「アルマ=リュウガンジ、君に模擬戦を申し込む」
ゴルドニックは金の装飾が
「え、いきなり何言ってんすか?」
「彼には見込みがあるから、僕が直々に
「いや、止めたほうがいいっすよ……?」
フィーアは口の端をヒクつかせながらも、一応は上司なので形式だけの心配を伝える。
「心配しなくてもいいよ、彼の傷は後でちゃんと治すから」
「そっちじゃないんだけど……、アルマくんは大丈夫?」
「問題ない、技を
アルマは戦闘に巻き込まないようフィーアから離れ、木製の槍を肩に
(素振りや型の確認だけで済ますつもりであったが、実戦が行えるとは
「単純にいこうか、どちらかが負けを認めるまでだ」
「分かった」
両手で槍の
「一つ
「……賭けだと?」
急な提案に、アルマは
「この模擬戦に負けた方が彼女から身を引くんだ。君にとってもいい条件だと思うよ、なにせ強敵である僕を落とせる唯一の機会なのだから」
「――は?いや勝手なこと決めないでくださいよ!」
焦ったように声をあげるフィーアを横目に見ながらも、アルマは賭けの意義について考える。
こちらからすれば損も得もしないような賭けだが。それでゴルドニックが本気を出せるというのならば、悪い提案ではないのではないか。
「良いだろう」
「ちょっとアルマくん――!」
「レスアヴィーラくん。必ず勝利してみせるから、見守ってくれたまえ」
「意味わかんないっすよ!模擬戦一つで私の人生左右されたくないんですけど!」
「これはただの模擬戦ではないよ。男同士の戦い、
アルマは槍の石突部分を地面に打ち付け訓練場中に音を響かせることで、言葉の
「早く
「――っ!あ、ああ、そうだね」
ゴルドニックは
(雰囲気が変わった……?君もそれだけフィーアくんに本気だという事なんだな……)
見当違いな意思を読み取りながらもゴルドニックはランスを構え直し、何もない空間から同じく金色に輝く大盾を召喚する。
「君の武器はそれでいいのかい?」
「槍の
アルマは身体の横で木製の訓練用槍を回転させ、右手で握り直し――。
「問答はここまでだ、始めるぞ」
ゴルドニックに向けて飛び出し一気に距離を詰めていく。
(速い――だが直線的な攻撃など僕には通じない!)
ゴルドニックは大盾を地面に突き立て防御の構えを取りながら、ランスを後ろに引き迎え撃つ用意を整える。
しかしアルマは、双方の攻撃
(上に飛ぼうともこの一撃からは逃れられはしない!)
到達する位置を
「——っ!」
ゴルドニックは身体から金色の稲妻を
アルマは振るう槍をゴルドニックのいた位置で制止させると、そのまま着地し手の内で回転させてから両手で構え直し、相手の観察を始めた。
「強化を使わされるとは、君の事を見くびっていたようだね」
ゴルドニックは余裕な表情を
(あの突きは力の入れ具合や速度に至るまで完璧だった、それを槍で触れただけで
「どうやら新人とはいえど手を抜かない方が良さそうだ……、大人げないとは言わないでおくれよ?」
ゴルドニックから雷へと変換された魔力が
そして大盾を前方に構え地を蹴って高速で駆け出し距離を詰めると共に、同時に複数の魔法陣を展開して雷撃を放つ。
アルマは直撃する寸前で横に大きく一歩飛んでいくことで雷撃を
だがアルマは頭上を飛び越える事で突進を
「ぐっ!」
前方へとつんのめりそうになったゴルドニックは強く足を踏み込むことで踏ん張ると共に、ランスを後方に振るう事で距離を近づけさせない様に対策を取るが、アルマは槍を構えながらその下を
ゴルドニックは身体中に纏った雷を周囲に解き放とうとするが、放たれた槍はすでに眼前へと迫っていた
(間に合わな――)
「ゴルドニック隊長!」
アルマは槍を引きゴルドニックから距離を取ると、周囲から視線を受けながら訓練用武器置き場まで歩くとそれを戻す。
訓練場に入ってきた聖騎士隊員はどこか焦った様子で、ゴルドニックの元へ
「緊急招集です、直ぐに会議室へお
「……」
しかしゴルドニックがどこか気が抜けたようで、アルマの背中を見つめ続けていた。
「隊長!」
「っ!あ、ああ、どうしたんだい?」
はっとしたようにゴルドニックは聖騎士隊員に向き直る。
「ですから緊急招集です!すぐに会議室へお越し下さい!」
その様子を見ていたアルマは武具置き場からゴルドニックと聖騎士隊員の場所へと向かう。
「模擬戦は中止、
「なっ……、君はそれでいいのか?」
ゴルドニックは思わぬ言葉に目を見開くが、アルマは変わらぬ表情でただ言葉を続ける。
「構わない。それよりも会議へと向かうべきだ、なにか重大な事が起きているのだろう?」
「は、はい」
聖騎士隊員はアルマの言葉と視線に思わず背筋が伸びる。
「……この決着はいつか付けさせてもらうよ」
事実状の負けを見逃されたゴルドニックは、複雑な表情を浮かべながら騎士隊員を連れ訓練場の外へ出て行った。
「もうアルマくん、なんであの賭け受けたのー?」
離れていたフィーアがどこか気落ちしたような様子でアルマへ近づく。
「そのほうが私にとっては良いと考えた」
アルマはフィーアの表情を見ながらも、変わらぬ様子で言葉を返す。
「わざと負けようとしてたってこと?」
「私は誰が相手であろうと、自ら負けるような事はしない」
アルマは
「賭けに乗ったのは全力を引き出す為だ、
立場で言えば聖騎士団隊長と新米の聖騎士ではあるが、自らの人生を賭けたような申し出をした者が手を抜いていたという事実により、アルマの中でゴルドニックの評価は下がっていた。
「部屋に戻る」
「あ、ちょっと待って。一緒に朝ごはん食べに行こうよ」
アルマは未だに部屋で寝ているであろうアキの事を思い出し、そして頷く。
「そうだな、共に行くとしよう」
訓練場にいる他の聖騎士達から視線を集めながら、フィーアと共に食堂へと向かった。