「アルマさん!」
山を下りる道中、
「トリニティ、他の者たちは無事か」
「はい、現在は山を下りて解放された人達を送り届けて貰っています」
心配そうな表情をしたトリニティは走竜から降りると、
「どうした」
「傷ができています、
触れた手が温かくなり、身体中の疲労が抜けていく。
「ありがとう、気づいていなかった」
「いいえ……」
恐らく大天狗の風を斬った時に出来た傷だろう、完全に防いだつもりであったが、もっと
トリニティは頬から手を離し
「では学園へ戻りましょう、後ろに乗ってください」
「いや、今回は私が前に乗ろう」
トリニティを手で
「……え?」
「戦闘や移動による疲れもあるだろう、走竜の操作は私がやる」
大天狗との戦闘もあったが、トリニティに
「……アルマさん?」
「どうした」
何故かトリニティは後ろに乗る事を
「次期に日が沈む、夜は
トリニティは私の顔を見つめてから、自身の
「では出発する、落ちないよう捕まってくれ」
「……はい」
トリニティがゆっくりと腰に腕を回した。
「長い時間を走っていたはずだが、速度が
再び横腹を叩いてさらに速度を上げさせる。
「あの、少し飛ばし過ぎでは無いですか……?」
「この山に向かう
走竜の息に未だ
「……分かりました、貴方に任せます」
回される腕の力が強くなり、
――
学園の城門前に到着した所で、
どうやら目が覚めたようだ。
「あの、どうして腕を……」
「走竜から落ちないようにしていたんだが、
手を離すと回っていた両腕が離れる。
「いえその――」
後ろに乗ることを
会った当初は
走竜から先に降りて手を伸ばすと、トリニティは
「……ありがとうございます」
「ああ」
城門の横の扉を叩くと、向こう側で
扉が開かれ青鎧を着込んだ数人が出てくる。
「おかえりなさいませ、トリニティ学長」
「
青鎧が横にずれたのを見て、トリニティの後に続き中へと入る。
「トリニティ学長、戻られましたか」
「はい、生徒達は何処へ?」
「
「そうですか……」
トリニティは
「アルマさん、学園の案内は――」
「構わない、今は生徒達の事を優先するべきだろう」
「ごめんなさい、また機会があれば残りの
「ああ、その時は頼む」
トリニティは足早に白い建物の方へ歩いていった。
荷馬車の元へ向かうと、リズリーが荷台に座っているのが見えた。
「……っ!」
目があったリズリーが
「戻ったのね」
「ああ、心配をかけたようだな」
「ええ、とても心配したわ、一団の中に貴方の姿が無かったから」
「見ての通り大した傷もない、安心してくれ」
両腕を広げてみせると、リズリーは
「ふふっ、少し心配しすぎたかしらね?」
「
弓と矢筒を外して荷台に
「もう出るつもりなの……?」
「仕事は終えた、それに部外者がいつまでもここに居るわけにはいかないだろう」
自らの事について
「もうすぐ魔物が
「実力不足を
短い戦闘だったとはいえ、
他の強者を含めた相手といずれ斬り結ぶことがあると考えれば、さらなる高みを目指さねばならない。
最も魔物が
「それに、時間もあまり残されていないようだからな」
「時間がない?それってどういう意味なの……?」
大天狗の言葉が確かならば妖刀を持つ私はいずれ妖になる、その前に
「以前先祖が
「ええ、私達がまだ幼かった頃だけど、しっかり覚えているわ」
「その
「それって、あの山にも……」
「ああ、居た」
「どうやって来たというの、世界を超えたってこと……?」
「分からない」
鬼も天狗もこの世界には迷い込んだ様子だった、少なくとも自らの意思でやって来た訳では無いだろう。
「恐らくだが他にも妖は流れ着いている、
「……」
「学園の者達には、何があっても山へ近づかないようにと伝えてくれ」
「分かったわ、貴方も気をつけて」
「ああ」
荷馬車を押し城門の前まで行くと、他の者は休んでいるのか青鎧が一人だけ立っていた。
「あれどうしたんすか?」
「外へ出る、門を開けて欲しい」
「いや、もうすぐ夜っすよ?」
「問題ない、
「んー、でも一人で外に出すのは流石に騎士道に
話し方は軽いが、騎士としての
「その時は私に
「いいんすかそれ……、まあそんなに言うなら開けますけど」
すると城門が響く音を鳴らしながらゆっくりとせり上がっていき、私の頭の上の辺りで止まった。
「道中気を付けて下さいよ?これで死なれたら
「注意しておこう」
門の下を通ると、後ろから差していた光がゆっくりと消えた。
「ここでは
『こんな
猫又は
「その小さな身体には十分な大きさだろう」
『貴様!我を馬鹿にしたな!』
『無視するな!』
「暴れていると落ちるぞ」
馬車を押し、地を蹴り一気に速度を上げた。
――
「あれは――」
学園から走り続け夜明けの日が見え始めた頃、道の中央に
「魔物、いや妖か――?」
魔物の気配も妖気も感じ取れないが、一先ず荷馬車を
『どうした……』
不意に黒の
その小さな魔物達は
『ミャッ!』
「――っ!何をしている」
突如荷台から飛び出した猫又の
『……はっ、本能が!』
意味不明な事を言う猫又を荷台に下ろし、視線を魔物の方へ戻すが特に移動もせず地面を
「いくら小型とはいえど、正体の分からない相手に
「正体だと?そんなもの分かりきっておるわ、あれはただの『
「スズメ?つまりあの
私の
『さあな、だが我が最後に見たのはあのような闇だった』
あの向こうに行けば妖刀の呪いを解く方法があるいは見つかるのかもしれない。
『
「……分かっている」
「あの黒に
それが出来るほど力を持った
「あのスズメとやらはどういった存在だ?」
『力も何もないただの
「そのような存在をこの地へ送り込む意図はなんだ……?」
『我が知るか』
再び荷馬車を押し黒の靄があった場所を通過するが、やはり何も感じ取ることは出来なかった。
「あのような物が
私が今まで戦ってきた魔物達も元を
――
あれから走り続け日が暮れかけた頃、一つ目の街に
「この街へ来た目的は」
「休息と食料の補充を」
「君一人か?」
「ああ」
猫又は街が見えるやいなや、何も言わず荷台を降りて街へ入って行った。
ここまで運んだ私に対する礼すらも無かったが、まあ
「一応荷台の中を確かめても?」
「構わない」
騎士達二人が荷台の中身を調べ始める。
今の
「不審な物はありません」
「よし、通っていいぞ」
荷車を押して門を潜り、一先ずは馬車を置ける場に
街中はまだ明るいが
見つけた連盟の扉を開き中へ入ると、そこには静かな空間が広がっていた。
受付へまっすぐ向かうと、口髭の先を尖らせた
「ようこそ連盟へ、本日はどういったご
「連盟員用宿の場所を聞きたい、それと
連盟具を見せながら要件を伝える。
「連盟員の方でしたか、まず連盟員用宿ですがこの建物から出て右の
「ふむ」
「そして依頼の方なのですが、申し訳ございませんが近隣の討伐依頼はもう残っておりません」
「そうか……」
「ひとつ聞きたいことがあるのですが、腕に自信はおありですか?」
「そこらの人間よりは確実にあると確信している」
質問の意図はいまいち掴めないが、ここで
「……ではお任せしたい仕事がございます、朝に依頼を引き受けた連盟員方の
「引き受けよう、人数と受けた依頼の内容を教えてほしい」
「ありがとうございます、まず連盟員の数は三人、受けた依頼は薬草の採集です」
そこまで難しいような依頼には思えないが。
「目的の物がある場所は危険な魔物が生息しているのか?」
「いいえ、どの種も森の
「森の魔物は完全に
「はい、連盟の方から定期的に森の調査依頼を出していますので、その
男は机の下から
「依頼で求められている薬草はこの線よりも前で採集できます、そして生息する魔物もこの
線よりも向こうは中腹に位置するという事だろう。
出現する魔物は危険性の低い小型の草食魔物に、角の生えた中型魔物の群れ、それを
どの辺りにも出現するゴブリンはそもそも
「三人の実力と戦闘法は分かるか」
「剣士が二人と魔術師が一人です、まだ歴は
「他に依頼を受けた者達は戻っているのか?」
「はい、皆様無事に依頼を終えられています」
「そうか、三人はどういう形であれ私が必ず連れて戻ろう」
「宜しくお願い致します、それと
男は液体入りの青い
「これは」
「魔力回復用の
「分かった」
ポーションを受け取って連盟を後にし、荷馬車を押して森へと走り出した。