武士の子孫、異世界を制す   作:fumiy

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護衛依頼2日目②

  壁に背中を(あず)け身体を休めていると、扉を二回叩く音が大部屋の中から聞こえた。

 

「入るぞ」

 

 一応は声をかけて扉を開き中へ入ると、黒い外套(がいとう)にその身を包んだ姿があった。

 

 彼女には大きいようだが、今はなるべく身体を(かく)せた方が良いだろう。

 

 盗賊達は資金や食料以外の略奪(りゃくだつ)をしたと言っていたが、彼女は村の部外者だということだろうか。

 

「これから他の者達を呼ぶが、盗賊の一味では無いから安心して欲しい」

 

 無言で(うなづ)いたのを合図に建物の外へ出る。

 

 未だ先程の状態のまま(たお)()している盗賊達を(まと)めて(なわ)で縛って放り。

 

 手近にあった木の(さく)の一片を引き()がし、火を点けて狼煙(のろし)を上げる。

 

「盗賊達はどこに!」

 

 村の男達が農具(のうぐ)(かか)げて走って来た。

 

 その鼻息(はないき)は荒く、これから戦闘が始まるであろうと自らを鼓舞(こぶ)させているようだ。

 

「戦闘は終わっている、縛った状態なのがそこと見張(みは)り台、後は建物の中だ」

 

「も、もう終わったんですかい!入ってから全然時間が経ってないってのに……」

 

 村の男達はあっけない終わりに困惑(こんわく)している、だが彼らが戦闘に参加しないで済んだことは喜ぶべきことだ。

 

「盗賊自体の数も少なかった、それよりも捕縛(ほばく)した者達を頼めるか?」

 

「あ、ああ」

 

「分かった」

 

 各々で走っていく彼らを見送ってから出入り口の方を見ると、(わず)かに外套(がいとう)(はし)がはみ出していた。

 

「彼らはもう行ったぞ」

 

「……あの、ありがとうございます」

 

 彼女はゆっくりと建物の外へ歩いてくる。

 

「どこか痛む所は無いか?」

 

「少し手首は痛みますが、助けて頂いたお(かげ)でなんともありません」

 

 (なわ)が強く食い込んでいたのか、かなり赤い(あと)になってしまっている。

 

「良ければこれを使ってくれ」

 

 袋から小瓶(こびん)を取り出して手渡(てわた)す。

 

「――これは?」

 

「薬草を(せん)じて作られた塗り薬だ、私の故郷の物でな」

 

 ()り傷や切り傷などが出来た際にはよく利用していた。

 

 成長して傷の治りが早くなってからはあまり使っていなかったが、かなり信頼(しんらい)が出来る品質だ。

 

「なにからなにまで申し訳ありません……」

 

「当然の事をしているまでだ、あまり気にすることは無い」

 

「あの――、良ければお名前をお聞きしても?」

 

「アルマだ、好きに呼んでくれていい」

 

「ではアルマ様と、私の事はウランとお呼びください」

 

 ウランは(ようや)く柔らかい表情を見せた。

 

 この者は一先(ひとま)ず頼れる存在だと認識(にんしき)して貰えたのだろうか、だとすれば有難(ありがた)いことだ。

 

 その後は村人達が集めて来た高価な品々を台車に乗せ、気絶した盗賊達を別の台車に乗せて村へ戻る事になった。

 

「では村へ戻るとしよう、こちらの台車は私が引く、そっちは頼む」

 

「大丈夫かよ、それは俺でも結構重かったんだからな」

 

 大柄(おおがら)な村人の一人が揶揄(からか)うように笑う、彼も力には自信があるようだ。

 

「ふむ、では試してみよう」

 

 少し台車を押してみると、特に抵抗も無く動かすことが出来た。

 

 この程度の重量なら、あと数個同じ物が重なろうが問題は無い。

 

「おいまじかよ……」

 

「俺達五人で(ようや)く外まで動かせた程度だってのに……」

 

 村人たちの声にはどこか畏怖の感情が含まれていた。

 

「昔から力には自信があるんだ、ウランはここに座るといい」

 

「はい」

 

 ウランが台車に乗り込み座った事を確認し、ゆっくりと台車を押し始める。

 

 いきなり加速させると怪我をさせる危険性もある、それに村人達を置いてはいけない。

 

「よし、では帰ろう」

 

「……うちのウシよりも力あるぞ、ひょっとして魔物かなんかじゃねえの」

 

「……魔法使ってるようには見えねえよな、じゃあ素の力が化け物なのか?」

 

「……怒らせない方が良さそうだぜ、(さいわ)(おだ)やかな人っぽいけどよ」

 

 なにやら好き勝手言われているが、()め言葉として受け取っておくことにしよう。

 

 それから(しばら)くして村に到着(とうちゃく)した、家族を待っていた女性達も安堵(あんど)しているようだ。

 

 村長からお礼が言いたいと呼ばれたが、まだ全てが解決した訳では無い。

 

 一先ずウランには村の女性陣(じょせいじん)の元にいてもらい、現在の依頼主であるコラルと話の場を(もう)けた。

 

「では、明日に盗賊がまたやってくると言っていたのですね?」

 

「ああ、すぐにでも森へ賊の征伐(せいばつ)に向かう」

 

 村の外でコラルと盗賊についての事を話し合う。

 

 この問題は彼自身も被害を受けている事だ、解決をするならば早い方が良いと分かっているだろう。

 

「分かりました、では最大限の支援をします、欲しい物があればおっしゃってください」

 

「助かる」

 

 コラルから矢など様々な物を受け取り、最後に金の(いん)刺繍(ししゅう)されたが深い青の外套(がいとう)手渡(てわた)される。

 

「これは?」

 

「まだ試作品ですが、衝撃(しょうげき)魔術(まじゅつ)への耐性を付与(ふよ)する術式を(きざ)んであります、きっと役に立つでしょうでしょう」

 

「ありがたく使わせてもらおう」

 

 外套(がいとう)羽織(はお)矢筒(やづつ)を腰に着け弓を背負い、二本の刀を腰に差す。

 

 最後に鬼のように二本の角が額に生えた白の面を着け、大きく深呼吸し身体中に空気を行き渡らせる。

 

「では行ってくる」

 

御武運(ごぶうん)を……」

 

 全身に力を巡らせ、賊の征伐(せいばつ)に走り出した。

 

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