「着きましたよ」
「そうか、ここまでありがとう」
「ではお気を付けて」
「ああ」
街の奥に消えていく馬車を見送り周りを見渡す。
「大きな街だけあって、かなりの人がいるのだな」
まだ完全に暗くなっているわけでは無いが時期に日も沈むだろう、まずは寝泊まり出来る場所を探し後は次の街へ進む馬車を見つけるべきだ。
「失礼」
「ん?どうした」
全身に
「どこか泊まれる宿は無いだろうか」
騎士はこちらの全身を見てから
「旅の物か――、この道を突き当たった所を右に行けば旅人用の宿がある、そこに行くといい」
「突き当りを右か、ありがとう」
「ああ、くれぐれも
持ち場へ下がっていく騎士を見送り、言われた通りの道を進んでいくと目的の建物に辿り着いた。
「
定期的に
「こうしていては部屋が無くなってしまうか」
後に続き扉を開くと、様々な装備を身に着けた者達がそれぞれの時を過ごしていた。
「ようこそ『渡りの巣』へ、ご宿泊でしょうか?」
「ああ、一人なのだが大丈夫だろうか」
「もちろんでございます、
「持っていないが、それが無いと泊まることは出来ないのか?」
初めて聞く品物だ、村にはそのような物は存在していなかった。
「いえいえ!泊まることは出来ますが、それをお持ちですと宿代を一割程安くなるのですよ」
「そうなのか、では次に来る時までには手に入れておこう」
どうすればそのような物が手に入るかは分からないが、旅をしていくうちに出会う事もあるだろう。
「
「ああ」
とりあえず野宿を回避することが出来そうで安心をしていると、ふと視線を感じた。
目を向けると
「お兄さんって
二つに結んだ髪を揺らしながら、
「今日から旅を始めたのでな、存在もたった今知ったところだ」
「へー、じゃあ初めてってことだ、
村を出た事に関しては初めてでは無いが一人旅の経験はない、そういった意味では旅に関して初心者と言えるだろう。
彼女の背中に揺れる長杖を見るに彼女も
だが魔術という物は体格の
「どうしたの?そんなに見つめちゃって、あ!もしかして私に見とれちゃったー?」
「ああ失礼、少々
初対面の人間を観察し過ぎるのは
「ぶしつけ……?」
「ミーアちゃん
彼女の背後から仲間と思わしき男がやってきた、背には剣を背負っているがこれまた豪華な
「うちのミーアちゃんに何か用でも?」
どうでもいいことだが、ミーアと呼ばれた彼女と私に対する口調の違いが不思議だ。
彼は何故か怒っているようで、
「用という程の事ではないが――」
「この人にはミーアから話しかけたんだからあんまり怒っちゃだめだよ?」
「そ、そうなの?」
ミーアが話しかけた
だが見知らぬ人間に警戒心が強いのは良いことだ、突然襲われるような事もあるかもしれないのだから。
もっとも私がそのような事をするつもりはないが
「お客様、鍵をご用意が出来ましたが……」
会話の終わりを待っていたであろう店主が話しかけてくる。
「すまないな、ありがとう」
一応の
「お部屋はお二階の奥でございます、ではごゆっくりどうぞ」
受付を離れ階段へ向かう、振り返ってみるとミーアに手を振られていたため一応は振り返しておく。
用意された部屋の扉前に立ち、取っ手に
取っ手を握り捻ると抵抗も無く扉が開く。
「これは便利だな」
荷物を置き
屋根の下で夜を過ごせるだけ
明日
村から東の国を往復できるだけの
「あー!来た来たー!もう待ってたよ~」
「なにか用でもあったのか?」
特に約束をしていた訳でもない
つい
「あなたって今日旅を始めたんでしょー?だからミーアが
ミーアの声で
「それは非常に有難い話だが、どうしてそこまでしてくれる?」
「いいのいいの!同じ冒険者のよしみだよ、じゃあしゅっぱーつ!」
ミーアに腕を組まれ宿から連れ出される、このような
「……ちっ」
「……けっ」
後方から悪意の込められた視線を感じ振り返ると、主に男の冒険者たちがこちらを
一方ミーアの方は特に気にした様子も無く
「そうだ!あなたの名前教えてよ!」
「そういえば自己紹介も済ませていなかったな、私はアルマだ」
「ミーアはミーアだよ、ねえアーくんって呼んでもいい?」
「構わない、好きに呼んでくれ」
「よろしくね、アーくぅん」
「ということで
ミーアは大きな建物の前に立ち
建物の中からは
「ほらはやくはやくー!」
「ああ」
ミーアに
「大した賑わいだな」
「この街で一番おっきな連盟だからねー、受付はあっちだよ」
歩を進め受付へ向かうと数人の女性達が
「失礼」
「あっはい!
髪を横で
「いや、こちらで連盟員証明具という物が作れると聞いて来たのだが」
「はい、確かにここでは連盟員証明具を扱っています、連盟員登録をして
「
「かしこまりました、ではこちらにお名前をお願いします」
渡された用紙に必要な情報を
「アルマさんですね?では冒険者認可証と商業認可証の二つがございますが、ご説明いたしましょうか?」
「よろしく頼む」
名前だけを聞いた限りでは冒険者許可証の方が
「はい、冒険者認可証の方から説明いたしますね」
「ああ」
「まず連盟の所有している土地への通行許可、連盟加盟店の割引、そして連盟の紹介している依頼などを引き受けることが出来ます、主に採集や
やはり私はこちらを選ぶべきだろう、旅の中で資金に困ることがあれば依頼を引き受けてみるのもいいかもしれない。
「続いて商業認可証ですが、こちらは通行許可や割引などは変わりませんが、貴重品の
「なるほど」
やはり関係はなさそうだ。
しかし連盟というのは旅人にとってこれ以上無い程の重要な組織のようだ、これだけの人が集まるのも
「認可証の説明は以上になりますが、他に聞きたいことなどはありますか?」
「依頼などはどこで受ければいいのだろうか」
「依頼でしたら基本的にはあちらの掲示板に張り出してある依頼書類をこちらに持ってきていただいて、受理され次第依頼開始となります」
手で示された方を見ると何枚かの紙が張り付けられた大型の板が設置されており、その前では冒険者達が依頼を
「個人間で依頼を受ける場合もこちらに申請していただければ、正式に連盟の依頼として受理させていただきますよ」
「それをすることによって何か意味があるのか?」
「はい、依頼者側の報酬の負担や
「ほう」
「さらに冒険者の方は連盟内の
「連盟内の評価?」
「こちらも説明いたしますね、現状のアルマ様ですと受けることが出来る依頼が制限されているのですが、こちらの評価が上がりますと危険性の高い依頼を引き受けて頂くことが出来るようになります」
つまりはこの評価によって依頼を任せても良い人間かを判断されるという事らしい、
「依頼についての説明は以上ですが、他に聞きたい事はございますか?」
「いや充分だ、ありがとう」
気になることをは大体聞くことができた、他に知りたいことが出来ればその
「では冒険者認可証と商業認可証のどちらになさいましょう」
「冒険者の方で頼む」
「かしこまりました、でしたら必要書類と
「ああ」
下がっていく受付の背中を見送り酒場の方へ目をやるといくつかの視線とぶつかった、すぐに
つまりはこれから何かを計るような事があるということだろう。
「アーくーん!」
ミーアはと言えば、酒場の方で
「お待たせしました」
軽く手を上げてから受付の方へ向き直ると、紙と丸い水晶が台の上に置かれる。
「ではこちらに必要情報の記入をお願いします」
名前や年齢、
(さてどうしたものか……)
すぐそばに置かれた水晶を横目に見る。
これは村にもあった物と同じと見て間違いないだろう、名は
戦闘能力の求められる冒険者だ、それならば当然魔力の検査は行われるだろう。
「はい、ではこちらの水晶に手を押し当てて魔力を流し込んでください」
言われるがままに水晶を手で掴む。
「……」
当然反応する訳が無い。
「……あの、やり方をお教えしましょうか?」
「いや、それがな……」
このまま真実を
いっそのこと水晶を握りつぶしてしまい、力を証明して見せるのも手だろうか。
(いやそれは駄目だろう)
強めかけた
「ええと、どうかされました……?」
「実は、魔力が無いんだ」
「……へっ?」
いつの間にやら静まり返っていた連盟内に受付嬢の抜けた声が
「えーと、少々お待ちください!」
再び裏へと下がっていく受付嬢、流石に魔術を使えない人間が来るというのは想定していなかったのだろうか、他二人の受付嬢も作業の手を止めてこちらを
それも仕方のない事ではあるが。
「なんだ
いつの間にか
「あの……、冒険者認可証が欲しいとのことですが、魔術が使えないとなると依頼の達成が大変困難であると予想されまして」
戻ってきた受付嬢がやんわりではあるが、辞める事を進めてくる。
正しい反応ではあるだろう、連盟側も仕事であり信頼を売っているのだから。
「魔術は使えないが戦闘には自信がある、どうにかならないか」
「そう言われましても……」
正直言って連盟には入っても入らなくてどちらでも
「それならよ!実戦で確かめるってのはどうだ!」
声がした酒場の方を見ると、金髪を逆立たせた男が酒を片手に立ち上がっていた。
「そいつは自分の事を
「ガハハッ!そりゃいいや!」
「魔術が使えねえってのにどれだけ出来るか見物だな!」
周りの男達が同調し
「私はそれで構わない」
「そうこなくっちゃなー!」
「いいぞー!」
「ちょっと勝手なことを言わないで下さい!」
「どうした
連盟内に低く
「支店長!どうにかしてください!」
「なんだ、まだ帰らせてねえのか」
受付の奥から現れたのは、