避けようのない悲劇であった
『ま、待ってくれ!頼む、殺さないでくれ!』
誰かの声がする、恐怖に
『俺が悪かった!どうか命だけは……!』
(この感覚は、夢か?)
自分が自分で無いような、どこか浮いているような、そんな感覚だ。
『金なら払う!女も用意してやる!だから……!』
声の方へ眼を向けると、頭頂部から前頭部の辺りまでを剃った長髪の男が地面に尻を着いていた。
男は左肩に傷を負っているのか手でその部分を押さえているが、指の
どうにかしてその場から必死に起き上がろうとしているが、力が上手く入らないのか
(あの男が身に着けている鎧、初代の物と似た形をしている……)
一つの仮定が浮かぶ、この夢は初代当主が暮らしていた世界なのではないだろうか。
男の視線の先に目を向けると、右手に
その表情は
大男は
『ま、待て!この俺に手を出すと仲間が報復に来るぞ!それでもいいのか!』
『……』
男は脅しの言葉をぶつけるが大男はそれに耳を貸すことはなく、恐怖心を煽るかのようにゆっくりと近づいていき、鉈を高く振り上げた。
そして。
『や、やめ――!ゴォァ!』
男の頭部へ、
鉈は顔の
大男は血溜まりに沈んだ男を
一瞬だけ警戒をしたが、大男はそのまま私の身体をすり抜けていった。
『俺が――、家を離れなければ、こんなことには――』
振り返ると見るも
大男が
何度も、何度も、
大男は家の外に穴を掘ると二人の亡骸を丁寧に運び出し、そこへゆっくりと置き、穴が開いた六枚の
『少し待っててくれよ』
亡骸の頬を優しく
大男はどこからか平たく長い岩を持ち出し地面に突き立てると、そこに
『最後の仕事だ』
大男は家に戻り男の亡骸を引きずり出してきた、そのまま別の建物まで運んでいくと金属の器に頭を
そして頭部に食い込んだままであった鉈を引き抜き、男の首を切り落とし血を器に溜め始める。
炉に火を起こし、鉄のはさみで掴んだ金属を熱し始める。
紅く染まった金属を
その工程を何十、何百と繰り返す。
『おのれ、おのれ、おのれ――ッ!』
怒り、憎しみ、悲しみを込められた呪いが金槌の一振りごとに込められていく。
それは段々と刀の形へと変わっていった。
鍛冶師は土を血で溶き作り出した泥を、刀身の内側に塗り付ける。
炉に再び刀身を入れ赤くなるまで熱すると、鍛冶師は立ち上がり首の無くなった死体を
熱によって血溜まりが沸き立つ、沸騰が収まり引き上げられた刀身には独特の反りが産まれていた。
鍛冶師は四角い石を持ってくると固まった泥を削りだし、湿らせた
魔性の輝きを放つ、悲しくも美しい刀の原型が出来上がった。
鍛冶師は表面を布で拭《ぬぐ》い去ると、小型の金槌と四角い刃物で文字を書いていく。
『
呪詛を刀に込めた鍛冶師は
そして墓の前に座り、地面に手を着いた
『人を殺した俺は極楽には行けねえけどよ、せめてその手前までは見送らせてくれ』
鍛冶師の男は涙を溢れさせながら、短刀を自らの喉元に押し当てる。
『グゥっ……!』
そして、自ら喉を引き裂いた。
『チク――ショウっ!』
雨が降り出した。
――
「――っ!今のは……」
見知らぬ場所、見知らぬ者達の悲惨な光景だった。
起き上がり、刀を見つめる。
「これの、記憶なのか――?」
家族を殺された鍛冶師が鉈を使い
そして、最後には自らの喉を引き
「やるせないな……」
恐らくはどこでも起こりうる話で、言ってしまえばただ運が悪かった。
鍛冶師の男が
だがそうはならなかった、そんな
「まだ暗い」
急いで村に戻り、
「魔物が寄り付かなかったのは
あの
村から持ってきた袋の中から魔法陣の描かれた紙を何枚か取り出し地面に並べ、さらに液体の入った小瓶を取り出し栓を開け紙に
紙に描かれた陣が光を放つ、すると紙の置かれた地面が
穴に
これを行うことにより肉体と魂が
「これでいいだろう」
土を戻し穴を埋め終わる頃には、空が白み