壁に背中を預け身体を休めていると、扉を二回叩く音が大部屋の中から聞こえた。
「入るぞ」
一応は声を掛けて扉を開き中へ入ると、黒い
彼女には大きいようだが、今はなるべく身体を隠せた方が良いだろう。
盗賊達は資金や食料以外の
「これから他の者達を呼ぶが、盗賊の一味では無いから安心して欲しい」
無言で頷いたのを合図に建物の外へ出る。
未だ先程の状態のまま倒れ伏している盗賊達を纏めて縄で縛って放り。
手近にあった木の柵を一片引き剥がし、火を点けて狼煙を上げる。
「盗賊達はどこに!」
村の男達が農具を掲げて走って来た。
その鼻息は荒く、これから戦闘が始まるであろうと自らを
「戦闘は終わっている、縛った状態なのがそこと見張り台、後は建物の中だ」
「も、もう終わったんですかい!入ってから全然時間が経ってないってのに……」
村の男達はあっけない終わりに困惑している、だが彼らが戦闘に参加しないで済んだことは喜ぶべきことだ。
「盗賊自体の数も少なかった、それよりも捕縛した者達を頼めるか?」
「あ、ああ」
「分かった」
各々で走っていく彼らを見送ってから出入り口の方を見ると、僅かに外套の一部がはみ出していた。
「彼らはもう行ったぞ」
「あの、ありがとうございます」
彼女はゆっくりと建物の外へ歩いてくる。
「ああ、……どこか痛む所は無いか?」
「少し手首は痛みますが、助けて頂いたお蔭でなんともありません」
縄が強く食い込んでいたのか、かなり赤い痕になってしまっている。
「良ければこれを使ってくれ」
袋から小瓶を取り出して手渡す。
「……これは?」
「薬草を煎じて作られた塗り薬だ、私の故郷の物でな」
擦り傷や切り傷などが出来た際にはよく利用していた。
血鬼の力を手に入れて以降は使っていなかったが、かなり信頼が出来る品質だ。
「なにからなにまで申し訳ありません……」
「当然の事をしているまでだ、あまり気にすることは無い」
「あの……、良ければお名前をお聞きしても?」
「アルマだ、好きに呼んでくれればいい」
「ではアルマ様と……、私の事はウランとお呼びください」
ウランは
この者は一先ず頼れる存在だと認識して貰えたのだろうか、だとすれば有難いことだ。
その後は村人達が集めて来た高価な品々を台車に乗せ、気絶した盗賊達を別の台車に乗せて村へ戻る事になった。
「では村へ戻るとしよう、こちらの台車は私が引こう、そっちは頼む」
「大丈夫かよ、それは俺でも結構重かったんだからな」
大柄な村人の一人が揶揄うように笑う、彼も力には自信があるようだ。
「ふむ、では試してみよう」
少し台車を押してみると、特に抵抗も無く動かすことが出来た。
この程度の重量なら、あと数個同じ物が重なろうが問題は無い。
「おいまじかよ……」
「俺達五人で漸く外まで動かせた程度だってのに……」
村人たちの声にはどこか畏怖の感情が含まれていた。
「昔から力には自信があるんだ、ウランはここに座るといい」
「はい」
ウランが台車に乗り込み座った事を確認し、ゆっくりと台車を押し始める。
いきなり加速させると怪我をさせる危険性もある、それに村人達を置いてはいけない。
「よし、では帰ろう」
「……うちのウシよりも力あるぞ、ひょっとして魔物かなんかじゃねえの」
「……魔法使ってるようには見えねえよな、じゃあ素の力が化け物なのか?」
「……怒らせない方が良さそうだぜ、幸い穏やかな人っぽいけどよ」
なにやら好き勝手言われているが、誉め言葉として受け取っておくことにしよう。
それから暫くして村に到着した、家族を待っていた女性達も安堵してるようだ。
村長からお礼が言いたいと呼ばれたが、まだ全てが解決した訳では無い。
一先ずウランには村の女性陣の元にいてもらい、現在の依頼主であるコラルと話の場を設けた。
「では、明日に盗賊がまたやってくると言っていたのですね?」
「ああ、すぐにでも森へ賊の
村の外でコラルと盗賊についての事を話し合う。
この問題は彼自身も被害を受けている事だ、解決をするならば早い方が良いと分かっているだろう。
「分かりました、では最大限の支援をします、欲しい物があればおっしゃってください」
「助かる」
コラルから矢など様々な物を受け取り、最後に金の刻印が背中に刻まれた深い青の外套を手渡される。
「これは?」
「まだ試作品ですが、衝撃や魔術への耐性を付与する術式を刻んであります、きっと役に立つでしょうでしょう」
「ありがたく使わせてもらおう」
外套を羽織り矢筒を腰に着け、弓を背負い、二本の刀を腰に差す。
鬼のように二本の角が額に生えた白の面を着け、大きく深呼吸し身体中に空気を行き渡らせる。
「では行ってくる」
「御武運を……」
全身に力を巡らせ、賊の征伐に走り出した。