アーサー王(史実)がしたこと   作:妄想壁の崩壊

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Apocryphaでしたこと【21】

 

 

『虚栄の空中庭園』、その中央下部に位置する逆さの塔。

 

大聖杯が鎮座する最奥の祭壇にて、唯一転移の光から取り残された二人のサーヴァントが対峙していた。

 

「天草四郎時貞。私はルーラーとして、貴方に問わねばなりません」

 

昏い情念を湛える大聖杯を見据え、救国の聖女──ジャンヌ・ダルクの聖旗が、戦火なき風に激しく靡く。

 

「ことここに至っては、もはや互いに刃を交える他ないと知りながら、ですか?」

 

大聖杯の輝きを背に受けた天草四郎時貞──シロウ・コトミネは、酷く穏やかな笑みを浮かべたまま、その両手に黒鍵を構えた。

 

一触即発。極限まで張り詰めた静寂の中、ルーラーは毅然と口を開く。

 

「貴方は本当に……世界中のすべての人間に対して、第三魔法を行使しようというのですか」

 

その問いに、シロウは一瞬だけ意外そうに瞬きをした。だが、すぐにその貌に聖者の如き慈愛を浮かべる。

 

「おや、気付いておられましたか。その通りです、ルーラー。大聖杯は私の手で起動され、あまねく人々に等しく奇跡を授ける。不老不死──魂の物質化によって、人類は争いも、飢餓も、病魔も、そして死すらも超越して次の段階へと至るのです。もし賛同していただけるのなら、どうかその旗を収めていただきたいのですが」

 

「──おふざけに、ならないでください!」

 

ジャンヌは眉を顰め、拒絶の意思を示すように聖旗の鋒先をまっすぐシロウへと向けた。

 

「その変質を、容認するわけにはいきません。苦痛をなくすために生命の営みを止めるなど、その先にある存在は、もはや人類とは呼べない!」

 

「ええ、そうでしょうね。ですが、それに何か問題が? 現行の人類という枠組みを超えることに、一体何の瑕疵があるというのですか」

 

「……っ、貴方は! 人々が意思を持たぬ植物のような存在になっても構わないと言うのですか! 普遍化した神秘は輝きを失い、やがて(ほつ)れて消える。全人類への第三魔法の行使は、不完全な、ただの停滞(おわり)をもたらす可能性すらある。その危うさを、知らぬ貴方ではないはずです!」

 

「そうなるかもしれない。あるいは、ならないかもしれない」

 

シロウの声音には、一切の揺らぎがなかった。

 

「だが少なくとも、そこは人類が何千年も夢見ながら、ついに辿り着けなかった争いのない世界だ。私を説得しようとするのは無駄ですよ、ジャンヌ・ダルク。私は理想の実現のために、あらゆる疑念を捨て去った。ただ前へ進むと、あの日に決めたのだから」

 

地獄を見た。

 

すべてが焼かれ、灰となり、無為に生命が消費されていく島原の地。その果てに、天草四郎時貞という奇跡は死んだ(生まれた)

 

そして現代に肉体を得て蘇り……彼はまた、より巨大な地獄を見た。

 

生前と何ら変わらぬ、人間の業。欲と欲が戦争を呼び、全世界を巻き込んで、かつて己が引き起こした乱など比較にもならない夥しい量の死を生み出してもなお、人間は成長しなかった。その本質は、一歩も進んでなどいない。

 

ならば、誰かがやらねばなるまい。

 

この災禍の螺旋から、人類を強制的に解き放たねばならない。そのための第三魔法、そのための大聖杯だ。

 

もう二度と、この世にあの地獄を顕現させないために。この世すべての善の実現を。

 

「……っ、ならば星は! この地球がどうなっても良いと言うのですか! 大聖杯が地球の霊脈を吸い尽くしてしまえば、この星は死の星と化す。枯れ果てた大地の上に、理想郷など築けると──?」

 

「築けるさ、築いてみせる! 不老不死を実現した人類は、もはや星の資源(リソース)を食い潰さずとも生きていける、自己完結した精神体となるのだから!」

 

「そこに、私たち人類が血を流してまで目指した、愛すべき幸福(けしき)はありません──!」

 

「いいや、そここそが、私たちが血を流し尽くしてようやく辿り着く、完全なる平和(みらい)だ──!」

 

交わされる言葉は、どこまで行っても平行線。

 

もはや対話などただの感傷に過ぎない。二人の激突が引き起こす衝撃波によって崩壊していく祭壇の間が、その残酷な事実を証明していた。

 

大聖杯から無数に這い出る、白い使い魔の剛腕が聖旗へと叩きつけられる。

 

防戦に追い込まれながらも、ジャンヌの瞳に決死の光が宿った。

 

「……ならば、貴方をここで討つしかない。『紅蓮の聖女(ラ・ピュセル)』を使ってでも──ッ!」

 

それは、彼女が持つ第二宝具。魔女として火炙りにされた彼女の逸話が昇華された、概念結晶。

 

フランスを救うために戦い、同時に同じ人間を殺め続けた己の罪を焼かんとする、彼女の心象風景そのもの。解放すれば、その絶大なる業火がすべてを灰燼に帰す。

 

だが──それを使ってしまえば最期、ルーラーはその身を再び神へと捧げ、消滅することになる。

 

その覚悟に、いささかの迷いもあってはならない。そのはずなのに。

 

「ジーク、くん……!」

 

彼女の唇から、無意識にその名が零れ落ちた。

 

どうして最期の瞬間に、彼の名を呼んでしまったのか、自分でも分からない。

 

けれど、確かな奇跡がそこに起きた。その祈るような声は、暗闇を切り裂いて、しかと彼に届いたのだ。

 

「──『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』ッ!!」

 

凄絶な真名解放と共に、黄昏の魔力の奔流がシロウを襲う。爆風が祭壇の床を吹き飛ばし、白い使い魔たちを一瞬で霧散させた。

 

「すまない、遅くなった」

 

ジャンヌの視界に飛び込んできたのは、重厚な鎧を身に纏った青年の大きな背中。

 

その肉体はかつて人類を救った大英雄──黒のセイバーのものでありながら、振り返って見せた優しく不器用な微笑みは、彼女が名を呼んだホムンクルスの少年のものだった。

 

「……体は、大丈夫なのですか?」

 

「問題ない。君がくれた令呪が、まだ二画残っている。すべてを使い切るその時までは、俺は明日を生きることができるさ」

 

「……はい。それは良かったです、本当に」

 

一瞬だけ交わされる、安堵の微笑み。だが、巻き上がる土煙の奥から、傷一つ負わずにシロウ・コトミネが姿を現すと、二人の表情は再び険しく引き締まった。

 

「黒のセイバー──ジークフリートの心臓を継承したホムンクルス、ですね。貴方は何故私の邪魔をするのですか? 人に作られた、短命ながらも完璧な命。そして今の貴方は、その短命さすら克服しつつあるはずだ。なのに何故、わざわざ死地に赴く。そこのルーラーに誑かされでもしましたか?」

 

微かな皮肉を混ぜたシロウの問いかけに、ジャンヌは一瞬だけ顔を赤く染める。

 

だが、隣に立つジークは、大英雄の剣を正眼に構えたまま、至って静かに、しかし毅然と答えた。

 

「俺が生きたいと願った明日に、第三魔法なんてものは必要ないからだ」

 

「……何?」

 

「共に歩みたいと願った仲間たちがいる。互いに言葉を交わし、時に笑い合い、悲しみを分かち合いたいと思った人たちがいる。傷つき、間違えるかもしれない。それでも前へ進むために俺は──たった一人で完結して生きる世界なんて、絶対に望まない」

 

どこまでも交わらぬ、二つの正義。

 

ならばやはり、力をもって証明する他ないのだろう。

 

「ならば私はこの力をもって、お前たちの『明日』を否定するまで──ッ!」

 

かつて奇跡を成したシロウの両腕を介し、彼の周囲に大聖杯の魔力が渦巻く。

 

ジークは大剣を握り直し、隣の聖女へと視線を送った。

 

「ルーラー、一緒に行こう。二人なら、きっと天草四郎を超えられる」

 

「ええ──我が聖旗にかけて。貴方には傷一つ、つけさせはしないと誓いましょう!」

 

大聖杯の御前にて。

 

それぞれが信じる人類の救済と人間の未来が、激しく激突した。

 

 

 

 

上下に長く伸びた大理石の柱を足場に、女狩人が獣の如き敏捷さで縦横無尽に跳躍する。

 

「うーん、すばしっこいなぁ。ねぇ、ヒポグリフ、追いつけそう?」

 

黒のライダー(アストルフォ)は己の愛馬……愛馬? ともかく相棒にして宝具たる『この世ならざる幻馬(ヒポグリフ)』の首筋をぽんぽんと叩いた。

 

すると“任せろ!”と言わんばかりにふんすと鼻を鳴らすので、ライダーは“よしよし、ならばいっちょ行ってみよう!”と相棒の腹を蹴る。

 

そして次の瞬間──ライダーを乗せたヒポグリフは勢い良く巨柱へと正面衝突した。

 

「痛た……ちょっと! もう少し小回り利かせてよ! いきなり衝突事故なんてあんまりじゃないか!」

 

“ぶーぶー”と文句を垂れる主を背に乗せながら、“いや、無茶言わないでくださいよ……”と言わんばかりにヒポグリフは小さく言い訳するような声で鳴く。

 

単純な直線速度で言えば、如何に俊足と呼ばれたギリシャの女狩人(アーチャー)だろうと騎兵(ライダー)には敵わない。歩兵では騎兵に敵わないのは歴史が証明している。だが空間機動力、という面で言えばアーチャーの圧勝だった。

 

結果としてライダーは直線的にしかアーチャーを追うことができず、片やアーチャーは右へ左へ上へ下へと自由自在。これでは追いつこうにも追いつけまい。いわばアキレスと亀の競走のようなものなのだから。

 

「もーっ、止まって止まって! 闇雲に追いかけたって追いつけっこないよ! ねー、聞いてる?」

 

テシテシと頭を叩く主を無視し、ヒポグリフはそのままアーチャーを追って二度、三度と柱に激突し続ける。

 

一方、追われる側であるアーチャーはその幻獣の狙いに早々に勘づいていた。

 

「あの幻獣、わざとやっているな……足場()を潰して、私から機動力を奪う気か……!」

 

「えっ、そうなの? そっか、そういうことか! そういうことならヨシ、もっとバンバン行っちゃえ!」

 

“あはは! レッツヒポグリフ、ゴーゴー!”と戦ってるのか、遊んでいるのか分からないライダーの声にアーチャーは神経を苛立たせる。理性が蒸発しているとは聞いていたが、戦闘IQそのものまで低下しているのかもしれない。

 

(落ち着け、(アタランテ)。狩人たるもの常に冷静であるべし。……足場の数が減る以上持久戦は不利か。ならば──ッ!)

 

そしてライダーが目で追うのもやっとな速度で宙を駆けるアーチャーは逃亡から一転、攻勢に出た。彼女はヒポグリフによって砕かれる数秒前の柱を蹴って宙へ躍り出ると、およそ常人には不可能だろう体勢で弓を引き絞る。

 

そしてその直後“ギィン!”と弓がしなり、風を裂く一矢が敵の喉元を貫かんと放たれた。

 

「あ、やば──!」

 

だが、その矢はライダーのお喋りな口を縫い付けることはなく。

 

「無事ですか、ライダー」

 

「ケイローン! 助かったよ、ありがとう!」

 

そう言って割り込んだのはライダーの援軍、黒のアーチャー(ケイローン)。彼の放った一射が、アタランテの矢を空中で完璧に撃ち落としたのだ。

 

互いに向かい合った状態で放たれた矢を相殺するならまだしも、真横から飛び込んできた矢の軌道に対し、垂直に矢をぶつけて弾くなど至難の業。

 

それはまさしく、射手座と呼ばれるに相応しき神業であった。

 

『マスター、ライダーと合流しました。そのまま赤のアーチャーとの交戦に入ります』

 

『了解しました。位置的にはそこは私がいる場所と真反対でしょうか……直接援護はできそうにありませんが、令呪で援護させていただきますので視界共有はそのままに!』

 

『了解です』

 

アーチャーはマスター(フィオレ)との念話を簡潔に終わらせると、そのままライダーを援護するべく弓を構える。ごく自然(ナチュラル)に真名を暴露したこの頭髪どころか頭の中までピンク色の阿呆を叱るのは、もう少し後にすることにした。

 

「アーチャーが来たら百人力だ。もう勝ったも同然だもんね、降参するなら今のうちだよ!」

 

「舐めるな、黒のライダー──ッ!」

 

煽っているのか、それとも本心でそう言っているのか。ライダーのその無邪気な言葉が赤のアーチャーの神経を逆撫でする。

 

彼女は挑発と受け取ったらしい。ならばその傲慢ごと射ち抜いてやろうと、番えた一矢に呪詛にも似た(みことのり)を込めて解き放つ。

 

太陽神(アポロン)月女神(アルテミス)の加護よあれ。眼前の敵に厄災を──『訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)』ッ!」

 

天に向けて放たれた矢は、空中要塞の重厚な天井を容易く穿ち、巨大な風穴を空けた。そして、剥き出しとなった穴の向こう側──昏い夜空から、雨霰の如き光の矢弾が降り注ぐ。

 

それは点を穿つ弓矢が本来放つことはない面攻撃。彼女の正面に存在する全ての空間を無差別に射る大軍宝具だ。これを防ぐには、同じく面で防御する他ない。

 

二人のうち、黒のアーチャーにはそのような広域防御の技は備わっていなかった。彼もまた弓兵、点であれば縫い針の穴さえ射抜いてみせる。しかし赤のアーチャーのように大軍を同時に射抜くことは専門外である。彼は戦場を駆けた英霊ではなく、知恵と技で数多の英雄を導いた教師としての英霊なのだから。

 

故に、それに対処するのはライダーの役割である。

 

「──『恐慌呼び起こせし魔笛(ラ・ブラック・ルナ)』!」

 

ライダーが身の丈ほどの大きさの角笛を取り出し、頬を限界まで膨らませて息を吹き込んだ。瞬間、鼓膜が破れそうなほどけたたましい爆音とともにライダーを中心とした凄絶な衝撃波があたり一帯を襲う。

 

「なんだと……ッ!?」

 

そしてその光景を赤のアーチャーは驚愕とともに受け取った。

 

幾千万の矢が束になろうとも、それは魔力によって生み出された飛翔物に過ぎない。月世界の妖鳥を退散させた伝説を持つその角笛は、まさに飛翔物を一撃で叩き落とす特攻(・・・・・・・・・・・・・・)を持つ。

 

「“舐めるな”だって? そっちこそ舐めるなよ、アーチャー」

 

角笛を引っ込め、ヒポグリフに跨ったライダーは不敵に笑う。

 

「ボクはシャルルマーニュ十二勇士が一人、アストルフォ! 自他ともに認める弱小サーヴァントだけど──」

 

矢の雨は効かない。角笛で弾き飛ばしてしまえば良い。

 

足の速さなんて関係ない。ライダーの持つ槍は、触れた相手を強制的に転倒させてしまうのだから。

 

狙撃の名手? 大いに結構。どんどん撃つと良い。ただし現実と星の内海を行き来し、実体と虚数の狭間を泳ぐこのヒポグリフを捉えられたらの話だけど。

 

サーヴァントライダークラスの強みは、多数の宝具を持った対応力にある。それは決して万能ではなく、最優と呼ばれたセイバーのように相性の有利不利をひっくり返すほどの強さはないけれど。

 

「──少なくとも、君には勝てる!」

 

ハマった時の強さは、ピカイチなのだ。

 

半鷲半馬の幻獣を駆り、騎兵は狩人に猛然と肉薄する。巨柱の森を開拓し、確実に彼女という獣の住処(すみか)を奪っていく。

 

「それにね、君は致命的な間違いを犯した!」

 

「何……?」

 

まるで名探偵のように指を差し、決め台詞を決めるが如くライダーは宣う。

 

赤のアーチャーは思う。確かに、宝具は完封されたかもしれない。だが、それを間違いとまで言われる筋合いはない。少なくともアーチャーは宝具を放ったことで不利になったわけではないのだ。

 

このまま柱が完全になくなるまで耐え凌ぎ、折を見て、先ほど自ら開けた天井の穴から脱出すればいい。黒のアーチャーは精密な弓術の持ち主だが、自分ほどの機動力はなさそうだ。十分に撤退の打算はある。

 

だというのに、致命的な間違いだと──?

 

柱に張り付いたまま、強い疑念を抱きつつ赤のアーチャーは続く言葉を待った。

 

そしてその答えを告げるように、ライダーは指の先を天へと向ける。

 

「自分が宝具を撃つために派手に天井をぶち抜いちゃっただろう! おかげで君は、もう彼の射程圏内に入った!」

 

「……っ、まさか──!」

 

ハッと気づき、すかさず自身の頭上──遮るもののなくなった大穴の向こうの夜空を見上げるアタランテ。

 

その美しい瞳が夜空に浮かぶ星々、遥かなる宇宙(ソラ)、オリュンポスの神々が住まう天上の世界を映した、まさにその瞬間。

 

『令呪をもって命じます! 星を降らせて、アーチャー!』

 

今は離れたマスターからの、確かなるバックアップとともに。

 

天蠍一射(アンタレス・スナイプ)

 

とき既に遅し。音もなく、光もなく。天頂から降り注いだ星の光は、寸分の狂いもなく女狩人の眼球を射抜いていた。

 

「馬鹿な、いつの間に弓を……」

 

そう僅かな言葉を零しながら、赤のアーチャーの華奢な体が力なく大地に打ち付けられる。

 

「我が宝具は射手座そのもの。故にいつかと聞かれれば──3000年以上前からですよ、アタランテ」

 

「ははっ、そうか……流石はケイローン。あの悪童(ライダー)が先生と呼んで慕う賢者、か……」

 

“叶うならば、生前会ってみたかったものだ。多くの子らを英雄へと導いた汝に──”との言葉を最後に、アタランテの仮初の命は静かに光の粒子となって霧散した。

 

「やったね、アーチャー! そらそらハイタッチしよ──」

 

「ライダー」

 

うきうきと片手を上げたライダーに向けられたのは、にこやかな笑顔。しかしその裏に感じるドス黒いオーラにライダーは“あ、ありゃ?”一瞬身を竦ませる。

 

「え? もしかして怒ってる?」

 

「真名を軽々しく暴露するなど、あれほど言いましたよ。私は、あれほど!」

 

「ぎゃー、ごめん、ごめんって! 謝るからこめかみグリグリするのはやめてぇ!」

 

静まり返った空中要塞に、ライダーの情けない悲鳴が響き渡る。怒れる黒のアーチャーの姿は、奇しくもマスターたるフィオレが、不肖の弟を叱るときの姿にどこか酷似していた。

 

「そ、そんなことより次だよ次! のんびりしてたらボクのマスターも、他の人たちも死んじゃうかもしれないんだからさ!」

 

「……はぁ、続きはすべてを終えた後にしましょうか」

 

「続くの!?」

 

アーチャーは全く懲りた様子のないライダーに呆れつつ、まずはマスターと合流しようと念話を繋ぐのだった。

 

 

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