支部に到着し部隊長が振り返り一時的な部隊の解散を告げると、私とフィーアを含めた四人以外は皆その場を後にしてしまった。
日頃訓練を行っているであろう聖騎士達であっても精神を攻められるのは耐えがたいようだ、慣れてない妖術を受けたというのもあるのだろうが。
「簡単に任務を中断するものなのだな」
「まあね、最初にここが志願制って話をしたでしょ?」
「ああ、危険度が高い
視界の悪い闇夜であれだけの物量が押し寄せ、さらに幻覚を操る妖が同時に来るとあれば、相当に厄介であることは間違いない。
「あとね、この任務は本来やる必要がないって言われてるんだよね」
「やる必要が無い……?」
あれほどの数が現れるならば
「あいつらは闇の中からしか現れないの、そして空に凄く
フィーアが目を手の平をで
「あれの光は騎士団の支部と、都市全体を覆うぐらいには広範囲なんだよね、つまり?」
こちらに問いかけるようにフィーアは言葉を切る。
「範囲の外へ出る必要がない」
「そういうこと、それこそ最初の方は大規模な部隊が組まれてたけど、今は
「今まで外から街へ侵入した
「さあ?私の記憶には無いけど」
光を苦手としている事はまず間違いなさそうだ、もっとも光が好きな妖は少ないだろうが。
だが暗闇を歩くために光を
空から照らす程の光を持ち歩くのは邪魔になるだろうが、街の各地に設置されている程度なら持ち歩く事は出来そうだ。
「皆、こっちに集まってくれ」
「はいっす」
フィーアと共に部隊長の元へ向かう。
「この後の任務は中止だ、明日以降に部隊の再編成
を行う、その際にまた参加するか決めてほしい」
一度言葉を切ると部隊長は視線を視線をこちらに向ける。
「お前がいなければ新たな魔物の出現に対応できず、部隊を一人も欠けずに帰還する事は不可能だっただろう、感謝する」
「入団したばかりの私を部隊に入れる柔軟さがあってこその事、それに他の者達も死力を尽くして戦っていた結果勝ち得た生存だ、私だけの力ではない」
フィーアの進言がなければ部隊の参加も出来なかった可能性もあるのだ、それに他の聖騎士達も妖に対してよく戦っていた。
彼等に実力があるという事は間違いないのだ。
「フッ、そうだな」
部隊長は笑みを浮かべて深く頷くと、再びその場にいる皆に向き直る。
「今日の所はゆっくりと休んでくれ、それと本日の任務に参加した者達には後ほど特別報酬が支払われる、では解散」
部隊長の背中が本部の方へ消えると、聖騎士の二人が宿舎の方へ歩いていきフィーアと二人だけとなった。
「そういえば君って名門の出だったりする?」
「一応はその
貴族という枠組には入らないだろうが、広大な土地を所有し多くの
初代当主は土地を
これから自らの為に貴族へなろうとしている私を、
「一応?んー、使用人とかはいたりするの?」
「ああ、屋敷の手入れや食事を作る者達と、専属の使用人がいる」
兄弟にもそれぞれ専属の使用人が付けられていたようだが、
「おお、お金持ちっぽい!」
「裕福な方ではあっただろう」
それらしく
「……ちなみに
やたらと質問を投げかけてくるが一体なにを引き出そうとしているのか、恐らく彼女の期待に沿えるが解答は出てくることはないと思うが。
「いいや、いない」
無意味な想定ではあるが、もし私に約束した相手がいたとしたら、妖刀を騎士に任せ村に残っていたかもしれない。
「ふーん」
「そちらはどうなんだ」
「私?私の家はまあ貧乏な方かなー、ちっちゃな頃お父さんが死んじゃってさ」
フィーアはなんてことないというふうに笑う。
「しかもお母さんも身体が弱くて働けないし、今は私の収入だけでどうにか生活してる感じなんだよね」
「そうか……」
失礼ながらあまり考えのない人間だと
「かわいそうって思った?なら私を貰ってくれない?」
「今の私と
なにせ今は旅の途中であり金を稼ぐ機会は少ない、そして旅を終えたとしても家は
貴族の爵位を手にする為に旅を終えても動いていくつもりではあるが、それもどれほど時間が掛かるかは未知数だ。
「良いよそれでも、君は絶対大金を稼ぐようになるから」
「
「私に戦って勝ったんだから当たり前でしょ」
あの模擬戦は彼女にとってそれほど大きな要素だったということだろうか。
「で、どうする?貰う?」
「私はまだ身を固めるつもりはない」
今はまだ妖刀の魂を解放する旅の途中であり、成し遂げなければならない事も多い
「まだってことは嫌じゃないってことだよね?」
フィーアが首に腕を回してしなだれかかってくる。
「私って顔可愛いし、実はいい身体もしてるんだよ……?」
先程の話を聞いて彼女の置かれている状況は分かっている、だからこそ頷くわけにはいかない。
「自らの魅力に自覚が有るのならば、会ったばかりである私で妥協する必要はないだろう」
フィーアの肩に触れて腕を離させ、宿舎の方向から隠すように横へと移動させる。
「――君って意外と自分の価値が分からない側の人?」
「戦地での希少性は自覚している」
「そうじゃなくてね――いやむしろこの状態が一番都合いいか……」
フィーアは呆れたようにため息をついた後、なんでもないと首を横に振った。
「しょうがないから今は身を引いてあげる、でも偉い立場になったら
「私は目的を果たした際に王国へ戻る、長距離の移動は
「……そこで嫌だって言わないんだからアルマ君は優しいよね」
手を伸ばしながら一歩踏み出すフィーアに背を向け、宿舎の方から熱と共に飛来した
「な、なに?」
宿舎の前で青がゆらりと燃え上がると、そこから炎に身を包まれたアキが現れた。
表情はよく見えないが、普段の様子では無いことは確かだった。