「今日の所はここで休むとしよう」
『
とはいえ明日の朝には
「
落ちている枝を拾い集め地面に横に並べ、それを
「猫又、火を起こしてもらえないか?」
『なぜ我が人間に手を貸してやらねばならぬのだ』
「そうか」
『……』
鍋に水と干し肉を入れ
「お前も中にある物は好きに食うといい」
『礼は言わんぞ』
「そのくらい気にはしない」
『ふん』
――
「
『……昔の事などとうの昔に忘れたわ』
「そんなものか」
荷台に柱を立て、布を被せていく。
『おい、一体何をしている』
「
猫又を持ち上げて、座っていた布を取る。
『なっ、
「布を
暴れる猫又を地面に置き、布を広げ馬車に
装備をすべて外し、それも端の方へ寄せておく。
『
猫又が荷台に飛び乗り横になり始めた。
「ある
『運命?
これを手にして間違いなく世界が広がった、何であれ運命的な出会いであったことには変わりない。
『おい貴様!我の
「小さいお前にはそれだけの場所があれば十分だろう」
『ここは
「これは私が金を出して買ったものだ、お前に
『くっ、人間の
「その小さな口で出来るものならな」
――
『――っ!』
『――!――なせっ!』
『……あっ!やっやめ、
「……何をしている」
『
「ケダモノはお前の方だろう」
『だまれ!
猫又を
「なぜ人の姿になっている」
『うるさい』
外を見るがまだ日が
「……まあいい、私は寝る」
また同じ
『……』
寝ている間も気を抜いてはいなかったが、
これならば
隣に横になる音を聞きながら再び目を閉じた。
――
屋根に止まった魔鳥の鳴き声で目を開く、逃げ出さない魔物もいるということだろうか。
動きづらさを感じながらも視線を外に向けると、
「すぅ……」
背中に熱と息を感じる。
起こさないように腰に回された手を
「人に
身体を
猫又が起きるまでは余り速度は出さないでおくとしよう。
――
「あれが
「少し速度を上げるぞ、しっかり捕まっていろ」
強く
巨大な門の前で立ち止まり周囲を見渡す、
「
返事は無い、
人を呼ぶにはどうしようかと
『な、なにをしている――!』
「人を呼んだ」
門の向こうから人の叫び声と幾つもの足音が聞こえてくる、そして門の横にあった扉から青い鎧を身に着けた者達が飛び出し
「何者だ貴様!」
「門に攻撃をするなど何を考えている!」
「連盟より依頼の品を持ってきた、通してほしい」
「なに――?一体何を運んできた」
「
「結界の核?……おい、上に話を聞いてこい」
「は、はい!」
青鎧の一人が扉の向こうへと走っていく。
「お前一人か?」
「いや、あと一匹いる」
「見たことが無い使い魔だな、あんまり懐いていないようだが」
「素直じゃないようでな」
「馬がいないようだが、逃げ出したのか?」
別の青鎧に馬車を観察しながら問いかけてくる。
「最初からいない、私が自力で引いてきた」
「引いてきた?どこから」
「ザーウェイからだ」
青鎧達が
「おいおい……、街の中じゃ比較的近い方とはいえそれは無理だろ」
「
「なんか馬車に
「構わない」
「おお、流石力持ち」
青鎧の全身が発光すると、馬車は
「いや、強化しないとやっぱきついな」
「強化してでもこれを一日押して歩くのは
「そういうものか」
門の向こう側に消えた青鎧が再び走って戻ってきた。
「依頼の確認取れました!門を開けて良いそうです!」
「そうか」
一団を
すると、巨大な門が半分ほど持ち上がった。
「何を
「さあな、だが昔はでかい魔物をバンバン
「通っていいぞ」
「ああ」
轅を乗り越え門の中まで押し運んでいく。
「……なあ、今魔術の反応あったか?」
「……いや、全く感じなかった」
「依頼主はどこに?」
「――ああ、そのまま進めば赤い屋根の建物がある、そこで案内してもらえ」
「分かった」
「貴方が連盟の方ですか?」
「ああ、依頼の品を持ってきた」
懐から木箱を取り出し見せる。
「
「分かった」
受け取りに来たのだと思ったが、直接渡しに来いということか。
「……お前も来るか?」
『人里に来た以上、貴様の力などいらんわ』
猫又は荷台から飛び降りると、
「行ってしまいましたけど、良いんですか?」
「大丈夫だろう」
男に案内されながら建物の中へ進むと、同年代の者達と何人もすれ違った。
「彼等はここの生徒か?」
「はい、皆ここ
今は
階段を幾つか登り、廊下を進んで三つ目の扉の前で男が立ち止まった。
「学長、連盟の方が来られました」
「通してください」
扉の向こうから穏やかそうな女の声が聞こえると、男が扉を開けて横にずれる。
「どうぞ」
「
「いえ、では失礼します」
男は私と学長にそれぞれ一礼すると扉を閉めて行った。
「連盟のアルマ=リュウガンジだ、依頼の品を持ってきた」
「私は魔導学術園魔導学長のタリア=トリニティと申します、移送ご苦労さまです、予想よりもかなり早い到着で
トリニティが席から立ち上がると、近くまで歩いてくる。
「本当であれば昨日の内に到着したいところではあったが――、
「はい、お預かりします」
木箱を開けば、黒い
「
トリニティは木箱を閉じて机に置くと、
「なにか包める物があれば良かったのですが、これでも
「構わない、それよりも
「この石の
石の性質とやらはいまいち実感することが出来なかったのは残念だが、無事に依頼を終えるに
「どうぞ」
「確かに受け取った」
トリニティの手の平から札束を受け取り、財布の中にしまう。
これにて依頼完了だ、次の目的地は天狗がいる山だが。
「……ここを発つ前に少しの時間、この学園の見学をしてもいいだろうか」
「ふふっ、
トリニティは
「その間はこれを身に着けてくださいね?じゃないと
「気をつけよう」
魔術の扱えない私には
「良ければご案内しましょうか?」
「それは大変
学長という
「私もこれから
「
「ふふっ、それは言わないお約束ですよ」
「まずはこの
「ふむ、魔術も錬金術も同じ魔導なのか?」
「はい、行われる事や求められる結果に
『魔法』
「魔法を導き出す学術、それが魔導学なのですよ」
「魔の
「ええ、面白いですよ、貴方も学んでみませんか?」
「いずれ
「その日を楽しみにしていますね」
「ああ」
彼女と共に学び舎を歩いていると、
相当に
「あ、学長おはようございます!」
「はい、おはようございます」
「学長おはようございます!先日の
「おはようございます、その調子で頑張ってくださいね」
「隣の子って転入生ですか?」
「いいえ、こちら大事な物を運んできて下さった連盟員の方で、今は学園のご案内中ですよ」
「へー、学長
頭を下げてどこかへ向かう学生達の背中をトリニティは見送ると、再び歩き出した。
「
いずれ
「その言葉を
「そうだろうか」
今まで出会った人間には
「ただ、
「
その後生徒が普段使うという教室、魔道具を作る
魔導学科の学び
「こちらは魔戦学科、戦闘に重きを置いた魔術や戦闘技能を学べますよ」
「確かに、武器を身に着けている者が多いな」
リズが通っているのはこっちの方だろうか。
「トリニティ学長、こっちの校舎に来るのは
「はい、こちらの方に学園の案内をしてさしあげようかと」
「案内ですか……」
長髪の男が此方を見てくる。
背中には
「連盟員のアルマだ」
「
「広場で武器を使った
「それは楽しみだ」
「では、僕はこれで」
ラヴェルは軽く一礼をすると校舎の外の方へ歩いて行った。
剣だけなのか魔術を
「先に広場の方を見に行きますか?」
「いや、建物の中が先でいい」
「分かりました」
案内されたのは生徒が座学を学ぶ教室、戦闘訓練などが行える武器用の場、大規模な魔術の行使が出来る場、そして的が並んだ射撃演習場であった。
「広いな」
的が並ぶ方を見てみれば多様な形の大きさの物があり、中には宙を自由に飛び回る的もあるようだ。
「ここではいい訓練が積めそうだ」
「良ければ
「そうだな、弓を
「背負っている弓ではいけないのですか……?
「これは少し
「ここでならその心配は要らないわよ、アルマ」
入口の方から聞き
「リズ、来ていたのか」
「それはこっちが言いたい事だわまったく……、トリニティ学長、おはようございます」
リズリーは
「あ、おはようございます!」
「……」
その後ろにいた二人の学生も続いて頭を下げる。
「おはようございます、お知り合いだったのですね」
「
「大丈夫ですよ、壁にも
トリニティが
「では
「あそこの青い円は見えますね?その中で的の
「
背中から弓を外し立ち位置らしき青い円に向かおうとすると、何を思ったのかリズリーが先にその場へ立った。
「リベットさん?そこはアルマさんにこれから使って
「彼には初めての事ですから、今回は弓に集中してもらおうかと思っていたのですが」
彼女がこのような行動をとった、つまりは動かすことに魔力を要求されるのだろう。
別に
「ならば頼めるか?」
「
リズリーが視線を前向けると、様々な種類の的が飛び回り始める。
「流石リズリーさん!あれだけの的を一度に動かせるなんて!」
「さて、どれを狙うのかしら?」
「ではあの
他の的は大なり小なり中央以外の白い部分がある、だがあれには赤い部分しかない。
「自由に動かすといい、確実に撃ち抜いて見せる」
リズリーの隣に立ちの矢を一本引き抜く。
「言ってくれるじゃない、
赤い的の動きがさらに早く、立体的なものになる、それだけでなく他の的もそれを
「そうでなくてはな」
弓を前に構え矢を
「あ、あんなの当たるわけないよ……」
息を止め身体を固定し集中力を高めていく。
そして、打つ
解き放たれた矢は複数の的をすり抜け、一番奥で方向を
「ふう……」
止めていた息を吐き出し弓を背中に戻す。
「……すごい」
小さな声がやけに
周りを見やれば、道場中にある視線が集まっている。
「……やられたわ、よく私が的を引き返させるって分かったわね」
「長く共にいたんだ、それくらい分かるさ」
「あらあら」
「貴方はどうしてこう、人前で
リズリーが青い円を起動させると、
「では広場という場所に案内してもらえるか?ここの
「それは構いませんが、リベットさんじゃなくて私で良いんですか?」
「彼女達も用があってここに来たのだろう、私に時間を使わせる必要は無い」
リズリーは弓の修練、それと後ろ二人の指導と言った所だろう。
彼女達にとっての貴重な時間を邪魔したくはない。
「分かりました、ではこちらにどうぞ」
「ああ、またな」
「……ええ、また」
リズリーは何処か
――
トリニティに連れてこられたのは場所は、半円球の
中央では学生の二人が剣や魔術を
「
「その点に
トリニティは何もない空間から光と共に長い杖を出現させると、それを天にかざす。
すると、結界内に飛び交っていた魔術が全て
「な、なんだ……?」
「あれ?トリニティ学長だ」
周囲の視線が此方に集まる。
「結界があるとはいえ
「す、すみません」
「ごめんなさい」
模擬戦を行なっていた二人は気まずそうに結界の外にでる、すると服を汚していた血と身体中の傷が全て消え去った。
「傷が
「模擬場に張られた結界は中にいる人の死を防いでくれるのですよ」
「そのような魔術が?」
「ええ、とある魔導師が編み出したそうです」
確かにこの結界があれば、相手を殺す心配もなく
「成る程、とはいえ
「そうですね、どちらかが終了を宣言すれば終わるようになっているんですが、負けを認めたく無い子もいますから」
「気持ちは分からなくも無いが」
続いて二人の学生が結界の中に入る、片側は先程校舎で話をしたラヴェルだ。
武器はお互いに
「こっちが勝ったら、分かってるよな?」
「二言はないよ」
『両者準備は良いですか?では、……始め!』
ラヴェルが腰の剣を引き抜くと、対戦相手である青髪が巨大な炎を発生させ射出した。
だがその炎はラヴェルに届く事なく、何処からか飛来した雷の剣に真っ二つに
「『フォースブレイド』」
ラヴェルの
対する青髪は小規模な炎を
「チッ!『フレイムエンチャント』!『フレアフィールド』!」
青髪の剣が
だがラヴェルは
だがそれによって
ラヴェルは雷剣の一振を背後に止めると体勢を半回転し、空中に固定された雷剣を蹴り空中で一気に加速する。
「はあああああああ!」
掛け声と共に剣を振り降ろし、青髪がなんとか構え直した炎剣を
「……クソッ!」
武器は手元を離れ、さらには二本の雷剣が貫かんと狙っている。
勝負は決した。
青髪の持っていた剣から炎が消え、地面に広がっていた
『勝負あり!勝者ラヴェル!』
戦いの時間は僅かだったがそれぞれの
「面白いものが見れた」
殺し合いを抜きにした
「他には使い魔預かり場などがありますけど、見ていきますか?」
「使い魔預かり場……?」
案内されたのは入り口がかなりの大きさをした建物であった。
「ここでは生徒達が契約している
扉が開かれると、様々な鳴き声と
「同じ所にいて争ったりはしないのか?」
「
魔獣達がいる仕切りの向こうへと目をやると小型は壁の
「珍しいですね、いつもはもっと
建物の奥の方に目をやると、数人の黒い服を
「トリニティ学長でしたか……」
「一体どうかしたのですか?」
「いえ、この子達が急に騒ぎ出したと思ったらまた急に静かになったので、何があったのかと……」
つまり普段からこういった状況になるわけではないということか。
「以前生徒がドラゴンを連れてきた時にもこの状況に近い事が起きたんですが、今回はその姿もありませんし」
「成る程、ドラゴンと同じと言うわけか……」
何故道中に魔物が襲って来ることが無かったと考えていたが、魔物達にそう感じられていると考えれば
人間に恐れられる時とは違って、魔物に
「あの、そちらの方は?」
「こちらは連盟員のアルマさんです、今は学園の案内をしている所なんです」
「はあ、案内ですか……」
あまり
「その、ごゆっくり……」
「ああ、邪魔してすまない」
「――あっ、いえっ!」
一応は迎え入れる言葉をくれはしたが、
足早に去っていく彼等の背中が消えてから建物の外に出る。
「あの、どうかされましたか?」
「いや、ここは連盟員の私がいるべき場所では無いと思ってな」
「そんな事はないと思いますが……」
トリニティは
雰囲気を暗くしてしまった自分に
誰かを探しているのか人が通りかかる度に振り返ってはまた同じ位置に戻るという、
「普通の
「……そうですね、少し話を聞いてみます」
「私も行こう」
トリニティの隣を歩き生徒の元へ近づくと、小さく
「あいつら何処行ったんだよ、まさかホントにあそこ行ったのか……?」
「いや、いくら何でもそれはないはず……」
「やっぱ先生に言ったほうが良いよな?いやでも……」
どうやら誰かが危険な地へ向かったようだ。
「どうかしたのですか?」
「へ……?トリニティ学長――!?」
何をそんなに
「誰が何処に行った」
「お前は……?それよりも学長聞いてください!ダチが東の山に行っちまって帰ってこないんです!」
東の山、その位置には
「それは一体どういうことですか?山への立ち入りは禁止していた筈ですが」
トリニティの
「そ、それが、急に山が出来たからって危険な魔物が現れる
「……」
「そこに向かった日と人数は分かるか」
「昨日の朝にはもう三人共居なかった……」
もう
まだ
「アルマさん、学園の案内は一度ここまでにしても宜しいでしょうか?」
「ああ、
「いえ、気にしないでくださいね、では……」
トリニティは
「その者達の姿を
「……んなの聞いてどうすんだ」
「決まっているだろう」
――
「アルマ、貴方のお父様から私と別れた事を全て聞いたわ」
「……そうか」
「気づけなくてごめんなさい」
リズが頭を下げた。
「私もいたら貴方が人を斬ることも、その刀を
「頭を上げてくれ」
もし
「私にはお前が
妖刀を手にした者の力は
「アルマ……」
「この刀を手にした事で
私の世界が広がったのも間違いなくこの妖刀のお
「そう……なのね」
防具の
「また
「近くで依頼があってな」
「そう、気をつけてね」
「ああ、すぐに戻る」