシールのトーンアームで刺し貫かれる。不発となった戦線復帰はレコにより破壊され、さらにクリップの効果により強盗のEXデッキからランダムに選出された1枚―――強盗の切り札、グレイドル・ドラゴンが無慈悲にもゲームから取り除かれる。

 

「場のレベル5《キラーチューン・クラックル》とレベル5《キラーチューン・レッドシール》でチューニング!

 シンクロ召喚! 調和せよ! レベル10《キラーチューン B2B(バックトゥバック)》!」

『やるよ! レコ!』

『はいはい。じゃあ……行こうか』

 《キラーチューン B2B》星10/闇属性/悪魔族/攻3200

 

 レベル10の大型シンクロモンスター。装いを新たにしたレコとキューが背中合わせに立ち強盗へと対峙する。

 

「攻撃力3200ゥ!?」

「それだけではない! 《キラーチューン B2B》は2回の攻撃権を持つ!

 終わらせるぞ! キュー殿!」

『任せな権ちゃん! 私たちの可愛いをくらえーっ!』

『ま、悪いことしたアンタが悪いってことで』

 

 キューがその手に持つ巨大な針を、レコがハンマーにも似た形態の武器を構え強盗へと致死の二撃を叩き込む。

 

「クソがァァァァァアアアアアッ」

 

 強盗 LP4000 → ー2400

 WINNER! 権現坂昇!

 

****

 

 その後の話。

キューによって可愛いを直に叩き込まれた強盗は「かわいい……サイコー。キューさまサイコー……」とうわ言のように繰り返す状態になったため、権現坂は自身のデッキを回収した後、警察を呼び強盗はあえなく連行。*3さらに強盗のアジトから見つかった大量の盗まれたカードたちは元の持ち主や店舗へ返却するため一時警察預かりとなった。

 

「うむ。これでひと段落はついたか。キュー殿、今回は改めて

 ―――キュー殿?」

 

 警察への対応がひと段落し、改めて自身のデッキを取り戻すために協力してくれたキューへ感謝を伝えようとキューを探すが……居ない。キラーチューン達が居たデッキも丸ごとデュエルディスクから消えており、彼女が居た痕跡はこの場には何も残っていなかった。

 

―――『うげっ、あンのチビガキ、カードの精霊だったのかよ。初めて見たわ』

なぜだか権現坂はデュエル開始前の強盗の言葉を思い出していた。

もしかしたら、デッキを取り戻すためにその正体を晒してしまった事が原因で姿を消してしまったのだろうかと、目を伏せる。

 

「……カードの精霊、か。

 この度は大変世話になった。御礼申し上げる」

 

 何もない虚空。されど確かに共に戦った恩人の居た場所に向けて真摯に一礼し、権現坂はその場を去る。

 

尚、その翌日の事である。

 

「あ、やっほー権ちゃん!」

「……カードの精霊的な制約か何かで精霊界に帰ったのではなかったのか?」

 

居た。街を歩いていた権現坂の向かいから能天気な顔をしたキューが片手を上げながらとたたっと小走りでやってきて権現坂の肩をぺしぺしと叩く。

一方の権現坂は昨日の別れは何だったのかと痛む頭を押さえるように顔を覆う。

 

「え、何それ。そんなん無いよー。あっ、昨日急に帰っちゃったから怒ってる!?

 やー、私カードの精霊だから戸籍無いし警察にいろいろ調べられたら困るから慌てて帰っちゃった。ごめんね?」

「……まあ、いいか。うむ。改めて、昨日は俺のデッキを取り戻すために協力してくれて助かった。かたじけない」

 

 自分の勘違いで昨日はしんみりしてしまった事を思い出し、先ほどとは別の意味で顔を覆う権現坂。それはそれとして、昨日伝えそこなった感謝の気持ちを今度こそ面と向かって伝える。

キューはぽかんとした顔になったあと「アッハッハッハ!」と笑う。

 

「もー、権ちゃんクソ真面目過ぎ! 友達なんだから助け合うのは当然じゃん!

 というかそもそも最初に私を助けてくれたのは権ちゃんだしね」

 

 今度は権現坂がぽかんと目を丸くする。

 

「え、何その顔。

 あだ名で呼んで、一緒に強盗追っかけて、そんで一緒にデュエルもしたんだよ?

 じゃあもう友達じゃん? ……それとも、権ちゃんとしては、イヤ?」

「……ふっ、嫌なわけあるか。我らは友だとも」

「だよねー! あ今日ヒマ? 近くのライブハウス見に行こうと思ってたんだ。一緒にいこー!」

「ああ。あまりそういう場にはこれまで行ったことが無いのだ。楽しみ方も教えてくれるか」

「もちろん! ほらほらいくよー!」

 

 花咲くように笑う少女に先導されて、柔らかな笑みを浮かべながら少年もまた確かに歩き出す。

 

「まだまだこれからお楽しみが待ってるんだから!」

 

 本当に楽しそうに歩く少女からこぼれた言葉が少年の幼馴染の決め台詞に似ていて思わず吹き出す。

 

「くっ、ふふ『お楽しみは、これからだ』か」

「ナニソレ!? めっちゃいいじゃん! お楽しみはこれからだー!」

 

 幼馴染の決め台詞が気に入ったのか空いている片手を天に突き上げながら少女は笑い。少年もつられて笑う。

そこには人間と精霊の隔たり無く笑いあう友人たちの掛け値ない友情が確かにあった。

*1
ここでは十代とかヨハンみたいな一部の人間じゃないと見れない半透明状態のことを指す

*2
権ちゃんは中学生です。

*3
強盗の意識は2時間ほどで回復した




オリキャラ強盗じゃなくて、(元々権ちゃんのタスキ盗んでたしコントロール奪取デッキ使ってた)暗黒寺ゲン+その手下にすればよいのでは?と最初は考えてたんですけど、そうなるとあまりにも私がバーバリアン大好きマンみたいだな……ってのと流石に原作キャラをゲスにしすぎるのもまずいか。となったのでオリキャラの強盗くんに生えてきてもらいました。
キラーチューンやってることエグ過ぎるので掛け合いを増やすことで誤魔化して……誤魔化せてるか?コレ?処理も多いのでもうしんどいッピ。

感想で頂いたのでリクエスト募集用の活動報告立てたのですが、私なんぞのところで使ってしまってもよいのか…?ってなるネタを頂いてしまいました。本当にありがとうございます。
全部が全部できるかはまだ書き出してないのでわかりませんが、折を見て投稿させていただきます。

■以降リクエストで頂いた件について
ARC-Vでのエンタメデュエルって↓のイメージがあるので、活動報告のとこで道化の一座(クラウン・クラン)と遊矢って割とシナジーありますよね!?って言われて思わず膝を打ったあとに「いやこれ自分で思いつきたかったなぁー!!!」と悔しがる等していました。
 遊勝  :マジックショー
 沢渡さん:自分が主演で相手が敵役の演劇
 デニス :即興もりもり大道芸
 遊矢  :サーカス
え、道化の一座(クラウン・クラン)遊矢の対戦相手……?
親父か沢渡さんかデニスか……
最悪は
糾罪巧(エニアクラフト)遊矢
VS
ズァーク・ユート・ユーゴ・ユーリと究極融合済み四天の龍とかアークレイを完全調伏した超覚醒遊矢VS獄神遊矢
VS
道化の一座(クラウン・クラン)遊矢
の地獄の対戦にするか(無理)

「黒咲兄妹ロボヲタ概念」も良き良き。クール系の皮を被ってノリノリで超量を回す黒咲は正直かなり見たい。ロボット系ホビーアニメに黒咲さん出てきたらそれはもうツンデレ系ライバル兼相棒なのよね…!(ただし今のままだと頭身が高すぎるので中学生くらいまで若返ってもらうものとする)そして匂わせだけはされてた妹キャラの瑠璃が数話経ってから満を持して登場。雰囲気はマジで儚げな瑠璃からアーゼウスとかティフォンとかの超巨大ロボを繰り出されたらファンになってしまう…!
「沢渡シンゴウィッチクラフト使い概念」は活動報告でもらった時「うわー!コレ見たい!まぁじで見たい!」って一人で騒いでました。マジでしびれたわね…。みんなもお好きでしょう?最初は姑息な手も使うお調子者キャラが大人のおねいさん(見た目はロリ)にイジられながら成長していくサクセスストーリー。私は見たい。
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