俺の名前は孫悟空。
ドラゴンボールの主人公に成り代わった者である。
前世は普通に男子高校生をしていた。
それがある朝目覚めたら孫悟空に転生していた。
そして原作通りに孫悟飯に拾われて育てられた。
それから月日は流れ十数年。
俺は現在山奥で一人暮らししている。
孫悟飯は俺がうっかり満月を見てしまったことが原因で死んでしまった。
大猿の力はまだ制御できないらしい。
ある程度の戦闘力が必要なのか、或いは大人になることで理性が保たれるらしい。
そうして一人暮らしを始めた俺は本格的に修行を行うことにした。
これから先強い奴と戦い続ける人生だ。
どれだけ強くなっても足りはしない。
森にいる生き物は大抵弱くて相手にならないので一人で修行している。
最近は精神修業が主である。
滝行や瞑想をして肉体の内に宿る気をコントロールする修業である。
肉体を鍛えるのと違い長く辛い道程である。
しかしこの先現れる脅威を思えば鍛えておくべきだ。
元となる気の大きさも重要だが、肝心のコントロールがぐだくだだと戦いにすらならない相手ばかりだ。
今日も日課の瞑想を終えて釣りから帰って来た所である。
すると背後から車の走る音が聞こえて来た。
振り向くと車は既にすぐ後ろまで迫っていた。
「いっ!」
「わっ!」
車は急ブレーキを踏んで停止した。
中から青髪の女が姿を現す。
「ちょ、ちょっと危ないじゃないっ!!!」
「そっちがぶつかりそうになったんだろ。俺は道を歩いてただけだ」
「む、むぅ〜…それもそうね」
女は苦々しげに呟いた。
俺はふって湧いた疑問を口にした。
「こんな所に何の用だ?この先には俺の家しかねえぞ」
「私はドラゴンボールを探しているの。レーダーだとこの先に反応があるのよ」
そこで漸く俺は思い出した。
これはドラゴンボールの第一話である。
女の名前は何だったか。
前世の記憶を想起するのは難しい。
「どうせこの先に用があるんだったら俺の家に寄ってくか?飯くらいなら奢るぞ」
「変なことしないでしょうね!」
「しねえよ。女には優しくしろって爺ちゃんから言われてんだ」
「ふーん…」
俺が釣った魚を背負って歩き始めると女は大人しくついて来た。
車はどうやってかしまったようである。
家に到着して扉を開けると先ず目に入るのは形見のドラゴンボールである。
女はこれが目的だと話していた筈だ。
「あったー!!!ドラゴンボールだ!!!」
女はドラゴンボールに近付くとウキウキした様子で触り始めた。
「そいつが目的のドラゴンボールだろ。やるよ」
「良いの?アンタ優しいのね」
「どうせ俺には意味ないもんだからな。七つ集めて叶える願いもねえ」
強いて言うなら死んだ爺ちゃんを生き返らせるくらいか。
しかし生き返らせても寿命の問題で長生きはできないだろう。
だから俺には無用の長物なのだ。
「アンタって無欲ねぇー…彼女欲しいとか思わないの?」
「思いはするけど、自分の力で作らねえと虚しくなるだけだからな」
「なんか私が虚しい女みたいになるじゃない」
女はドラゴンボールで恋人を作ろうとしていたらしい。
「別に人がどんな願いを叶えようが勝手だ。あくまで俺の考えに過ぎねえんだから」
「アンタって小さい割に達観してるわね」
「こう見えても十二歳だからな」
「え!?私と四つしか変わらないの!?」
俺の年齢に対して女は驚いたようだ。
確か原作だとサイヤ人はある程度の年齢まで小さいままなので見た目と年齢が合致しないのだ。
俺が原作知識を思い出していると女が口を開いた。
「そうだ!アンタ、ドラゴンボール探し手伝ってよ。女には優しくしろってお爺さんに言われたんでしょ?」
「そりゃそうだけど、見返りもなしに手伝えとは教わってねえ」
「むぅ…じゃ、もし私が願いを叶えられたら莫大な報酬を上げる。私ん家金持ちなのよ」
ふむ。見返りがあるなら吝かではない。
俺は首肯して依頼を受けた。
「決まりね!さあさあ楽しい旅にレッツゴーよ!」
「でもよお、どうやってボール見つけるんだ?当てはあんのか?」
「そこが私の頭の良い所よ!顔も可愛いけど。これよこれ」
そうして女が見せたのは丸い形状のレーダーである。
それがドラゴンボールを探すのに役立つらしい。
「ドラゴンレーダー!ボールから僅かな電波が出ているのに気付いて私が作ったのよ!ほら、この三つが私達が持ってるやつで…次はここね。えーと西へ約千二百km」
「中々遠いな」
「車があるから大丈夫よ。ところでアンタ名前は?」
「俺は悟空だ。孫悟空。お前は?」
「……ブルマ…」
「そうか。良い名前だな」
俺がそう言うとブルマは意外そうな顔をした。
馬鹿にされるとでも思っていたのだろう。
「名前褒められたのは初めてよ」
「親から貰った名前は皆良いもんだ。馬鹿にするのはいけねえな」
「アンタ良い奴ね」
ブルマは少し笑ってそう口にした。
良い奴と褒められたのは初めてだ。
俺にとっては当たり前のことでも他の人間からしたらそうでもないらしい。
ブルマはポーチから箱を取り出すとそこから一つのカプセルを手に取った。
それを投げると煙と共に車が現れる。
「凄えな。妖術か?」
「ホイポイカプセルよ。都じゃ常識よ?アンタってほんとに田舎もんね。ほら、後ろに乗って」
ブルマの後ろに乗るとブルマは車を発進させた。
凄い速度で車が道を駆けて行く。
俺が走るのと同等くらいか。
走り出してから二十分程経つと峠で車が跳ねた。
ブルマは平静を装って着地したがどう見ても予想外の動きであった。
そうして峠を越えた先でブルマは突然車を停めた。
「ちょっと失礼。待ってて、すぐ来るわ」
どうやらトイレを催したようだ。
車で大人しく待っているとブルマがトイレに行った方から悲鳴が聞こえて来た。
俺は慌てて車を降りてその方向に向かった。
するとその先には一匹の恐竜がいた。
ブルマを掴んで捕らえている。
「あ…あ…あわわ……!!」
「なんだ貴様は!!コイツの仲間か!!」
「そうだけど。お前は?」
「俺か?俺は…コイツの知り合いだ!少し話があるからここにいろ!」
「そんな話し信じると思うか?」
俺は持って来ていた如意棒で恐竜の頭を叩く。
恐竜は気絶して倒れ伏した。
解放されたブルマが慌てて俺の方へと近寄って来る。
「ありがと!食べられちゃう所だったわ!助かったー!」
「漏らす前に早くトイレ行けよ。俺はコイツ焼いとくから」
「食べるの!?嘘でしょ!?」
「恐竜の肉は美味えぞ」
言いながら近くの木を手刀で切り裂き、丸太を作り薪割りをする。
ブルマはトイレの我慢が限界に達したのか茂みの方へと走って行った。
俺は気絶した恐竜をそのまま丸焼きにする。
良い匂いが辺りに漂い始める。
そういや結局魚食わねえで出て来てしまった。
勿体ないが諦めよう。
「あら意外と良い匂い」
ブルマがトイレから帰って来る。
そして丸焼きにされてる恐竜を見て少し食欲が出て来たようだ。
俺は焼けた肉を切り分けてブルマに渡した。
ブルマは恐る恐る受け取ると慎重に肉を食べ始めた。
そして意外な美味しさにすぐにガツガツと食べ出した。
「恐竜って美味しいのね!」
「ああ。熊や虎なんかよりよっぽど美味い」
「アンタ虎も食べるの?」
「精が付くぞ」
ブルマは若干引き気味だ。
まあ殆ど野生児みたいなもんだし仕方ない。
普通は虎とか食わねえからな。
俺もこの世界で悟空に転生しなければ虎の味なんて知ることはなかっただろう。
俺が物思いに耽っているとブルマがポツリと言葉を溢した。
「そういやアンタの爺さんはどうしたの?家にはいなかったみたいだけど」
「ちょっと前に死んだ。俺の所為でな」
「そ、そう。悪いこと聞いたわね」
「気にすんな。俺ももう気にしてねえ」
爺ちゃんが死んだのは辛かったけど吹っ切れた。
あれから大猿にならないように気をコントロールする術も身に付けたし、過去のことだ。
俺は完成した恐竜の丸焼きをペロッと平らげて出発の準備をした。
「さあ。次のボール探しに行くぞ」
「そうね。早いとこ出発しましょ!」
そうして俺達の旅は幕を開けたのだった。
・オリ主
原作よりも遥かに強い。
舞空術も使える。
・ブルマ
オリ主の野生児ぶりに何度も驚くことになった。