アーサー王(史実)がしたこと   作:妄想壁の崩壊

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カルデアでしたこと【おまけⅣ】

 

 

『アーサー様、できません。私はもう、あなたと床を共にするのは、嫌です』

 

白亜の城キャメロット。そこにある最も天上に近き玉座に座るのはブリテンの赤き竜の化身、アーサー・ペンドラゴン。

 

「はぁ」

 

彼は玉座の上で昨晩のことを思い出してため息をついた。

 

「王よ、いかがなさいましたか?」

 

「なんでもない、報告を続けろ」

 

「は!」

 

配下からの報告を聞きながら、アーサーは思考する。王妃たるギネヴィアが大事な務め、すなわち夫婦の共同作業を拒否したことについて。

 

王妃の役割とは王と己の本家を繋ぎ止めること、王を精神的に支えること、王の外交を補助することなど多岐に渡るが、その中でも一番大切なことは次代の王の母となることである。これがなければ王朝は断絶し、神から賜りし正統なる王権の継承が不可能になってしまうからだ。

 

統治に必要なのは武力も政治力もそうだが、何よりも求心力、すなわち正統性だ。王の嫡子が国を継がないとなれば国の崩壊は必須である。故に、ギネヴィアはその任務を大義のために全うしなければならなかったのだ。

 

「やはり耕作量は減少の一途を辿っており……あの、聞いておられますか、陛下?」

 

「聞いている。……この冬は大陸からの輸入と漁で凌ぐしかないな。北海は鰊の宝庫と言うが、さてこの時代にその恩恵を授かれるかどうか」

 

「鰊、ですか?」

 

北大西洋海流によってはるか西から栄養豊富な海水が流れ込む北海は極めて良好な漁場である。だからこそアーサーも対岸のスカンディナヴィアを征服して北海をログレスの内海にしたかったのだが、あいにく抑止力がそれを許さなかった。

 

「鰊は美味いし、何より畑に撒けば肥料になる。海の神秘がブリテンの衰退を和らげてくれることを祈るばかりだが」

 

「???」

 

「すまない、こちらの話だ。報告ご苦労、下がれ」

 

「は!」

 

配下の騎士を下がらせると、アーサーは瞳を閉じ、顎に手を当てて再び深く思考する。

 

ギネヴィアがアーサーとの行為を拒否したのは、ランスロットと出会ったことが原因だろう。

 

目麗しい異国の騎士に彼女は目を奪われたのだ。アーサーとてそのような未来があるとは当然分かっていたが、せめて嫡子を産んでくれるならばその不貞も見逃そうと思っていた。だが、どうやらこの世界では彼の子供が生まれることはないらしい。

 

無理やり種を仕込む、ということもアーサーは考えたが、それはやめた。アーサーは婦人にそのような暴力的な行為をするタイプではないし、何よりそのように女性の性を弄ぶようなやり方は彼が嫌うマーリンのやり方のソレだったから。

 

「はぁ、僕では彼女の心を繋ぎ止めることができなかったか」

 

アーサーは己の責ではないかと思い悩む。

 

「男として魅力がないことは複雑ではあるが……」

 

背に腹は代えられないとばかりに、アーサーは玉座から立ち上がった。この国どころかおそらく人類史を見渡してもこれほどの男女の関係の達人はいないだろうと思える夢魔、マーリンの助言を得るために。

 

「ギネヴィアに夜の務めを拒否されただって!? くっくくく……あっははは! アーサー、君ってやつは!」

 

「笑うことはないだろう、マーリン。切実な悩みなんだ。君の勧めで彼女と婚姻契約を結んだが、さて離縁するべきか、無理やりにでも子を産んでもらうか。……離縁したとしても、次の結婚生活が上手くいく保証はないし」

 

腹を抱えて笑い転げる女の姿をしたマーリンに眉を顰めるアーサー。

 

「あー、笑った笑った。で? 解決策を私に聞きに来たわけだね? この()に」

 

ひとしきり笑い終えたマーリンは立ち上がり、目尻に溜まった涙を拭うとその口をニマリと歪ませて言った。

 

「その解決策はとても単純明快、そして簡単だ。君はただ技術を身につければ良い」

 

「技術……?」

 

腑に落ちない様子のアーサーにマーリンがにじり寄る。彼女は淫靡な笑みを浮かべて、鮮やかな舌を“んべっ……”と出すと。

 

「そう、技術。東の方では房中術? とも言うらしいね。つまりは、女の子を悦ばせる技術ってヤツさ。では失礼……」

 

「な! マーリン……ッ!?」

 

その舌を、アーサーの口へ滑り込ませた。次の瞬間、彼の喉をどろりとした何かが通る。

 

「……!? ……! ごほっ……ごほっ……な、何を、僕に何を飲ませた!?」

 

突然のことでアーサーは動揺し、思わずマーリンから口移しに渡されたモノを喉を鳴らして飲み込んでしまう。

 

体が燃えるように熱くなり、肉体が変質する。立っていられなくなり床に倒れたアーサーを見下ろしながら、マーリンは言った。

 

「学習とは体験だ。君にはこれからこの世全ての快楽を教えて上げよう、アーサー。いや、アルトリア……とでも呼んであげようかな?」

 

「……」

 

「いきなり男相手は厳しいだろうから、まずは女の子同士で、次は生やして、最後に……ふふ、あはは! 大丈夫だよ、アルトリア。三日後には君は最高の色男に戻ってるさ……ね?」

 

それから彼は三日三晩、筆舌に尽くしがたい日々を過ごした。

 

男に戻った時に自我とアイデンティティを保持するために、無意識の防衛本能で全てを忘れるくらい、淫らな日々を。

 

 

 

 

「最悪の夢見だ……」

 

彼、否、彼女に割り当てたマイルームのベッドから、女になってしまったアーサー・オルタが体を起こす。

 

「肉体がまた、女に戻ってしまったからか……?」

 

一糸纏わぬその白磁の肌に、魘された夜の証である汗を滲ませながら。

 

「水を、浴びるか……」

 

 

 

 

「ねぇ、聞いてるアーサー・オルタ?」

 

「……ん、あ、ああ、聞いている。マスター」

 

食堂で談笑する一同。心ここにあらずといった様子で、立香の質問にそう返した。

 

「それで、何がだ?」

 

「やっぱり聞いてないじゃん。だから、アーサー・オルタ的には円卓の皆をどう思ってるのって話」

 

「その質問は……死人が出ないか?」

 

「ここだけ、ここだけの話だから。ほら円卓鯖は今誰もいないし」

 

内緒話をするかのように、立香は身を乗り出して反対側の席にいるアーサー・オルタの耳に囁く。

 

「あの、先輩。私も一応その円卓鯖の一員なのですが」

 

「私も一応円卓枠ね、まぁ、この女が自分のことを円卓の一員と捉えていたかは微妙なところだけれど」

 

「あ」

 

立香とともに食卓を囲んでいたメンバー。マシュと愛歌が声を上げた。

 

マシュ・キリエライト、円卓の呪われた災厄の席、第十三の席に座った騎士ギャラハッドの霊基を宿したデミ・サーヴァント。

 

沙条愛歌、召喚に際しアーサー王の妻、王妃ギネヴィアの霊基を強奪した疑似サーヴァント。

 

その二人の持つ霊基は間違いなく円卓の一員であった。

 

「まぁ本人じゃないし良いでしょ。ね、教えて教えて?」

 

「断る」

 

「良いじゃん、そろそろアーサー・オルタのこと聞かせてよ。他のみんなと違って生前の話全然聞かせてくれないじゃん」

 

「今さらオレの話など聞いてどうする。他にもアーサー王は山ほどいるだろう、オレの辿った道などほとんど彼らと同じだ」

 

「いや絶対違うでしょ!? 少なくともモーさんは他のアーサー王にはあんな懐いてないし、ヴィヴィアンと愛歌とネロ・オルタとの関係だってないじゃん」

 

鋭い指摘にアーサー・オルタが“うっ……”と声を出して呻いた。彼、あるいは彼女がカルデアに来てもう数カ月が経つ。そろそろ秘密にするのは限界かもしれない。

 

「ドライグよ、もはや今際の際であろう。おとなしくそなたとの運命の出会いを余に語らせよ。余もいい加減我慢の限界である」

 

恋愛自慢をしたいのに箝口令を敷かれていたドラコーが、もう我慢ならんとパンを頬張りながら言う。

 

「ふふ、では私が代わりに話してあげましょうか。我が従僕、実はアルは湖の騎士と自分の妻のことが死ぬほど──」

 

「黙れ、姉上。……分かった、話す。話すが!」

 

アーサー・オルタが時計を指差して言った。

 

「そろそろ周回の時間だ、マスター。貴様らがそれを終えて帰ってきたときに、オレは口を開くとしよう」

 

「えー、じゃあ約束だからね。ほら、行こう。ヴィヴィアンと愛歌とネロ・オルタ」

 

立香が席を立ち上がり、アーサー・オルタラブ勢の三人娘を連れて管制室へと向かった。その様子を見届けたアーサー・オルタは“ほっ……”と一息つく。

 

が、その平穏を乱す存在が三人。

 

「先輩が行ってしまいましたね。……それでアーサー・オルタさん。先ほどの話の続きを私に聞かせてください! お父さ……ランスロット卿とギネヴィア妃について!」

 

「マ、マシュ?」

 

「興味深い話をしていますね、どうか私たちにも聞かせて欲しい」

 

「異なる私が円卓の皆とどのような経験をしたのか、とても気になるね。特に、モードレッド卿との関わりとか」

 

「アルトリアにアーサー、貴様ら……さては出歯亀していたな?」

 

食卓に取り残されたマシュが、食事の乗ったトレイを机に置いたアルトリアとアーサーがにこやかな笑顔でアーサー・オルタに語りかける。

 

「ぐぬぬ……はぁ、まぁ良いか。そこまで違いがあるとも思えないが、話すとしよう。ではまず前提を言うが、オレはアーサー王における一つの可能性。アーサー王が『 』に接続していたらという可能性の存在だ」

 

周囲から聞き耳を立てられていることに気が付きながらも、しぶしぶ口を開いた。

 

彼がしたことについて話すために。

 

 

 

 

「ずばり、アーサー王にとって最も頼りになった相手とは!」

 

アーサー・オルタが己の半生のほとんどを語り終えた頃、白熱したようにマシュが告げた。

 

「やはりランスロット卿でしょう、実力においては中天のガウェイン卿に匹敵する円卓最強。実に、実に頼りになる友にして騎士でした。私に代わってギネヴィアの心を慰めてくれましたし」

 

「それを言うならまさしくガウェイン卿こそ挙げるべきじゃないかな。いや、それともトリスタン卿か? 彼もまた抜きん出た実力の持ち主、弓術においては円卓一を誇った驚異の射手だ」

 

饒舌に口を動かすアルトリアとアーサー。そして彼らはアーサー・オルタの方を向き。

 

あなた()はどう思うのですか?」

 

()はどう思う?」

 

と言った。二組の碧眼がアーサー・オルタを見る。

 

「……オレはその中でならガウェイン卿を推そう。彼が聖剣の光を継いでくれなければ、オレはローマに敗北していただろうからな。太陽の騎士の名に相応しい人だ、アレは」

 

少し離れた席で、太陽の騎士がガッツポーズを上げた。

 

「しかしトリスタン卿も捨てがたいな。生前は貴様らの世界とほとんど同じ末路を辿ったが……死後にサーヴァントとして私の道を助けてくれた。途中退職したが死んでなお忠義を尽くす、そんな彼もまたオレにとっての愛すべき騎士だろう」

 

少し離れた席で、“ポロロン”と弦を弾く音が鳴った。

 

「ランスロット卿は……オレと隣で数多の敵を薙ぎ倒してくれた(王の隣に立つとか求心力が割れるだろうが)晩年は剣を交えたが(妻を寝取りやがって)……ああ、好きだとも(どこかで死んで欲しかった)オレはランスロット卿が好きだ(私はランスロット卿が嫌いだ)

 

少し離れた席で失笑が起きた。“ぶっははは──!”と笑う青年の声と、“あっははは──!”と笑う少女の声が食堂に響き渡る。

 

「あれは、オベロンさんとアルトリア・キャスターさんの声ですね。なぜあんなに笑っているのでしょうか」

 

分からないが、きっと知らない方が幸せなこともある。

 

「と、ところで。ギャラハッドさんはどうだったのですか? あと“モードレッドのことはどう思うか”……はい、だそうです」

 

マシュは自分の内に宿る英霊と、アーサー・オルタの背後でデカデカとカンペを掲げたモードレッドの想いを代弁した。

 

アルトリアとアーサーはそれぞれ想いを述べる。ギャラハッドに対しては、自分の命でブリテンを救うために聖杯探索に出てもらい、そのうえ昇天させてしまって申し訳ないと。モードレッドに対しては、身に覚えのない息子なので微妙な想いを抱きつつも、生前の扱いは大人気なかったと。

 

一方のアーサー・オルタは。

 

「聖杯探索か。正直オレは乗り気では無かったのだが、あのご主人さ……んん!」

 

今朝見た記憶に引きずられてか、とんでもないことを言いそうになったアーサー・オルタが喉を鳴らし、続ける。

 

「失礼、あのカスの宮廷魔術師が存在を言いふらしてな。回収する他なくなってしまったから、ギャラハッド卿に頼んだんだ。うん、まぁ、やっぱりと言うか昇天してしまった。彼の離脱は円卓にとって痛手だったな」

 

アルトリアとアーサーが“あぁ、マーリンならやるな”と同情するような目で頷き、マシュが“内なるギャラハッドさんが凹んでいる……?”と困惑した。

 

「で、モードレッド卿か。彼は……本来円卓にいるべきではなかったのだと思う」

 

「「……えっ?」」

 

「モードレッドさんはあんなに懐いてるのに、アーサー・オルタさんはそんな風に思ってたんですか!?」

 

てっきり高評価が出るかと思えば、思ったよりも辛口な言葉が飛び出してきたので三人が驚く。それから遠くの席にいる叛逆の騎士は泣いた。

 

「最後まで聞け。オレが思うに、モードレッド卿の本質は騎士ではなく子どもだろう。本来ならば親元で過ごし、円卓に庇護される側の存在だったはずだ。……だから、庇護してくれる親が最初からなかった彼が、剣を取って血で血を洗う円卓の騎士となってしまったことを、オレはあまり喜べない」

 

三人は“そういうことか”と改めて納得し、そしてやっぱり遠くの席にいる叛逆の騎士は泣いた。

 

「だから貴様らも、アレを邪険にせず向き合ってやれ。せっかくこうして死後に語り合う機会が与えられたのだから」

 

“ぢぢうぇ……ぐすっ……ずびっ……オレはぁ……!”と、遠くから聞こえてくる嗚咽がさらに大きくなった。

 

「と、話がそれたな。たしか円卓の中で最も頼りになる存在、だったか。……バカが、そんなものどんなアーサー王だろうと決まっている」

 

“ダンッ!”と彼は机に湯呑みを置くと、力強く宣言した。

 

養父上(ちちうえ)のエクター卿と義兄上(あにうえ)のケイ卿を置いて他にいるまい! まったく、誰がオレたちを育ててくれたと思っている!」

 

アーサー・オルタが“親不孝者どもめ!”と一喝すると、アルトリアとアーサーは“いや、二人は殿堂入りみたいなもので……”としどろもどろに言い訳し始める。さすがにこの結論には、周囲で耳をすましている円卓のメンバーたちも納得せざるを得まい。

 

だが、約二人、納得できないものがいたらしい。

 

「育ての親か、ならば私たちはどうなるのかな?」

 

「私たちは君の母親代わりみたいなものだろう? それなのに名前も出ないなんて悲しいなぁ」

 

「「うわ、マーリン」」

 

にこやかな笑顔とともに現れたのは二人、あるいは二匹の夢魔。それぞれアルトリアとアーサーを育てたキングメイカー。マーリン(♂)とマーリン(♀)であった。

 

「それとも、君のところのマーリンは違うのかい?」

 

「どうなんだい、アーサー。いや、その姿のときはアルトリアと呼んだほうが良いかな?」

 

二人の手がアーサー・オルタの肩に触れ、漂わせる花の香りが鼻腔をくすぐり、男性と女性の、それぞれの騎士王と入れ替わったような美しい声が鼓膜を揺らす。

 

そして次の瞬間、彼女は(・・・)体が覚えていた感覚を思い出した。(はら)の内側の深いところから熱が昇ってきて、それによって顔が紅潮し、目はとろんと蕩け、喉がひくついた。

 

アーサー・オルタは先ほどまでの暴君然とした、終末の竜然とした表情をかなぐり捨て、まるで恋する乙女のように上擦った声で二人のことをこう呼んだ。

 

「あ……♡ ご主人……様……♡」

 

空気が、凍った。

 

まるで食堂全体の時間が停止したかのような一瞬の後に、“……はっ!”と正気を取り戻したアーサー・オルタは頭を机に打ちつける。

 

「は?」

 

「へ?」

 

「あ、アーサー・オルタさん!?」

 

「「今なんと言いましたか!?」」

 

「違う! 違う、オレは違う……オレは男だ……決して屈してなどない……うぅ……ぁぁぁあ……」

 

どこか遠くを見つめて狂乱するアーサー・オルタの肩をマシュが“落ち着いてください!”と必死に押さえる。

 

「何を、この夢魔に何をされたのですかあなたは!」

 

「オルタの私、話してくれ! 事と次第によっては聖剣沙汰だ!」

 

「うぅ……ご主人様……嫌って言ったのに……やめてくれなくて……お、オレを、僕を、私を女にしてぇ……ぐすっ……」

 

マシュの胸の中に顔を埋め子どものように泣きじゃくるアーサー・オルタ。その様子にすべてを察した二人の騎士王は、錆びついた扉が開くように“ぎぎぎ……”と後ろを振り返った。

 

「さてマーリン(女の敵)、申し開きはありますか?」

 

マーリン(ゴミグズ)、説明してもらっても構わないね?」

 

「はぁ!? い、いや、私がアルトリアに手を出すわけがないだろう!?」

 

「お、同じく同じく! アーサーは私にとって子どもみたいなものなんだからさぁ!?」

 

「……でも、ギネヴィアに不倫されたって相談したら、女の悦びを教えてあげるって言われて……されたもん……」

 

「「節操なしかいそっちの私は!?」」

 

「だ、そうです。アーサー王のお二人。結論をお願いします」

 

「「有罪」」

 

二つの星の聖剣が光を宿し始める。そしてこれはまずいとばかりに二人の罪人が食堂から逃げようとしたそのとき。

 

「どこに行くのですか、二人とも」

 

フォウフォーウ(今回は本当に死すべきフォウ)……」

 

そこには姿を変えたキャストリア、すなわちアルトリア・アヴァロンが聖剣を携えて、満面の笑みで立っていた。肩にカルデアのマスコットを乗せて。

 

「では、よろしいですね──首を出しなさい」

 

「「それ君のセリフじゃないで──がふっ!?」」

 

かくして、悪は倒されたのである。……具体的にはマスターの許しが出るまでお仕置き部屋行きとなった。

 

「ただいまー! あれ、何この空気……?」

 

「アル、お前の妻が帰ってきましたよ。……な、何故泣いているのですか!」

 

「誰? 私のセイバーを泣かせたのはどこのどなた? 素直に言ってくれれば万死で許してあげるわ」

 

「どうせあの星の獣(マーリン)めが悪いのであろう。どれ、余がさくっと喰ろうてやろうではないか。余のドライグを泣かせて良いのは余だけであるゆえな」

 

なお箝口令が出たので、マスターと特大の地雷原である三人にはそのことは知らされなかった。

 

「え、マーリンいないの? 次の周回の約束したのに。おーい、マーリ──マーリン!?」

 

そう言って廊下を歩き回っていた立香がプロメテウスの炉に焚べられて黒焦げになったマーリンの二人を見つけるまで、彼らのお仕置きは続くのだった。アーサー・オルタに手を出したの、その二人じゃないのに。でも全然可哀想じゃないのが不思議だね。

 

 

 

 

たが! それで終わることを許さないのが魑魅魍魎集うカルデアであった!

 

己の欲を満たしたい愉悦部が! カルデアに混沌を齎したい悪人たちが! アーサー・オルタのメス堕ちが見たいビーストⅢが影で動き出す!

 

「こんにちはお兄さん、いや、お姉さんと呼んだ方が良いですか?」

 

「貴様は……若き英雄王か。オレに何の用だ」

 

「最近眠れずに困ってるみたいですね。どうでしょう? 大人の僕に任せてくれれば、その霊基に刻まれた辛い記憶を忘れさせてくれるみたいですよ?」

 

「なに──?」

 

かくして、藁にもすがる思いでギルくんの手を取ってしまったアーサー・オルタ。

 

そしてその翌日、彼女は自室から姿を消した。

 

一通のビデオレターを残して。

 

 

 

 

『ふははははは──! 見ておるか、雑種どもよ! 貴様らの愛しの此奴は今、我の隣にいる!』

 

高笑いする英雄王、彼の座る玉座のすぐ隣には純白のウェディングドレスを着たアーサー・オルタが座っていた。

 

『むーっ! むーっ!』

 

目隠しと耳栓と口封じをされたアーサー・オルタが藻掻いている。

 

『ふ、せいぜい足掻くが良い雑種ども。死に物狂いで奪いに来なければそうよなぁ……蔵に入れる前に味見をしてくれようか。くく、我の上で女となって喘ぐ此奴の姿はさぞ壮観であろうなぁ? あぁ、だがセイバーめと交換という話であれば、それは受けてやらんでもないぞ、雑種ども』

 

「誰が貴様のモノになぞなるか、英雄王! この卑劣漢め!」

 

アルトリアがテレビの前でキレた。聖剣を抜いて画面をぶった切ろうとするので、アーサーが羽交い締めにしてそれを止める。

 

『いや、むしろ両方とも我のモノにしてやろう。ふはは、我は天才か!? 両手に花ならぬ鞘王と剣王! それこそ我が歩む花道に相応しかろう! ふはははは──! ではな雑種ども──っ!』

 

そこでビデオは終了した。

 

「以上が、アーサー・オルタさんを奪い、聖杯を使って特異点を生成したギルガメッシュ王からのメッセージです」

 

そう言ってDVDプレイヤーからディスクを抜き出すマシュ。そして次の瞬間、立香は叫んだ。

 

「寝取られビデオじゃんこれぇ!?」

 

“やっほー、雑種ども見てるー? 今から貴様らの愛しのアーサー・オルタと〇〇しちゃいまーす!”……うん、言ってる内容は確かに寝取られビデオのそれである。

 

「アルは昔修行と称してマーリンから調教を受けていた? そしてそのことが原因で不眠症になったのを解消しようとして英雄王の手を取った? それで英雄王は自分で上書きすることによってマーリンを忘れさせようとしてる、だと!? なんなのですかぁ!? 脳が……脳が壊れてしまいます……ッ!」

 

「嫌よセイバー! あんな金ピカのモノになんてなっちゃダメ! あなたが女の子になったから、私も男の子になろうかとか密かに考えてたのに! 全部台無しよ!」

 

「騎手よ、マスターよ、何をボサッとしておるか、ええいさっさとレイシフトの準備をせよ! それと敵にはビーストもおるのだろう? 余と男女の聖剣使いとあともうなんか色々連れて行け! 円卓の者どもも皆殺気立っておろう!」

 

かくして、英雄王主催による謎イベントが開催され、今日も今日とてカルデアは人理修復のために働くのでした。

 

こんなことで危機に瀕する人理って何なんだろうね……?

 









おまけもこれで終わりです。需要あるか分かりませんがアポクリファかゼロ・ステイナイトか他のやつの二次を書く気になったらまたここに戻ってきます。感想評価貰えると嬉しいです。またね。

読者の皆様は蒼銀のフラグメンツを

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