「暗くなって来たし今日はここまでね」
ブルマがそう言って車を停める。
空は既に太陽が山の向こうに沈み始め、夜の帳が降りていた。
「今夜はここで野宿か」
「やーねー。デリケートな私が野宿なんてできる訳ないでしょ!」
「どうすんだ?」
「カプセルよ」
「へぇー!便利なもんだな!」
あのホイポイカプセルとやらは家まで出せるらしい。
どんな構造をしているのやら。
「あそこんとこに決めた!ほら、投げるわよ。離れて離れて」
言われた通りに離れるとブルマがカプセルを投げた。
煙と共に家が現れ、ブルマは満足気に笑った。
扉を開けて中に入ると人工的な灯りが暖かく迎えてくれた。
「ほへぇー中も充実してんだな」
「凄いでしょ。私のお父さんが開発したのよ」
「だから金持ちなのか」
ブルマの父親は優れた博士のようだ。
娘であるブルマもドラゴンレーダーを開発しているし、親子揃って優秀だ。
「孫君。私ご飯作るから先にお風呂入って来なさい」
「分かった」
俺は言われた通りに風呂場に向かった。
浴槽で久々に石鹸を使ってシャワーを浴びる。
特に毛の多い尻尾を丁寧に洗う。
そして風呂から上がればブルマが疑問を口にした。
「アンタその尻尾のアクセサリーずっと着けてるの?お風呂ぐらい外しなさいよ」
「これは本物の尻尾だぞ」
「ええー!?なんでアンタ尻尾なんか生えてんのよ!?」
「俺は他の惑星から来たサイヤ人だ。サイヤ人には皆尻尾が生えてる」
「アンタ宇宙人だったの!?」
ブルマは更に驚いてしまった。
出会ってから今まで驚かせてばかりな気がする。
「見た目は尻尾以外、そんなに人間と変わらないのね」
「ああ。サイヤ人の特性は見た目じゃないからな」
「ふーん。どんな特性があるの?」
「例えば一定の年齢まで体は小さいまんまだったり、八十歳までは若い肉体を維持できたりだな」
「若さを保てるなんて羨ましい限りね」
ブルマは若さという点が気になったようだ。
そんなに気になるならドラゴンボールで不老を手に入れれば良いのに。
何故に恋人なんて作ろうとするのか。
その後はブルマが風呂に入ってから夕食を食べた。
ブルマが作ったステーキは味付けもしっかりしていて最高に美味かった。
そして暫くテレビを見たり、本を読んで過ごしてから就寝の時間である。
「孫君には布団あげるからこれで寝なさい」
「おお。ありがとな」
俺は布団を受け取って床に敷いて横になる。
すぐに睡魔が俺の意識を奪っていった。
◇
朝になってブルマより早く起きた俺は日課の修行を行っていた。
筋力鍛錬は勿論、瞑想も欠かさない。
そうして過ごしていると一匹の海亀が姿を現した。
「お前こんなとこで何してんだ?」
「私実は亀なんです」
「見りゃ分かる」
「海亀なのに松茸狩りに来たのが運の尽きで皆と逸れるわ、道に迷うわ…もうかれこれ一年程も海を求めて彷徨い歩いております」
「そうか。大変な目に遭ってんだな」
「孫君?誰と話してるの?」
家の中で出発の準備をしていたブルマが外に出て来た。
そして海亀を見て目を剥いた。
「海亀じゃない。何でこんなとこに…」
「コイツ松茸狩りに来て迷ったらしい」
「何してんのよ…」
「すいません…良ければ塩水を一杯頂けませんか?できればワカメも添えて」
「贅沢な亀ねー」
ブルマはそう言いながらも塩水を用意して海亀に渡した。
海亀はそれを一気に飲み干した。
「ぷはー!ありがとうごさいます!」
「ブルマ。コイツ海に帰りたいらしいんだけど方向分かるか?」
「海?ちょっと待ってなさい……こっから南へ約百二十kmね」
「百二十kmですか……」
海亀は余りの遠さに途方に暮れる。
それを不憫に思って俺は声を掛けた。
「俺が海まで連れてってやろうか」
「え!?ほ、本当ですか!」
「何言ってんの!後三十日しかないのに付き合ってられないわよ!」
「見捨てんのは可哀想だろ。それに俺なら本気出せばすぐに着く」
「……あーもう!!仕方ないわね!」
ブルマはなんやかんや言ってついて来る方を選択した。
俺は海亀を背負った。
ブルマが家をしまって車を出す。
それを見て俺は全力で走り始めた。
慌ててブルマが追い掛けて来る。
「アンタどんな速さしてんのよ!?サイヤ人って皆こんなに化け物なの!?」
「俺なんかまだまだ弱い方だ。強いサイヤ人なら星だって滅ぼせるぞ」
「う、嘘でしょ…」
ブルマはサイヤ人の強さに愕然としている。
宇宙一の戦闘民族を舐めてはいけない。
そうして道を進んでいると前方に熊の怪物が姿を現す。
鎧や剣を装備しており一見すると強そうに見える。
「おう待ちな!!ボウズその海亀、俺様に寄越さんか?大好物なんだよなー!」
「ひ、ひえぇ!孫君何とかして!」
「任せろ」
俺は海亀を降ろして拳を構えた。
怪物は勢い良く剣を振り下ろした。
俺はそれを指で受け止めて粉砕する。
怪物は驚愕して目を見開いた。
「ば、馬鹿な!?」
硬直する怪物の顔面に向かって拳を放ち、気絶させる。
怪物は完全に沈黙した。
「つ、強い……」
「す、凄いですね……」
ブルマと海亀は俺の実力を見て慄いている。
「サイヤ人ならこんな程度勝って当たり前だ」
「星を滅ぼすっていうのも本当なのね……」
ブルマはサイヤ人の脅威を思い身を震わせた。
「まあサイヤ人は星ごと滅ぼされたからもう生き残りは数人しかいねえけどな」
「そ、そうなの?良かったぁー…」
ブルマは安心したように息を吐いた。
海亀はスケールのデカさに追いついていけていない。
そんなこんなありながら、海を目指して数十分。
漸く海に辿り着いた。
「や、やりました!!海ですよ!誰が何と言おうと海ですよー!!」
「当たり前じゃない」
「綺麗なもんだなー!」
俺は海の綺麗さに感嘆する。
前世の記憶は擦り切れてしまって海の記憶なんて残ってなかったからな。
想像するのと実際に見るのとじゃ綺麗さが段違いだ。
「ほ、ほんとに助かりました!ありがとうごさいました!あの、ちょっとそこでお待ち下さい。是非お礼をしたいもんですから」
「お礼?」
「玉手箱じゃないでしょうね」
ブルマは訝しんでいるが、俺は素直にお礼を待つ。
ブルマが水着を持ってくれば良かったと嘆く。
その内、海上の遠くの方に人影が見えて来た。
「何かしらあれ?」
「さっきの亀の上に誰か乗ってるな」
「アンタ良くあんなのが見えるわね。誰か連れて来たのかしら?」
そうして現れたのは亀の甲羅を背負ったサングラスを掛けた老人だった。
「ハロー!」
「お待たせしました!」
老人は亀から降りると俺達に問い掛けた。
「亀を助けてくれたそうじゃの」
「爺ちゃんなにもんだ?」
「儂は亀仙人じゃ!助けてくれたのはどっちじゃ?」
「お坊ちゃんの方です!」
「そうかそうか。御苦労さんじゃったな。ではお礼に素敵なプレゼントをあげてしまおう。来い!不死鳥よ!!」
亀仙人が呼び掛けるも何の反応もない。
海亀が口を開いた。
「あのー不死鳥の奴は食中毒で死んだんじゃ?」
「そうか!そう言えばそうじゃったな……」
「不死鳥なのに死んだの?」
ブルマの冷静な指摘は無視された。
「うーむ。不死鳥を呼んで永遠の命をやろうと思ったのじゃが…良し!では代わりにコイツを…来るんだ!筋斗雲よー!!!」
そう言えば遠くから雲が飛んで来た。
しかし俺には役立たない存在である。
「爺ちゃん。俺空飛べるから雲は良いや。代わりに首から下げてるボールくれ」
「これか?っていうか空飛べるの?」
「ああ。修行して身に付けたんだ!」
「そ、そうか。まあこれくらいなら構わんぞ」
そう言って亀仙人は俺に首から下げてたドラゴンボールをくれた。
俺は受け取った三星球をブルマに渡す。
「ほら。これで四つ目だ」
「ドラゴンボール!?南にあったのはこれね!ありがと、孫君!」
そうして俺達は四つ目のドラゴンボールを手に入れたのだった。
・オリ主
前世の記憶は擦り切れて思い出し難くなっている。
サイヤ人に関することは明確に覚えている。
・ブルマ
当たり前みたいにドラゴンボールをくれたオリ主に対して好感度が高い。