「断っちまって良かったのか、エルザ」
「……」
アーチャーのその言葉に、彼のマスターであるエルザ・西条は沈黙で返す。
つい先程、セイバーとの戦闘の折のことである。アーチャーとセイバーは実力の上で拮抗していたが、それを崩す者がいたのだ。
すなわち、セイバーと同盟を組んでいたランサーの乱入である。二対一の状況になってしまえばいかな大英雄のアーチャーと言えど流石に劣勢は避けられなかった。
普通、こういうときは宝具を切って危機を脱するのだろう。だがアーチャーの宝具は強力であるかわりに、その五体を消滅させる諸刃の剣だ。道連れに使うこともできるが、使ってしまえばサーヴァントを失ったマスターとしてエルザが聖杯戦争に敗北してしまう。
令呪を使ってアーチャーを呼び戻すか、あるいは逆にブーストにしてアーチャーが数の不利を覆すことを期待するか。そんな風に悩んでいたときにやってきたのがアサシンと、そのマスターと思われる一人の少年だった。
彼はアサシンと共にアーチャーを庇うと、相対する二騎の英霊に対し吠えた。
『こ、これで二対二だろ? 数の上では平等だ。それにあと数分でこの場に警官が来る。それまでに決着がつかなきゃ神秘の秘匿……? とか言う奴に関わるんだろ? だから、退け……っていうか、退いてくれませんか!』
あまりに情けない脅し文句だったが、セイバーとランサーは素直に退いた。アサシンの能力が分からなかったからだろうか、それとも第三者の乱入でアーチャーが立て直し、奇襲の効果が薄れたからだろうか。
結果的に見れば、エルザとアーチャーはその少年とアサシンに救われたことになろう。
『俺は、この聖杯戦争で出る犠牲を無くしたい。そのために協力できませんか?』
そして、戦闘のあとに対面した少年──來野巽はエルザに対し同盟の打診をした。
だが、エルザはそれを断ったのだ。
「坊主の言うことを信じるなら、アサシンはすでに他二騎と組んでるってことになる。セイバーはランサーと組んでるから、独り身なのは俺たちともう一騎だけになるな。やれやれ、生き残るのは一騎だけだってのに他のやつらはチーム戦かよ」
巽は思いの外色々なことを喋ってくれた。きっと自分の信頼を買おうとしたのだと思うと、エルザは断ったことに申し訳なさを感じてくる。
でも、それでも、エルザにはそれを承諾することはできなかった。聖杯戦争を速やかに終わらせるための、勝利の放棄。それはエルザの願いが叶わないことを意味しているから。
「こりゃ、俺らもどっかと同盟を組まないと厳しいかもな。だがアサシンの方は断っちまったし、セイバーの方も戦ったばかりだ。残るはキャスターかバーサーカーかライダーか。……多分、アサシンと同盟を組んでるうちの一騎はキャスターだろうな」
「どうして?」
「キャスターは魔術師のサーヴァントで、工房に籠るのが得意なんだろ? アサシンを斥候として使ってるんだと考えれば納得がいくと思ってな。ま、ただの予想に過ぎないんだが」
アーチャーの予想はある程度は的を射ていた。さすが弓の英霊といったところだろうか、予想を当てるのも上手いらしい。
「……でも、聖杯戦争の最後に残るのは一組だけでしょ? 同盟を組んだところで、私は必ずそれを反故にしちゃうわ」
「そこまでして叶えたい願いがあるんだな、エルザ」
「……うん」
エルザは遠慮がちに頷いた。彼女の願い、それは救済だ。幼い息子を亡くした自身の経験と、カメラマンとして紛争地帯を巡り悲劇を見てきた経験が生み出した彼女の願い。
悲劇の否定、この世全ての母と子に救済を。……なんて立派な御題目を掲げてはいるけれど、結局は自分が過去から救われたいだけなのかもしれないと、彼女は自嘲する。
エルザはまだ、自身の願いをアーチャーには伝えていない。それは彼女の過去に深く関わるものだからだ。共に戦争を生き抜く相棒だとしても、そうやすやすと伝えられるようなものではない。
「おし、なら良いじゃねぇか。俺たちは一匹狼で行く。まさに弓兵の『単独行動』ってな!」
「いやいや、『単独行動』ってそういう意味じゃないでしょ?」
「そうだが、ま、なんでも良いさ。マスターがそれを望んで、選択をした。それを俺は受け入れる。いちいち細かいことを聞いたりしねぇよ。だからエルザもメソメソしてないで前向けって。それとも、やっぱり同盟しますってあの坊主に泣きついてみるか?」
“あいつなら受け入れてくれるかもな。ははは!”なんてアーチャーが冗談をいうので、エルザもそれに釣られて笑顔を零す。まだその顔には影があったが、少なくとも表面上は吹っ切れたようだった。
「んじゃ、気晴らしに飲み屋にでも行くか」
「またぁ!? アーチャーったら、この聖杯戦争で敵だけじゃなく私の財布まで殺すつもりなの!?」
「この国の飯が旨いのが悪いよ飯が」
“選択肢が多いってのも考えもんだな!”と言いながら飲み屋街を練り歩く快活な大英雄に振り回されながら、エルザは頭の片隅で思考する。
少年が言った、聖杯戦争で犠牲になる東京の人々のことを。この世すべての母と子の救済という大義のために、彼らを犠牲にしても良いのだろうかという、心のうちに湧いた疑念を。
“ルカ、
それでも、私は──。
◇
「ダメだったかぁ……」
深夜、項垂れながらもトボトボと玲瓏館邸への帰路につく少年がいた。エルザ・西条につい先ほど同盟の打診をし、フられた來野巽くんである。一応、フォローするならば熟考の末の拒否であったと言っておこう。
「しかも、俺結構情報とかペラペラ喋っちゃったよな? うーわ、帰ったらキャスターに叱られるぞこれ。“よくぞノコノコと帰ってきたものです。では死になさい、無能”……みたいな」
巽がキャスターの冷たい声色を真似すると、アサシンにはそれが少しツボに入ったのか“くすっ……”と笑った。
「……おほん。その妙に似せた主の真似はやめてください、巽。それと必要以上に落ち込むことも。もとより主から情報の開示についてはある程度の許可を得ていますから」
「そうだったのか、やるなアサシン。よっ、できる女!」
「なんですかそれは……」
呆れたように巽の隣を歩くアサシン。しかしその顔には笑みが浮かんでいた。ぼーっと巽がその笑顔に見惚れていると、アサシンは真剣な表情で語り出す。
「しかし、セイバーとランサー。三騎士と呼ばれる優秀なサーヴァントのうちの二騎が同盟を組んでいたとは思いませんでした」
「そうなのか? 俺たちだって同盟を組んでるんだし、別に普通のことなんじゃ」
いつの間にか自分を同盟の枠の中に数えている巽をアサシンはジト目で見つめた。どちらかといえば彼は奴隷枠だ。生殺与奪の権だってキャスターに握られたままだし。……もっとも、残念ながら本人は自由にされているせいかあまり自覚がないようであるが。
「私たちは一般的な同盟と異なり特殊な関係です。まずもってバーサーカーは略取された存在。私もまた彼女には逆らえないので、正確には対等な同盟ではないのです」
「逆らえない……令呪か! もしかして、アサシンってキャスターに無理やり従わされてるのか?」
「いいえ、違います。私はマスターを失って消えるところを彼女に救っていただきました」
「……やっぱりあの人、意外と良い人だよな?」
「……」
アサシンは巽の言葉に無言で肯定の意を示した。悪辣たる魔女のような口ぶりをしているが、別にやってることは普通、むしろ比較的善良である。巻き込まれたマスターである巽を生かしたり、使い魔で東京全体を監視して神秘の秘匿に貢献したり、一般人を戦場に巻き込まないよう暗示で逃がしたり。
「とにかく、今はセイバーとランサーの同盟の話です。英霊は基本的に皆願いを抱えて現界することは知っていますか?」
「ああ。バーサーカーから聞いた。あいつの願いは『正義であること』……だったかな」
バーサーカー、ジキルは生前己の悪の人格であるハイドを制御できず、多くの無辜の民を手に掛けた。その反省から、今回は正義の側として立ち続けたいと願い、巽もまたそれに同意したのである。
「彼はそのような願いなのですね。ともかく、聖杯戦争において英霊が聖杯を奪い合うのは、その願いを叶えられるのは一騎だけという特性から来るものなのです。つまり」
「最初から同盟なんて成立しない……?」
「はい、もしくはこうとも言えます。同盟とは一時的なものでしかない……と」
願望のバッティング。願いを叶えるその席を取り合う椅子取りゲームがこの聖杯戦争だ。仲良く同じ席に座るなど普通はできるものではない。
「セイバーとランサーには上下関係があるのか、どちらかが願いを諦めたのか、あるいはもう既に叶えたのか。それらが分かれば、つけ入る隙が見えるかもしれません」
巽はその説明を聞いて、かつての自分を反省した。
「……俺、悪いやつを倒せばこの戦いを止められるとか思ってたけど、実際にはもっと複雑なんだな。戦争って」
「逆にあなたの頭は単調すぎると思うのですが。玲瓏館のマスターを倒せばそれで終わりだと本気で思っていたのですか?」
「……はい。いや、セカンドオーナーって言うくらいだからさ、勝って言う事聞かせて、戦争の中止をさせられないかなと思って」
「まるで玲瓏館が聖杯戦争の監督かのように認識していたのですね、あなたは」
聖杯戦争は最後の一組、否、正しくは
二人がそんな会話をしていると、間もなく玲瓏館の屋敷が見えてきた。
「ああ、そうだアサシン。聞いても良いか」
「なんですか?」
「アサシンの願いってなんだ?」
「私の願いは──」
静謐のハサン、毒の娘。その美しい恵体で暗殺対象への寝所に忍び込み、その身から溢れる毒で対象を殺す暗殺者。故に彼女は、愛を得たことがない。
「願い、は……」
だから彼女は愛が欲しい。その最低条件として、自分に触れても死なない人間を求めているのだ。あるいは、聖杯によってこの身から溢れる毒を消すことを。
だがもし、もし仮に、毒が効いてしまう相手だとしても、それでも愛が得られるのだとしたら。
「ん、どうした?」
「……」
彼女は己の隣を歩く少年を見た。善良な少年だ、会ったこともなかったアサシンを助けようと、その身の首から下を滅ぼすまでに至った人。そんな彼ならば、あるいは。
「いえ、何でもありません。私の願いはそうですね……受肉、とでもしておきましょうか」
「受肉?」
「人としての形を得ることです。今の体は魔力で作った幽霊のようなもの。過去を生き死んだ英霊である私にとって、現代を生きることは奇跡に等しい。もっとも、その願いを叶える手段は聖杯くらいしかありませんが」
口にしてみれば、やはり欲が湧いてしまうものだとアサシンは苦笑した。キャスターに、彼女の主に勝利を捧げると誓っておきながらも、それでも自分の欲を抱いてしまう。やはり自分に
「そうでもないんじゃないか?」
「……え?」
巽の言葉に一瞬意味が分からず、アサシンはポカンとした顔で声を漏らす。
「だから、現代を生きるのに聖杯がいるってところだよ。別に今だってやろうと思えば、現代の生活くらい満喫できるんじゃないのか?」
“バーサーカーは普通にご飯食べてたぞ?”とあっけらかんと言う巽に対し、アサシンは呆れて言った。
「私は毒の娘、この体から溢れる毒をそのままにして、どうやって現代の生活をしろと言うのですか。例えば私が人混みに混ざってしまった暁には、周囲の全員が死んでしまうかもしれないのですよ?」
人口密度の高い東京で生活なんてできたものではない。
「……そうか、ごめん。考えが浅かった」
巽はそう言って謝罪すると。
「でもあのキャスターなら何とかできてしまいそうだけどなぁ」
と言った。
「い、今、なんと……?」
「え? いやだからキャスターなら何とかできるかもって──」
「──ああ!!!」
アサシンが突然、何かを思い出したように声を上げた。そう、それはあの日、まさしくキャスターと出会った日のことである。アサシンに触れることができたキャスターは、“なぜ、あなたは私に触れられるのですか?”と問うた彼女にこう言ったのだ。
『私には
妖しい笑みで、ケルト十字のロザリオを持ち上げながら。
「あ、あのロザリオならもしかして──ッ!」
「お、おいアサシン!」
アサシンはそれに思い至ると、一目散に玲瓏館の屋敷へと駆け出した。その門をくぐり、急いで自らの主のもとへ向かおうとする。
十字架、
──欲しい! なんとしてでも! 奪い取る……のは出来ないかもしれないが! 本当に何でもするから譲ってくれないだろうか!
彼女の頭の中はそんな思いで支配された。だから、であろう。
玲瓏館邸の中から先日はいなかった
「ほう、暗殺者風情が、余の道を遮るか?
「──アサシンッ!」
「え……っ?」
たった今、褐色の肌をした黄金の瞳の男がその手に持った杖でアサシンの胸が貫かれそうになったそのとき。
「ぐっ……」
彼女の体を突き飛ばし、身代わりになった者がいた。
「た、つみ……? なんであなたが、どうして……!」
「貴様、亡者か、それとも動く屍か。流れ落ちる血の量を見るに、余がたった今貫いた心臓は、そうなる前から動いていなかったようだな?」
「……あ……んた……何もん……だ……?」
「誰が声を上げて良いと言った? ふん、死体に名乗る者がいるものか。死体は死体らしく、地に這いつくばっていよ」
王者の気風を纏うその男が杖を一振りすると、ソレに刺さっていた巽は二度ほど地面にバウンドして、丁度アサシンの足元へと転がった。
「なんで、ここには主が結界を張っているはず、どうして中から……!」
「二度も不敬を重ねるとはな、許しも無く余に問いを投げ……待て、今主と言ったな? ほう、では貴様があの魔女めが言っていたもう一人の同盟者とやらか。喜べ、日の陰を生きるしかない暗殺者よ、貴様らが目にするも烏滸がましい太陽の化身たる、この余が直々に裁定を下してやろうではないか」
男はそう言うと碧と金に、エジプシャンブルーと黄金に彩られた杖を一振りする。そして次の瞬間、光と共にその場に巨大な獣が現れた。
「行け、ホルスの化身たる『
スフィンクス、それは人面の獅子。エジプト神話に語られる神獣であり、エジプトの王
「■■■■──ッ!」
呼び出された神獣が雄叫びを上げ、アサシンの元へと迫る。そしてその様子を二対の黄金の瞳がじっと見つめていた。
「──────ぁ」
一方、アサシンの心にあったのは絶望のひと言である。アレは無理だ、逆立ちしたって勝つことはできない。人を殺し続けたアサシンに、神獣の相手などできるはずもない。何より、神秘の質が違いすぎる。彼女の暗器ではあの神獣の肉体に傷一つつけることすら叶わないだろう。
でも、それでも、彼女の足元には彼がいた。だから、彼女は立ち向かう。
「巽に、手出しはさせない──ッ!!!」
選んだ手段は守護だった。獅子の鉤爪が彼に届かぬよう、彼の体を庇うようにして覆い被さり、神獣に背を向ける。肌に触れたことによる毒の影響を気にしている余裕は彼女にはない。ただ、彼を助けたい一心で彼女は行動した。その背中に来るだろう、致死の一撃を覚悟して。
「……?」
しかし、その死が彼女を襲うことはなかった。少し経っておかしいと感じたアサシンは後ろを振り向く。
「……ふ、ふはははは!!!」
そこには神獣の姿はなく、ただ上機嫌に高笑いする太陽の如き男の姿だけがあった。
「よもや、矮小なその身で我が神獣の動きをほんの、そうほんの少しでも止めて見せるとはな! なかなかやるではないか、褒めて遣わす、死体め!」
「まさか……巽、あなたは!」
男の言う通り、巽がスフィンクスに魔眼を使ったのだろう。彼の右目は真っ赤に染まり、その
「な、どうして……! 身の丈を超えた魔眼の行使は命に関わると、主より聞いているはず!」
「君に……庇われて……俺だけが何もしないわけには行かないだ……ろ……?」
「巽、たつみ……!」
スフィンクスという強大な神秘を静止させた魔眼の副作用で、彼は限界だったのだろう。彼は死んだように気を失った。
「当世に生きる人間は魂が堕落し、腐りきった凡俗だけかとも思ったが。なかなかどうして、こうして光るものがあるではないか。王者の気風を宿した幼き娘しかり、屍の体で生きる意思を持つその男しかりな。……では、裁定を言い渡す!」
今度は一体何をしでかすのかと、アサシンは構えた。抵抗できるとは思えない、しかし、巽が覚悟を示してくれたおかげで稼げた時間だ。決して無駄にはしまい。
少なくとも、この人だけは生かしてみせると、アサシンは決意した。
そして、男が叫ぶ。
「──寛大にして偉大なる王の中の王、太陽の化身にしてファラオたる余は貴様らの先ほどの不敬を許す! 以上!」
男はそう言うと、“ふはははは!!!”と笑い声を上げながら、霊体化して消えていった。
アサシンは男が何もせず消えていったのを見て、普段なら絶対にしない声量の声を腹の底から上げた。
「はぁ!?!?!?」
信じられないことであるが、あの男は、自分が道を塞いだことに怒ってこちらを殺そうとしたのだとアサシンは知った。
「うぅ……」
アサシンの大声に、巽が呻いて返事をする。
「そ、そうだ治療を……!」
アサシンが巽の体を屋敷の中に運ぼうとしたそのとき、空間が歪む。
「騒がしいと思えば、お前たちは玄関先で何をしているのだ……」
その歪みの中から現れたのはキャスターだった。その表情は完全に呆れきっている。
「主!? 生きてる!?」
「勝手に殺すな。しかし、一体何をしたらこうなるのですか。魔術回路の一部、それから脳と視神経の一部も焼き切れています。心臓も壊れているし、はぁ……また一から治療をし直さなければ……」
“面倒くさい”と言わんばかりにため息をつくと、キャスターは巽を魔術で運ぶ。その様子をアサシンは呆然としたまま見ていると、家の中にはいる前にキャスターが振り返って彼女に告げた。
「ああ、そうですアサシン。ライダーとは対セイバーに向けて先ほど同盟を結びました。今しがた出ていったのでおそらくすれ違ったのでしょうが……まさかとは思いますが、無礼な真似はしていないでしょうね。アレは怒らせると面倒くさいですよ?」
“まったく、王という人種はこれだから”とぶつくさ言いながら、キャスターはアサシンの視界から姿を消した。
一人残されたアサシンは天を仰ぐ。
「あの! これは私が悪いのでしょうか!? どうなのですか初代様!?」
彼女の訴えは虚空へと消えた。だがもしも彼の初代『山の翁』がこの場にいたならば、鐘の音とともにこう答えたであろう。
“己の欲に目が眩み、逸るあまりに現実を見失ったな? 未熟なり、静謐の──首を出せ”……と。
そう、王とは面倒くさいものです。だから絶対に気を損ねてはならないし、言ってはならないことがあるのです。例えば、“弟の形見をくれませんか?”とか。
そんなことを言ってしまった暁には、もう、ね?