武士の子孫、異世界を制す   作:fumiy

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初共同依頼

 

 

 翌早朝、護衛依頼を探すために連盟へ顔を出すと、既に受付で仕事をしているライラが居た。

 連盟内は昨日の賑やかさが幻のように、酒場の食器の音が響くほど静寂に包まれている。

 

「おはよう、ライラ」

 

「……!おはようございますアルマさん早いですね、依頼ですか?」

 

 どうやら仕事に集中して、入って来た事に気付いていなかったようだ。

 

「ああ、まだ追加はされていないのだな」

 

 掲示板を見るが、昨日私が空にした時のままだった。

 

「依頼書の張り出しはもう少し後ですね、それまで朝食を()られてはどうでしょう」

 

「そうさせてもらおう」

 

 酒場の適当な席に座り料理を注文する、昨夜の宴で並べられていた料理はどれも非常に美味かったので何を頼んでも期待できるだろう。

 

「失礼、こちらに座ってもよろしいでしょうか」

 

「ああ」

 

 隣の席に、髭を(たくわ)えた恰幅(かっぷく)のいい男が座る。

 

「昨日の戦いは非常に見事な物でしたな」

 

「あの場に居たのか?」

 

 戦闘後の宴会(えんかい)で顔を合わせることは無かった気がするが、酔った大勢(おおぜい)冒険者達に絡まれていたのを見て気を使ってくれていたのだろうか。

 

「ええ、丁度他の商人と情報を交わしていた最中だったのですが、いやぁ良い物を見ることが出来ました」

 

「楽しんで貰えたのなら何よりだ」

 

「わたくし魔道具商のコラルと申します、今後ともお見知りおきを」

 

「私はアルマ、故あって旅をしている、……所で何か用事があるのだろう」

 

 軽く握手を交わし、話をしに来た真意を尋ねる(たず)

 挨拶や顔見せをしたいだけならば昨日の晩に出来たはずだ。

 

「はい、実はあなたに道中の護衛依頼をお願いしたいのです」

 

 護衛依頼か、正に待ちかねていた物ではあるが。

 問題はその目的地であり、可能な限り聖国から距離を離したくはない。

 

「私にも旅の目的があってな、受けるかどうかは詳しく話を聞いてからにさせてもらえないか?」

 

「もちろんです、ではまずこれを見ていただきたい」

 

 商人はかなり使い込まれた紙を机に広げた。

 彼は長い年月を旅をしているのだろう、各地の情報が詳細に描き込まれた地図を見れば察することが出来る。

 

「現在私たちがいるエイノスからザーウェイまで道中の護衛を依頼したいのです」

 

 この場所ならば今よりも聖国に近づける、位置に関しては問題なさそうだ。

 

「ここエイノスからザーウェイまでの道はある程度舗装もされ、人通りも多かったのですが……」

 

「流れの賊でも現れたか?」

 

「ええ、しかもその頭首や幹部は元騎士だとか、あの辺りから避難してきた商人の話ですが」

 

「確かに厄介な話だな……」

 

 崩れの騎士達が徒党を組んだ盗賊はそこらのならず者とは違い、個の能力が高く連携も取れているために非常に厄介な相手だと言われている。

 

「国は対処に動いていないのか?」

 

「物流の問題もありますから通常はもっと早く対処するのですが、何でも近年魔物の凶暴化が各地で起こりその対処に追われているとか、これはあくまで噂程度のものですけどね」

 

「凶暴化?」

 

 初めて聞く話だ、季節によって魔物は繁殖で凶暴化すると知識にあるが。

 

「貴方が昨日に倒したサイクロプスも本来この付近にはいない筈の魔物なのですが」

 

「思ったよりも深刻な問題のようだな」

 

 その話を聞くとこの地を離れずらくなってしまうが、それはどこも同じ状況なのだろう。

 

「よし、依頼を受けよう」

 

「ありがとうございます、貴方のような実力者が居れば旅の安全は確実ですな」

 

 商人は地図をしまい席を立つ。

 

「出発は二日後の早朝、ではよろしくお願いします」

 

「ああ、備えておこう」

 

「では、失礼します」

 

 商人は軽く頭を下げると去っていった。

 

 取り敢えずは次の目的地は決まった訳だが、今日と明日は暇になってしまった。

 掲示板を見ると依頼書が丁度張り出されているが、仕事を受けて時間を潰すのも良いだろう。

 

「おまたせいたしました」

 

「ありがとう」

 

 一先ずは腹ごしらえを済ませてしまおう。

 

 

 ――

 ――

 

「中々の朝食だった」

 

 朝食を摂り終える頃には連盟に内にも人が増え、冒険者達の活気に溢れ始めていた。

 掲示板前は人が集まり、依頼書の中身を吟味しているようだ。

 

 私が行くのはある程度人が落ち着いてからでいいだろう。

 

「リー君おはよー、早いんだね」

 

「おはよう、君一人か」

 

 ミーアが隣の席に座る。

 昨日一緒にいた者達はいないようだ、最も彼らにとって私がいて心地良くはないだろうが。

 

「速くリー君に会いたくて先に来ちゃった!」

 

「そうか」

 

「……あれ?」

 

「そういえば昨日言われたモテモテになるという話、さっそく効果が表れたようだ」

 

「それってもうここを出てっちゃうってこと……?」

 

 心なしかミーアの表情は不安そうに見える。

 

「詳しくは言えないが二日後には発つ予定だ」

 

「そうなんだ、じゃあ今日と明日は暇ってこと?」

 

 旅の支度や休息の時間を含めれば一日中とは言えないが、暇であるとは言えるだろう。

 

「そういうことになるな」

 

「やった!じゃあさ、一緒に依頼受けない?」

 

「私は構わないが、他の者達は気が進まないのでは無いだろうか」

 

 これから受けることもあるだろう共同依頼の予行として、顔見知りのミーアと行うのも悪くないだろう。

 ただ懸念があるとすれば相手方に好ましく思われていないという所だが。

 

「大丈夫だよー、ミーアがお願いしたら言ったら聞いてくれるから」

 

「それならいいのだが」

 

 当人が今までそれでやってきたのなら何も言うまい。

 

「そういえば朝ごはんってもう食べちゃった?」

 

「先程済ませたな」

 

「そっかー、一緒に食べたかったな」

 

 分かりやすく落ち込んだような表情になるミーア、確かに誰かと食事をするというのは楽しく、不思議と美味しく感じるものだ。

 

「なに、機会はいくらでもあるだろう」

 

「……じゃあ、今日と明日の三食は全部一緒にたべて貰っちゃおうかなー?」

 

「次にいつ会えるかも分からないからな、それも良いだろう」

 

 世界は広く果てしない、そして今の世は今日会ったとしてもまた明日無事に会えるかは確実では無い危険な時代だ。

 

「リー君ってさ、ううんなんでもない」

 

「そうか」

 

「……」

 

 時折、彼女の纏う雰囲気が変わる、だがそれは容易く踏み込まない方がいいだろう。

 

 ミーアも朝食を摂り終え共に掲示板へ向かうとたくさんの冒険者達で賑わっていた。

 

「ありゃ~、出遅れちゃったな」

 

「しばらく待てば空くだろう」

 

「えー?その間にいい仕事取られちゃうよー」

 

 依頼は常にある物でなく稀に一つも無い時があるとライラは言っていた、そういう時は連盟が代わりの依頼を用意し仕事を保証しているのだそうだ。

 ただそれも一日分の寝食を補う程度であり、そのため基本的に依頼は争奪戦になってしまう。

 

 そして、その争奪から外れ余る依頼と言えば、安全だが報酬の少ないものか報酬は高く危険性の高いものとなる。

 

「ようやく空いたね、……やっぱりいい感じのは残ってないかー」

 

「これは報酬が高いようだが」

 

「どれ?あー、確かに報酬は良いんだけどね、でもリー君とだったら……うーんでも」

 

「ダメなのか?」

 

 ミーアはなにやら思い悩んでいるが、そんなに危険性の高い依頼なのだろうか。

 

「この依頼は俺もおすすめはしねえな」

 

 振り返ると昨日実戦での採用試験を提案してくれた槍使いの男が居た。

 

「説明を詳しく読んでみな」

 

「ふむ?」

 

 討伐対象はオークの群れ、場所は森奥の洞窟であり狭い場所での戦闘を強いられるだろう。

 依頼主は近隣の村の長であり、なんでも作物や家畜をオークに奪われる被害を受けているようだ。

 

「オークってのはゴブリンみたいな人型の魔物でな、俺達より一回りも大きくて力も強いってのに群れも作る厄介な奴らなんだよ」

 

 本で見た事はあるが実際に見た事はない、それ程に強力な相手というのならば逆に戦いたくなってしまう。

 

「まあボアの突進受け止めたりサイクロプスをたった一人でやっちまうあんたなら大丈夫なんだろうが、今回は同行者もいるんだろ?」

 

 後半の方はミーアに気を使ったのか小声になったが、確かに彼に話は理解できる内容だ。

 

 ミーアの方を見ると目が合い柔らかく微笑まれる。

 

「そうだな」

 

 無論味方が多いことは心強いがそれは実力を知っている相手だからこその話であり、まだ未知数であるミーア達と共に戦うのはまだ早いのかもしれない。

 

「では今回はこの依頼にしておこうか」

 

 内容はゴブリンの群れの駆逐、こちらの方であれば実力を見極めるのに丁度いいだろう。

 

「本当にそれでいいの?」

 

 ミーアは申し訳なさそうに確認をしてくる。

 

「依頼主の事を思えば一時も早く解決をしてやりたいが、この街の冒険者は我々だけでは無いのだろう?」

 

「そうだぜ?なんせでかい街だからな、いろんな所から強者達が集まってくるんだ」

 

 そう言って槍使いがオークの依頼を掲示板から剥がす。

 

「今回は俺達が解決してくっからよ、ゴブリン達の駆除は任せたぜ?どっちも困ってる人達がいるのは確かなんだからな」

 

「ああ、気を付けてくれ」

 

「あんたもな」

 

 槍使いは後ろ手に手を振りながら歩いていく。

 受付で待っている冒険者たちは彼の仲間だろうか、いずれもただ者では無さそうだ。

 

「じゃあ行こっか!」

 

「そうだな」

 

 旅立つ槍使い一行を見送り受付へと向かった。




ライラ
連盟の受付嬢を務める女性
街一番の連盟である為、その分冒険者が多く依頼も多く仕事も多い。
怪我をした冒険者を見て心を痛めるほど心優しいのだが、日頃の激務によってやや精神が擦れている。
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