アーサー王(史実)がしたこと   作:妄想壁の崩壊

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アーサー王(史実)がしたこと【6】

 

「ガウェイン卿! ああ、良かった、まだ生きているな!?」

 

「陛……下……」

 

アーサーは焼け野原となった大地に転がるガウェインへと駆け寄った。夥しい量の血が彼の顔を覆っている。きっと目も見えていないのだろう、弱々しく彼はアーサーに向かって手を伸ばした。

 

「私は、どうやら、ここまでのようです」

 

「何と弱気な、私と共にヴォーティガーンを倒した貴公らしくもない。さぁ立て、立ってくれ。剣帝ルキウスはまだ生きているぞ。二人でようやく抑えられていたというのに、貴公が倒れてしまえば敗北は必至だ」

 

「無理です、足の感覚がありません。恐らく、宝具を食らって、下半身が吹き飛んでいるので、しょう?」

 

「……ッ」

 

ローマ皇帝、ルキウスの持つ剣は『燦然と輝く王剣(クラレント)』の兄弟剣だ。所有者の王気、王の威光をそのまま威力として放つその魔剣の強さは、世界帝国ローマの皇帝たる彼をもってして最高の威力を発揮した。現代を生きる彼が、神代に生きる円卓の騎士を圧倒するほどに。

 

「あぁ、陛下。私は、御身の御役に立てたでしょうか……?」

 

「何を言うか! 貴公が私の力にならなかったことなどない!」

 

「夢を、見たのです。きっと魔術師マーリンの仕業、でしょう」

 

ガウェインの言葉にアーサーは歯噛みした。あのクズは遠征前にどこかに消えたと思えば、“モルガンに捕まった! ごめーん!”などと夢の中でほざいたのだ。クズはクズでも彼は幻術の達人、この場にいれば、ブリテンの被害はもっと少なくなっていただろうに。

 

「夢の中で、私はランスロット卿と争っていたのです。弟たちを殺された腹いせに。おかしいでしょう、弟たちは、このガリアの地で立派に戦って死んだはずなのに」

 

「もう、喋るな。喋らないでくれ……」

 

「でも、不思議と私はそれを夢だとは思えなかった。むしろ、そちらが現実だと思った。私は弟の復讐に躍起になり、王に、ご迷惑をおかけするはずだった。そして、無様に死ぬはずだったのだと思いました」

 

死に体のガウェインが剣を掲げた。『転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)』、アーサーの持つ聖剣の兄弟剣たるそれは、太陽の如き輝きを放っている。

 

「だから私が見ているこの光景は、きっと夢なのです。貴方の役に立って死ねるという、幸福な夢」

 

そしてその輝きは、『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』へと受け継がれる。

 

「あぁ、これで胸を張って、弟たちのもとへ向かうことができる。さようなら、陛下。私の……太……陽……」

 

聖剣がかつてない輝きを宿し、震えていた。叫んでいた。敵を、剣帝を、ルキウスを殺せと。

 

「聖剣、解放」

 

アーサーは思う。ああ、ルキウス。傲慢極まるローマの皇帝、我がブリテンを侵さんと欲す魔王よ。お前は強すぎたのだ(・・・・・・・)

 

「『約束された(エクス)──」

 

だから世界はお前の死を、消滅を望んでいる。お前がいては、ローマは滅びない。それでは本来の道筋に反すると。

 

私もお前も、同じく抑止力によって定められた運命を歩む役者、奴隷に過ぎないのかもしれない。そこに個人の志が介入する余地はなく、大いなる意思の走狗にすぎないのかもしれない。

 

だが、今この一撃だけは違う。私は私の意思で、貴様を。

 

「──勝利の剣(カリバー)』ァァァッッッ!!!」

 

殺すと、今ここに誓ったのだ。

 

 

 

 

夜空を裂く光の奔流、人の命を束ねたその一撃がブリテンの勝利を勝ち取った。だが、それが歴史に刻まれることはない。所詮は偽史、観測されることのない現象。後世において一切を否定される幻だ。

 

だがそれでも、アーサーは確かに起きた友との別れを、敵との死闘を無駄にはしまいと、固く心に誓ったのだ。

 

 

 

 

「つまるところ、神秘とは一体なんなんだろうか」

 

「……いきなりなんですか、アーサー」

 

中央アジアの高原地帯、そこにあるオアシス都市を転々としながら移動していたアーサーとモルガンの二人が野営の準備を終え休んでいると、アーサーがそのようなことを言い出した。

 

モルガンは手に持っていた東方の魔術(仙術とかいう)について書かれたスクロールに落としていた視線を上げた。

 

神秘、それは『 (根源)』に繋がる道のようなもの。神代ではない現代の魔術師が追い求めるものだ。

 

「魔術、つまり神秘は他者に知られることで力を失うと聞いた。それは川の流れのようなもので、他人に知られることはその流れを枝分かれさせる行為。そんなことをすれば川の流れは細り、力も弱くなる。だから魔術師は神秘を秘匿するのだと」

 

「お前は魔術協会の人間のようなことを言うのですね」

 

モルガンは興味なさげに呟いた。

 

現代の魔術師と異なり、モルガンはマーリンと同じくギリギリ神代の魔術師である。つまり、いちいちそんなことを考えずとも妖精の血が『 』から力を引っ張ってきてくれるのだ。わざわざ『 』を目指そうなどという現代の魔術師たちの考えは理解できない。

 

「そういえば、その魔術協会がブリテン島に拠点を築くなんて話を聞きましたが、理由を知っていますか? 神代が生きていた頃ならいざ知らず。今はもう神秘の質は大陸と変わらないはずですが」

 

アーサーが在位の頃、ブリテン島には多くの魔術師がやってきた。彼らはより濃い神秘に吸い寄せられる蟲のようなものだ。もっとも、戦乱のさなかでその多くが命を散らしていったが。

 

「地上はそうだが、ロンディニウムの地下にはまだ神秘が色濃く残っているからね。たぶんそれが目当てなんだろう」

 

「ロンディニウムの地下? ……ああ、お前が討伐したとか言う例の白龍の死骸のことですか」

 

「討伐したというのはいささか語弊があるんだが」

 

アーサーはそういうと気まずそうに頭をかいた。白龍グウィバー、もしくは古きブリテンの名を冠するアルビオン。その龍は星が誕生したときから存在した、まさに混じり気なしの真性の龍である。

 

本来なら彼は神代の衰退し始めていた1万4000年前か、最低でもソロモン王が死去した紀元前10世紀には星の内海に帰らなければならなかったのだが。

 

なんかだいぶ遅刻してしまったうえに、物理的に星の内側に帰ろうとして穴を掘り進めた結果、身動きが取れずドツボにハマってしまっていたのである。そしてその上にローマがロンディニウムという蓋をしてしまったので、ほんとに進退窮まってあとは死を待つだけの状態だった。

 

「あんまりにも可哀想だったから、介錯してあげたんだよ。だいたいまともに戦ったら僕にあれを殺せるわけないだろう。星とともに生まれた龍なんだから」

 

神秘は時代を遡るほど強くなり、強い神秘はそれより弱い神秘を打ち消す。紀元5世紀の人物たるアーサーではどう頑張っても46億年前生まれの龍は殺せなかっただろう。白龍の化身たるヴォーティガーンでさえあんなに辛勝だったのに、その本体となれば言わずもがな。

 

「で、話を戻そう。神秘は本来秘匿することで力を増す。一方、広く知られることで力を増す存在がいるだろう?」

 

「神霊、ひいては英霊の存在ですか」

 

神霊と英霊、人の持つ信仰によって力を増す存在。モルガンとアーサーもまたいずれ後者のソレになることが確定している存在である。

 

「なんというか、矛盾しているのでは?」

 

「さて、私は学者ではありませんから何とも言い難いところですが……分かたれた神秘を再統合しているのでは。星や人の集合意識はその最たる例だと思いますが」

 

霊長の抑止力アラヤ、そして星の抑止力ガイア。霊長の、そして星の滅びを回避しようと動く防衛機構。元をたどればそれは今を生きる生物すべての“生きたい”という意思の表れである。

 

「なるほど、枝分かれした神秘の再統合か……」

 

「かつて神霊は単独で存在できたものの、神秘の薄れる中で集合意識のバックアップがなければ現世に存在を維持できなくなった。だから信仰を集めるようになった……と、マーリンが言っていたような、言っていなかったような」

 

「それはまた曖昧な」

 

「仕方がない。神秘とは曖昧であるがこその神秘(・・)なのだ」

 

“はむ……はむ……”と、旅の途中に遊牧民の部族から魔獣討伐のお礼にもらい受けたチーズ、それを塗ったパンを頬張りながらやはり興味なさげにモルガンは言った。

 

「ふむ、しかしなぜ急にそんなことを? ついにお前も真面目に魔術を学び、その見るに堪えない風の術(笑)を矯正しようと思い立ってくれたのですか」

 

「見るに堪えないって……え、僕のコレはそんなにダメなのかい?」

 

「例えるなら、絵を描こうとして器になみなみと入ったインクをぶち撒けているようなものです。非効率的で非芸術的。はっきり言ってゴミですね」

 

「そんなにはっきり言われるとは」

 

「アーサー。なら仮にですが、馬上槍試合の一騎打ちで相手が羊に乗り丸太を担いできたらどう思いますか?」

 

「殺す」

 

“神聖な一騎打ちをなんだと思ってるんだ。そんなものを相手にしたら自分の名誉が傷つく”とアーサーは思った。つまり、彼の使う魔術はそれくらい酷いものらしい。

 

「だいたい、風を操ってぶつけるだけなんてナンセンスです。風は貴種(ノウブル)の属性。空間を乱す姿隠しの幻術、音を弾く詠唱妨害、大地を潤す天候操作なんて使い方もあるのですよ。それをお前は……マーリンから一体何を学んだと言うのですか」

 

「僕がマーリンから学んだことなど一つとしてないが」

 

「は? しかしマーリンはお前の教育係を担っていたと」

 

「そうだね。夢の中に出てきて痴話をぶちまけるアレが教育なのだとしたら、彼は間違いなく教育係だとも」

 

とどのつまり、ネグレクトである。夢魔が子育てなんてするものか。アーサーの親はエクターただ一人。だからこそ初見でアレを母親だと勘違いしたことが黒歴史になっているのだ。

 

「……特別です、私が魔術を教えて上げましょう。旅ももう残り半分しかありませんが、その間でしたら」

 

「本当かい!? いや、助かる。これまで周囲に魔術を使えるまともな人間がいなかったんだよ」

 

モルガンは“いやぁ、実は空とか飛んでみたかったんだ”と喜ぶアーサーを憐れみの表情で見つめた。自分が魔術師として大成してる以上、マーリンの教師としての才能は確かにあるはずなのだが、彼の様子を見るに本当に放置されていたらしい。

 

無論、モルガンも同情だけで彼に教えを施すわけではない。打算もある。まず、その見るに堪えない終わってる術式の行使をこれ以上見なくて済むこと。それと、この先の高原地帯で彼の魔術を当てにするためだ。

 

パミール高原、中央アジアにまたがる標高4、5000m級の高さにあるその地域を通過するには高山病(低気圧)対策は必須。アーサーの風の魔術があればモルガンの負担も減ることだろう。

 

かくしてモルガンはアーサーに魔術を教える運びとなる。奇しくもそれは目指している場所、冬木の未来において、宝石魔術の使い手の少女と投影魔術の才能を持つ少年との関係に酷似していた。

 

もっとも、アーサーの才能はブラウニーくんのソレを圧倒的に凌駕していたが。

 

「お前、それほどの才能を持ちながら腐らせていたなんて、ああなんて勿体ない。もっと早くに魔術をちゃんと学んでいれば、ブリテンの滅びもマシなものになっていたでしょうに」

 

滅ぼしておいてどの口が、という話であるが、モルガンはそう思わずにはいられなかった。

 

魔術の才能だけで言えば、彼はモルガン以上かもしれない。その上竜の心臓を持つ彼はほとんど無尽蔵に魔力を扱えるのだ。これが宝の持ち腐れと言わずして何と言おう。

 

「いや、これは教え方が良いのだろう。平和な世の中であれば、姉上はきっと良い教師になったに違いない」

 

そんな歯の浮くような言葉を軽々と言ってくる弟からモルガンは目を逸らした。陰の気質を持つモルガンにとってしてみればアーサーは眩しすぎる。だがそれは身を焦がす熱線ではなく、温かな陽光のようなそれなのであって……。

 

モルガンはブンブンと頭を振った。こいつは自分の胸を串刺しにした男だ。絆されてはいけないのである。

 

「姉上、風によって姿を隠すことができるなら、あるいは熱気に揺らめく陽炎の如く虚像を結ぶこともできるのでは? それから──」

 

「……しかし、私が優れた教師なのだとしたら、砂地に落ちた雫のように与えたすべてを吸収するお前は良い生徒なのだろうな」

 

「聞いているのかい?」

 

「人に聞くばかりではなく少しは自分で考えなさい、阿呆」

 

 

 

 

「行使する魔術は全て、以下のいずれかの属性に由来します。火、地、水、風の四大元素、そこに(エーテル)を加えた五大元素、さらにそこから虚と無という架空元素が存在します」

 

「前半四つは想像しやすいんだが、後半はあまり聞き馴染みがないね」

 

「そうですね、使い手も少ないので情報もあまりありません。空は魔術の大元であるエーテルを操ると考えれば、魔術や魔力そのものに干渉するもの、と言えるでしょうか。虚数属性は魔術的に存在するが物質界には存在しないもの。つまり影や鏡の中の虚像を操ることに長けていますね。鏡による転移や、見た目よりも中身の容量を大きくする空間拡張、対象の影を地面に縫い付ける技、などですか」

 

アーサーはその言葉の一言一句を自分の脳裏に刻み込んでいく。

 

「無属性は?」

 

「……」

 

アーサーがその質問をすると、モルガンが固まった。こめかみにシワが寄っている。相当考え込んでいるようだ。

 

「モルガン?」

 

「無属性、魔術的には存在しないが、物質界に存在するもの……分かりません。私の知る限り使い手の話も聞いたことがない。正体不明と言わざるを得ない」

 

「だが、分類として存在する以上過去に何かしら事例があったはずでは?」

 

「何でもかんでも知っていると思ったら大間違いだアーサー。私は全知全能ではない」

 

追求しすぎたせいか、モルガンが怒ってしまった。その様子を見てアーサーは仕方がないとばかりに肩を竦める。そして一言。

 

神秘を宿さない(・・・・・・・)物質、何てものはどうかな」

 

「はい?」

 

「無属性の司るものについてだ」

 

モルガンはそれを聞いて“ふむ……”と少し考えたあと。バッサリと断言した。

 

「そんなものはありはしない。この世すべては『 』という大源から派生したものだ。それがどれだけ枝分かれし、細かろうとも、神秘を宿さないものなんてこの世には」

 

無い(・・)、だから無属性なのかもしれない。もっとも、今僕が思いついた妄想にすぎないんだが」

 

モルガンはアーサーの顔を見る。その瞳はどこか遠く、ここではない場所を見つめているような気がした。

 

「今、何を考えているのですか」

 

「……さて、ね。もうこんな時間だ、姉上は寝た方が良い。明日は高原超えだ。ああ僕の心ぱ──」

 

「なら、お前も寝なさい。肉体の疲れはなくとも、夜に独りでいれば考えすぎることもある。その軽い脳みそを、少しは休ませておけ」

 

アーサーは思わず目をぱちくりと瞬かせ、天幕に入っていくモルガンの様子を見送った。

 

 

 

 

二人は高原を越えた先、チベット高原とタクラマカン砂漠の中間にある交易路をキャラバンとともに進んでいた。その道中のことである。

 

「風よ、舞い上がれッ!」

 

アーサーの言葉に大気は従い、目の前に巨大な嵐を生む。それに飲まれた巨大な砂ヘビのような魔獣は全身を風に切り刻まれて悲鳴を上げた。

 

「モルガン!」

 

「言われなくても分かっています」

 

嵐によって傷ついた魔獣の体、そこから飛び散った血、モルガンはそれを掌に集め、心臓を象ったあとに握り潰した。

 

肉体の一部を通じて本体へと魔術的なパスをつなげ、そこに呪詛を流し込む技である。本物の心臓とリンクした疑似心臓を破壊されたことで魔獣はついに息絶え──てはいなかった。

 

今際の悪あがきとばかりに、魔獣はその巨体でのた打ち回る。そしてその尾が守るべき商人たちへと向かった。

 

「往生際の悪い! 『我が憎き母への叛逆(クラレント・ブラッドモルガーン)』ッ!」

 

アーサーは魔剣から黒き魔力の奔流を放ち迎撃した。魔獣の尾は切断され、その断面図があらわになる。アーサーはそこに、とどめとばかりに二度目の一撃を食らわせた。

 

即ち、傷口に魔剣を突き刺し宝具解放。溢れる魔力で対象を内側から破裂させたのである。

 

“パンッ!”と風船が割れるような音とともに魔獣の身体は粉々に砕け散り、周囲に血の雨が降った。汚れるなんてごめんだとばかりに、アーサーは風の魔術でその血を吹き飛ばす。

 

習った魔術を彼は早速有効活用していた。

 

「す、すげぇなあんたたち。魔獣をこんな簡単に倒しちまうなんて」

 

「はは、あれくらい西の果て(ブリテン)では普通ですよ」

 

「そうなのか!? 西の果てというと大秦(ローマ)か、一体どんな魔境なのやら……」

 

微妙なすれ違いがありながら、アーサーは細かく素性を探られては面倒とばかりに商人から離れた。

 

「姉上」

 

「……」

 

モルガンは険しい顔をしながら魔獣の死体を調べていた、手に取った肉片に何らかの魔術をかけているのだろうか。

 

「何か気になることでもあったのかい?」

 

「……少し、違和感が。この時代の魔獣の持つ神秘にしては濃すぎるのです。少なくともこの魔獣は、ブリテンの一般的な魔獣と同等の存在でした。それに、少し商人から聞いたのですが」

 

「何をだい?」

 

「この砂ヘビのことをです。彼らは存在自体は知っていたが、しかし直接これを目撃したことはなかったと。少なくとも、ここ100年は目撃例はなかったようですね」

 

100年前に消えたはずの魔獣が再出現した。それが意味するところは、つまり。

 

「これが星の内海から地上に帰ってきた魔獣だと言いたいのかい?」

 

「あるいは地上の神秘に異常が出ているのかも……」

 

モルガンが頭を悩ませる傍らで、アーサーは得心がいったように頷き告げた。

 

「いや、違う。今分かった。星の抑止力が僕らの邪魔を始めたようだ。いやはや、ここまで何ともなかったからか油断していたが、そうか」

 

「……は?」

 

「やっぱり、僕の願いは彼らにとって都合が悪いみたいだ」

 

あっけらかんと言うアーサーに、モルガンは詰め寄る。

 

「いい加減我慢の限界だ、アーサー。お前の願いを私にも教えてもらおう。旅の同行者として、それを聞く権利が私にはあるはずだ」

 

「良いだろう、僕の願いはね」

 

アーサーは愉快な内緒話をするように、モルガンの耳元でひと言告げた。

 

「抑止力のない世界だよ」

 





この世界線におけるトリスタン

ア「円卓を辞める? そうか……すでに貴公が決めたことなら何も言うまい。これは退職金だ。どうかこれからは、円卓の騎士の手が届かない場所にいる民たちを守ってやってくれ。あと私が言うのもなんだが、妻とは仲良くするんだぞ。それから毒には気をつけてくれ」

ト「はい(毒死)」

ア「忠告したのに!」



もう一話か二話くらいで終わりです。あと感想書いてくれる人へ。嬉しいです、ありがとうございます。

読者の皆様は蒼銀のフラグメンツを

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