武士の子孫、異世界を制す   作:fumiy

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作戦会議

 シルヴァに騎士が多く集まっている場所へ連れて来られた。

 

 周囲からの視線を感じながらも一際大きな建物へ入り、階段を上ってその一番奥の部屋へ通された。

 

「こちら、騎士の方達が作戦立案などに使われる準備室でございます」

 

 部屋の中央にはザーウェイを中心とした地図の広げられた台座が置かれ、壁には国の地図が張り付けられている。

 

「騎士隊長をお連れします、少々お待ちください」

 

「ああ」

 

 窓の外を見下ろせば、広間にて木剣を打ち付け合う騎士達が一望できるようになっている。

 

 中々に練度が高い、良い鍛練を積んでいるようだ。

 

 台座に視線を戻すと、作戦立案に使われているであろう様々な色をした駒達(こまたち)が目に入る。

 

「奴の屋敷の場所や立地が分かれば指示も出しやすいが」

 

 生憎とこの辺りの地形に関しての知識は乏しく、どこに何があるのかまでは分からない。

 

「失礼致します、ベガ隊長をお連れしました」

 

 シルヴァに続き、数人の騎士が部屋の中へと入って来た。

 

「では、ワタクシはこれで、御用があればお呼び下さい」

 

 シルヴァが部屋の扉を閉めた事を確認してから、騎士それぞれに目を合わせる。

 

「私の名はアルマ=リュウガンジ、一時的に騎士団の指揮権を与えられる事となった、よろしく頼む」

 

「それはさっきシルヴァから聞いたが、一体どういう事だ?民間人に指揮権を与えるなんて聞いた事ねえぞ」

 

 状況が分からないといった様子で、ベガと呼ばれた大柄の騎士が兜を外して頭を掻く。

 

 それに倣ってか、他の騎士三人も兜を外し素顔を晒した。

 

「私の事に関してはどこまで聞いている?」

 

「さっき言った事ぐらいだ、只者じゃないってのは聞いたがよ」

 

「そうか、では簡潔に自己紹介をさせてもらう」

 

 改めて名前と、ここに来る事となった経緯を話す。

 

 ――

 

「森の盗賊共が潰されたってのは聞いてたが、お前一人でとはな」

 

「信じられない……」

 

「あそこには、かなりの勢力が潜んでいたと聞いていますが」

 

「調査隊が調べたおおよその人数ですが、中隊程度の人数だと」

 

 戦った限りでは、三百人程度は居ただろうか。

 

「私の話はここまでいいか?作戦の話に移りたい」

 

「待ってくれ」

 

 ずっと言葉を発しないままだった銀の髪の騎士が前に出る、歳は私と同じぐらいだろうか。

 

「その前に俺と戦って欲しい」

 

 どこまでも強さを求める、いい目をしている。

 

「おい、アベル」

 

「私は構わない」

 

 未知数の相手に指示を任せるのは、不安があるだろう。

 

 いい機会だ、ここで力への信用を勝ち取る。

 

「……良いのか?」

 

「問題ない、場所はそこで構わないな?」

 

 修練場は丁度誰も使っていないようだ。

 

「ああ」

 

 窓から飛び降り広間に着地する。

 

「わっ!」

 

「きゃ!」

 

「すまない、驚かせた」

 

 直ぐ側を歩いていた二人に軽く頭を下げ、木製の武器や盾などが置かれた場所まで歩き片刃の木剣を掴む。

 

「……」

 

 何度か振るって感触を確かめる。

 

 騎士団に採用されているだけあって、耐久性に関してはそれなりのようだ。

 

 これならば、全力で振るいさえしなければ、問題ないく扱えるだろう。

 

 中央に立ち、木剣を左手に持ち自然体で立つ。

 

 同様に窓から飛び降り、木剣を持ってきたアベルと対峙する。

 

「決着は剣を手放させる及び膝を付かせる」

 

「魔術の使用は?」

 

「自由に使うといい、そこの者、開始の合図を頼みたい」

 

「へ?俺……?」

 

 木剣を左手から引き抜き、アベルの首の位置に切っ先の高さを合わせ正面に構える。

 

「……じゃあ、試合開始!」

 

「……ふっ!」

 

 合図と共にアベルが見事な速度で走り出し、一気に距離を詰めてくる。

 

 後少しで攻撃範囲に入ろうとしている所で、大きく深く一歩を踏み出し木剣の切っ先をアベルの顔の位置に置く。

 

「!」

 

 目を大きく見開いたアベルは顔を後にそらすと、そのまま縦回転をして後に跳び下がっていく。

 

「いい反応だ、次は此方から往くぞ」

 

「『アイスプレッド』!」

 

 地面を強く踏み込み跳ぶように駆け出し、途中で左右に小さく跳び氷の弾丸避けながら、一気に距離を詰めていく。

 

 剣を右手で弓矢のように引き、アベルの首に狙いを定め剣を突き出す。

 

「っ!」

 

 アベルが剣を横に構え首への一撃を防ごうとした瞬間に剣を止め、右足で地を蹴って僅かに滞空し腹を蹴りつける。

 

「ぐあっ!」

 

 吹き飛び地面を転がるアベルを、さらに地を蹴って追いかける。

 

「クソ!」

 

 アベルは片腕で勢いよく逆立ちをして立ち上がる。

 

「降り注げ!冷厳なる撃甲よ!『グラチェスカーディ』!」

 

 アベルの頭上に巨大な魔法陣が現れ、そこから無数の氷の柱が出現した。

 

「バカ野郎!ここで上級魔術を使う奴があるか!」

 

 遠くからの怒鳴り声を聞き流しながら、降り注ぐ氷雨の合間を駆け抜けていく。

 

 最小限の動きで氷の柱を避け、目の前を塞ごうとする物を剣で打ち砕く。

 

「氷塊よ!かの敵を打ち砕け!『アイスベルグ』!」

 

 新たな魔法陣がアベルの目の前に現れ、巨大な氷塊が形成されていく。

 

 剣を左手で逆手に持ち、大きく一歩踏み込み、氷塊を思い切り殴りつける。

 

「なんだと!?」

 

 砕け散った氷塊を突き抜けアベルに迫るべく、さらに踏み込む。

 

「このっ……!」

 

「遅い!」

 

 防御の為に構えようとしたアベルの剣に、逆手に持った剣を下から打ち付け弾き飛ばす。

 

「ここまでだ」

 

 剣をアベルの首元に突き付ける。

 

「しょ、勝者!……ええと」

 

「アルマだ」

 

「勝者アルマ!」

 

「……良き試合だった」

 

 剣を離し、武器置き場にそれを戻してから、先程降りて来た窓に跳び上がる。

 

「うおぅ……!一人で盗賊団を潰したって話も納得出来る動きだな」

 

「信じて貰えたようで何よりだ」

 

「しかし、あれだけの戦いをして息一つ乱れてないとは」

 

 これで他の騎士にも力を見せつける事が出来ただろう。

 

「では、作戦の説明に移っても構わないだろうか」

 

「始めてくれ」

 

 地図の前に立ち、赤い駒を手に取る。

 

「この中にガルマ=リゾールの城の位置がわかる者は」

 

「リゾール子爵……?ええと、ここにあります」

 

 騎士が指差した場所に赤い駒をいくつか置いていく。

 

「おいおい、まさか作戦ってのは」

 

 ベガは察したように表情を歪め、髪をかき上げる。

 

「ガルマ=リゾールの捕縛及び城の制圧、そして人質の救出だ」

 

「リゾール子爵が……?」

 

「どうして……」

 

 騎士達が困惑するのも無理はない、リゾールはかつてあった大戦にて英雄視されていたのだ。

 

 それ程の貢献(こうけん)を国に対して行ってきた騎士が、今まさに|捕らわれようとしている。

 

「……待て、人質だと?」

 

 ベガが疑問を口にする。

 

「ガルマ=リゾールは奴隷を所有している」

 

「!?」

 

「馬鹿な、そんな事が……」

 

 部屋の中を重い空気が支配する。

 

「奴の容疑は、奴隷の所有及び人身売買による盗賊への資金援助」

 

「なんてこった……」

 

 ベガは頭を抱えると備えられた椅子に腰を下ろす。

 

「交流でもあったか?」

 

「戦場で何度か一緒になった事がある、その時の彼はこのような事をする人間には見えなかったんだがな……」

 

 その表情は暗い、尊敬の出来る人間だったのだろう。

 

 背中を預けたくなるような、信頼に足る人間だったのだろう。

 

「ならばここに残るか?」

 

「いいや、そんな事で任務を投げ出したりはしねえさ、騎士としてな」

 

 その目に迷いはない、これならば問題はないだろう。

 

「ではこれより作戦会議を始めるが、まず前提として聞こう、今動かせる兵はどれほどいる?」

 

「それなんだがな……」

 

 ベガは言いづらそうに顔を歪める。

 

「動かせる街の騎士は二百人程度しかいねえんだ」

 

「ふむ」

 

「しかもこれは、街を警備してる奴も出来るだけ動員した数でな……」

 

 想定していたよりも圧倒的に数が少ない、であれば少し捻って考える必要があるだろう。

 

 一人で動くならば大した問題ではない、だが今後の展望を考えれば騎士団は使う必要がある。

 

「それにリゾールはかなりの戦力を持ってる、正面からじゃとてもじゃないが勝てないだろうよ」

 

 確かに正面からぶつかり合えば、多くの被害が出る事は避けられない。

 

「争わなければ問題は無い」

 

「……どういう事だ?」

 

「合同訓練を取り付け、向こうからリゾールの土地に迎え入れさせる」

 

 シーランの口利きがあればまず断りはしないだろう、それに百人程度の人数ならば土地へ足を踏み入れる事にそこまでの警戒はしない筈だ。

 

「確かに、それなら少人数でも問題は無いか……、それで奴の下へ入り込んだとしてそっからどうするんだ?」

 

「訓練として騎士同士での模擬戦を行い時間を稼ぐ、最初に私が相手を負傷させその場から離脱する」

 

 私の力は通常の人のそれとはかなりかけ離れていると、これまで生きた中である程度自覚しているつもりだ。

 

「その後、私はリゾールの居住地に侵入し囚われた者達を救出し、奴を捕らえる」

 

「そんな簡単に事が進むとは思えんが」

 

「その為にはある一手が不可欠だ」

 

「一手……?」

 

 もしリゾールが逆上し騎士達を動かしたならば血を流すことは避けられない、それを避ける為にもベガにはある働きをしてもらわなければならない。

 

「リゾールの下に信頼できる騎士はいるか?出来れば人を纏めている立場の者が好ましい」

 

「……隊長格が何人かいるな、任務でも一緒になった事がある」

 

「ならばその者達にリゾールの事を伝えてくれ、うまくいけば戦力の幅を縮める事が出来るはずだ」

 

「簡単に信じて貰えるかは分からんが、了解した」

 

 言葉だけで裏切らせる事は難しいだろう、だが疑念を与える事は出来る。

 

「広間に人を集めてくれ、すぐにリゾールの下へ出る」

 

「分かった、お前ら行くぞ」

 

「はっ!」

 

 ――

 

「では、すぐにリゾールの元へ竜を飛ばそう」

 

 シルヴァを通して作戦を聞いたシーランは窓を開くと、金の鐘を揺らし高い音を鳴らす。

 

 すると鈴と同じ輝きを放つ小さな翼竜がどこからか表れ、窓枠を足で掴み止まる。

 

 シーランは翼竜の首から下げられた黒い筒を手に取ると、それを開け中に手紙を丸めて入れる。

 

「ではシーランの元へ届けてくれ、頼んだぞ」

 

「ピィッ!」

 

 翼竜は甲高い鳴き声を発すると、再び外へと飛び立っていった。

 

「アルマ殿、頼んだぞ……」




シーラン=ケンド
商業都市ザーウェイ及び周辺の土地を統治する侯爵
性格は慎重かつ臆病ではあるが、領地を纏める物らしく大胆な一面もある
ただストレスにはそこまで強くない為、痩せこけた身体をしている
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