武士の子孫、異世界を制す   作:fumiy

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幕間:試合を終えた後

 屋敷(やしき)へ戻る道中、どういった心境(しんきょう)の変化なのか、サリアが後ろに付いて来ていた。

 

 単に帰る場所が同じ方向だからという訳でもなく、私が向かう方向を変えようともそのまま付いて来るため恐らく何か思惑(おもわく)があるのだろう。

 

「……」

 

 サリアは(いま)だ無言のままであり、このままでは永遠と離れそうにない。

 

 足を止め振り返ると、涙目でこちらを見上げるサリアと目があった。

 

「――っ!」

 

 サリア(おどろ)いたような表情になると、大粒の涙を流し始める。

 

「私、魔術が使えないとか、戦えないとか言っちゃってごめんなさい……!」

 

 地面に(いく)つもの水滴(すいてき)が落ちる。

 

「もう言わないから、き、嫌わないで――ください」

 

 彼女なら大丈夫だと確信していたが、少々見誤(みあやま)っていたのだろうか。

 

 いや幾ら修練を積んだ戦士とはいえまだ十三そこらの子供なのだ、年上の男に本気で(いど)まれて恐ろしくない(はず)がない。

 

「ごめんなさい……!ごめんなさい……!」

 

 初めて他人に恐怖(きょうふ)した、敵わないと思ってしまった、そしてそのどう足掻(あが)いても勝てない相手に嫌われたと彼女は思っている。

 

 こういう時はどうするのが正解なのだろうか、以前に子供が泣いていた時は頭や背中を()でてやりどうにか落ち着かせる事が出来たのだが。

 

 原因である私がそのような真似(まね)をすれば、頭を握り(つぶ)されると勘違いされ状況が悪化してしまうかもしれない。

 

「気にしてはいない、嫌いでもない」

 

「――ほんと、ですか?」

 

「ああ、だから泣き止んでくれ」

 

 手を伸ばした(さい)に身体を強張(こわば)らせるのを見てやはりやめようかと考えたが、心を強く持ち涙を指で(ぬぐ)いさる。

 

「……うん」

 

 (ようやく)く涙の収まったサリアに安堵(あんど)し背中を向ける。

 

(刀を持って向き合えば対等であると考えていたが、例外もあるのだな……)

 

「では帰ろうか」

 

―――

 

「おかえりなさいませ、……サリア様とご一緒とは珍しいですね」

 

「少しあってな」

 

 屋敷に着くとアルスに出迎えられた、アニスは仕事をサボっていたからと廊下(ろうか)の掃除中のようだった。

 

「……っ!」

 

 サリアは別の使用人を見つけると()け足で近付き衣服を(つか)むと、屋敷の奥へと連れられていく。

 

 その最中(さなか)、振り返ったサリアに手を振られた為、一応はと手を上げて返しておく。

 

「……仲良くなられた事は喜ばしい限りですが、なにかされたのですか?」

 

 私が顔を冷ややかな目で見つめてくるアルス。

 

「ああ」

 

「へ?本当に何かをされたのですか――!?」

 

 先程の発言は彼女なりの冗談(じょうだん)だったのか、アルスは少し(おどろ)いたような表情になる。

 

「父上に頼まれ試合をした」

 

「試合、ですか?」

 

真剣(しんけん)を用いた一対一(いちたいいち)だ」

 

「なるほど、それは無茶をしましたね」

 

「私も今はそう考えている」

 

 戦わないという選択肢を取ることは無かっただろうが、もう少し出力を抑えても良かっただろうか。

 

「ですが、以前よりも親しく慣れたのは良いことですよ、同じ屋敷に住む間柄(あいだがら)なのですから」

 

無関心(むかんしん)が恐怖心に変わっただけではないか?」

 

「果たして怖い相手に手など振りますでしょうか」

 

「私にはわからない」

 

「ふふっ、そうでしたね」

 

 私がもしあの年の頃だったならばどうしただろうか、やはり再び勝負を挑んでいただろう。

 

「この後はどうなさいますか?」

 

「まずは汗を流す、食事はその後にしよう」

 

「かしこまりました」

 

 二人と戦い程よく満足する事が出来ている、今日の所は残りを休養(きゅうよう)に当て明日に(そな)えるとしよう。

 

「お身体をお流ししましょうか?」

 

「いいや、いつも通り食事の準備をして欲しい」

 

「……かしこまりました」

 

 いつも硬い表情をしている事の多いアルスだが、時折(ときおり)こういった冗談を口にする事もある。

 

 アニスによると普段はもう少し(くだ)けた口調らしく、切り替えが上手いそうだ。

 

「アルマ様ー!おかえりなさい!」

 

 長い廊下の向こうから、箒をもったアニスが()()って来る。

 

「ご飯にしますかー!お風呂にしますかー!それともーむぐっ!?」

 

 アニスはアルスに口を(ふさ)がれ、来た方へ連れて行かれてしまった。

 

 (やはり家族とはあのように親しい事が普通なのだろうか?)

 

 アルスとアニスのような兄上達を想像して、なんとも微妙な感情になるのだった。

 

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