武士の子孫、異世界を制す   作:fumiy

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連盟試験

 

「実戦だぁ?魔術も使えねえのにか」

 

 支店長と呼ばれた大男が至近距離まで顔を近づけてくる、髭が当たってこそばゆいため出来ればやめて欲しいものだ。

 

「魔物の討伐、盗賊の征伐(せいばつ)、どちらでも構わない」

 

「ほう?言うじゃあねえか、男に二言はねえな?」

 

「ああ」

 

「そんな危険すぎます!彼を殺す気なんですか!」

 

 受付嬢が会話に割り込んでくる、確かに傍目(はため)から見れば無謀(むぼう)に思えるだろう。

 

「そん時はそん時だ、こいつもそれを承知して言ってんだろ、ほらついてこい」

 

 支店長は受付嬢を押しのけ入り口とも裏口とも違う扉を開く、そこには地下へ続く階段があり、降りて行ってしまった。

 

 ついて行こうとすると受付嬢が立ち(ふさ)がる。

 

「死んじゃいますよ!こんなことで命を賭ける意味なんて無いですよ!」

 

 見知らぬ相手だというのに、随分と心配をしてくれいるらしい。

 

「無論、私もここで死ぬつもりなどないさ」

 

 横を通り抜け階段へ向かう。

 

「あのな、男ってのは引けない時、引いちゃいけない時ってのがあるのよ」

 

「そうそう、あっ俺火酒追加で!」

 

「俺もー!」

 

 後ろから聞こえる冒険達の声は気にせず階段を下りていくと、かなりの広さがある空間に辿(たど)りついた。

 周囲を囲うように観客席も設置されているが、所謂(いわゆる)地下闘技場と言った所だろうか。

 

「お前にはこれからウチで捕まえている魔物と戦ってもらう」

 

「なにか戦う上での決まりはあるか?」

 

 場内へ飛び降りながら支店長に問う。

 

「いいや、生き残れば認めてやるよ」

 

「分かりやすくていい」

 

「はっはっは、まずは一戦目だ」

 

 鉄格子の扉がゆっくりと持ち上げられていく。

 

「こいつらは成人した男なら素手でもぶち殺せるが、群れてる時はちと手間取るぜ」

 

 奥から飛び出してきたのは、緑の体表に人の半分程度の体躯(たいく)の二足歩行型魔物。

 

「ゴブリンだ、魔術が使えるなら取るに足らねえ雑魚共だ、それが出来ねえてめえはどう戦う?」

 

 ゴブリンは通常石や木を用いて作った物を武器として使うが、五体のゴブリンはそれぞれに金属製の剣や斧を持っていた。

 

『ゲギャギャ……!』

 

 目を血走らせ(よだれ)を滴らせる様は普段の臆病(おくびょう)なゴブリンとは似ても似つかない、恐らくは何日も絶食状態にしているのだろう。

 

 背中から弓を外し、矢を三本引き抜いて一本を(つが)え引き絞り放つ。

 

「……フッ!」

 

『『ゲギャっ!』』

 

 空気を切り裂きながら突き進む矢は瞬く間にゴブリンへと迫り、二匹を(まと)めて壁に()い付ける。

 

 慌てふためくゴブリンたちは散らばろうとするが、こちらから位置を合わせてしまえば何も問題はない。

 

 地を蹴り走りながら、丁度二匹が重なる瞬間に矢を放ち命を奪う。

 

「魔術が使えねえってのにすげえ矢の威力だな」

 

「石の壁に刺さる矢ってなんだ?」

 

『ゲギギギッ!』

 

 背後から迫ったゴブリンの一撃を身体を左回転させることで躱し、その勢いのまま手に持った矢をゴブリンの側頭部に突き刺す。

 

 力無く腕を垂らしたゴブリンから矢を引き抜き亡骸を地面に置く。

 

「中々やるじゃねえか」

 

「ヒュー!」

 

「ゴブリン相手とはいえ大したもんだ!」

 

 支店長のお褒めの言葉に続き、冒険者たちが酒を片手に歓声をあげる。

 

「二戦目だ、門を開けろ!」

 

 支部長の号令で再び門が開かれ、新たな魔物が現れた。

 

 現れたのは口から前方に伸びる巨大な牙と、大きな鼻が特徴の四足獣(よんそくじゅう)

 

「『ギガノボア』、その激突野郎はゴブリン共とは違って、弓だけじゃあ簡単には止まらねえぞ」

 

 ボアは前足で地面を数回蹴ると、突然走り出した。

 

(四足の魔物は頭蓋(ずがい)が分厚く矢が通り辛いと聞いている、ならば狙うべきは)

 

 矢を番え狙いを定める、そして放つ。

 

「その目を貰うぞ」

 

 放たれた矢は、吸い込まれるようにボアの右目に突き刺さる。

 

『ピギイイイイッ!』

 

 ボアは悲鳴を上げるが足を止めることは無く走り続ける、だがその勢いは確実に落ちている。

 

「なんて精密な射撃なんだ」

 

「魔術が使えなくてもあの腕ならウチに欲しいな……」

 

 冒険者達の評価は上々と言った所だろうが、腕を組んでこちらを見下ろす支店長の評価を上げるならばもう少し派手に動いてもいいかもしれない。

 

 弓を背中に戻し重心を低くし、両手を前に構える。

 

「何やってんだあいつ、このままじゃ弾かれるぞ……!」

 

『フゴオオオオオオ!!』

 

 血を撒き散らし荒い鼻息を繰り返しながら迫る二本の牙を掴む。

 

『ブギっ!?』

 

 明らかな困惑の表情がボアの顔に浮かび上がる。

 そうもなるだろう、自分よりもはるかに小さい生き物が、自慢の突進を受け止めたのだから。

 

「はああっ!」

 

 ボアを持ち上げ、硬い地面に頭から叩き付け首の骨を()し折る。

 

「見たか今の、本当に魔術使えないんだよな……」

 

「お前身体強化ありでボアの突進止められるか?」

 

「いや無理無理……」

 

 実力を見せつける程に引かれているが、この状況に置いてそれは最も良い評価と言えるだろう。

 

「……次だ!3戦目はコイツだ」

 

 地響(じひび)きがする、つまりは相当な大きさの魔物だという事だ。

 

「な!あれは……」

 

 観客席が一気に騒がしくなる。

 

「連盟はこんなの飼ってんのかよ!」

 

 木の幹のような太い手足、人の数倍はある背丈(せたけ)、そして特徴的な大きな一つ目。

 

「次の相手は『サイクロプス』だ」

 

「支店長!いくら何でも無茶苦茶すぎます!、それにあのサイクロプスは王都直々の依頼の魔物ですよ!」

 

 個人だけでは無く都市単位で依頼を受け付けているとは、思ったよりも連盟という組織は巨大なようだ。

 

「あいつの実力を測るためだ、それに後でまた捕獲依頼を出すから問題ねえよ」

 

 彼は私ならこの魔物を倒せると期待をしてくれているのだろう、ならばそれに答えない訳にはいかないだろう。

 

「いくらなんでもサイクロプスを一人でなんてのは」

 

「魔術が使える俺でも出会いたくねえのに……」

 

『グルルゥ!!』

 

 (つか)に手を()け、(うな)るサイクロプスと(にら)み合う、相手は巨大だがそれは引く理由にはならない。

 

「勝負ッ!」

『グララァッ!』

 

 ほぼ同時に駆け出した。

 

(やはり動きは鈍い)

 

 巨体なだけはあり動きは緩慢(かんまん)だが、歩幅は大きく距離が詰まるのが早い。

 

『グラアア!』

 

 一発二発と振るわれる大振りの一撃を躱し、サイクロプスの動きを観察する。

 

 動き自体は警戒する程ではないが、重量の(ともな)った一撃はやはり侮れない。

 

 (ひび)割れた地面を横目に、(ふところ)へ飛び込み腹を斬り付け、さらに股下を通り抜け右脚の内腿(うちもも)を切り裂く。

 

(深くはない)

 

 筋肉の鎧と呼ぶべきか、サイプロプスの肉体はかなりの強度を持っている。

 

 恐らくだがその体重を支える骨がさらに強固であることは間違いなく、簡単に切断とはいかないだろう。

 

(だが手はある)

 

 サイクロプスの振り向きざまの裏拳を後方に跳ぶ事で避け、着地と同時に一気に距離を詰めサイクロプスの横を通り抜ける際に脇腹を斬り裂く。

 

(まずは動きを鈍らせる)

 

「すげえ、あのサイクロプスを翻弄(ほんろう)してやがる……!」

 

「一撃でも喰らったら終わりだってのに、あの距離感で戦うのが怖くねえのかよ……」

 

 サイクロプスの振り下ろしを身体を横にずらすことで躱し、めり込んだ腕の肘の内側を突き刺しすぐに引き抜く。

 

 逆の腕による()ぎ払いを背面に跳躍(ちょうやく)することで(かわ)し、回転を加えながら二の腕を斬り付ける。

 

『グラアアアアアアアアッ!』

 

 サイクロプスが雄叫(おたけ)びを上げた所で大きく後ろに跳んで距離を取ると、手足を振り回し大暴れを始めた。

 流石にこの状態で近づくことは難しいが、慌てる必要はない。

 

「あまり動くと傷口に響くぞ」

 

 声を上げ地を踏みしめ空を殴る度に、サイクロプスの身体中から鮮血(せんけつ)鮮血(せんけつ)(あふ)出し体力を失っていく。

 

 息も荒くなり、その瞳からは光を失い始めている。

 

 刀を振って血を払い、刃を鞘に納め姿勢を低くする。

 

「柳流剣術奥義『燕断(つばめだ)ち』」

 

『グルル……』

 

 サイクロプスはようやく落ち着きを取り戻したが、すでに息も絶え絶えといった状態だ。

 

「これで終わらせてやる」

 

 前傾姿勢のまま走り出し、一気に距離を詰める。

 

『グオオっ!』

 

 最後の力を振り絞ったサイクロプスの一撃を跳んで避け、その長い腕を足場にして駆け上がる。

 

 そしてめり込む程に、足でサイクロプスの肩を強く踏み込み。

 

『グォッ!』

 

「『一閃』!」

 

 高速で解き放たれた刃は首へと吸い込まれていき、容易く筋肉を通過し強固な骨すらも両断し頭部を()ね飛ばした。

 

 崩れていく身体から飛び降り地面に着地する。

 

 ゆっくりと倒れ伏すを亡骸(なきがら)不動(ふどう)のまま見送り、懐から取り出した紙で刃を拭き取り、ゆっくりと鞘に納める。

 

「……」

 

 息を吐き、緊張をほぐす。

 

「すげえ……」

 

 誰かの声が場内に響いた、それを皮切りに歓声と困惑の声が続々と掛けられる。

 

「あのサイクロプスを魔術を使わずにたった一人でやっちまうなんて、お前何もんだよ!」

 

「正確な射撃能力に怪力、剣捌き、是非ウチに来ないか?」

 

「本当に人間かよ……」

 

 一先ず冒険者たちの評価は上々のようだ、後は支店長に認められたかどうかだが。

 目を向けると客席から飛び降り、こちらに歩いて来た。

 

「とんでもねえ野郎だな、おめえは」

 

「それで、結果は」

 

勿論(もちろん)合格だ、俺の名はガロス、おめえは?」

 

 ガロスが凶悪な笑みを浮かべ、こちらに手を伸ばしてきた。

 

「私の名前はアルマ、これからよろしく頼む」

 

 握手をし笑みを返す。

 

「よしおめえら新人歓迎会と行くぜ!今日の酒は全部俺の(おご)りだ!」

 

「うおおおおお!」

 

 冒険者達が歓声をあげる、余程飲むことが好きらしい。

 

「流石ガロスさんだ!見た目通りの太っ腹だァ!」

 

「今言ったの誰だこの野郎!」

 

 どうやら中々に面白い場所のようだ。

 




アルマは産まれながらの怪力であった
魔術を使えずともここまで乗り越えられたのは、これのお蔭でもあるだろう
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