四つ目のドラゴンボールを手に入れてから三日が経った。
俺達は漸く西方に辿り着き、いよいよ五つ目のドラゴンボールが近付いて来た。
「近いのか?」
「かなり近いわね。すぐそこ」
「村があるみたいだし、あそこかな?」
「村か…多分そうだわ行ってみよ!」
俺達は村に向かって車を走らせた。
しかし妙なことに村は静まり返っていた。
「静かねえ…誰も住んでないのかしら?」
「いや、沢山の気があるから人はいるぞ。何かを警戒してるみたいだ」
「変ねえ…」
ブルマは村の異様な気配に疑問を抱いているようだった。
そして大声で呼び掛けてみるも返事はない。
「ここにドラゴンボールがあるのは間違いないんだけど…」
「確かめてみようか」
俺は強引に扉を開けて中に人がいないか確認する。
すると奥から斧を持った男が現れ、斧を俺の頭に振り下ろした。
斧は粉々に砕け散って壊れてしまった。
「痛えなぁ。何すんだよ」
「す、すいませんでした!ウーロン様!お金や食い物なら幾らでも差し上げます!どうか娘だけは…!娘だけは!」
「へ?ウーロン?」
俺がじんわり痛む頭を抑えて口にすると村人は何故か安心したように息を吐いた。
どうやら俺をウーロンという奴と勘違いしていたようだ。
「いやー!すまんすまん!てっきりウーロンの奴がお前さんの姿に化けてるんだと…」
「私だったら死んでたとこよ!」
「め、面目ない…」
ブルマの気迫に村人が気圧されている。
その内に他の村人達がわらわらと出て来て様子を窺う。
男は村人達に事情を説明し始めた。
「そのウーロンってのは何なの?」
「ウーロンというのはこの辺りに住んでいる妖怪で色んなものに姿を変えられる術を持つ恐ろしい奴で、本当の姿は誰も見たことがないんです。実は昨日、この村にウーロンが鬼の姿でやって来て私の娘を攫うと言ったのです」
「それでピリピリしてたのね……そうだ!ねえおじさん。こういう球持ってない?」
ブルマはドラゴンボールを取り出しておじさんに見せる。
生憎おじさんは知らないようだが、パオズというお婆さんが持っていると言い出した。
「お婆さん。その球私達にくれたらウーロンっていう妖怪退治してあげる」
「いや〜そりゃ退治してくれるんならやってもええけど、女のお前さんにゃちーと無理じゃないかえ?」
「私じゃないわ。孫君が倒してくれるの」
「いやしかし万が一ウーロンを退治できたとしても棲家が分からなければ捕まってる娘達が…」
「なら半殺しにして聞き出せば良い」
俺の余裕におじさんは希望を見出しように頷いた。
「それなら後は任せますぞ。我々は家の中で隠れておきます」
「ああ。それで良い」
話していると重たい足音が村に響いた。
村人が慌てて家に駆け込んで来た。
「おい!ウーロンの奴が来ただぞ!!」
「皆隠れて!」
村人達が泡を食ったように家に隠れた。
俺はウーロンを迎え討つ為に家の前で待機した。
ウーロンは巨大な鬼の姿で現れた。
手には花束を持っている。
「何だお前は!?娘はどうした!?」
「俺はお前を退治するように依頼された者だ。さあ、早く掛かって来い」
「な、何〜!?俺を倒すだと!!馬鹿め!!そんなことができるものか!!諦めて降参するんだな!!」
ウーロンは見た目に反して感じられる気は小さい。
見た目ばかりの雑魚のようだ。
「お前弱えな。気で分かるぞ。降参するべきなのはお前の方だ。それとも痛い思いをしたいか?」
「な、何だと!?……クソッ!!変化!!」
ウーロンは巨大な牛の姿になった。
見た目ばかり大きくするのは弱い奴のやることだ。
スタイリッシュな方が強い場合が多い。
俺はウーロンに向けて一発拳を放つ。
殴られたウーロンはそのまま気絶した。
ウーロンの変化が解けて小さい豚の妖怪の姿になる。
「やっ、やった!!ウーロンを倒したぞ!!」
「本当はこんなに小さい奴だったのか!見た目に騙されていた!」
「ほれ、約束の球じゃ!」
「わ!どうも!!」
村人達は縄を持って来てウーロンを縛り上げた。
ブルマはお婆さんからドラゴンボールを受け取ったようだ。
随分とあっさり解決してしまった。
これでは修行にならんな。
「本当にありがとうございました!!お陰で村が助かりました!」
「気にすんな。好きでやったことだ。それよりウーロンから棲家を聞き出さないとな」
俺はウーロンを叩き起こして棲家の場所を聞き出したのだった。
◇
ウーロンの棲家は意外にも豪華であった。
巻き上げた金を使って建てただけはある。
そうして棲家の娘達を村に帰し、俺達は再び旅に出るのだった。
今度はウーロンも加えて。
「なあ。何でこんな奴連れてくんだ?」
「あの変身の術は見事なもんだわ。旅の役に立ちそうよ」
「俺やだぞ!!旅なんてめんどくさいこと!!」
「逃げようとしたら殺す」
俺が殺気を放つとウーロンは大人しくなった。
目を離すとまた悪さを働きそうだからな。
腐った性根が直るまでは付き合ってもらう。
「孫君やたらウーロンに当たり強いわね」
「そうか?」
「そうよ。普段はもっと優しいじゃない」
悪人を許さない性質って訳ではない。
思い当たる節があるとすれば、ウーロンが女の子を攫ったことだ。
「ふーむ。どうやら俺は女の子が酷い目に遭うのが嫌な性格らしい」
「らしいって。自分の性格でしょ?」
「自分探しなんてしたことないからな。意外な発見だ」
そうして話していると川を進むボートが止まる。
「あら?」
「おい。エンジンが止まっちまったぜ」
「しまったガス欠だ。ねえ、アンタガソリンに化けられないの?」
「化けれる訳ないだろ…」
「じゃあ岸につけてホイポイカプセルでガソリン出すからオールに化けてよ」
ウーロンは渋々頷いてオールに化けた。
俺はオールを持って岸まで漕ぐ。
岸に着いたらボートを縄で木に繋いで固定する。
そこでブルマが異変に気付いた。
「あれ!?カプセルの入ったケースがない…!!きっと川に落としたんだー!!」
「川を探す訳にもいかねえし、歩くしかねえな」
「そんなぁ…」
「歩くのが辛くなったら言え。背負ってやる」
そう言えばブルマは泣く泣く歩き出した。
ウーロンがそう言えばと話を切り出す。
「お前らってどこ向かってんだ?」
「えーと…フライパン山ね」
「な、何ー!?フライパン山だと!?あ、あんなとこに行くつもりか!?」
「お前そこ知ってんのか?」
俺が問うとウーロンはフライパン山の恐ろしさを語り出した。
曰く、牛魔王というのがいるらしい。
「孫君なら勝てるわよ」
「冗談じゃない!!付き合ってられるか!!」
ウーロンは魚に化けて川に飛び込もうとした。
それを俺の尻尾で捕まえて拘束する。
「逃げたら殺すと言ったよな」
「ひえぇー!!どっちにしろ死んじまうよぉー!!」
「お前が悪い」
俺はウーロンの文句に付き合わず無理矢理連れて行く。
次第にウーロンは諦めて項垂れた。
それから暫く歩き続けて荒野へとやって来た。
ブルマとウーロンはヘロヘロだ。
「し、死ぬ〜!!」
「無理すんなよ」
俺は疲れ果てたブルマを背負って歩く。
ウーロンはそのままだ。
「アンタほんと野生児ね。都会育ちの私にこの環境は辛いわ」
「まあ俺は戦闘民族の生まれだからな」
「それにしても何よここ…殆ど砂漠じゃないの…」
「し、仕方ねえだろ…ここを通らなきゃフライパン山には行けないんだ」
ブルマは暑さでヘトヘトになってるらしい。
都会育ちは大変だな。
「ん?何か来たな」
「え?どこ?」
「前の方だ。気が二つ。ただの通行人って訳じゃなさそうだ」
俺はブルマを下ろして岩の陰に座らせる。
そして此方に向かって来る者達と対峙した。
そいつらは妙な乗り物に乗って現れた。
そして俺の目の前に停まると降りて来て剣呑な瞳を向けた。
「よう。俺は荒野を根城にするハイエナ…ヤムチャってもんだ。ガキを相手じゃ様にならねえが生きて荒野を出たければ金かカプセルを寄越すんだな」
「嫌だと言ったら」
「無理矢理奪うまで!!」
ヤムチャは俺に向かって突撃して来たのだった。
・オリ主
女の子が酷い目に遭うのが嫌い。
旅を修行の一環と捉えている。
・ブルマ
五つ目のドラゴンボールを手に入れてウキウキしている。