「このような物でも案外眠れるものなのだな」
コラルに借りた最新の寝袋という物から出て立ち上がる。
こういった物は使った経験が無く不安ではあったが、
ただ一つ
中に入る形の
日はまだ完全に
寝袋を畳み袋に戻し、赤く光る炭が
荷物から紅く透き通った石を取り出して指で少し砕き、それを生きた炭の上に置く。
すると石はじんわりと汗をかき始め、その液体が熱で発火する。
その上に枯草を被せ、細枝を組んでいく。
枝が本格的に燃えた所に小さめの薪を三つ程乗せておく。
「日の出までは持つだろう」
『白』をゆっくりっと引き抜くと、
「まだ少し調整が必要か……」
鞘から引き抜いた際に
光を失った刀を上段から下段、突きから下段そして上段へ振るい、何度も基本の動きを繰り返す。
ゆっくりと鞘へ戻し、姿勢を下げ抜刀斬りの形を作る。
「ふぅ……」
大きく深呼吸し、一気にの空気を取り込み息を止める。
そして右脚を大きく踏み出し、左の親指で僅かに
「一日にしてならずか」
刀身は淡く光を放ちながら、その傷を修復していく。
一先ず動きの調整は出来た、今回の所はここまでで良いだろう。
依頼中に別の事で体力を使い果たしてしまっては元も子もない。
刀を鞘に納めて野営地へ戻ると、目を覚ましたコラルが焚火に当たっていた。
「おはよう」
「おはようございますアルマ殿、いつもこの時間帯に目覚めているのですか?」
「昔からの日課でな」
今では
「いやはや流石です……」
「出発はいつ頃に」
「そうですね、まだ少し暗いですが、もう出ましょうか」
コラルは立ち上がると周囲の片付けを始める。
「分かった」
木に
「良い子だ」
竜の首に手を当て
もっと撫でろと言う
「その二頭がすぐに
「そうなのか」
大人しく
「生物、いや竜としての感でしょうかね、この者には敵わないという」
「そういえば他の魔物に比べて竜は相当
二頭の傍を離れ屋根の上に登り座る。
それを合図にコラルが
「ええ、基本的に人の言葉は理解をしているらしいですな、この世のどこかには
「いつか出会ってみたいものだ」
「私もです」
そこから走る事しばらく、日も高く昇り旅人の姿をよく見かけるようになってきた。
人里が近いのだろう、幾つもの煙が遠くの方で確認できる。
「あの村へ入ります」
コラルが地図を確認しながら問いかけてくる。
「ああ」
――
馬車を停めて村へ入る。
「なにやら荒れているな」
村の建物のあちこちが傷つき、人々の顔にも生気を感じられない。
何かに怯えているような、そんな表情だ。
「
「よもやここまでの被害が来ていたとは……」
村人に話を聞いていたコラルが戻って来た、その表情は暗い。
「やはりこれも盗賊の仕業なのか?」
「ええ、騎士達が駆けつけられない状況ですから、
「そうか……」
「さらには村から
かなり深刻な状態だ、今が依頼中でさえなければすぐにでも
「盗賊達はあの森から毎回来ているのか?」
ここから森まではそれなりの距離がある、馬車に乗って向かうにしても
騎士が見ていないからこそ出来る
「いえ、この付近に盗賊達の
「仮拠点?」
コラルは地図を広げ村の位置を指差す。
「ここから東へ行った辺りにあるだろうと村の人が言っていました、そこには
「ふむ」
全力で走ればあっという間に着くだろう距離だ、とはいえ依頼主を置いていく訳にはいかない。
「コラル、次の出発までどれくらいの時間がある?」
「村の商会への荷下ろしと
「では時間はあるのだな?」
それだけの時間があれば十分だ、仮拠点や森をどうにか出来るだろう。
「……まさか向かう気ですか?」
「安心してくれ、今日中に終わらせる」
「いえそうでは無く、いくらアルマ殿でもたった一人で向かうなど
「大丈夫だ」
「ちょっとあんた、まさか盗賊の拠点に攻め込むつもりか」
複数の声に振り返ると、村の住人が
「見た所あんた連盟の人だろう?盗賊達を攻めるってんなら俺達も力を貸すぜ!」
「あいつらには
男達は各々の武器を掲げ自らを
それに、離れた所では彼らの家族らしき人々がこちらを心配そうに見ている。
「では、私が先行して盗賊の仮拠点に攻め入る、その後の
「おう!」
「任せてくれ!」
直接戦わせるわけにはいかないが、その後の後始末は任せても良いだろう。
「くれぐれも気を付けてください、アルマ殿」
「ああ、では行ってくる」
男達に荷台を運んでくるように指示を出し村の外へ出る。
「村の外には魔物も出る、くれぐれも気を付けてついてきて欲しい」
「わ、分かった」
男達の意思を確認し盗賊の仮拠点への道を歩き出す。
そこから程なくして、かつての
人数はそこまでいないようだ、これならば制圧にそう時間は掛からないだろう。
だが高台が設置されている為、ここから集団で行動するのは危険だ。
「合図を出したら入って来てくれ……」
「おう……!」
騎士が動けない事で
小石を拾ってから音と
そして小石を骨組みの
「なんの音だ?魔物か?」
「あ?なんもいねえじゃねえか……」
足音がで二人の意識が
「――うっ!」
「――グっ!」
間違っても大声を出せないよう首を
気絶したことを確認し二人の口を開けさせ布を
「次」
見張り台から廃村の中を確認すると、歩き回る盗賊がいくつか見えた。
そして
恐らくはあれが
村の構造と賊の
「なんで俺が見張りなんか、――っ!」
手で口を
「まず一人」
ぐったりと力が抜けた賊を縛り付け、口に布を噛ませ空いた建物に放っておく。
「残り三人」
再び走りだし、近くにいた一人の
同様に建物に放り込んで置き、最後の一人の場所まで駆ける。
「せっかくの
男の口に手を当て、引き倒し気絶しない程度に首を絞めつける。
「死にたくなければ答えろ、次にここへ本隊が来るのはいつだ」
「誰がてめえなんかにムグッ!ーーーーーッ!」
賊が
骨に
「大きな声を出すな」
手首を解放し今度は男の頭を掴みゆっくりと力を入れていく。
「もう一度聞く、次に本隊がここへ来るのはいつだ」
「あがっ!あっ明日だ……」
「本当だな?」
「う、嘘じゃない……!あたまが……っ、
男の頭から手を離し
「明日の朝――、時間は十分にある」
縛って空き家に入れて置き、
中からは複数の男の声と、何かで口を
「おい、そっち抑えてろ!」
「大丈夫かよ、親方にバレたら殺されるぞ」
「ちょっとだけならバレねえよ、おらさっさと脱がせろ!」
「ーーーーーっ!」
人数は声からして四人から五人といった所だろう、刀をゆっくりと引き抜き手首に傷を付ける
「……」
傷口から
「へっ、やっぱいい身体してんじゃねえか――なんだこの赤い煙?」
「知らねぇ、なんかの魔物じゃねえか?」
「なんだよ
「は?嫌だよお前が行けよ」
「なんだ!?何も見えねえぞ!」
「やべえんじゃねえか?
建物内が慌ただしくなった所で血霧の
そして出てきた一人目の顎を
少し待って出てこない事を確認し、血霧はそのままに建物の中へ侵入していく。
不思議な事に中がはっきりと見えている、これならば相手だけの視界を奪い、有利に戦う事が出来るだろう。
大部屋に入ると服を破かれ、両手と口を縛られた女性が部屋の
他に盗賊が居ないことを確認し、大きめの布を拾ってから血霧を振り払う。
「怪我は無いか」
「!?---!!」
女性は涙の
「私は盗賊の一味では無い、安心してくれ」
布で女性の身体を
頬に
「あ、あり……がと」
余程叫んでいたのだろう、声が少し枯れてしまっている。
「無理して
なるべく
無言で
弓と矢筒を一度外し、
「今はこれを
「……」
「着替えが終わったら戸を叩いて知らせてほしい、あと水を置いていく、良ければ飲むといい」
なるべく見ないよう
村の男達を呼ぶにしても、彼女が落ち着くまでは待つべきだろう。
紅く透き通った石
『燃料樹脂』
樹木から取り出した液体を固めて作った物
非常に燃えやすい性質をしており、過熱をする事でゆっくりと溶け出し燃料となる
火の魔術が苦手な人にとっては欠かせない旅の必需品