「ありがとうございました、またのご利用お待ちしています」
小さくは無い
「良かったねあーくん!」
「ああ、ミーアのお陰で見つける事が出来た、ありがとう」
「もうっ、まっすぐなんだから」
少し
「さて、この後はどうする、また
「そうだねー、ミーアもソードワンド買うのにお金使っちゃったからお仕事したいかも」
「では、連盟に向かおうか」
「はーい!」
元気のいい返事で歩き出すミーアと共に連盟へ向かった。
――――
「ようこそ連盟へ、先程はありがとうございました、アルマさんミーアさん」
連盟へやってくると書類仕事を
「ああ、また
「お陰様で無事真っすぐたどり着けました」
「それはなによりだ」
「困ったらいつでも言ってねー」
「ふふっ、その時はお願いしますね?」
ミーアとライラが笑顔で会話を始めた、どこか姉と妹のように見えて
「ライラ様が絡まれたと?それはいったいどこの不届き者ですかっ!」
近くで話を聞いていて
「二度とそのようなことが無いように、良ければ私が護衛いたしましょう!」
やたらと髪を
「結構です」
一刀両断。
「いやお前じゃ頼りねえって、ここは俺が送り届けますよ」
花を
「必要ありません」
「いや俺が!」
「僕が!」
「……」
まとめて断っても次々現れては割り込んでいく冒険者達にライラも呆れたのか、
どうやら連盟は今日も
「アンタ、昨日の今日でもう依頼を受けに来たのか」
ミーアと共に掲示板の
「ラウル、もう怪我は大丈夫なのか?」
「俺の名前教えたっけ?まあいいや、腕の良い
彼やその仲間達の名前は、血霧童子を討伐した帰りに連盟で確認している。
「それはなによりだ」
彼の身体を観察してみるがどこかに不調が見える事も無く、本当に傷は全て
「依頼に行く前に少し話せないか?」
「私は構わないが」
確認の意味でミーアに視線を向けると、彼女は
「ミーアも良いよー」
「そりゃよかった、こっちだ」
彼に続き賑やかな酒場の中を進むと、仲間達が各々に会話をしているのが見えた。
「連れて来たぜ」
促されるままにミーアと席へ着くと全員の視線が集まった。
「まず先に言わせてくれ、助けてくれて本当にありがとう」
「貴方達は命の
「あんたらのお陰で、また今日を迎える事が出来たよ」
「ありがとうございます、この
全員からこうして礼を言われるのは少し
「一つ聞きたいんだが良いか?」
「構わない」
「あの魔物って何なんだ?槍で突いても、魔法で攻撃してもまるで
伝えるべきかは
「少し長くなるが
「ええ、
――
「ヨウカイねえ、それに異世界か……」
ラウルが左右のこめかみを
「闇から生まれた存在」
「信じられないか」
「いや、信じるよ、実際に見たしな」
「ヨウカイについてはまだ何とも言えないど、異世界についての存在は確認されているわ」
深い
「見つかった物は数えるほどしかないけど、この世界のどれとも一致しない文字の描かれた物が発見されることがあるの」
例を
「例えばだけどこの
ディアナがどこからか取り出したのは、
「依頼の最中に発見した物だけど、その地には人が住んでいたという歴史は無かったの」
どこかで見た事がある形だ。
「少し見せてもらってもいいだろうか」
「ええ、特別よ?」
「ありがとう」
ディアナから受け取り観察する、やはり書に記されていた物で間違いない。
「
ディアナに簪を返し記憶を掘り起こす。
「カンザシ?そういう名前なの?」
「ああ、女性が髪を
「そう、やはりそうなのね……」
ディアナは満足そうに
「しかし
肩まで伸びた銀髪の弓使いであるスコットに当然の疑問を投げかけられる。
「私の祖先である初代当主は、その異世界からやって来たんだ」
「本当ですか!?……それが事実であれば異世界の研究はかなり進みますよ」
唐突に大声を出したスコットは周囲の視線が集まった事に気づくと
「研究つってもなぁ、それでまたあの化け物みたいなのが来るのは
赤髪の剣士ジュードが飲み物を片手に
あのような目に合ったのだ、その反応になることは仕方の無いことだろう。
「またあのような事が起こらないための研究ではあるのですが、なるべく戦いたくないというのは同意できますね」
「私もこの刀が無ければどうなっていたかは分からないな」
「まあその話は今はいいんじゃねえか?取り
「私達はこれから依頼があるのでな、酒は
「分かってるって、俺達も酒は今止められてんだ」
ラウルが笑いながら飲み物を人数分注文する。
――
「ディアナんまたねー」
「ええ、またね」
ディアナに手を振るミーアと共に連盟の外へ出る。
「仲良くなったのだな」
「うん、ディアナんって大人のお姉さんって感じで
「それは良かったな」
こうして彼女の周りに頼れる人間が増えるのは喜ばしいことだ、彼らは実力や人間性のどちらも信用が出来る。
その後は
「ご飯食べよー、ミーアお腹すいちゃった」
「そうか、では行くとしようか」
ミーアが言うには近くに美味しい
店で一番人気らしい料理を注文し待っていると、どこか暗い表情が視界に入る。
目が合うと彼女は笑顔を作るが、すぐにその表情を
「アーくんは明日になったらこの街を出ちゃうんだよね……」
「ああ」
明日から行商人の護衛として出発し次の街を目指す、
ミーアを一人置き旅立つのに思う事はあるが、彼女も連盟に所属する冒険者なのだ。
それに依頼人に相談も無く連れていく訳にはいかない。
「ミーアはこれからどうするつもりだ?」
「ほんとはミーアの事も一緒に連れてって言いたいけど、今のままだときっと足を引っ
先程までの暗い表情が彼女から消え、
「頑張って今よりも強く大きくなるから、その時まで待っててねあーくん」
「ああ、期待していよう」
ミーアは出会ってから一番の笑顔を見せる、その表情にはもう暗い感情は残っていない。
「お待たせいたしました」
「おいしそー!」
その後は再び食べさせあいがしたいとねだられたりもしたが、楽しい食事会となり今日は部屋の前で解散となった。
————
『オノレ……』
(声が聞こえる)
『オノレ!オノレ……!』
(
『オノレ!!!!』
言葉と共に闇が崩れていく、そして新たに現れたのは一面が赤く染まった世界の中であった。
周囲を
その中央には立つ大きな黒い
(あれは、
ふいに黒い影が振り下ろす手を止め、ゆっくりと振り返る。
(違う、べつの鬼だ)
そこにいたのは赤ではなく黒であった。
黒い筋肉質の体に白い髪、頭には長い一本の角が伸びた鬼。
『
それと同時に鬼の身体から黒い炎が噴き出し、空間を
(これは、記憶ではない……!)
足元から出現した巨大な
「その
『グラアアアアアア!』
その
金槌が地面に直撃すると、生じた
「刀に
負の感情に囚われた者は、人から妖怪へ変化する事が
『グオオオオオオオ』
「――っ!」
(身体が、動かない……!)
視線を下ろすと、骨と金属が混ざり合ったような何かが気付かぬ内に身体に巻き付いていた。
「っ!」
全身に力を入れようとも、それには
力を込める程に締め付けが強くなり、鋭いトゲのような物が伸びて身体に突き刺さっていく。
「ぐっ……!」
身体が動かない間にも、黒鬼は確実に近づいて来ている。
そして目の前に立った鬼は、巨大な刀を振り上げる。
全力で巻き付いた何かを破壊しようと力を込める程に、全身から
(このままでは……!)
光の消えた瞳で見下ろされ、刃を振る降ろされた。
「――っ!」
黒鬼の振り下ろした刀が、どこからか現れた太く紅い腕に受け止められる。
『オレを斬ったお前が、元人間の奴に殺されたらオレが地獄で笑いモノにされんだろうが』
「血霧童子――!」
瞬間、私の身体が指先から
『オノレ……!』
黒鬼の穴が開いた胸から赤と黒の
『ウガアアアアアア!』
突如、黒鬼は姿勢を崩し悲鳴をあげる。
その背から異形の腕が次々と生えていき、最終的に六本の腕となった。
目に見える程の暗く重苦しい圧力が周囲を支配していく。
『ウオオオオオオオオオオオ!』
その叫び声と共に
背中に当たる衝撃で意識を飛ばしそうになるのを耐え立ち上がるが、感じた事の無い圧力で押しつぶされそうになる。
『オレの――、カゾ――ク!』
悲痛な声が聞こえ、心の
(鍛冶師は、
「おおおおおおおおおおお!」
解放するように声を張り上げると、全身から血の霧と赤と黒の
鍛冶師から放たれた妖力と、私の血の霧と妖力がぶつかり、世界を揺らす
空間が罅割れ、
『グオオォ……!』
その白光を身体に受けた途端に、鍛冶師が苦しみ、放たれる妖力の勢いが落ち始めた。
「
血の霧を集め一振りの刀を作り構え走り出し、一気に鍛冶師との距離を詰め高く跳び上がる。
(柳流剣術奥義『
「はああああああ!」
空中で一回転をし刀を振り下ろし、頭から下までを一息に切り裂く。
『グオオオオオ!』
鍛冶師は断末魔を上げると地面に片膝を付き、傷口から赤と黒の奔流が噴水のように溢れ出した。
追撃を仕掛ける為に刀を横に構えると、鍛冶師は金槌を大きく振り上げ地面に叩きつけた。
「!」
地面に生じた
『オマエを――!コろしテやル――!』
黒い鬼となった鍛冶師は
段々と世界に差し込む光が強くなり、やがて目を開けていられない程になり、思わず目を閉じた。
闇は人を変える
その果てに救いはあるのか
答えは刃の先にある