顔に当たる光で目を覚ます。
胸の中ではミーアが穏やかな寝息を立てていた、どうやら恐怖から護りきる事が出来たようだ。
(これならば今日は大丈夫だろう)
顔に当たる光で目を覚ます。
胸の中ではミーアが穏やかな寝息を立てていた、どうやら恐怖から護りきる事が出来たようだ。
(これならば今日は大丈夫だろう)
起こさないようミーアの腕を優しく外し、ベッドから抜け出し寝室の外に出て、ミーアの
再び寝室を出てから、宿の従業員が洗って届けてくれた衣服に着替え、妖刀と砕けてしまった愛刀を背負う。
「アーくん、おはよぉ……」
「おはよう」
やや
「一緒に寝ちゃったね……!」
「そうだな」
「むー、なんかあーくんの反応ふつうー!」
どうして
(これならば大丈夫そうだ)
「では行こうか」
「しゅっぱーつ!」
宿を出て武具屋へ向かっていた道中、
「よォ姉ちゃん、俺達と遊ぼうぜ?」
「ごめんなさい、私急いでるので」
そう言って通り過ぎようとするライラ、だが背が高いが細見の男がそれを
「そんなこと言わないでさぁ、な?」
見た所あの二人は冒険者のようだが特に連盟許可証のような物を身に着けてはいない、どこか別の所属なのだろうか。
「そこまでにしておけ」
「アァ?」
「アルマさん……」
三人がこちらを向く、冒険者達は酔っているのか顔が赤く、酒気がここまで
「……この人達は
ミーアが小声で彼らの事を教えてくれる。
「いるんだよなぁ、お前みたいな
「俺達に文句でもあんのかよ、アァ!?」
大柄な男が
あまり
「痛い目見る前にさっさと消えな?」
ミーアを遠ざけ、両手を自由にする。
「それで、一体どうなるというのだ?」
大男の手首を掴み、ゆっくりと力を込めていく。
「!?」
そのことに気付いたのか大男は表情が
さらに力を入れ大男の腕を
「があああああ!腕が、折れる!」
「ぐえっ!」
白目を
「その男を連れてどこかへ行け」
「てめえ、よくも!」
細身の男は腰の剣に手を掛けようとするが、
「おにーさん、
ミーアが
「クソッ、次会ったらこうはいかねえぞ!」
「
「はい、ありがとうございました、アルマさんミーアさん」
彼女が言う通り怪我は無いように見える、その服装からしてこれから連盟に向かう所だろうか。
「良ければ送って行くが」
「お
冒険者の皆さんには
「どうやら
「ねー」
だからといって助けないという選択肢を取ることは無いが。
「ではまたな」
「はい、また連盟で」
「ばいばーい」
ライラと
その名も武具商店『エンシーズ』、街一番の大商会であり、世界の各地に支店を構えているとミーアが教えてくれた。
「確かに見事な
「でしょー?アーくんが欲しいカタナも多分あるんじゃないかなー」
「そうだとありがたいが」
少しの期待をしながら剣を集めた売り場を物色して見るが、やはり望んだ刀は置いていないようだ。
片刃の物もあるにはあるのだが、分厚く幅の広い刃や
「あ、これソードワンドだー!」
ミーアはなにやら不思議な形の剣を眺めている、刀身が
「これ気になる?」
「ああ、剣として使い物になりそうにないが」
「んふふー、これはねーこうやって使うんだよ」
ミーアが柄を握り天に向けると、刀身に刻まれた文言が光り輝き、青く
「見事だな」
「でしょ?これはねー使ってる人の魔力を吸収して刃を作ってくれるの、魔法で剣を作るよりも魔力を節約出来るからいざという時に便利なんだよ」
苦も無く剣を扱って見せるミーア、刀身の長さの割に重量はさほど無いのだろうか。
「持ってみてもいいか?」
「うん、ちょっと待ってねー今魔力込めるから」
さらに輝きを増した青の剣を受け取り構えてみる。
「軽いな」
「実際に剣を使う人とかには余り人気無いんだよねー、切れ味とかは負けてないんだけど」
「ふむ……」
左腕の袖を
「斬るというよりも、
「――!アーくん何やってるの!」
ミーアに剣を取り上げられてしまった、これくらいの傷口であればすぐに塞がる為何も問題は無い。
「いや、切れ味を試すために――」
「だからって自分の身体を傷つけないでよ……!、それに切れ味を試すならあそこに試せる物があるんだよ?」
ミーアが指す方向には紙や革の切れ端が置かれている、だが武器の切れ味を確かめるならばその対象となる物で行うのが一番いいだろう。
とはいえ少し
「次からはそうするとしよう」
「それって魔法――じゃないよね?」
「書には『
本来は妖怪のみが扱える業なのだそうだが、修行を積んだ『陰陽師』などは扱えるようだ。
「ヨウジュツかー、使ってて変な感じとかないの?」
「そうだな、ほんの
「私達が魔術使う時の
「そうなのか」
その後しばらく店内の刀剣類を物色して見たが、目当ての物は見つからず別の店に行ってみようかとミーアから提案を受けていると。
「なにかお探しでしょうか」
見事な
「あなたは」
「失礼しました、私はこの商会の会長を務めておりますレジンと申します」
「よろしく」
差し出された手を
「片刃の剣を探しているのだが」
「剣でしたらここには世界各地の物は一通り揃っているのですが、どういったものでしょう」
「そうだな」
少々気は引けるが実際の物を見せてもらった方が早いだろうか、武具屋であれば刀の事も詳しいかもしれない。
「少し離れていてくれ、そして気を確かに持っていて欲しい」
「……?かしこまりました」
二人が
鞘から解き放たれた刀身は店内の様々な明かりを集め
「何たる美しさ……っ!」
「綺麗……」
妖刀の輝きに
「――わあっ!びっくりした!」
「も、申し訳ない、つい
「気にしないでくれ、それがこの刀の力だ」
人を魅了し、呑み込み、殺し、操る。
それが妖刀なのだから。
「それで、これに近い物はあるか?」
「
「やはりそうか……」
そもそも初代当主がこの世界に来て
「……ある一振りがあります、それは
「見せてもらえるか?」
「かしこまりました、おい、この方にアレを持ってきてくれ」
「……はい!」
従業員は
「ねね、これとか近くない?」
「ふむ」
ミーアが持ってきた一振りは確かに刀身が反り返っている、だが
一応構えてみるが、やはりしっくりこない。
「いや、違うな」
「うーんそっか」
実のところ、使う武器に特別な
「こちらです、どうぞ」
「ああ、ありがとう」
従業員が持ってきた物は
「ここよりはるか東には
レジンに連れられてやって来たのは広々とした空間だった。
的や
「さあここで良いでしょう」
地面にいくつもの魔法陣が描かれた場所でレジンは立ち止まる。
「
「いや」
「全ての
レジンが地面に描かれた魔法陣の一つに手を触れると、周囲にある魔法陣が一斉に光を放ちそれぞれの円の中から黒い柱が現れた。
柱には
「こちらはある魔物の鱗と骨を再現した訓練用の魔術です、先程お渡しした剣を使って切っていただけますか?」
「ああ」
妖刀を一度外し背中に縛り付け、剣を腰に差し鞘と柄の感触を確かめる。
(少々
剣をゆっくり引き抜いていくと白く透き通った刀身が現れた、妖刀より
だが最も注目すべきところはそこでは無い、これが反りを持った
「剣の作成をした時には真っすぐな
「
「ええ、
本来であれば喜ぶべき
「綺麗な剣だねー」
「そうだな、金属では無いようだが」
柱の前に立ち剣を上段に構え、一息で
柱は三つに分かれて崩れ落ちた、散らばった
「……多少の調整は必要か」
「いやはやお見事な
「ふむ?」
言われた通り刀身へ目をやると
「魔素を吸収し成長を続ける性質を利用し、魔術によって方向性を与える事で手入れをせずとも、自らを
「それはすごいな」
「たとえ
「ふむ……」
剣を
「フッ!」
一気に踏み込み前方の柱を中程で断ち切り、勢いのまま二本、三本と続けざまに切り捨てていく。
最後に残った柱の中央を貫き
剣を鞘に納め息を吐く。
「気に入った、これを貰おう」
「ありがとうございます、お包みいたしましょうか?」
「大丈夫だ、それよりもこれに名はあるのか?」
「いえ、名も告げられずに渡されましてですね……」
言わば
「そうか……、では『
神々しく
「良い名前ですね」
彼らにはきっとこの言葉は分からないだろうが、それでいい。
この世界に決して染まり切る事も無い、それもまた『白』だ。
アルマの新たな武器
『白』
魔術師による失敗によって生まれた失敗作
本来は真っすぐと伸びる美しい剣として売るつもりであったが、刃に魔術を刻む際に反りを持った刀となってしまった。
倉庫の肥やしとしていずれ潰され新たな武器の素材になる所を、アルマが店にやって来た事によってその未来は回避された