ミーアがこちらにいち早く気づき大きく手を
「アーくーん!待たせちゃったかな?」
ミーアはやや
「いや、私をつい
矢の補充をするために街を歩いていたが、中々好むようなものを見つけられずに時間が掛かってしまった、そのお陰かそれなりの物を入手出来たので満足はしている。
各地で展開をしている店のようで、見つける度に矢を買い込むのも良いだろう。
「よかったー」
ほっと胸を撫で下ろすミーア。
「じゃあいこっか!」
手を引き依頼へ出発しようとするミーアを止める。
「少し待ってくれないか?」
「どうしたの?忘れ物でもしちゃったかな」
「依頼を始める前に彼らと自己紹介をさせて欲しい」
ミーアとはある程度話したが、彼らとはまだ
「あれ?そうだっけ」
「いや俺達は別に……」
「必要あるか?」
「……」
思っていた以上に歓迎されていないようだ、どうしてここまで嫌われているのかは分からないが、考えていても仕方のない事なのだろう。
「私からは一応しておこう、名前はアルマ、主にこの刀と弓を使用している、短い間ではあるがよろしく頼む」
「……」
三人は特に返事をする事も無く、
「はぁ……」
ミーアが小さくため息をつく、
「じゃあ行こっか!」
「そうだな」
再びミーアに手を引かれ依頼へと出発する。
――
ある
「ゴブリンは今
ただでさえ数が増えやすいゴブリンは繁殖期になるとその数が倍以上になり、エサ不足で人里に現れることが増えるという。
さらにその増えたゴブリン達を狙った大型の捕食者達も現れるため、
幸いこの辺りのゴブリンが繁殖を行う場所は大体把握されているようで、定期的に連盟が討伐依頼を出しているそうだ。
「ミーアちゃん、そろそろ目的地に着くよ」
剣を持つ冒険者が先程と打って変わり穏やかな表情で話しかけているが、ミーアの反応はどこか微妙なままだ。
「アーくん準備は出来てる?」
「
木々の
周囲に転がった木の実や小型の魔物の
「ごはん中かな?じゃあ私から始めるね」
そういってミーアは背中から長杖を外し天に
「貫け閃光、『ルクス・ハスルチェート』!」
杖の先から光の玉が出現し天高く浮かび上がる、それは複数に分裂すると槍へと姿を変えゴブリン達を
ミーアは慌てふためくゴブリンの
「どうかな?」
「ああ、見事な魔術だ」
彼女も冒険者である以上戦えるだろうとは思っていたが、相当な使い手のようだ。
「えへへ、でしょでしょ?」
軽く姿勢を下げ刀に手を掛ける。
「では、援護は任せよう」
「任せて!」
両足に力を込めて走り出しの群れに飛び込み刀を振るおうとするが、突如現れた炎と雷が前方のゴブリンを
「おい、お前ちょっとまてよ」
「あんだけ
「……キエロ」
いつの間にか近くに来ていた剣士と斧使いと短刀使いが、戦っている最中だというのに前方に立ちはだかる、彼らは一体なにを考えているんだろうか。
ただ魔術の腕は確かなようで、こうしている間にも周囲のゴブリン達は次々と
「聞いてんのか?」
「ミーアちゃんにこれ以上近づくんじゃねえよ」
確かにミーア距離感は多少近いのかもしれないが。
それにこちらからではなく彼女の方から近づいてきているのだからどうしようもないだろう、親しくなろうとしてくれている相手に
「近づいたとして、どうする?」
そういう場合では無いという事は分かっているが、彼らの
「多少は痛い目を見てもらう事になるぜ」
剣士がこちらに剣を突きつけ敵意を見せる。
「そうか」
どうにか依頼の間に親しくなれないかと考えていたがその必要は無さそうだ。
「分かったな、この依頼が終わり次第どっかに消えろよ」
「
「何?」
「断ると言った、お前達に決められるようなことではない」
「そうかよ、おい
剣士の男が声を上げると短剣使い反応し
「夜の
世界が闇に
「じゃあよ、近づきませんって言わせてやる」
「もう少しで完成するんだからよ、お前みたいなのに奪われてたまるかよ」
男達は
世の中にはこれ程までに愚かな者がいるのかと、思わず溜息をついてしまう。
「お前達に聞いておこう、
「さてなァ、たまに歯向かってくる奴が来た時は毎回やってるぜ」
「――そうか、ではやろうか」
彼等が考えを
「
剣を抜き
「グホっ――!?」
剣士は身体を
「――っ!『ファルガル・ブレット』!」
斧使いが飛ばす雷の弾を
「オゴっ!」
その勢いのまま短刀使いまで走り、高速で刀を
「ひィ!」
防御をするために突き出された短刀を根元から切り飛ばし、左手で
「ガァぁえ……!」
「今すぐこの魔術を
胸倉から手を離し首を掴み、
「わ”わ”がっだ……!」
『ゲギギッ!』
男の首を
「お前達には話を聞かせてもらう、いいな?」
刀を構えながら倒れている男を見下ろす。
「は、はい……」
――
「お疲れ様、あーくん」
「ああ、ミーアも少し疲れただろう、休むといい」
「……うん」
ゴブリン達の
あれはサークルスと呼ばれる物体を射出する機能を持った魔道具によって発生した光であり、処理依頼を受けた者達に終わりを
例えば大量に発生した魔物を全て倒したとしても死体がそのままならば魔物が増えるという結果は変わらない、それを防ぐために連盟が依頼を出すのが処理依頼だ。
死体を
そして、冒険者の亡骸を回収することも仕事の一つだ。
「これからどうするつもりだ?」
横に座るミーアへ問う。
「どうしようかな、一人になっちゃったし……」
既にいない三人のいた場所を見てから、私の肩に頭を預けるミーア。
彼女は彼らが今迄してきた事を知らなかった。
ゴブリンの群れを討伐した後、気絶した男達を叩き起こし改めてミーアの前で全てを明かさせた。
その時のミーアの反応は怒りと困惑と悲しみに満ちたものであり、とても
「
「考えたくもない話だな、だがあの三人はもう近づくことは無いだろう」
ミーアには近づくなと
「よく考えると良い、話したいことがあれば
「ありがとアーくん」
頭を全て多い
血が身体に触れないよう
「処理依頼で来ましたー、死体はあそこにあるのだけでいいっすかー?」
「ああ、よろしく頼む」
「了解っす、よーしお前らやるぞー」
軽口を交わしながらそれぞれが死体を解体し袋に
「さて、我々も戻るとしよう」
「そうだね」
彼等の
背を預けていた巨木から離れるとミーアが立ち上がり隣に並ぶ、その表情に暗さは残っていない、一先ずは大丈夫だと考えて良さそうだ。
「――――――!」
「何だ……?」
辺りを見渡し出所を探すため耳を
「どうしたのアーくん?」
「誰かの叫び声が聞こえた」
「叫び声……?」
どうやら彼女には聞こえていないようだ、処理依頼の彼らも特に動きはなく作業を続けている。
「――――――!」
「あっちの方か、済まないがミーアは先に連盟へ戻っていてくれ」
「え?」
声が聞こえていた方へ走る、木々を躱しながら流れていく景色の中から何も見逃さないように目を凝らす。
森の中を進む程に轟音や叫び声が大きくなっていく。
「あれは……!」
血塗れで倒れ伏している冒険者を見つけた。
「大丈夫か!――酷い傷だ」
全身の青い鎧は所々が
抱き起こし治癒の魔力が掛けられた
口元に耳を寄せるとまだ息をしていることが確認できた。
「たすけ……てくれ……!」
「ああ、すぐに街へ連れて帰る――」
腕を掴み
「仲間が……まだ――」
そこで言葉が
袋からサークルスを取り出し天に向かって撃つ、放たれた弾は空高く上昇し青い光を放つ。
念の為にと、救難信号弾を私にも持たせてくれたライラには感謝しなくては。
「少しここで待っていてくれ」
冒険者を木に
立ち上がり彼が指した方へ駆け出す、彼の仲間や危険な魔物が居るというのなら急がなくてはならない。
サークルス
銃のような鈎型をした射出機
魔道具なのだが使用者に魔力の使用を求めず、誰でも使えるようになっている。
赤い光は死体回収の報せ、青い光は救難信号を意味している。