ザーウェイへ
「アルマ様、本当にありがとうございました、このご
「ありがとうございました……!」
安全な所へ来たという実感が
「ああ、その時を楽しみにしていよう」
「……礼を言うぞ、アルマ」
ヒュリアスが小さく言葉を発する。
どこか
「な、なにがおかしい!」
「はいはい……」
「あっ、おい!」
ハイアルが顔を赤くして怒るヒュリアスの肩を掴み、横にどけてから前に出てくる。
「助けてくれて本当にありがとうございましたアルマさん、俺もっと強くなります、貴方みたいに」
「ああ、期待している」
今回起きた事は出来れば無い方が良いのだろうが、
彼等はきっと真に強い人間になるだろう。
その時が非常に楽しみでならない。
「アルマさん……」
「アルマさまどこかへ行っちゃうの?」
「すぐに会えるさ」
「ほんと?」
「本当だ」
アーティアの頭を
「?」
「……使用人達の
「――っ!」
「私が必ず連れ戻す、それまで少し
「……はい!」
直接攻め込むのが一番早いが、それでは問題があるだろう。
何か
「では、後の事はよろしく頼む」
「はい、お任せ下さい」
全身を
――
馬車を騎士団に引き
「ザーウェイか、エイノスとはまた違う
エイノスも人通りが多い都市であったが、こちらは大きな荷物を背負った商人らしき者達が多い。
逆にエイノスは
「ここか」
連盟支店と看板に描かれた建物の扉を開き中へ入ると、懐かしさを感じる
「リアム殿」
「コラル、待たせたな」
受付の側に立つコラルの下へ歩いていくと、連盟職員達の視線が
「いいえ、それよりも彼等はお送りになられましたか?」
「ああ」
「それは何よりです、では依頼の達成報告をしましょう」
コラルが依頼書や連盟証を台へ乗せると、受付がそれを確認し依頼書へ印を押す。
「確認しました、冒険者認可証の提示をお願いします」
言われるままに連盟具を取り出し、台に置く。
「ありがとうございます、ではこちら、報酬金でございます」
受付は厚みのある用紙の包みを取り出し、台の上をゆっくりと滑らせる。
表情は至って冷静そのものだが、その手は
「ああ」
その
空いていた一席に腰を
「私は彼等に恐れられるような事をしたのだろうか」
「アルマ殿が成した事は
傷ついた訳では無い、ただ実感しただけだ。
「そうだな」
反応としては恐れられる事の方が正しいのだろう。
恐怖に慣れは無い、それは単純に
「コラル、あの者達を捕らえた
「そうですな、あの地はエイノスとの流通において必ず通らなければならない道ですから、その脅威を排除したアルマ殿には領主様からかなりの報酬を約束されているでしょう」
「そうか、例えば人を呼び寄せる事も出来るだろうか」
「
奴はこの
「この地を収める
「シーラン=ケンド
「そのシーランという者の人間性は分かるか?
「そうですな、
「ふむ」
慎重、悪く言えば
話から
「……一体何をなさるおつもりで?」
とはいえ、位の高い貴族を大人しく
さらに盗賊団が捕まった直後であり、そしてそれが取引相手であったならば最大限の
「
力無き者達に恐れられるのは
それが力を持った相手ならば一体どうなるのか。
個では無く、集の力を持っている者とどれだけ渡り合えるのかを探るいい機会だ。
「
受付の方から深い青の髪を腰まで伸ばした女性が歩いて来た。
「リアメイン殿……」
どうやらコラルは彼女の事を知っているらしいが、連盟の関係者だろうか。
「アンタに聞きたい事がある、少し顔貸しな」
真っすぐと
「良いだろう、また仕事をしようコラル」
「はい、ありがとうございましたアルマ殿」
コラルと別れと約束の
――
受付を通り廊下を歩く、そうして
壁に立て掛けられた
「適当に
刀と弓を立て掛け、置かれた椅子に腰を下ろす。
「森の盗賊達を潰してくれたそうじゃないか、それもたった一人で」
「ああ」
リアメインはこちらへ振り返ると、机の上に腰を乗せ腕を組む。
「アンタには感謝しているよ、連盟も騎士も動けない状態だったからね」
「それだけの為にここまで連れて来た訳では無いだろう、目的はなんだ?」
感謝を告げるだけならば
「ある物を届けて欲しいんだ」
「ある物……?」
リアメインは黒い小さな木箱を棚から取り出すと、私の目の前にそれを置き近くの席に腰を下ろす。
「
リアメインが木箱を開くとそこには黒い宝石が入っていた、
「美しいな、これは何に使われる物だ?」
「街には魔物侵入を
「結界?」
「何だ知らないのかい」
「最近故郷を出たばかりでな、あまり外の世界には
「成る程ね……、街の中央に高い
つまりはあれさえあれば人々は魔物の
「世の中には便利な物があるのだな」
「ああ、だけどその便利な結界もそこに無ければ意味が無い、そこで小型の魔核石作りを小規模な村に設置するのさ」
「そういった事は騎士の
街の管理や警備、道の
「どこも人手が足りないのさ、活発化した魔物の対応だけじゃなく隣国への
「ふむ、そこで連盟に協力要請が出たということか」
「そういうことさ、教育機関でもある学園にも声が掛かってる、あそこは
国全体がここまでの状況になっていたとは、故郷にいたままではきっと分からなかっただろう。
父上がこの事を
もし私がこの事を知ったならば、すぐにでも村を飛び出していた。
そして妖刀を持たずして鬼へ
「それで、依頼を引き受けてくれるかい?勿論報酬は弾むよ」
「
人々の為ならば、武士として引き受けない訳にはいかない。
「助かるよ、未加工の状態のそれは魔物を遠ざけるどころか引き寄せる、結界の外では注意してくれ」
リアメインは木箱を閉じるとこちらに滑らせる。
つまりは結界の設置されていない村などにはあまり近づくなということか。
「これはまだここに置いておく」
木箱を抑えリアメインの方へ
「……?」
「私にはまだやるべき事があるのでな、運ぶのはそれからだ」
これを持っていては街の外を
「良いだろう、だが早めに頼むよ」
リアメインは理解のある人物のようだ。
「ああ」
「同行者はいくら増やしても構わないよ、
重大な仕事だ、確かに人手は幾らあっても良いだろう。
「いや、私一人で十分だ」
だが魔物を引き寄せるという危険性の高い状況では、信頼の置ける相手でなければ背中を任せることは出来ない。
「そうかい、では頼んだよ」
「ああ、必ず送り届けよう」
刀と弓を身に着け部屋を後にした。
————
「この地とはそれ程離れてはいないのだな……」
連盟にて
この距離であれば休まず走って二日といった所だろう。
とはいえ魔物や盗賊との戦闘で消費する体力を考えれば、一度も休まないというのはあまり現実的で無い。
さらに天候や地形などを
となれば
魔法の使えない私でも使える物に
連盟からの借りた
魔物を引き寄せてしまう以上、結界の無い村などは
となれば食料などの
「馬車、いやウマが
人気の無い道を通る以上は地形も
「……」
ふと、金属同士の
「なんだって騎士がこんなとこに……」
「さあな、誰か
「あの、どうされたのですか……?」
先程会話をした受付嬢が
「ここにアルマ=リュウガンジ殿は居られるか?」
「え……?」
地図を
「私に何か用事か」
受付嬢との間に立つように騎士と顔を合わせる。
「
「分かった、直ぐに向かおう」
騎士に連れられ街の中を歩く。
この
街の中央へと近づいていく程に建物の色が変わっていく、さらには住民達の
「これが
地位は違えど人としての本質はやはり変わらないのか、
「彼等は貴族では無い、商人だ」
隣に立つ背の高い騎士が答える、
「この地は選ばれた商人の為に、領主様が特別に貸し与えられている」
武では無く商の力で成り上がった彼等の瞳に、私の価値はどのように映っているのだろう。
「あの目は
「おもしろい……?」
「彼等が
誰かの下に付くつもりは無い、だが自身の武による価値には興味がある。
「商を
商いも戦いの一つだ、騙し、出し抜く、時には命の危険もあるだろう。
その
「面白い考え方だ」
「直に領主様の居住地へ着く」
「分かった」
商業都市ザーウェイを
その者の
「ここが領主殿の居住地か、中々に
高く
さらに城壁の角部分にあたる場所には見張り場が
「止まれ」
城門へ
「
先頭を立つ騎士が門兵達と話を始める。
「
門番は全身を黒く
「お前はアルマ=リュウガンジで間違いないか?」
門兵が騎士達を
「ああ、間違いない」
大槍と
「門を開け!」
門兵が大きな声を上げると城門が開き、奥から黒で
「よくお
綺麗に
顔と首に
「奥にてシーラン様がお待ちです、こちらへどうぞ」
「ああ」
先へ進む背中を追い、見事に
「名前を聞いても良いか?」
「もちろんでございます、ワタクシの名前はシルヴァリオ=ルードリッヒ、どうぞシルヴァとお呼びください」
「私の事もアルマで構わない、リュウガンジという名は呼びにくいだろう」
「
「そうか、所でこの見事な
「いいえ、使用人達が
「ふむ、私も
まだ自分の城を持ってはいないが、いずれ手にした時には
「ありがとうございます、彼女達も喜ぶでしょう」
「領主殿は私の事を恐れてはいなかったか?」
「いいえ、
「そうか」
行動のクセが見えない、いや、全ての行動を
筋肉の
それとも魔術を
「この扉の奥に領主様が居られます」
「分かった、武器はこのままで良いのか?」
「ええ、貴方は安全な方だと分かりましたから」
「そうか」
相手を
「シーラン様、アルマ様をお連れしました」
「入ってくれ」
「失礼
シルヴァに
「おお、
「以下にも、このような場所に呼んで
「アルマ殿はこの地にとっての
聞き
「まずは礼を言わせて欲しい、あの者達には流通の
シーランは深く頭を下げると、部屋の中央の椅子に座る。
「まずはそこに座ってくれ、
刀と弓を外し、領主の
「
「人に会いたいと言えば、
「人――?
「ガルマ=リゾールと話をしたい」
「リゾール
恐らくシーランは
「目的は一体……?」
「取引した者達を解放させる」
「それはどういう――いや、まさかリゾール
シーランが立ち上がり大きな声を上げる、その表情は段々と赤く染まっていく。
「盗賊団を捕らえた際に取引の
「……なんという事だ、
シーランは片手で顔を
「……シルヴァ、
「かしこまりました」
シルヴァが部屋を去り、シーランと二人だけとなった。
素性も
「奴をここへ呼ぶ事が難しいのならば、私に
「まあ待て、物事には
シーランは席から立つと、窓辺まで歩き日除けを開くと窓の外を見下ろす。
「リゾール子爵は、先の
「その者だけでは無い、この国には人を食う
表に出ていないだけで、
「……」
扉が二回叩かれた。
「シーラン様、
「入れ」
「失礼いたします、こちらが
シルヴァは部屋に入室すると、シーランに盗賊団が所持していた帳簿を手渡し、再び扉の近くに
「ご苦労」
帳簿を開き中を確認したシーランは、時折視線を止めながらも紙を
「……そうか」
シーランは目頭を押さえた後、彼専用であろう椅子が
「アルマ殿、これは本物で間違い無いのだな?」
恐らくあの帳簿の中には、知っている名が複数あったのだろう。
「ガルマ=リゾールについては盗賊団の
「……分かった」
シーランは頭から手を離すと、紙を
「シルヴァ、帳簿内の名を領地毎に
「かしこまりました」
「アルマ殿には一時的に騎士を貸そう」
「ありがたい」
「人員の選出は任せよう、シルヴァよ、アルマ殿を案内せよ」
「かしこまりました、では失礼
シルヴァの後を続き部屋から出ようとすると、シーランに声を掛けられ足を止める。
「リゾールは生かしたまま捕えてくれ、彼には国へ
恐らくは公開処刑による、人を買う者達への見せしめか。
「それ以外の者達は」
「アルマ殿の判断で決めて欲しい」
「分かった」
リゾールの家族や、部下や使用人を私がどう扱うのか。
これによって今後どのように接していくのか、立ち回りを考えるといった