武士の子孫、異世界を制す   作:fumiy

52 / 52
闇に潜む影

 聖都のとある公園。

 

「そっち行ったぞー!」

 

陣地(じんち)(まも)れー!」

 

 ここには活気(かっき)ある子どもたちが集まり、成人男性(せいじんだんせい)頭程(あたまほど)ある球を使い足で相手の陣地(じんち)()り込むという遊びが流行(はや)っていた。

 

「よーしくらえ!」

 

「あ!入っちゃった!」

 

「何やってんだよー」

 

 (あか)りを持った大きな石像(せきぞう)が目立つ場所に設置(せっち)されたこの公園は、日没時(にちぼつじ)でも昼のように遊べると子供達には人気も高く、聖都内において最も子供が集まる場所であった。

 

「コォレ!主神様の近くで球蹴(たまけ)りするなといつも言っておるじゃろ!」

 

 耳の(とが)った小柄(こがら)な老人が杖を天に(かか)げて怒鳴(どな)る。

 

「げっ、ゴブじじいだ……」

 

「なんで公園なのに遊んじゃだめなんだよー!」

 

 子供達は理不尽(りふじん)だと反発(はんぱつ)の声を上げては、それぞれの遊びに戻っていく。

 

主神様(しゅしんさま)(まも)り光が消えたらどうする!(わし)らを(まも)ってくれておるのじゃぞ!」

 

「主神様なんて本当にいるのかよー!」

 

「ゴブじじいは守られるんじゃなくて退治(たいじ)される側だろ!」

 

「誰がゴブリンじゃあああ!」

 

 『護り光』、それは聖国における主教(しゅきょう)象徴(しょうちょう)であり、闇を(おお)(かく)す光であった。

 

「ギャー!ゴブじじいがキレたー!」

 

「今だ!(すき)あり!」

 

 その時、一人の少年が()った球が相手の陣地(じんち)を飛び()し、石像(せきぞう)が持っていた(あか)りに直撃(ちょくげき)してしまった。

 

「あ、どこ()ってんだよー!」

 

 衝撃(しょうげき)によって(あか)りに(きざ)まれてい魔法陣が(ゆが)み、公園を()らしていた光が消え去ってしまった。

 

「なんてことじゃ……!」

 

 日が完全に(しず)み、公園内に(かく)されていた闇が現れた。

 

 その闇を始点(してん)に、小さな闇がぽつりぽつりと周囲に広がっていく。

 

 そして、闇から一匹の小さな魚が飛び出し、近くを転がっていた(たま)に突き()り闇の中へ消えていった。

 

「――っ!公園から出るんじゃあ!」

 

 老人(ろうじん)が杖を前方に構え皺枯(しわが)れた声を張り上げたその瞬間(しゅんかん)、無数の黒い魚が闇から飛び出し子供達へと(おそ)いかかった。

 

 しかし突如(とつじょ)現れた雷撃(らいげき)に次々と()ち抜かれ、地面に落下しては赤と黒の光を放って消滅(しょうめつ)していく。

 

「走れ!走らんかア!」

 

 老人は子供達へ逃げるように(げき)を飛ばしながら、雷雲(らいうん)(まと)い飛び交う魚へ的確(てきかく)に雷撃を(はな)っていく。

 

 しかしいくら直撃させようが魚の数は()していき、逃げ(まど)う背中に()()さっては闇の中へと連れ去っていく。

 

「――かああああっ!」

 

 老人は死力(しりょく)()くして体内に残る魔力を無理矢理に引きずりだし、大きな雷球(らいきゅう)を発生させ周囲を閃光(せんこう)で公園を照らす。

 

 明滅(めいめつ)する光により地面にある闇が次々と形を(くず)し、さらに雷球から伸びた(いかづち)が魚たちを黒焦(くろこ)げにしていく。

 

「……グウッ!」

 

(若い頃であればこの程度(ていど)造作(ぞうさ)もないというものを……!)

 

 滝のような汗を流し寿命(じゅみょう)(けず)りながら、光量(こうりょう)維持(いじ)するために魔力を(そそ)ぎ込んでいく。

 

 しかし、地面を()いずり回り雷の雨を回避(かいひ)した一匹が()ね上がり老人の腹部(ふくぶ)を貫いた。

 

「ぐああっ!?」

 

 激痛(げきつう)で魔力の供給(きょうきゅう)が止まったことにより、雷球が消失(しょうしつ)し公園に再び闇が戻ってしまう。

 

「ぐっ……!」

 

 穴の開けられた腹部(ふくぶ)を手で(おさ)えながら闇を(にら)みつける、そこから炎のように赤い光が現れる。

 

「ハァ……ハァ……!」

 

 血を吐きながらも杖を地面に突き立ち上がろうとするが、不規則(ふきそく)()れだした赤い光に目線を(うば)われてしまう。

 

 その赤は(あわ)い光を放ちながら、ゆっくりとその形を変えていく。

 

「こ、これ以上の好き勝手は――!」

 

 老人が血が(あふ)れ出すのも構わず地面に杖を突き立ち上がろうとすると、赤は波動(はどう)のような光を周囲(しゅうい)(はな)った。

 

 そして()らめく赤は地面にゆっくりと足を付けると、髪と耳の長い少年へと形を変えた。

 

「な……」

 

 その少年はゆっくりと(まぶた)を開き、光に満ちた(ひとみ)を真っ直ぐ老人へと向ける。

 

「な、なぜ――」

 

『おじいちゃん』

 

 その容姿と声に目を見開き(なみだ)(あふ)れ出す、力の抜けた老人は杖を手放(てばな)してしまう。

 

 木製(もくせい)の杖が地面に転がり(かわ)いた音を立てる。

 

『おじいちゃん』

 

 足元に転がった杖を()()りながら歩を進めた少年は、短い言葉を()り返し老人の目の前に立つ。

 

卑劣(ひれつ)な、魔物め……」

 

 絶望と希望の狭間(はざま)()れた瞳、そして(ふる)えた手を伸ばして少年の(ほお)()れた。

 

 その瞬間(しゅんかん)、地面から巨大な影が飛び出し老人と少年を丸ごと飲み込んでしまった。

 

 巨大な影の口から光を放つ少年だけが現れる、その頭には細い管のような物が(つな)がっていた。

 

 影が再び闇へと(もぐ)っていくと、少年の身体がどろり溶けて炎のような光に戻りその場を()れ周り始めた。

 

 再び闇から飛び出した小型の魚群(ぎょぐん)が光に目掛(めが)けて突撃し、それを()らすことで闇の領土(りょうど)を広げ始めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。