「ヨウカイ、そしてオニか……、聞いたこともねえな」
依頼達成と
ミーアはガロスに少し
私が到着するまでに血霧童子と戦っていた冒険者達は現在
「魔物とはちげえんだよな?」
「私も書で読んだ程度の事しか分からないが、
自然発生し進化の果てに産まれた魔物達とは違い、怒り悲しみ憎しみ恐怖、それを糧に発生し成長すると残されていた。
「魔物より
精霊というのは魔物とは違い、濃い魔力が集まり形を持ち、意識が生まれた存在だ。
「んで、それがなにかしらの原因でこっちの世界に
何が原因かは詳しく分からないが、恐らくは初代当主と同じことが起きたのだろう。
「信じられないか?」
ガロスは腕を組み椅子に背を
唐突にこのようなことを言われても困惑するだろう、私自身も書を読んでいなければただの魔物と思っていた。
「正直な……、だが例が無いわけじゃねえ、すぐに連盟本部に
ガロスは紙と
「ヨウカイっつうのは他にもいるんだよな?」
「ああ、最もその妖怪達がこちらに来てるかどうかは分からないが」
「まあ
ガロスは書き終えた手紙を包みに入れ、
「机に
そう言って机に積まれていた
首からは
確か使い魔と呼ばれる存在だった
「頼んだぞゴルグ」
『ギュララ』
ガロスがゴルグと呼ばれた竜の
「そういった
余程
「うるせえよ、んなことよりもだ」
「そのうち連盟本部の方からお前に話が行くだろうから、その時はしっかり頼むぜ」
「覚えておこう」
いつまた血霧童子のような妖怪が出るとも限らない、出来る限りは情報を交わしておくべきだろう。
もっともその時に時間的な余裕があればの話ではあるのだが。
「話はこれで終わりだ、もう下がっていいぞ」
「そうか、では失礼する」
支部長私室を後にし酒場へ向かうと、ミーアが
窓の外から差す光は赤みを
「待たしてしまってすまないな」
隣の席に座り彼女と同じ飲み物を注文する。
「お話は終わったの?」
「ああ、確認をしただけだからな」
まだミーアの表情は暗い、あの三人の事を振り切れて居ないのだろう。
それも仕方の無いことだ、例え彼らが
それに彼女は思考や発言が大人びているとは言えまだ幼いのだ、簡単に切り替える事は難しいのだろう。
「お待たせいたしました」
「ありがとう」
先程まで喋り通しだった喉を果実飲料で
「これからどうするつもりだ?」
「どうしよっかな、また一人になっちゃったし……」
「また?」
「ミーアの家族はね、ミーアが今よりずっと幼かった頃に殺されちゃったんだ」
その声と
「そうか……」
この世界ではどこでも起こりえる事だ。
街の外へ出れば魔物や盗賊などに
「うん、それでね、助けてくれた騎士団の
「ああ、あれは見事な魔術だった」
あの
「えへへ、それでね十三歳になったミーアは
「大きな
その場所がここよりどれだけ離れていたのかは分からない、だが例え近い距離だとしても人間がたった一人で街の外を出歩くにはこの世界は
「ミーアはじっとなんてしてられないもん、だって家族を殺した奴らは、まだ生きてるんだから」
ミーアの
この現象は見たことがある、感情の
まだ精神の熟していない子供にはよくあることなのだと、父上は言っていた。
「
「――っ!」
ミーアの頭に手を置き優しく
父上はよくそういった子達の頭を撫で、落ち着かせていたのを覚えている。
もっとも私に関しては感情的になった
ただ人よりずっと力が強かった為、周りと同様に
「――もう、女の子の頭は簡単に
「悪いが他に
手をどけようとすると、ミーアの小さな手がそれを掴んで
「ううん、ミーアは嫌いじゃないから大丈夫だよ」
彼女の
「そうか」
だが嫌ではないのならば、彼女が望むままにこうするのもいいだろうか。
――
「あの者達と出会ったのは、この街へ来て直ぐだったのか?」
落ち着きを取り戻した彼女の頭から手を離し、
「うん、ほらミーアってかわいいでしょ?」
「そうだな」
「――」
彼女も
「……それで色んな人が仲間に
「そうか」
彼女にとってはさぞ心強かった事だろう、そして彼女の
(
思わず力が入り過ぎそうになり、手に持った器を机に置く。
ミーアに対しての
一呼吸をして怒りに満ちそうな感情を静める。
「ミーアお腹すいちゃった、なんか食べよ?」
「そうだな、好きな物を頼むといい」
「きゃー!アーくん素敵」
二度と会う事も無い人間に腹を立てるよりも、
———
「はいアーくん、あーん」
(早いところ代わりの武器を用意しなければな……)
出来れば
「どう?美味しい?」
「そうだな、好みの味だ」
「そうなんだー、作り方教えて貰っちゃおー」
弓でも戦えるが、様々な状況に対応するならば刀の
「ミーアにもあーんして?あーん」
「……」
出来れば
「もうアーくん!あーんてする時はあーんって言うの、もう一回!」
それも無ければ
「……あーん」
「あーむ、あはっ、アーくんに食べさせて貰っちゃった……!」
すでに十を
「あーあ、食べ終わっちゃったね……」
「そうだな、では宿へ帰ろうか」
「はーい」
二人分の代金を
「そうだ、アーくんこれー」
ミーアにどこからか取り出した包みを手渡される、手に
「今日の
「そうか、ありがたく貰っておこう」
今日は色々とあったからか、依頼の事が抜け落ちていた。
だが収入が増えた事はありがたい、武器を買う足しになる。
視線を感じながらも宿へと戻り、階段を上り部屋の前へ
「ミーア、この付近で武器を扱っている店は知らないか?」
「知ってるけど、それじゃダメなの?」
「これも使えはするのだが……」
一度
「武器屋ならこの近くにあるよ、明日ミーアが連れてってあげる」
「そうか、では明日の朝に待ち合わせるとしよう」
「はーい」
ミーアが手を離し二つ隣の
「アーくんおやすみ!」
「おやすみ」
扉に手を掛けた所で小さく走ってくる音が聞こえ、飛び込んで来たミーアを受け止める。
「あれ……?気付かれちゃった、こっそり近づいたつもりだったのに」
「長い
ミーアの身体は
悪意を持った者達に狙われていたのだから。
「そっかー、でも正面から受け止めて
「部屋に一人は怖いか?」
「――っ!うん、こわい、こわいよ……!」
顔を上げたミーアの目から、涙がこぼれ出していた。
「ミーア、もし一人が耐えられないのならば、今日は私の部屋に来るか?」
「本当にいいの……?」
「ああ」
「じゃあ、お邪魔しちゃおっかな……」
————
先に汗を流し、ミーアが浴室にいる間に部屋の構造を見直す。
(
これに関してはミーアの眠る
戦闘に
魔物であろうとも、中型以下ならば十分に
「アーくんあがったよー、じゃあ寝室行こ!」
「ああ」
ミーアと共に寝室に入り、ベッドの傍に置かれた窓と扉を同時に
「どうしたのあーくん?」
「ここならば相手がどこから来ようとも
「それじゃあーくんが眠れないよ?」
「私は一日二日程度起きていようとも変わらず行動できる、何も問題はない」
以前どれ程睡眠を取らずに変わらずに動けるかを試したことがある、結果として十日以上は
それに比べれば数日眠らずにいようと大した問題は無い。
「もう、それだと私が気にしちゃうよー」
ミーアはベッドから立ち上がると、私の腕を
「怖いから近くにいて……」
「そうか、分かった」
同じ空間にいれば恐怖を
布団を
多少動き辛くなってしまうが、これで怖くなくなるのならば仕方ない事だろう。
「りーくんのいい匂いがする……」
「先程汗を流したのだから、同じでは無いか?」
「にぶいんだから……、おやすみ」
「ああ、今はゆっくり休むといい」
私には果たすべき使命があり、もう少しで街を離れる。
だがせめて、ここにいる限りは安全な場所を提供してみせよう。