違和感のあるところ、変なところとかありましたらバンバン指摘してください。
今後の糧にしようと思います。
第1話 裏口を抜けた先は
<う… 私は…。>
<裏口に新しく発生した扉を調べようとして…。>
意識が少しづつ希釈されていく。
何処までも広がるような青一色に、染み入るように私の自我が、果てには体の輪郭さえもが混ざり、一体になっていくみたいだ。
<その扉を開けたとたんに皆が…。そして私も……>
抵抗もできず、状況把握もままならないまま…吸い込まれた。
吸い込まれる直前、一瞬だけ見えた扉の先は、それが都市の風景とは思えないほど綺麗で…。
澄んだ、青色をしていた。
その光景に想いをはせようとしたその時。
<…!?>
眼前の、私の周囲を満たしていた青は、一滴の墨を垂らしたがごとく、黒い点に覆われ、塗りつぶされていった。
その刹那、数多の光景と抱えきれない激情が、次々と私の脳裏に焼き付き、燃え尽きていく。
<この光景は…。まるで…。>
思考が結論を出すよりも先に、私の意識は再び溺れるように青に染まり…
ただ、当てもなく揺蕩っていく。
そうして「時間」という概念を忘れてしまうほど、この場に溶け込んでしまった私の意識の中に、ふと、
<あっ…。>
1つ。光が見えた。
今、囚人たちはいったいどうなっているのか。
そもそも全員無事に合流できるのだろうか。
まどろんだ私の意識が再びだんだんと形を成していく。そして――
「……ん、次の依頼なんだけど……。」
外界からかすかに聞こえたその声をきっかけに、私の意識が爆発的に覚醒していく。
<一緒に飲み込まれた囚人はどこ!?>
急速に引き戻される意識に呼応するように、がばり。と私は勢いよく身を起こす。
そうして開けた視界のなかに、デスクを挟んだ先で、座ったままこちらを見ている1人の少女の姿が目に入る。
<あれは……角……? それに後ろに天使の輪っかみたいなものが……。>
一種の強化施術だろうか、ヴェルギリウスやベスパが使っていた“望”に見た目は似ているんだけど……どこか違うような――
「起きたみたいだね!時計のおにーさん♪」
<うわあああああ!?>
「あははっ!いい反応してくれるじゃーん?」
思案に暮れる傍ら、死角から突然声をかけてきた白髪の少女に、思わず私は椅子から転げ落ちてしまった。
<ん…?椅子…?>
そういえばここはどこなんだろうか?
もちろんバスの中…ではなさそうだけど…。
「ちょっとムツキ。あまり初対面の人をからかわないで頂戴?」
「はいはーい♪おにーさん、ごめんね?」
そう言うと、“ムツキ”と呼ばれたその少女は
さっ、とその場を離れ、もう一人の少女のほうへと駆けていった。
「こほん。改めて、目を覚まして安心したわ。あなた、うちの事務所の前で倒れてたのよ?」
<あ…えっと…ありがとう?>
……
私が何か変なことを言っただろうか、数秒の静寂がその場に満ちる。そしてその後、彼女たちは何やら小声で話し始め、一通り話し終えるやいなや赤髪の少女は改めてこちらに向き直った。
「……まあいいわ。とりあえず自己紹介でもしようかしら。」
ふぅ。と息を整え、彼女はおもむろに話し始める。
「私は陸八魔アル、ここ、便利屋68で社長をしているわ。隣にいるのが室長のムツキで、そっちにいるのが平社員のハルカ、そしてもう一人、課長のカヨコがいるのだけど……今日はシャーレの当番で不在なのよね。」
そこでようやく私は、この部屋にはもう一人、別の少女がいたことに気が付いた。彼女はあまり私に興味がないのか、時折こちらを見ることはあっても、手元の花?への水やりを止める素振りはない。しかし――。
<便利屋……。便利屋かぁ……。>
あまり聞かない言い回しだけど、つまるところここはどこかの裏路地の
確かにフィクサーであれば、三人それぞれの後ろに浮かんでいる不思議な光輪、そしてさっきから異彩を放っている、都市でもなかなか見ないあの大型の銃や爆発物にも納得がいく…かもしれない。
でも見たところ、シンクレアなんかよりも若そうな彼女たちが、こんなに立派な事務所を構えてるだなんて、ちょっと信じられない。
「ところで……。そろそろあなたのお名前も聞かせてほしいのだけれど?」
<あっ、ごめん。私の名前はダンテで……。ってあれ?そういえば。>
彼女たちに私の話、ちゃんと伝わってる……?
「アルちゃんアルちゃん!あのお時計さんずっとカチコチ鳴ってて何だかおもしろいね~!」
……やっぱり駄目だったようだ。
――がちゃり。
「さ、さ、さっきから黙って聞いていれば…っ!アル様の話をいつまでも無視し続けるなんて…っ!無礼にもほどがあります…っ!許さない許さない許さない許さないっ!」
その物騒極まりない発言に目を丸くして、声のした方へと顔を向けると、さっきまでじょうろを手に持っていたはずの少女がこちらに銃を向け、今にも爆発しそうな殺意をこちらに向けている。
あまりの気迫に、私も思わず腰が抜けてしまう。
<ま、まって!これには事情があって!私も話したいのは山々なんだけど…とにかく銃を下ろしてくれないかな…!>
「ハルカ。銃を下ろしなさい。きっとこの人にも事情があるんでしょうし、何より――」
大事な事務所を滅茶苦茶にするつもり?とアルは彼女を窘めてくれた。
そうして我に返ったのか、そのハルカという少女は縮こまり、そのままぶつぶつと謝罪の言葉を唱え始めてしまった。
「でも、会話ができないのはちょっと困るわね……。うーん……。そうだわ、声で会話することはできなくても、筆談ならできるんじゃないかしら。ムツキ、確かそっちの棚に予備の紙とペンが仕舞ってあったはずだから、取ってきてくれるかしら?」
「オッケー♪ムツキちゃんにまかせて~」
そうして浅黄ムツキは、すたすたと私の後方の棚へと歩いて行った。
私もゆっくりと立ち上がる。
まさかこんなに突然、命の危機にさらされるとは思わなかったが……でもまぁ、裏路地らしいと言えば裏路地らしいともいえるかも……?
ふと、今までに出会ってきた都市の、裏路地の人たちを、そして囚人たちを思い出す。
あの地獄めぐりが始まってすぐの頃の、口を開けば首が飛ぶような、殺伐としたバスの空気も今や懐かしい。
そう考えるとむしろ――
<初対面なのに親切すぎる気がする。>
約一名を除いて。
それだけこの事務所に余裕があるのか、それともあとで無理難題を吹っ掛けてくるのか。でも――
<なんとなく、彼女たちは信頼していいと思えてくるんだよね。>
彼女の話を信じるなら、道端で倒れていた、何の接点もない私を拾ってくれただけでなく、拘束の一つもせずに寝かしてくれていたわけで、挙句の果てには話が通じない私に、警戒どころか歩み寄る姿勢さえも見せてくれているのだ。だから、それこそ彼女たちには“いい意味で”都市の人間っぽさを感じない。
運がよかったな……。と、そんな風に軽く胸を撫で下ろしていると、
ピコン。
突然、陸八魔アルの手元にある端末が鳴った。どうやら誰かからメッセージが届いたようで、彼女は端末の画面を覗き込み始めた。
かとおもえば、今度は私と端末を何度も見比べている。
<えっと……。どうかしたの?>
私の問いかけ(といっても、彼女たちには時計の音しか聞こえないだろうけど)には見向きもせず、彼女はにやり、と不敵な笑みを浮かべて口を開いた。
「ムツキ、ハルカ、朗報よ。もしかしたら臨時収入が手に入るかもしれないわ。」
「ホント!?」「本当ですか!?」
二人の嬉しそうな声が事務所の中に響く。
<えっ。臨時収入って……。急にどうし……>
「あなたも安心していいわよ。だってこれからあなたを――」
連邦生徒会に引き渡すことになったから。
<ひ、引き渡す!?>
前言撤回、どうやら彼女たちも立派に都市の人間だったようだ。
<ちょっと待ってくれ!引き渡すってどういう意味!?>
連邦生徒会、という名称に聞き覚えはない。しかし私を引き渡すということは、黄金の枝を狙っている組織か何かだろうか?
ただ、一つ分かることは、どうやら私が資金稼ぎのための商品になってしまったということだ。
思わず一歩後ずさる。
突然の出来事に頭が追い付かない。
<と、とりあえずここから逃げないと……。一か八か囚人たちを呼んで……。>
なんとかこの場を乗り切るため、逃げ道を、扉の位置を確認しようとした瞬間、
ガンッ!
「くふふっ♪逃げようとしちゃダメだよ~?おにーさん♪」
一撃、頭部に重く鈍い衝撃が走り、私は抵抗する間もなく地面に倒れこんだ。
ぼやけた視界の先で、うっすらと陸八魔アルが何かを喋っているのが見える。だが薄れゆく意識の中で、私はついにそれを聞き取ることはできなかった。
<陸八魔……便利屋68……>
死んだら化けて出てやる。なんて小物みたいな言葉を残しながら、そのまま私は気を失ったのだった。
とりあえず、今考えてる世界観がある程度伝わるようになるところまで(あと2~3話くらい?)は急いで書き上げようと思いっておりますので、ここまで読んでくださった方々は何卒!次話以降も読んでいただけると嬉しいです。