騎士団
続いて馬車を
「アルマ指揮官、お疲れ様でした」
「ああ、手を貸してくれて助かった」
「私達は自らの役割を果たしたまでですから」
「そうだな」
馬車の扉をゆっくりと中を確認する、まだ眠っているようだ。
「彼女達を連れてきてくれ、私は人を呼んでくる」
「了解しました」
人を呼ぶ為に建物を目指し歩き出すと扉が開かれ、見知った騎士達が現れた。
「アルマ殿、無事に戻ったか」
「ああ、馬車に保護した者達が居る、五人が休める程度の部屋を用意してくれ」
「すぐに用意させよう」
騎士が手を上げると
馬車から五人が降りてきたのを見て騎士達が駆け寄ろうとするのを手で制止する。
「……彼女達の案内役は同性の者だけにしてくれ」
五人に気を使わせていると思わせないよう、なるべく
「私が案内をします」
「任せたぞ、アルマ殿も中へ、シーラン様より預かっている物がある」
騎士の後に続き建物の中へ入ると、
広間の中央には青く
「……これらは商人達から
「
広間を抜け階段を登り通路を奥へ行った位置の、数人の騎士がいる
「アレを持ってきてくれ」
「はい」
騎士の一人が部屋の外へ出ていく。
「今回の件もそうだが、アルマ殿には|随分と迷惑を掛けた」
「自らやった事だ、問題ない」
「そう言って貰えるのは有り
何やら
「失礼します、例のものをお持ちしました」
部屋に戻ってきた騎士が中央に置かれた机の上に、2人がかりで大きな包を乗せる。
「これはアルマ殿への礼だ、中を確認してみてくれ」
言われるがまま包に近づき上の方で縛られている封を解くと、その中には金に
「
「気持ちは有り難いが私も旅の最中だ、このような物を
「ならばこれを使って欲しい」
「これは?」
騎士が机に置いたのは中央には赤い石が埋め込まれた黒く薄い板だった。
「これは騎士団の技術部が開発した
「魔導具……」
「使い方を見せよう」
布袋の中に手を入れ数枚の
「この部分に魔力を流し込む事で……、収納する事が出来るんだ」
赤い石が光ったその直後、効果が板の中へ吸い込まれていった。
「見事な物だな」
手渡された板の赤い石に触れてみるが、やはり何も起こらない。
「アルマ殿?」
「私には魔力が無くてな、魔導具の類を
初代当主が魔術無い世界出身の人間であり、そのままでは
「……!済まなかった、
騎士は深く頭を下げる。
「気にしないでくれ、そう考えるのが普通の事だ」
「そうか……」
「しかし
先程まで
「おい……!」
「私の身体は生まれつきおかしくてな、魔力は無いが普通の人間よりがずっと力が強く、
「なんとっ!それは非常に面白いですねぇ、いつか貴方の身体を調べさせていただきたいものです」
騎士は目を見開き、
その視線からは何処か熱が
「すまんな、こいつはずっとこうなんだ……」
「僕が変みたいな言い方をするなんて失礼ですねぇ」
「
「ほう、僕の母校にですか」
「あそこまで続く道も魔物が多くでている、それに
騎士は壁を叩き、悔しさを
近年の魔物の
「だが私達は戦い続けるしか無いだろう、この武は民を護るためにあるのだから」
「ああ……、そうだな!」
何故魔術が使えない身体に産まれたのか、何故人よりも
だがこの力にはきっと理由がある。
旅を続けていればいつか見つかるかもしれない。
その為にも、先へ進まなければ。
「素敵な心意気ですねぇ!所でこのお金どうします?」
「まったくお前は……、街には
「僕もです、我々騎士の目もありますから、そこが一番安心かと思いますねぇ」
金融屋という
「ふむ、良いことを聞いた、後ほど行ってみるとしよう」
「話したいことはこれで全部だ、付き合わせて悪かったな」
「構わない、したくてやった事だ」
「おお、流石の怪力っぷり」
「入り口まで送ろう」
「その前に人と会ってもいいか?」
「ああ」
騎士達の後に続き広間へ降り、セレナ達が居るという部屋まで向かうとカルミナが壁を背にして立っていた。
「
「分かった」
騎士達は広間の方へと戻っていった。
「カルミナ」
「!」
歩きながら声を掛けると、カルミナが
「アルマ様……!貴族へ
「ああ、この通り無事だ」
カルミナは安心したように、胸に手を当て小さく息を吐く。
どうやら心配を掛けさせていたようだ。
「他の者達はこの中か?」
「はい、セレナさんとアーティアさん、それと使用人の方々はこの中に、他の方々は先程迎えが来られお帰りになられましたわ」
「一足遅かったか」
出立の前に
「カルミナは何故部屋の外に?」
「
「そうか、優しいのだな」
「ありがとうございます、――ふふっ」
カルミナは
「カルミナの
「はい、
「そうか」
「カルミナさんごめんなさい!話すのに夢中になっ……て……て?」
部屋を飛び出して来たセレナと視線がぶつかる、また泣いていたのか目の周りが赤くなっていた。
「あ、あ……アルマ様!」
胸に飛び込んで来たセレナを受け止める。
「セレナさん、いきなり
「あ……、ご、ごめんなさい、うれしくてつい」
顔を赤くしたセレナが素早く側を離れ、両手で顔を隠す。
「
二人姉妹とその使用人達のこれからについてだ、頼る者の居ない彼女達がどうするべきなのかを考えておきたい。
「はい……!」
共に部屋へ入ると、
助けた
「アルマさまー!」
勢いよく飛んできたアーティアを受け止めると、身体に
「すごいすごい!本当に三人共助けてくれたんだ!」
「
――
「セレナはこれからどうするつもりだ?」
「どうする、べきなんでしょうか……」
セレナは紅茶の入った
様々な事から
「私達には帰る場所もありません、
「
セレナが家を飛び出した要因を考えれば貴族の屋敷に
「考えてくれただけでも嬉しいです」
セレナが力無く
「貴族同士ではやはり難しいか」
「はい、信用と
とはいえ貴族以外の者に彼女達を任せる事も
貴族ではなく戦う力があり、
「んぅ、ある、さま……」
寝言と共に軽い金属のぶつかる音が聞こえ視線を下げると、膝の上で眠るアーティアの手でも触れたか
「話してみる
連盟は貴族との関わりが薄く、彼女達を
アーティアが起きないよう彼女の身体を抱え上げ、
「アルマ様?」
カルミナが不思議そうな目で
「少し外へ出てくる」
依頼の品を受け取るついでに相談をしてみるとしよう、
――
「ようこそれんめ――あっ」
連盟の建物に入ると受付嬢と一番に目が合うが、
「アルマ殿戻られましたか……!」
仕事相手だった行商人のコラルが酒場から足早でやってきた、その顔色はやや悪く見える。
「コラルか、一体どうした」
「騎士の方々に連れて行かれたとお聞きしました、ですがご無事なようで何よりです」
「確かに連れられはしたが、それ程に
「騎士団には街の
「……確かにそうか」
それに連れて行かれた私は、
「リアメインはここにいるか」
「リアメイン殿ですか?ええ、恐らく居られるかと」
「リュウガンジさん、支部長がお呼びです……」
裏から戻って来た受付嬢が
「すぐに行こう」
それ程までに私は恐ろしいのだろうか。
————
「戻ったね、アルマ」
書類作業をしていたのか、
「仕事の依頼をしてすぐに騎士団に連れて行かれたと聞いたけど、無事に戻ってくれて安心したよ」
「ああ」
「ちょっと小耳に
あれだけの
彼女が気に掛けていることは
「事は
「なら良いけどね……、それで荷物を受け取りに来たのかい?」
「ああ、だがその前に頼みがある」
「頼み……?」
頼みをされる事を予想していなかったのか、
「貴族の娘とその使用人を保護している、その者達の――」
「待ちな、なんだって?貴族の娘を保護だって?」
リアメインの表情が
連盟長である彼女であってもこの反応をするというのなら、保護の
「その娘は今どこにいるんだい?」
「今は騎士団の
一時の間はあの場所に置いておくことは安全だろうが、カルミナが言っていた通りに考えるならば領主もずっと住まわせるわけにもいかないと考えるだろう。
「まさかその娘を私ら連盟で預かって欲しいなんて言わないだろうね……」
「そのつもりであったが、やはり難しいか」
「いくらここが連盟と言ってもね、貴族様直々に仕事を
この回答は想定していた。
「では人が
「……」
リアメインは目を閉じて何かを思案するように口に手を当て、
「連盟で経営している宿屋がある、そこの一室なら貸してやらんこともない」
「本当か」
「ただし、部屋代は頂くし使用人にも従業員として働いてもらう、それでも構わないね?」
セレナの性格を考えれば、
「その条件で構わない、宿代に関してはここで先払いをさせて貰う」
騎士団で受け取ったままの金が入った袋を、そのままリアメインの机に置く。
「……
「これだけの金を用意するなんて、その娘に
目を細めて笑うリアメイン。
「救った者には救われた者へ対する責任が生じる、救っておきながら捨て置くなど私はしない」
その人物に
自身の要件を投げ捨ててまで助けようとは思ってはいない、他者を気遣える余裕がある今だからこそ助けた。
それだけの話だ。
「眉の一つすら動かさないとは、誰かは知らないが同情するよ……」
「宿屋はここにある、話は通しておくから連れて行ってやると良い」
宿の場所はここからさほど離れてはいない、いざという時に逃げ込める場所が近いというのは役に立つだろう。
「感謝する」
リアメインは一つ頷くと、棚から依頼の箱を持ってくる。
「後は、これもしっかり頼んだよ」
箱をうけとり腰の布袋に閉まっておく。
「確実に届けて見せよう」
セレナを
元より失敗するつもりは無いが、さらに気合を入れて挑ませてもらうとしよう。
――――
「連盟が経営をする宿屋ですか?」
「ああ、そこならば知られることもなく、
連盟から騎士団詰所に戻り、セレナ達に宿屋の事を説明するも反応はあまり良くない。
「あの、私達は今お金が無い状況で、それで
「宿泊費は私が
「……へぁ?」
「さらに条件として使用人である三人には、宿屋で
「……」
彼女達の表情は正に
自分達の知らない所でここまで話が進んでいるのだ、事に
「悪いが断らないでくれ」
「見事な作りだ」
三階建ての建物を高い
扉の前には連盟員だろうか、武装した人物が挟むように二人置かれている。
扉を開き受付へ向かうと、女性の従業員に笑顔で迎えられた。
「いらっしゃいませ!宿泊ですか?」
「アルマ=リュウガンジだ、リアメインの紹介でここへ来た」
「かしこまりました、ではこちらへどうぞ」
従業員に続き階段を登り、
「此方がお貸しする部屋です、どうぞ中へ」
先に部屋へ入らせてもらい、中を確認し窓の外を見る。
「此方が鍵です」
「ああ、だが一つは不要だ」
従業員が取り出したのは六つの鍵の中から、五つだけ受け取る。
「……かしこまりました」
あくまで五人が生活をする為に借りた部屋であり、私がここで寝泊まりすることは無い。
「すごーい!広いねお姉様!」
「そうね……、でもあんまり走り回っちゃダメよ」
「はーい」
アーティアが走り回れるくらいの広さはある一室だ、これならば五人居ようとも問題なく生活できるだろう。
ここは連盟員専用の宿屋であり、さらに宿泊費も高めに設定されている為、
「気に入って頂けましたか?」
「はい、とても素敵です……」
恐らく
「従業員として働くのはこの三人だ、明日から働けるように作業内容に付いて教えてやって欲しい」
「成る程彼女達が……、分かりました」
無理矢理自身を
「後で使用人達に渡してやると良い」
セレナに
「ありがとうございます……」
これで
「あの、私達はいつまでここに居ることが出来るのでしょうか……」
「全てが解決する
リアメインが言うには、あの袋一杯に入っていた金を使えば、この街の
見知らぬ土地に見知らぬ人間を
であれば連盟が
「
「……っ!、う、うぅっ……!!」
セレナは床に
「大丈夫か」
セレナの隣に
「ううぅ……!ご、めんなさい……!」
「おねえさま?どこかいたいの?」
アーティアは
「アルマ様は、どうしてそんなにお優しいのですか?」
泣いていた
「私は優しいか?」
「はい……!」
「アルマ様はとっても優しいよ!皆のこと助けてくれたんだもん!」
アーティアが私の背中に伸し掛かりながら、
「優しい理由か……」
父上、アニスやアルス達使用人、親しい友人達。
「一つ上げるとすれば、『力』だ」
「力ですか?」
セレナは
「ああ」
人の
「私には生まれた時から魔力が無いんだ」
「あ、あの、ごめんなさい……」
「気にすることは無い、――私は魔術も魔道具も使えないが、その代わりに人よりもずっと力が強かった」
それがあったからこそ
「だからこそ、人にも優しく出来ているのかもしれないな」
人前で自分の事を
アーティアを背中から
「私は行く、何かあった時は連盟を通して知らせてくれ」
「あ――」
セレナは何かを言おうとして口を閉じる、その表情は
「心は
「アルマ様……」
「私の家に古くから伝わる言葉だ」
セレナの手を引いて立たせ、肩に手を置く。
「!」
「どんな
「はい……!」
セレナの表情から
「アーティア、セレナの事を支え護ってやるんだぞ」
「うん!」
「良い返事だ」
アーティアの頭に手を乗せて髪を
「ではな」
「はい!ありがとうございました……!」
「またね!」
深く頭を下げるセレナ、大きく手を振るアーティアに片手を上げて返し部屋を後にした。
「後は、貴族達がどう動くか」
彼女達の父親、そして
その者達の事がどう動いているかは分からない、だが今も
そして遅かれ早かれ彼女達の事は気付かれる、それは何をしようが
ならばどうするか。
「
ふと三人分の足音が階段を上がってくる音が聞こえ、視線をそちらに向けると使用人達の姿があった。
「丁度終えたか」
三人は
「アルマさん、少しお話良いですか?」
「構わない」
何か決意を固めたような、
「ありがとうございます、では付いてきてください」
使用人達に付いていくと、暗い一室に通された。
中は先程の部屋より狭く、少人数用の一室だということが分かる。
明かりが着けられると共に、扉が
「まず貴方に感謝をさせて下さい、私達を救って
一人が深々と頭を下げると残りの二人もそれに続く。
「さらにはこのような生活の出来る場所まで
「ああ」
「貴方には最大限の礼を持ってお返ししたく、この部屋へ来て頂きました」
やや
「礼など気にするな、勝手にやった事だ」
家を失い
「そんな訳には参りません……!貴方は私達にとっての恩人なのですから」
「だが返せる物など無いだろう?」
「……はい、ですから」
一つ
「待て、何をしようとしている」
「私達の身体を
さらに脱ぎ進めようとした彼女の手を掴み、行動を辞めさせる。
「よせ」
その手は
「
「貴方様が望むならどんな事だってしてみせますから……!」
残りの二人が抱き着いてくると、
引き
「ですから……!どうか二人には手を出さないでください……!」
「!」
その目には光が無い、まるで全てに絶望しているかのように。
このような選択肢を
「やめろ」
「――」
思わず低く出た声に使用人達の表情が固まり動きが止まる、さらに
「離れろ」
長髪の使用人の手を
彼女達を恐れさせるつもりは無かったが、優しく
ならば恐怖によって行動を
「私はお前達に
「……」
あるいはもっと速く旅に出て、彼女達を助け出していたならばこの様な選択肢を取らせずに済んだのだろうか。
「元より姉妹にもお前達にもその様な関係を
信じられないだろうが、
「話は終わりか?」
「……」
「そうか、では私は行かせてもらおう」
道を開けるように左右に分かれた使用人達の間を通り、
「怖い思いをさせて済まなかった」
部屋を出て、泣き声が聞こえてくる扉の前で
「一度助けた程度では、やはり信頼を勝ち取るのは
彼女達の
セレナ達も一歩遅ければどうなっていた事か、やはり最初に見つけた
「
彼女達の予想外の行動に
力ずくで離そうとすれば怪我をさせてしまう恐れもあり、それで引き剥がす事が出来ないというのもあったが。
一番の原因はあの程度の事で
「もっと心を