獣のようにざっくばらんに整えられた後ろ髪を靡かせ、女狩人が走る。赤のアーチャー、アタランテはその俊足に相応しい速度、機動力でシギショアラの街を屋根伝いに駆けていた。
その理由は一つ。
「──『
屋根から屋根へと移る一瞬、宙に浮いたアーチャーは後ろを振り返り矢を番えた。放たれた二本の矢は目標を大きく逸れて天を穿ち、しかし正しくその
幾万もの矢の雨がソレを、アーチャーに迫る双頭の竜を襲う。
『
そして、その双剣は熱線を放ったまま姿を変えたのである。触れる者すべてを焼き尽くす高エネルギー体、魔力によって編まれた神秘の肉体にして攻撃そのものである二対の竜の頭へと。
それは帝都を守りし守護竜。剣の名を借りて『クラレント』と『フロレント』と呼ばれる竜は、主であるアサシンの魔力が尽きるまで敵を執拗に追跡する。持続発動型の宝具であった。
都市を覆うほどの矢の天蓋がその竜たちに襲いかかる。だがそれらは彼らの肉体に触れた瞬間、“じゅっ……”と音を立てて蒸発した。
竜の肉体は高エネルギー体。俗な言い方をするならば
だが、それでもアーチャーが宝具の無駄打ちをしたのは理由がある。それは時間を稼ぐため。
今、赤のライダーはアサシンと一騎打ちをしている。敵方たるアサシンはこの竜をアーチャーに貼り付けることで数の差を埋めたのだろう。だがライダーはギリシア世界トップクラスの英雄、タイマンなら彼の勝利は揺るがない。
故に、アーチャーはただこの竜と競争して時間を稼いでおけば良い。真っ当な追いかけっこならば彼女の得意とするところだ。……なのだが。
「■■■■──ッ!!!」
竜の咆哮が響き、アーチャーの死角からソレが現れた。
アーチャーたる彼女にとって、背後すら死角になることはない。もし彼女に死角があるとすればそれは物理的に目の届かない場所のことを指す。具体的には、建物の内側とか。
「忌々しい! 汝、障害物競走で
そう、文字通りの透過能力である。考えても見てほしい。双頭の竜は都市の守護竜なのだ。それが解放された結果、街を破壊し尽くすなんて結果になればそれは馬鹿だろう。
故に、二対の竜は街を傷つけることなく透過する。対城宝具でありながら、本質的に対城ではない。敵のみを殲滅する、それがこの宝具の真価であった。
アーチャーは己を噛み殺そうとする竜の頭を躱し、再び建物の屋根という屋根を踏みながら跳んだ。そして再び、宝具を街に向かって解放する。
それは竜を射抜くことはできず、しかし足を止めることはできる。要は都市を傷つけることはないというメリットがデメリットにもなりうるのだ。彼らは都市に向けられた攻撃を防がずにはいられない。アタランテが矢を放てば、それから都市を守るべく彼らは身を張った。
まるで都市を人質に戦っているような気分になるアーチャーであったが、彼女は狩人、騎士ではない。誇りよりも、実利を優先する。
かくしてアーチャーは都市をすり抜け、しかし都市が破壊されることを許さない竜のその特性によってギリギリの競争劇を繰り広げることになる。そしてそれはライダーとアサシンの戦闘が有耶無耶な形で中断されるまで続くのだった。
◇
アーチャーが競争大会に勤しんでいる一方、ライダーはアサシンと対峙していた。
「俺はな、アサシン。強者との血のたぎるような戦いを望んでこの聖杯大戦に身を投じたんだ。だと言うのに」
ライダーが不満そうに口を尖らせながら言う。彼が立腹するのも無理はない。必死に逃げているアーチャーには悪いが、赤のセイバーと正面から渡り合ったアサシン、
「なんでお前、女に、しかも魔術師になってんだ……?」
しかしそれは束の間のこと。双剣を失ったアサシンは早々に男の姿での戦闘続行を諦め変身したのだ。
すなわち、暗殺者アルトリウスから賢者モーガン。魔術師への霊基チェンジである。
「二人で一つの英雄など、古今東西ありふれているでしょう。ライダー」
何故と問われて律儀に返事を返すアサシン。そして彼女は己が最も得意とする水の
前触れもなくシギショアラの街に雪が降る。最速の英雄アキレウスに対し、寒さで
「凍えて死になさい、
そして天から、大地へ氷柱が突き刺さる。
ライダーはそれを難なく交わし、逆にそれを足場としてアサシンの眼前に迫る。常人なら瞬きする一瞬に距離を詰め槍を振るうが、手応えはない。それもそのはず、彼が薙ぎ払ったのは人型の水人形だったのだから。単純な身代わりの魔術である。
「今どきのアサシンは全員魔術も使えんのかよ。どうなってんだ、マジで」
およそ神代の魔術師と同レベルの技にライダーはそうぼやく。味方の赤のアサシンもまたアサシンのクラスの癖に優れた魔術の使い手なのだ。アサシンというクラスとは一体なんなのか。いつから暗殺者は魔術師も兼ねるようになったのか。
「考えても仕方ねぇか。……行くぞアサシン!」
ライダーは頭上で槍を回転させ、旋風で氷霧を振り払った。そしてそのアサシンの姿を見つけると、一気呵成に突貫を試みる。
一方のアサシンは、ライダーによる止むことのない槍の連撃を杖で防ぎながらも冷静さを保ったまま思考していた。
アサシンの能力の中に、ライダーの神の肉体を傷つけることのできるモノはない。ライダーはその名が由来となった人類共通の弱点、アキレス腱以外の部位においてほとんど無敵を誇る。神性を帯びない攻撃の一切を弾いてしまうのだ。
そしてアサシンに神性はない。したがってこの場合は圧倒的な不利対面だった。
だがアサシンにも、今この場においてライダーを斃す手段が二つある。どちらもアサシンのマスター、エレインの母親。先代ドラクル家当主の残した遺物であった。
一つ──ギリシアの大英雄が残した矢。アーチャー、ヘラクレスの矢である。手記によれば、彼女の母がサライェボ亜種聖杯戦争にて召喚したサーヴァントの遺物らしい。ヘラクレスの矢であれば当然神性を帯びている。アキレウスの神の肉体、『
とはいえ、傷をつけるだけだ。ライダーは一本の矢が体に刺さって死ぬような英霊ではない。したがってこの手段は却下である。
そしてもう一つ──聖杯の泥。手記によればこれもまたサライェボ亜種聖杯戦争で手に入れたモノ。汚染された亜種聖杯によるものらしい。
1995年当時、ボスニア・ヘルツェゴビナ共和国は独立紛争の真っ只中にあり、その首都サライェボもまたその戦火に晒された。ローマ・カトリック、ギリシア正教、そしてイスラム。クロアチア人、セルビア人、そしてボシュニャク人。
宗教、人種の入り乱れるその地で行われたのはおよそ現代においてこの世すべての悪とも言える蛮行だった。
民族浄化、その大義の元に行われたあらゆる悪虐。大量虐殺、強制収容、集団レイプ、強制追放……人々の悪意によって歪み、黒化した英霊がその地に呼び出されるのも無理はなかった。
かくして悪意に汚染された英霊が亜種聖杯に焚べられたことで、汚染された泥を吐き出すに至ったのである。
そしてその泥の効果はあらゆるサーヴァントを蝕むウイルスのようなもの。いかなアキレウスと言えど霊基そのものを侵されれば神性も何もない。この手段を取れば確実にアサシンは勝てる。
──だが、それは最後の手段だった。聖杯を汚染できるという事実を敵方に、今まさにこの戦闘を観測していているだろう相手に教えるわけには行かないのである。
「どうしたアサシン、もう魔術は終わりか!? もっと俺を楽しませろ──ッ!」
ライダーの放つ鋭い槍の斬撃が外套を斬り裂き、アサシンの頬に傷を付ける。
ともすれば、宝具か。アサシン・モーガンの宝具はアルトリウスのソレと異なり防御に寄った宝具だ。解放すればエレインと逃げる時間くらいは稼げるだろう。
だが、アサシンの宝具には制限がある。彼、彼女の持つ二つの宝具は強力だが生憎同時に発動することはできない。片方を起こせば、片方は消える。この状況で防御を選択してはライダーと、そして竜が消えたことでフリーになったアーチャーからの包囲を受けることになるのだ。後詰めのない籠城などアサシンからすればまっぴらゴメンである。
故に、タイミングが大事だ。宝具を発動し、アーチャーが戻ってくる前にエレインと逃げ出すタイミングを彼女は見計らう。
そして、来た。
足元には下水道に続くマンホール。水脈があれば、アサシンは大回廊に逃げ込める。そして『隠れ兜』により目には見えないが、太く強固なレイラインによればマスターたるエレインはすぐ近くにいる。
「宝具、『我が──」
「来るか、アサシン──!」
絶好のタイミングを持って彼女は己の宝具を解放しようとした、そのとき。
「……ッ! 誰だ!?」
「加勢します、アサシン!」
「バーサーカー、敵のライダーをぶっ飛ばせ──ッ!」
そこに現れたるは二人の姉弟。その姿を見て、身を隠しておかねばならないエレインは思わずその名をこぼした。
「フィオレさん……カウレスくん……」
◇
「雪……? なんでいきなり雪なんか」
「いいえ、カウレス。これは魔術によるものよ。それも相当高度な……行きましょう」
行方知れずの黒のアサシン、そして幼馴染のエレインを探すため。そして赤の陣営が拠点を偵察するために、トゥリファスからシギショアラに来ていたフィオレとカウレス。
そして二人は目撃する。先日ミレニア城塞へ侵入してきた赤のライダーと正体不明のサーヴァントが交戦しているところを。
「状況から見れば、あれがエレインの召喚した黒のアサシンでしょうね」
「あれが? でも全然暗殺者って感じじゃないな。むしろ魔術師、キャスターっぽいって言うか」
マスターである二人が目を凝らすが、推定アサシンであるサーヴァントのステイタスは見えなかった。あのアサシンにしては目立つ外套に、何らかの隠蔽がかけられているのかもしれない。
「アーチャー、赤のライダーを狙撃できますか?」
「無論です、マスター」
「バーサーカー、アイツを助けたい。だから……あー、
「……ゥ!」
そして彼らに付き従う二騎のサーヴァントの乱入によって、赤のライダーを撤退させることに成功した。夜明けも近い、これ以上の戦闘は厳しいと見たのだろう。
そして二人は、求めていた人物と再会することになる。
「「──エレイン!」」
何もない空間から『隠れ兜』を解き姿を現した探し人、二人の幼馴染であるエレイン・A・ドラクルその人であった。
「あぁ、無事で良かった。本当に心配したんですよ!」
その顔に歓喜を浮かばせて、フィオレはガシンガシンとその背中に着けたアディショナルアームで歩く。彼女の魔術礼装『
だが。
「……近づかないでください、フィオレさん」
フィオレが一歩近づくたびに一歩下がるエレインがそう言った。二人とは真逆に、彼女は警戒したように険しい表情を浮かべている。
「ど、どうしたのですかエレイン。もしかしてまだ敵が──?」
「ともかくここは危険だ、早くトゥリファスに戻ろう。あそこはユグドミレニアの領地だからエレインの身の安全も──」
「……アサシンさん」
エレインはただ静かに、拒絶するように令呪の刻まれた手を胸の前に掲げた。そして二人と一人の間に、二騎と一騎の間に緊張が走る。
「マスター、危険です」
「何を言うのですかアーチャー! エレインは味方で……」
フィオレはそこまで言って思い出した。彼女は、別に黒のマスターではない。巻き込まれた第三者なのだ。
「……エレイン、どうか私たちと来てください。あなたが知っているかどうか知りませんが、聖杯大戦は一人では」
「“一人では生き延びられない”ですか? そうですね、よく知っています。なにせ、初日に殺されそうになったので」
その言葉に姉弟の二人の顔が歪んだ。
「ねぇ、フィオレさん、カウレスくん。私に教えてください。二人の家は、どんな理由でこの戦争を引き起こしたんですか? 私たちの暮らすトゥリファスの町で、どうして戦争なんかを……?」
「それは……」
「私のお母さんも、お父さんも、兄さんも。みんな戦争で死んだって二人は知ってたでしょ? なのに、なんで……?」
二人は答えられない。その理由は、突き詰めれば私利私欲なのだ。魔術師として一族が発展すること、衰退すると予言した魔術協会を見返し、引いては己が『 』に至ることを目的としてダーニックはこの戦争を引き起こした。
「魔術を知らなかった私や、町の人たちを巻き込むような戦争をなんで起こしたの……?」
それは魔術師にとっては大義だろう。だが、非魔術師にとってはそんなこと知ったことではない。彼らはただその地に生きているだけなのだ、超常の神秘を操る英雄たちの戦いに巻き込まれる謂れはない。
「……ユグドミレニアは、魔術協会から虐げられてきました。おじ様はこの現状を打開しようと──」
フィオレは極めて慎重に言葉を選び、エレインにそう告げようとした。だが、彼女の表情は失望に変わる。
「“我々は虐げられてきた、だから叛逆する”ですか? ……それ、私が昔ラジオで聞いた台詞と同じです。隣の国で戦争を起こした人たちも同じことを言ってました。そうやって、大義の名の下に多くの人を巻き込んで」
「違う、違うんだエレイン。俺たちは、君を巻き込むつもりなんて……」
「──ッ。町には叔父さんも叔母さんも、親しい人たちだってたくさん暮らしているのに!? 私を巻き込まなくったって、色んな人が犠牲になるのは変わらないはずです!」
エレインの感情の昂りと共に、周囲に魔力が満ち溢れていく。アサシンが杖を掲げ、アーチャーが弓を構え、バーサーカーがメイスを揺らす。
「そんな、どうして彼女にこんな魔力が……ッ」
「姉さん、大丈夫か!?」
竜の心臓が唸り、内に秘められていたエレインの魔力が解放される。渦巻くエーテルの嵐はより才能のあるフィオレを真っ先に襲った。彼女の魔術回路、そしてその背中に取り付けられた魔術礼装がエレインの魔力に当てられて徐々に狂い出す。
「アサシンさんから聞きました。魔術師にとって非魔術師のことなんてどうでも良いって。その気になれば平気で他人を犠牲にする輩が大多数なんだって。だから、二人がそんな魔術師だって言うのなら、私は」
“あなたたちを倒して、この戦争を止めます”と、エレインはその手に魔力の弾丸を握って言った。それが契機だったのだろう。
「……ゥ──ッ!!!」
真っ先に動いたのは黒のバーサーカーだった。
「ま、待て。バーサーカー!」
マスターたるカウレスが引き留めようとするが、間に合わない。メイスを振りかぶった彼女はその槌先を正しくエレインに向けて振り下ろす。
「
エレインはそれに、魔力弾でもって応対した。投げつけられた三つの宝石が破裂し、その場に極小のエーテルの嵐が巻き起こる。
だが、それは悪手だった。黒のバーサーカー、フランケンシュタインが持つ宝具。その大槌『
「──なんだと!?」
己のマスターと迫りくるバーサーカーとの間に割って入ったアサシンは驚愕し、己の目を疑う。エレインの放った質、量ともに最高な燃料を吸収した、他の英霊と比較すれば鈍重なはずの狂戦士は雷のような速度で大地を駆けたのだ。
驚異的な機動力でアサシンをすり抜け、バーサーカーはエレインを襲う。
魔力石で攻撃していなければ、その攻撃はアサシンによって防がれていただろうに。
「──ぁ」
その透き通った蒼い瞳に迫る大槌が反射する。そしてエレインは頭蓋を砕かれ、そしてボロ雑巾のように壁に叩きつけられ、シギショアラの街の染みとなる自分の未来を幻視した。
「エレイン、十字架を──!」
アサシンの声が彼女の耳に届く。その言葉にエレインははっと気づいた。己の首にかけられたロザリオは、アサシンによれば守護と浄化の能力を持った宝具であるらしい。
赤のセイバーに襲われた夜も、このロザリオはエレインを助けてくれた。ならば今度も──。
そして彼女の手が環十字に触れる。だが、ソレはギリギリのところで発動することはなかった。
「やめろ──ォォォッ!!!」
バーサーカーのマスター、カウレスが腹の底から声を上げた。そして彼は無意識のうちに令呪を行使する。
主の願いに呼応し、令呪は正しく願いを叶えた。それによってバーサーカーは慣性の法則をまるっきり無視したような完璧な停止を果たす。
そしてエレインは目の前でピタリと止まった大槌を見てヘナヘナと腰を落とした。そんな彼女はされるがままに、アサシンに抱えられてその場を去る。
後に残ったのは具合の悪そうなフィオレと、最悪の場合に備えて矢を番えていたアーチャー、『敵を倒すのを止めさせる』というほとんど無駄打ちのような使い方で欠けてしまった令呪を呆然と見つめるカウレス、そして彫刻のようにピタリと固まったバーサーカーだけである。
夜が明け、彼らはトゥリファスへと帰還する。事の次第をユグドミレニアの長にどう報告するか、その言い訳に頭を悩ませながら。
◇
「悪かったな、バーサーカー。その……邪魔、しちゃってさ」
城に戻り、ダーニックから“この無能め……”と侮蔑の視線を浴びながらも、しかし最初から期待などしていないとばかりに何も言われることのなかったカウレスは自室にてバーサーカーに平謝りをする。
敵のマスターを倒す絶好のチャンスをカウレスは無為にしてしまったのだ。きっとバーサーカーは怒り心頭であろう。故に、何とかその怒りを鎮めてもらうためにそうしていた。
サーヴァントとの友好な関係、コミュニケーションを築くことは重要なことだ。ダーニックはサーヴァントなど所詮使い魔だと見下しているが、あまりに関係値が低いとそれこそ黒のセイバーとそのマスター、ゴルド・ムジーク・ユグドミレニアのようになってしまう。
今も自室で“私は悪くない……!”と酒を飲んだくれているだろうあのおっさんのようには、カウレスはなりたくなかった。
「……ゥ」
「え? あぁ……エレインのことか? あいつはその、幼馴染なんだよ。昔は姉さんと俺と彼女の三人で良く遊んだんだ。魔術師ってほら、基本的には友人を作らないだろ? だから俺たちにとって、魔術師じゃない彼女だけが友人みたいなものだったんだ。今はもうエレインもこの世界に踏み込んでしまった、て言うか、俺たちが巻きこんでしまったんだけど」
フィオレとカウレスが時計塔に留学、あるいは潜入する前の三人の関係は非常に親密で、かつ閉じたものだった。今では時計塔に数人友人もいるが……。
いや、フィオレにもカウレスにももはや友人と呼べる人間はいまい。二人は時計塔を裏切ったのだ、そんな二人と友人関係を続けるような人間は魔術師とは呼べないだろう。
故に、正しく二人の友人はもはやエレインただ一人になってしまったのであるが。
「だから……喧嘩別れになってしまったけど、なるべくアイツのことは殺したくないんだ」
カウレスは己の中にある本質的な感情は秘しつつも、正直にそのことをバーサーカーに伝えた。
そしてバーサーカーは。
「ウ!」
と、非常に呆気なくカウレスを許してくれたのである。
「え、許してくれるのか……?」
「ゥ」
「や、やけにあっさりだな。その、なんだ、何か埋め合わせとか、代償が必要だったりするとか……?」
「ウウー……」
「“いらない”……? “むしろ暴走して申し訳ない”……? な、なんか今日優しくないかお前……」
バーサーカーは何やら全てを分かった風にうんうんと頷くと、カウレスの肩を叩いてグッと親指を立てた。そのジェスチャーに首を傾げつつも、“まぁ許してくれたなら良いか”とカウレスは納得する。
黒のバーサーカー『フランケンシュタイン』の願いは、創造主フランケンシュタイン博士に己の伴侶を創造してもらうことである。
だから、マスターの気持ちも察することができる。
彼女は賢い。故に確信する。彼女が殺してしまいそうになった彼女はきっと──マスターの伴侶なのだと!
だからマスターがその伴侶を助けたいと言うのであれば、その願いには理解を示すのだった。
フランちゃんはマスターを気遣いできる良いサーヴァントなのです。
「お、お前……俺のパソコンの電源切ったのか!? コンセント直抜きで!? うわぁ何やってんだお前──!!!」
「ゥ……?」
戦闘前、電気の無駄遣いをしていた機械の電源を省エネのために落とすことができるくらいには。