翌日の早朝、まだ日も
「本当に別行動で良いのか?人数の多い方が安全だろう」
「その
仮に盗賊達が暴れ出したとしても彼ら彼女らには一歩も近づけたりはしないが、
その可能性を考えるならば、
「……確かにな、
「
「
その後も会話をしながら
「ごきげんよう」
「おはようございますー……」
カルミナとノーラの二人が
「おはよう、まだ集合時間には少し早いが」
まだ少し
「何かお手伝い出来る事があればと思いましたので」
馬車へ荷物を運ぶ作業はもうじき終わり、旅立ちに必要な事は
とはいえ、
「そうだな……、ではウマに水と
「わ、わかりました!」
「水と餌の入った容器はそこにある、
「はい」
カルミナとノーラがそれぞれの容器を持ち上げ、馬車の前の方へ運んでいく。
最後の積み荷を乗せ、落ちないよう
「手伝ってくれて助かった、礼を言う」
「気にすんな、お前達はこのままザーウェイを目指すのか?」
「いや、その手前の村で待ち人と合流した後、街へ向かう事になっている」
「そうか、気を付けろよ」
「そちらもな」
騎士隊長を見送り、馬車の
「
「おはようございます」
「おはよう、事情を知った街の騎士団が使っていいと言ってくれたのだ、さてこれで全員
ヒュリアスを先頭に残りの四人がやって来た。
アーティアはまだ眠っているのか、セレナに背負われている。
ウマの前に置かれた水と
「乗ってくれ、すぐに出発する」
「ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます」
カルミナ、ノーラと手を取り乗車を手伝う。
村の外では馬車や船に乗る際には手を貸すのが当たり前なのだと、リズは言っていた。
「昨夜は良く眠れたか?」
「はい……!」
「それは何よりだ」
彼女達の反応を見た限り、これで間違っていないようで一先ず安心した。
そのままの流れでヒュリアスに手を伸ばすが、
「僕に
「そういうものか……」
「子供相手には手伝ったりもするんで、その
「おい、どうして僕を見て言った」
「気のせいだろ?」
ハイラルが乗り込みながらヒュリアスをからかっている。
どうやら昨日の内に
全員が座席に着いた事を確認し、御者席に座り縄を掴み
町の門を
道の前方に何も無い事を確認し、縄を打ち付けて走りの
引いているのが二頭いる事もあってかそれなりの速度は出ているが、この
最も全力で走れば中の人間に危険が
――
「どうかしたのか?」
「お
「ふむ」
弓と刀を自分の方へ引き寄せ席を空ける。
「ここに座るといい」
「すみません……」
「街まではそれほど時間は掛からない、少し
「はい……」
ノーラがゆっくりと席に座り目を閉じ背中を預けるのを見てから、縄を軽く引き馬の走る速度を
――
「あの、本当に良いんですか……?」
「構わない、友人に聞いた話だが乗り物に酔った
風に当たっていても辛そうなままであったノーラにある提案をしたが、やや戸惑っている様子だ。
「でも、
「これでも
「……じゃあ、お
「ああ」
ノーラは
目を閉じ
ふと考え、ノーラの頭に手を乗せる。
「――っ!あ、アルマ様?」
「……」
何も答えずにゆっくりと手を動かし、
落ち着きの無い子供や、体調の優れない子供にはいつもこうして寝かしつけていた。
「
どういった訳か、昔から人よりも体温が高かった。
その
冬場には私さえ居れば安心と、よく分からない褒め方をされる事もあった。
「すぅ……」
速度を少し
――
覚えのある景色が見え始め、馬車の速度をまた少し落とす。
この辺りは人通りが増える、林から誰かが飛び出してくる事もあるだろう。
その前では二人の騎士が周囲に目を光らせている。
「コラルと来たときはここまでの
「村の中へ入りたい、門を開けてもらえるか」
「車内を確認しても?」
「
商人や旅人が
「失礼します、――!」
騎士は扉を開き中を確認したかと思えば、すぐに馬車を離れもう一人と何やら話し始める。
「……んぅ、あれぇここは」
「目が覚めたか、馬車旅は終わったぞ」
ノーラが目を覚まし、
顔色もすっかり良くなっているようだ、それどころか段々と赤みを
「ご、ごめんない……!」
ノーラが
「気分はどうだ、悪くないか?」
「あっ、はい、おかげさまで、ありがとうございました……!」
「ああ」
そのような会話をしていると、二人の騎士が
「少し話をさせて頂いてもよろしいですか」
「構わない」
――
「……では貴方が
「そうだ」
騎士達に彼等を救出した
「なんてことだ……、さあ中へどうぞ」
刀と弓と荷物を
「ノーラ」
「はっ、はい!」
元気よく返事をしたノーラが伸ばした手を掴み、下車を手伝ってから馬車の扉を開ける。
「
いつの間にか買ってくれていたのだろう、ヒュリアスが独りでに馬車を降りながらそのような事を言ってくる。
「私には少々
「ふん」
ヒュリアスは
ちょっとした
「確かにアルマさんが側に居たら
ハイアルが後に続いてヒュリアスの隣に並ぶ。
「社交界か、話には聞いたことがある」
そういった信頼を寄せられているのは素直に喜ばしい事だ、今まで腕を
「色んな人が来ますからねぇあそこ、会場に行くまでの道中も危険なんで信頼できる
話を聞きながらカルミナ、セレナ、アーティアと続けて馬車から降ろしていく。
「私はあまり好きじゃないです、あそこにいる大人ってなんか皆怖くって……」
「ですが貴族同士の
「そ、そうですよね、あはは……」
「ふむ」
「機会があれば私が
「よろしいんですか?アルマ様にはそういった事をする
「私の家系は古くから
初代当主はかつて、
「アルマ殿!
「コラル、ああ、待たせて済まない」
「いえそんな、後ろの方々は……」
コラルがカルミナ達に目を向ける。
「
「そうですか……」
「それで、この後はどうする」
「え、ええ、出発前に村長への
「分かった、皆は少し待っていてくれ」
ここなら人通りも多くある、下手に
「分かりました」
「はい」
コラルを
「では行こうか」
「ええ」
コラルに
そこには兜だけを外した
「おおコラル殿、どうされました?」
その中の一人である長い白髭を
「ああそのままで、出発前の
「そうですか、つまり
「はい、こちら私の護衛を務めていただいているアルマ殿です」
「貴方が……」
空間中の視線が一挙に集まる。
敵意といったものは感じないが、好ましく思われている訳では無さそうだ。
ふと兜を外した鎧姿の男が立ち上がり、此方へ歩いてくる。
「アルマと言ったか、アンタ賊の所に一人で行ったそうだな」
彼が何かをしてくるとは思わないが、コラルの前に立ち近づけないようにしておく。
「ああ」
背丈は私より頭一つ程高く、鎧で確認できないが首の太さから察するに身体がかなり鍛え上げられている。
その反面鎧は所々が汚れており、あまり手入れが行き届いていない。
「
「いえ、彼は――」
コラルが私を
「奴等を刺激するような真似はしないでくれ、
彼の目に光は無く、その声音には熱が無い。
盗賊がいるというのに手出しが出来ない状況に、心が折れてしまったのだろう。
「その心配をする必要は無い」
「なに……?」
男の
「賊共の
「なんと……」
「本当にそんな事が……!」
空間内が
「嘘つくんじゃねぇ!お前たった一人でそんなことが出来るわけねえだろ!」
男の
「
「事実だ、生きた者達は騎士達に引き渡している、
「……っ!」
男は私の
その二つの瞳は怒りと理性が争っているかのように
部屋へ近づいてきた足音の方へ目をやると、扉が開き一人の騎士が現れた。
その手には一枚の紙が握られている。
「隊長!ザーウェイより指令が届きました!」
「!」
隊長と呼ばれた男は私を離すと、騎士から紙を取り上げ読み始める。
「盗賊団のザーウェイ移送につき、
「それって……」
「じゃあ彼が言ったことは本当だったのか……!」
部屋の中が歓声で満ち、騎士ですら軽く拳をぶつけ合っている。
これで
それでも
「予想よりも速い到着だな」
かなりの大所帯だったはずだが、引くウマの差なのだろうか。
「済まなかった……!、アンタは本当の事を言っていたのに」
男は
「構わない、それよりも指令を仲間達に伝えてきた方が良いだろう」
「ありがとう、アルマ……、お前ら
「「「「「はい!」」」」」
そして騎士達は部屋の外へと出ていった。
「村を代表して礼を言わせてくだされ、本当にありがとうございまする……」
老人が立ち上がり深く頭を下げる。
「アルマ殿!アンタのお陰で交易が元に戻る!」
「ありがとうございます!これで家族に会いに行くことが出来ます!」
それを皮切りに住人の二人が駆け寄って来て頭を何度も下げ始める。
役に立てた事は大変喜ばしくあるが、少々落ち着いて欲しいものだ。
「これも『武士』である私の役目だ、また賊が集まるのならば再び駆け付けよう」
「おお、なんと心強い……」
「アルマ殿、是非これを受け取って下さい!」
渡された包みには大量の金が入っていた。
「よしてくれ、これは私が勝手にやっただけの事、
「しかし……!」
「アルマ殿、
コラルが小声でそのような事を言ってくる。
歴の長い彼が言う言葉なら多少は信じても良いか、それに今回は仕事を
「では有り難く頂戴しよう」
包みを受け取り荷物にしまう。
「ウチの娘も
「私はまだ身を固めるつもりはない……」
不意に視線がぶつかると、ウランは窓を開きこちらに手を振る。
彼女の安全も確保されたようでなによりだ。