私は宇宙人です。地球は魔境でした。   作:深瀬悠

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主な登場人物
登場人物が増えてきたのでここにまとめます。

ミコト…高校1年 地球人/???
メグル…ミコトの友人 地球人
アオイ…ミコトの友人 地球人

ヒイロ…宇宙統括監視機構殺人係 宇宙人
カケル…宇宙統括監視機構殺人係 アンドロイド
アイ…宇宙統括監視機構殺人係電脳情報員 異星人

リーダー…<機構>の敵組織の地球侵略担当 異星人
■〇▲…元宇宙統括監視機構の惑星電脳調査員 異星人
××…元宇宙統括監視機構の惑星特殊調査員 異星人
○○…元宇宙統括監視機構の惑星電脳調査員 異星人

カグヤ…用心棒 元宇宙統括監視機構所属 異星人

他<機構>や敵組織の構成員がいます。


宇宙統括監視機構殺人係 3

4.

 

 

 

月曜日。

再び放課後。

ミコトたちはアオイを校舎内で誘い出すことにした。

 

朝に会って仕掛けてみれば、アオイもアオイでどこか違和感のある顔をして了承した。

その時ミコトも察してはいたが、それでもヒイロたちの推理が当たっていることに、複雑な気持ちになった。

 

夕暮れの明かりと外の熱気内部の冷気の境界線、そして近づく静寂がこの空間を作り上げている。

皆が出払うのを待ち、2人は教室に残った。

ウインドウ投影側(昔で言う黒板側)とロッカー側に分かれて向かい合う。

それはすでに2人とも互いを敵対者だと認識している位置関係と言えた。

 

ミコトもアオイ(?)も互いに耳にインカムをして、指示を聞いている状況だ。

それはどっちもわかってる。

まずはミコトが切り出した。

 

 

「一応聞くけど…アオイ、じゃないんだよね」

 

 

アオイ(?)はそれに目を伏せると、コクリと頷いた。

そして、アオイの声ではない男の声で答える。

 

 

「そうだ。私は異星人。

 君を攫うために、こうして近づいた」

 

 

そう言って拳銃…ではなく、もっと簡素で流線的なデザインの銃を向けてきた。

それは光線銃と呼ばれるものであり、いまだ地球上では小型化出来ていない代物だった。

銃身にはエンブレムが刻まれており、そこには<機構>のロゴが刻まれている。

 

 

「君にはこれが一番いい」

 

 

カケルの声がインカム越しに聞こえてくる。

 

 

『あれは光線銃だ。お前は動くな』

 

 

そう言われてもな、と思いつつ相手の言葉を聞く。

 

 

「殺すのは本意じゃない。

 下手な行動はしないことだ」

 

「…でもどうせお金が入ったら殺すんでしょ。

 だったらどっちでも同じだよ、私にとって」

 

 

そう覚悟を決めた顔をするミコト。

アオイ(?)はそれを聞いて少し眉を動かした後、無表情にトリガーに指をかける。

 

 

「(カケル君は動くなって言った。怖いけど…!)」

 

 

そしてアオイ(?)はそのままトリガーを押し込んでいく。

ミコトにはその時間がゆっくりと感じた。

そして、アオイが一気にトリガーを押し込もうとしたとき。

 

窓の外を突き破って来た光が、アオイ(?)の腕ごと銃を消失させた。

 

アオイ(?)が衝撃でバランスを崩して倒れる。

ミコトが窓側を見ればかなり遠くの建物、そこの中にカケルがいるのが見える。

そしてカケルの腕は変形して銃身になっており、その銃からあの光は来たのだとわかった。

 

カケルはそのまますぐに一つの強い光となって輝く。

瞬きの瞬間にはミコトの前に彼が背を向けて立っていた。

 

彼の周りを光の残滓が散って消えていく。

カケルはアオイ(?)を冷たく見下ろしてこう言い放った。

 

 

「宇宙統括監視機構特殊調査員××。

 お前を反逆罪と現地生命体殺害容疑で処刑する」

 

「…あ…、カケル…様」

 

 

アオイ(?)もとい擬態能力者は口をパクパクさせて目を見開き、固まっている。

カケルは淡々と言葉を紡いだ。

 

 

「その化けている少女の身元と現在属する組織の構成員の特徴、居場所を言え。

 言えば一撃で殺してやる」

 

 

その問いに、能力者は俯きながらも答えた。

 

 

「…言いません。私は一度裏切りました。

 しかし、いやだからこそもう一度裏切る行為はいたしません」

 

 

カケルは少し考えるように目線を横へ向けるが、すぐに擬態能力者を見る。

 

 

「そうか。

 ならこれは言えるか?

 遺言代わりに訊いておく。

 お前が裏切った理由はなんだ?」

 

「皆、一緒ですよ。<機構>に不満が出てきた」

 

「不満?」

 

「ええ。<機構>は大きくなり過ぎました。

 カケル様もわかっているでしょう?

 機能不全が出てきたと」

 

「つまりお前は、今の待遇が気に入らないって言うのか?」

 

「近しい回答です。

 私は母星の環境改善を条件に入りました。

 ただ、今の<機構>では増えすぎた管理対象への対応がすべて雑です。

 その上もっと支配領域を増やそうというのですから、あなた方の組織にいて、私たちがあとどれだけ働こうが叶わぬ望みと悟りました」

 

 

擬態能力者は喋っているうちに熱が入ってきたのか、流暢に言葉を紡いでいく。

しかし、その内容にはカケルは落胆した顔をした。

 

 

「それが今の組織には出来ると?

 断言してやる、無理だ。

 引き抜きをするような人材不足の組織に今どうこうできるとは思えない。

 たとえ成長したとして、何年かかる?

 それまでに母星は耐えれるか?

 そもそもそれをしてくれる根拠はあるか?

 お前は選択を間違えたんだ」

 

「組織の構成員の大半は<機構>に不満のある者たちで構成されています。

 気持ちは皆痛いくらいわかります」

 

「だから…!」

 

「それに、確かに駆けだしなのは間違いないですが、この<機構>一強の宇宙で互いに監視し合う組織を作るのが彼らの目的です。

 彼らは全ての宇宙を救済してくれます」

 

 

カケルの言葉に被せて彼は言う。

しかし、それはただの妄言。妄信だ。

何をそこまで信じられているか知らないが、カケルにとってはまったくもって理解出来ないものだった。

 

 

「…お前はやはりここで死んだほうがいい。

 能力は優良だったが、ここまでだ」

 

「貴方は<機構>に心酔しすぎている。

 あの戦争での能力者の死体…まだ見つかってないのが多くあるでしょう?」

 

「何が言いたい…。…!?」

 

 

その言葉で彼の意図を察したカケルは、驚愕の表情で擬態能力者を見るが、突如として見えない何かに弾き飛ばされた。

カケルはとっさに防御の姿勢を取り、受け身をとる。

それでも周りの机や椅子をいくつか倒した。

 

ミコトにもそれはわかる。

ナニカ、見えないモノがそこにいる。

それがカケルを殴りつけた。

 

それは透明人間のようで、しかし、生気は感じられない。

陽炎のようにユラユラと光を屈折させて存在している。

 

 

「…この分身…カグヤか…!」

 

 

カケルはこの能力を知っているのだろう。

能力者の名を告げた。

 

そして、教室にはぞろぞろと5体のあのスーツ男のロボットが入ってくる。

それらに守られるように、擬態能力者は消失した右腕を再生させながらフラフラと教室を出ていく。

 

カケルがミコトに言う。

 

 

「ミコト。アイツを追え。

 ヒイロと合流して捕まえろ。

 こいつらは俺が足止めする」

 

 

電脳機能がないヒイロへの通信は、別の機器でずっと繋いである。

彼女も状況はわかっているはずだ。

 

 

「大丈夫なの?」

 

「気にするな。

 これでも殺人係ではヒイロの次に強い」

 

 

冷静に返すカケルの言葉に、ミコトは頷くと部屋を出ていく。

それを確認した後、答えをくれるわけではないのはわかっていても、カケルは透明人間に悪態を吐いた。

 

 

「道理でうちの情報員の索敵網にも引っかからないわけだ。

 千里眼能力でずっと見てたんだな、出来損ないの同類が…!」

 

 

透明人間は表情は見えないが、それに笑ったような気がした。

 

 

「(まずは遠隔ロボットを破壊して、ヒイロがカグヤを倒すまで相手するしかない。

 しかし、このまま学校で戦い続けるのもここが崩壊する。

 どこか別の場所に移動させないとな)」

 

 

協力者がカグヤだとわかった時点で、透明人間の能力はわかっている。

これは彼の能力で作り出した鏡像。

念動力で作り出した、それ自体には弱点のないエネルギー体だ。

【光の宇宙人】の再現ロボットでしかないカケルにはそれに触れることは出来ない。

ただ、本体さえ倒せればそれは消える。

つまり、こいつをヒイロが本体を倒すまでの間、構ってやればいい。

それだけの話だ。

 

 

「…こんな見え見えの足止めを食らうなんてな」

 

 

カケルは内心舌打ちをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミコトはグラウンド上を擬態能力者を追う形で追いかけている。

 

学校の構造的には、校舎を出ればすぐグラウンドがあり、そこを横断すれば校門、そして外へと繋がっている。

能力者は校門前にくると、すぐそこに止まっていた車に乗り込んだ。

あれは敵組織の車だ。

 

ミコトが校門へ到着したときには既に手の届かない位置まで離れてしまっている。

車を睨みながらどうするか考えていると、耳元のインカムに今度はヒイロの声が入る。

 

 

『ミコト、後ろ』

 

 

振り向けば、前に乗った<機構>の車がいる。

ミコトは走って、前と同じ後部座席へ乗り込んだ。

隣にはヒイロがインカムをつけてミコトを目線だけで見る。

その悠長な姿にミコトは叫ぶように言う。

 

 

「そこに居たなら、あの車を壊せばよかったじゃん!」

 

 

ミコトの怒りにヒイロは子供に言い聞かせるように返す。

 

 

「ミコト。私たちの目的は組織の壊滅。

 だったら彼らがどこへ逃げるか追って、仲間を見つけて一網打尽にするのがいい」

 

「でも、最初は捕まえるつもりだったんでしょ!?」

 

「わざと見逃すって言って、ミコトは協力してくれた?」

 

 

そう言われて、ミコトは口ごもる。

そうだった。

こいつらは宇宙人で仕事人だ。

ミコトと彼女らでは確かに目的が違う。

その言葉に勢いをなくすミコトを無視して、ヒイロは車を出させる。

 

 

「アイ、モニタに写して」

 

「了解でーす!」

 

 

アイと呼ばれた、前の席に座る少女が手持ちのデバイスを操作すると、前にヒイロとカケルがニュースを見ていたモニタに、渋谷区、目黒区、港区、品川区周辺の地図と二つの点滅する移動アイコンが出る。

説明されるまでもなくそれが、彼らの車と<機構>の車のアイコンだとわかった。

 

 

「今、私たちは沿岸方面へ向かっている。

 その方面にはなにがあると思う?」

 

 

そう聞かれて、ミコトは気持ちを切り替えて考える。

車は首都高へ入り、スピードを上げていく。

 

 

「(私を拉致るのが目的だった。

  けど、それは失敗した。

  なら、逃走が目的になる?

  湾岸方面は…あ!)」

 

「羽田宇宙港…!

 もしかして、あいつら宇宙に逃げる気じゃ!」

 

 

そう、ヒイロに詰め寄って、彼女に額をチョップされる。

 

 

「早とちりしすぎ。

 ただの飛行機でも乗るのに時間がかかるっていうのに、宇宙シャトルなんて尚更。

 待ち時間で追いつかれることを考えると、人質に使えるどこか人の多い場所か、アジト=本物のアオイの場所かな」

 

「つまり、アジトってこと…?」

 

「アイー、あいつのデータ出して」

 

 

その一言でモニタ画面が変わる。

そこにはカグヤと書かれた名前と街の監視カメラで撮られたであろう写真ーー銀髪の少年が映っているーーに、下に経歴が書かれている。

ヒイロが画面を見ながら解説する。

 

 

「こいつはさっきカケルも言ってたけど、カグヤって異星人。

 超能力使いでPK、ESPの大体のことは出来る。

 こいつは私の…兄の元同期で、銀河戦争っていう昔の大きな戦争の生き残り」

 

「この地球上なら、力を制限された私と彼は互角だ。

 裏切り者がカグヤに泣きつくのは確実だとして…」

 

 

ヒイロは考える。

 

 

「(カグヤの目的はなんだ?

  あいつは私だけじゃなく、兄さんに特に固執していた。

  私に居場所を訊くとか?私と戦うとか?

  いやそれだけだったら、こんな方法をとる必要がない。

 

  なら敵組織の方針か。

 

  後者だとして。

  完全擬態能力は現在、あの種族が代表例に挙がるくらいの力だ。

  種族自体は<機構>が保護済みだから、奴を失えば敵組織の手札が減る(全てがこっちに味方するわけではな 

いが)

  こうして任務に失敗しても保護しているあたり、彼らの能力は欲しがっているのはわかっている。

  特にやり方を知っているあの調査員は便利だろう。

 

  だとしたら考えられるのは、どこかでカグヤ本人が出て来て擬態能力者を逃がす。

  どうせあの脳筋バカ(カグヤ)がトップなわけないし。

  これなら前者の条件も満たせる)」

 

「…仕掛けてみるか」

 

 

ヒイロの呟きにミコトは彼女の顔を見る。

 

 

「アイ。もういいよ。地図に戻して」

 

 

画面が彼女の言う様に元に戻る。

現在車は道変更を経て、麻布を越え、浜松町へ入ろうとしている。

 

窓の外には、何百年と変わらず立つ東京タワーの第2展望部分、そしてその周りにはその年月で築かれた巨大高層ビル群が見えていた。

 

 

「丁度いい場所があるじゃん」

 

「え?」

 

「この芝公園って場所。アイー、この一帯の人払いと監視記録の偽造お願い」

 

「そこが…?え?」

 

 

ミコトがヒイロの言葉の意味が読めない中、彼女が車の窓を開けると、そのまま車のボンネットの上に移動する。

ミコトが窓から顔を出して尋ねた。

 

 

「ちょっと!どうするの!?」

 

 

ヒイロはミコトを一瞬見た後、車から飛び、左手を巨大な杭に変形させると、そのまま彼らの車へ飛び乗って杭で串刺しにした。

貫通した杭の先が地面に当たり、火花を上げる。

時速100キロ近くで走る鉄の箱が杭によってブレーキがかけられた結果、運転手のコントロールを失い、車は道壁へ迫る。

ヒイロは道の防護柵を、空いた手を刀に変えて一瞬にして切り裂いた。

 

防護柵の下は彼女の狙い通り芝公園であり、そのまま車は道から落ちた。

 

さて、現在の首都高速都心環状線は昔とは違い、作り直されている。

道路にも階層が存在し、現在は知っている環状線は昔よりかなり高く、高層ビルと同じ視座にある。

そんな場所から落ちればどうなるかは想像に難くない。

 

ミコトも調査員たちですら死ぬと考えた落下だったが、ヒイロだけはここでカグヤが介入すると予想していた。

そして、まさにその通りだった。

車は空中で静止し、ヒイロは見えない力で吹き飛ばされる。

彼女は芝公園内へ難なく着地した。

 

ヒイロが見上げると、車はゆっくりと地面に置かれるように地面と対面した。

そして上空からカグヤがゆっくりと降りてくる。

彼は車の前に降り立つと嬉しそうな顔をしながら、ヒイロへ笑いかけた。

 

 

「久しぶりだな、ヒイロ」

 

 

ヒイロは少しイラつきながらそれに答える。

 

 

「そうだね、カグヤ」

 

「会いたかったぜ。

 今は<機構>内トップの殺し屋だってな。

 それで、お前の兄はどこだ?」

 

「いきなりそれ?」

 

「ああ。お前ら兄妹にボコボコにされたこと、忘れてねーからな」

 

 

あっけらかんとカグヤは言う。

 

カグヤは戦争期、敵をいたぶって殺す方法を取っていた。

それを戒めるために喧嘩して、敗北したのを根に持っているのだろう。

ヒイロの兄の強さにも憧れてたみたいだし。

 

カグヤは背後の、まだ生きている調査員と構成員に向かってアイコンタクトを送る。

彼らはうなずくと車を降りて夜の闇に消えていく。

ヒイロは目線だけは彼を見ていたが、すぐにカグヤを見やる。

 

 

「追おうとはしないんだな」

 

「カグヤが邪魔だからね。それに、追跡は私の他にもいる」

 

「あのガキがか?<機構>はホントに人手不足なんだな」

 

「皆、死んだから」

 

「そうだった。【時間の宇宙人】も【焔】の奴も…懐かしいな」

 

「昔話ばっかりしないで。キモいよ」

 

 

その言葉に、カグヤは声を押し殺すように笑う。

 

 

「それもそうか。

 じゃあ、まぁ、戦おうぜ。

 死んでなかったら次はあいつの居場所を吐いてもらう」

 

 

ヒイロは左手の刀を抜刀する。

そして、過去の亡霊へと刃を向けた。

 

 

「それはない。

 今日、ここでお前を殺して、因縁を1つ解く」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミコトたちは落ちた敵の車を追って、車で下層まで下っていた。

 

 

「アイ、調査員は?」

 

「生きてるみたい!カメラが…あーこの辺、ムラクモの管理範囲だ。今の設備だと長時間ジャック出来ない。

 でも、カグヤ様…じゃなくてカグヤがここで出てきた時点で、やっぱり奴らの根城は近いよ!!」

 

「どこ行くんだろ?…」

 

 

車に付けられた発信機が使えなくなった今、彼らの行動を推理するしかなくなった。

現時点ではアジトや人ごみに紛れる説だが果たしてそうか、ミコトは違和感があった。

 

地図上では、近くに浜松駅がある。

こうして脅威2人から逃げおおせた調査員は一度人ごみに紛れて根城へ、いやボスの元へ行くのだろうか?

 

しかし、ヒイロの考え通り湾岸方面への逃走から、待ってましたと言わんばかりのカグヤの登場。

ここまで突き止められて、行動を読まれて、このまま根城へ行くのかという疑問があった。

 

そうだ、あの時教室で遠隔ロボットが襲ってきた。

だとしたら操っているのは向こうの構成員だ。

カケルじゃなくてもまず邪魔な雑魚を倒すのがセオリーだ。

では、倒されたロボを操っていた構成員たちは?

 

ロボをどこで動かしていたかなんて、考えなくてもアジトだとわかる。

倒されればいよいよアジトを放棄するはず。

 

まさか全員で操作してるなんてことはないだろうが、ロボが倒されたならその説は有力的だ。

 

 

「(だとしたら、逃げる行動で間違いない。

  けど、どこへ?

  人の多いとこって言ったら渋谷や新宿だけど…ここまで来て引き返すなんてあり得る?

  勿論、ブラフの可能性もあるけど)」

 

 

そこまで考えてミコトはハッとする。

さっきヒイロは否定したが、宇宙港行きの可能性はないか?ということを考えた。

 

ミコトを攫うことを最終目標としていたのなら、そのまま連れていける。

または、カグヤが2人を撃破出来ないことを想定した計画になっていたとしても、優良な能力者だけでも手に入れることが出来る。

 

つまり、すでに高跳びの準備は出来ていることになる。

そして脅威の2人は今カグヤが足止めしている。

 

今なら安全に予約した席でこの計画の構成員ごと逃げることが出来るということだ。

でも、シャトルは地球製。彼らの本拠地へはいけない。

つまり中継地点が存在する。

中継地点はラグランジュポイントの4か5の宇宙コロニーだ。

 

そう、彼らはコロニーへ向かおうとしている。

 

ヒイロたちなら単独で宇宙へは上がれるだろう。

しかし、彼女たちは現地生命体に対しての能力開示や、ましてや傷つけることは出来ないようだった。

コロニーごとの破壊は出来ない。

それにコロニーに移って、組織の宇宙船にすぐに乗り移られる可能性は高いから、ヒイロが来てもすぐに出航されるかもしれない。

ここまで準備しているならありえなくはないし、どうせ、ワープ技術とかあるんだろう。

でなければ、広大な宇宙をあっちこっち移動なんてできない。

 

結局のところ、地球を離れられる前に捕まえるしかない。

 

「羽田宇宙港へ向かって。

 あいつら、宇宙へ逃げる気だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒイロとカグヤの戦いは泥沼化していた。

 

芝公園は現在自然保護の記念公園的な役割をしている。

更に、面積も昔より増やしており戦闘には十分な広さだった。

 

元々人気は時間帯もあって少なく、さらにアイに保険をかけたが、念のために周りを気にしつつカグヤの相手をしていた。

 

ヒイロがカグヤの操る念動力の暴力を避け、これ以上規模を大きくしないよう刃の構造体でカグヤ周囲を囲み刃を伸ばすが、見えない力でのガードで届かない。

 

ヒイロは彼の超能力が、すべて意識を向けて行っていることを知っている。

カグヤ側に分身を配置しながら自身と戦うのは、集中力が持たず、いつかはガードが利かない場所が出てくると踏んだのだ。

だから手数を増やしてスタミナ切れを狙っている。

 

翻ってカグヤは今のヒイロの実力を見ていた。

 

 

「はは、やっぱりな!お前はなんも変わってねぇな」

 

 

ヒイロは攻撃の手を休めることなく、身体のいたる部位を刃にして、カグヤの能力の抜け道を探る。

唸る刃の波が、周りを切り裂く。

 

 

「手数を増やして、刀振って。そうだよな、それで皆倒せたもんな」

 

「莫迦にしてるとこ悪いけど、カグヤだって変わってないよ」

 

「【宇宙人】らしくねーって話だよ。

 お前にはがっかりだ、てめーの兄貴の何を見てたんだ」

 

 

ヒイロは攻撃をやめて刃を納刀し、平坦に返す。

 

 

「それで?」

 

 

ヒイロの問いには答えず、カグヤは手を差し出すように広げ、手の平を上に向ける。

 

そしてその上で、かつて宇宙で見た超新星爆発のような色彩がバチバチと広がると、

赤い色の1つの球体に収束した。

それはまるで小さな太陽のようだ。

 

 

「これがなにかわかるか?」

 

 

カグヤはそれを宝物でも扱う様にしながら問うてくる。

 

 

「火の塊でしょ、パイロキネシスで作ったやつ」

 

「惜しい。

 俺たちの種族は宇宙人を祖にしてる。

 だからこの火は特別なやつってわけだ」

 

「それが発動すると私はどうなるの?」

 

「この太陽系ごと焼き落ちるな」

 

 

ヒイロはそれを聞いて、すぐに否定した。

 

 

「ハッタリだね。

 そうだとしたら、今までの小細工がすべて無駄になる」

 

「俺は別に組織の人間じゃない。

 だからいいんだよ、もう。

 お前に勝てるなら」

 

 

「「死んでなかったら」なんて言ってたくせに…やはり莫迦だな」なんてヒイロは思った。

そして彼女はなんてことないように告げる。

 

 

「そっか。なら撃ちなよ、それ」

 

「腕ごと切ったって開放はするぜ」

 

 

カグヤの脅しに、ヒイロはため息をつくと真っすぐに返答した。

 

 

「だから、それごと叩き切ってあげるから撃てって言ってるんだよ」

 

 

その言葉にカグヤは驚いた顔をした後、その意味に気づいた。

 

 

「(まさか、宇宙人の能力に気づいたのか!?

  …最悪ヒイロさえ殺せればいいと思っていたが、正面から能力勝負が出来るのは最高だ)」

 

 

カグヤの脳裏にはヒイロの兄があった。

思い出すのは、戦場で彼が色々な種類の刃を作り、必ずどの敵も切っている姿。

 

カグヤの予想するに、ヒイロたちの能力は状況に応じて通用する刃を作り、切る能力のはず。

だが、触れた物体を火に変換し、焼け落とす力ならどんな刃を持ってこようが、刃は火に触れた瞬間駄目になるはずと踏んだ。

 

カグヤはヒイロに笑いかけ、能力発動のまじない言葉を口にした。

 

それは、生みの親である宇宙に対して贈る呪文だ。

 

 

 

 

「【赤涙】」

 

 

 

 

そして、その火は放たれる。

球体が膨張し、空間が広がりながらヒイロへと向かう。

 

それは周囲の草や光、音さえも塗りつぶすように火にまみれていく。

この広がり方は、カグヤが自身の能力で能力効果を抑えているようだった。

本来なら一気に周囲を火へと変換する、広範囲現象なのだろう。

 

ヒイロはカグヤの「能力勝負がしたい」という意思を読み取る。

ヒイロは無表情にそれを見ながら、左腕に右手を添えた。

 

そして彼女もまた、発動のまじないを口にする。

 

 

 

 

「【天謐】」

 

 

 

 

ヒイロの能力の機微を感じ取ったカグヤは火を全開放するが、その球体が破裂した瞬間をすぐさま縦に真っ二つに切り裂かれた。

 

カグヤの目が見開かれる。

 

カグヤの右腕が、いつの間にか胴から離れていた。

目の前には、大太刀のさらに尺度のある、火に濡れた刃を振り上げた後のヒイロ。

そこで彼はソレごと切られたのだと悟った。

 

ヒイロはあの時と同じように、見下すような眼でこちらを見ている。

カグヤのトラウマがフラッシュバックし、脳に強烈な死の気配が支配する。

 

 

「(ああ、負けか。ちくしょう…)」

 

 

そして、カグヤの作り出した破壊の弾丸は、切られたことによって崩れ去る様にして風に流れて消えていく。

 

 

 

【触れたものを消し去る刃を作る能力】

 

 

 

それが彼女らの宇宙人としての能力の1つだ。

 

ヒイロとカグヤの勝負は、能力効果の速度勝負での決着となった。

 

 

 

 

 

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