「ゲスめ!妾を殺したくばまずは貴様から死んでみせよ!」
天内は五条の手から離れて華麗に着地すると、三人に向かって構えた。元気な女の子である。目が覚めてすぐさま危機を察知したら臨戦態勢になれるなんて、のんびりなカービィだったら二度寝としゃれ込んでいたのかもしれない。いや、せっかくのお昼寝タイムを邪魔されたのならぼこぼこにするかもしれない。どちらもありうる…とりあえず、気分による。それだけだ。
五条はちょいギレモードだが、夏油が天内の警戒を解こうと微笑みながらこちらの害意がないことを証明しようとすると、前髪を根拠にさらに警戒されたため、二人は天内を絞ってみることにしたのだ。
二人ともちょいギレモードである。
チーンと音がすると、すぐそばにあったエレベーターの扉が開き、夏油の呪霊に乗ってやってきた黒井がいた。
黒井は天内が弄ばれているのを見て制止の声を上げたので、仕方なく二人は天内を手放した。べしっと乱雑に地面に叩きつけられた天内は黒井の乗っている呪霊に目をつけ___そしてその視界の端で動いたピンク色にも意識が向いた。
「はぁあい!カービィぽよぅ!りこ?」
「ひゃあ!喋ったぁっ!?」
目が合うと早速飛び出して元気よく挨拶をするカービィにびっくりして、天内は先程の口調を崩して尻餅をついた。
「お嬢様、そちらは呪骸のカービィ様です。そちらの前髪の方の」
「その言い方やめてもらえます?」
カービィは天内の手の中でぽよぽよ弾力を楽しまれながら、目を閉じてその手を堪能していた。
ふむふむ…ゆーよりもおおざっぱだけど、かたこりにきく!
「思ったよりアグレッシブなガキンチョだな。同化でおセンチになってんだろうからどう気を遣うか考えてたのに」
「ふん。いかにも下賤なものの考えじゃ」
「あ“?」
と天内は鼻で笑うとカービィを置いて、夏油の呪霊に乗り移り自信満々といった表情で語り始めた。
「いいか、天元様は妾で妾は天元様なのだ!!」
という天内の語りは五条と夏油によって無視されてしまう。二人はケータイの待ち受けの話をしている。カービィはドンマイというようにホバリングで天内の肩に乗っかって頭を撫でる。
「ぬわー!撫でるでないっ!」
「あの喋り方だと友達もいないじゃろ」
「快く送り出せるのじゃ」
「学校じゃ普通に喋ってるもん!!
……学校!!!」
すると天内は思い出したように学校に行こうと言い始めた。黒井は制止したものの、天内はそれを振り切った。疑問はありつつも全員、天内の通う学校___廉直女学院中等部へと向かうことになる。
##########
夜蛾曰く、天元は星漿体の要望には全て応えよと言っているようで、即高専に戻るのはナイナイされ数少ない学校生活を謳歌させるため、天内はいま授業を受けている。
そして同行を拒否されたために、天内の行方はわからない。
どうやら、夏油が監視に出していた呪霊二体が祓われたので、学校に正体不明の敵が潜んでいることが発覚した。
そのため、校舎に入って天内を捜索し正体不明の敵を撃破しようと動いているのだが___。
「ほよ…」
「なんだ強いじゃないですか」
すでに、夏油は一人目の敵を撃破し五条が天内を発見し学校外へ連れ出しているところだ。
そして今黒井がモップによって紙袋男をとっちめている。
「理子ちゃんは?」
「五条様と一緒に学校を出ました」
「じゃあ私達も向かいましょう。少し面倒なことになってます」
「クックッ…さっきのが3000万か」
と捨てるように言った超絶不審紙袋男はどろりと溶けてその形を崩してゆき、そして姿を消した。
___夏油の言う面倒なことというのは、天内の首に3000万の懸賞金がかけられていることだ。しかも明後日の午前11時までの期限付き。となると多くの呪詛師が天内を狙ってわんさか集まってくるだろう。
「万が一ということがあります!夏油様の方が早い…先にお嬢様のところへ!」
「……わかりました。黒井さんはカービィと一緒に!」
「はい!カービィ様、こちらに」
「ぽよ!」
今カービィは黒井と共に走っている。
カービィは移動に長けたコピー能力のもとになるものはないかとキョロキョロと辺りを探している。
しかしながら、該当するものは見当たらない。
仕方がないため、とりあえず前方を走る黒井へと目線を戻した。
「くろい…?」
しかし___誰もいなかった。
ぽつねんと誰もいない空間がカービィの目に映った。速度を落として止まり、辺りをよく見た。見渡した。けれども黒井の姿は何処にもなかった。カービィは頭を傾げた。
「ぽーよー!!くーろーいー!!」
大声を出して黒井を呼んでみるも、ただただ反響だけがして、声が返ってくることはなかった。
どうしていなくなっちゃったんだろう?
まよったのかな。ううん…。
カービィはひとまず音もなく姿を消した黒井を探すために走り回ってみることにした。
「くろいー?」
草むらの中___いない。
「ぽよっ?」
路地裏___いない。
「くーろーいっ?」
街路樹の上___いない。
ひとしきり黒井を探してみるもその姿を見つけることは叶わなかった。
なので、カービィは黒井を探すのは諦めて先に天内達と合流することにした。
建物が大きな衝撃で崩れる音が聞こえたので、カービィは思わず足を止めてそちらを向いた。
五条が天内を片手で持って、先程見かけた紙袋男を追い詰め___殴り飛ばした。
「ぽよー!さとるー!りーこー!」
カービィはその様子を見て、五条達のいる建物へとホバリングを行い向かっていった。
「どっ、どうしよう黒井が…!!黒井が!!」
天内は黒井が拘束されている写真がメールで送られて激しく動揺していた。
黒井は、またもや登場した正体不明の敵によって拉致されたのだ。おそらくは取引を持ち込むために。
しかしカービィが気付かないうちに黒井を拉致したとなると、相当な実力者による犯行だ。
五条は少し警戒を強めた。
##########
場面は変わって、沖縄の海。
「ぽよ…くろい…」
「いえ、カービィ様は悪くありません。お気になさらず…」
あれからあっさり黒井奪還に成功し、犯人は盤星教信者であることがわかった。
その点について、いくらのほほんとしているからといって非術師がカービィを欺けるかは怪しいところ……五条と夏油はひっかかりを覚えた。
カービィは黒井を拉致から守れなかったことに落ち込んで謝った。黒井はカービィが落ち込むのを励ました。
「カービィも悟達と遊んできなよ」
「ぽよ!」
五条の意見によって沖縄滞在が1日延長したため、その分遊ぶ時間も延びたのだ。
とりあえず気を取り直して、夏油に言われたようにカービィは五条達の方へと向かって走り出した。
せっかくの海なのでここは一つ、コピー能力をやってみようと早速海を吸い込んだ。
すると、カービィは水の塊を被った姿に変身した。
コピー能力「ウォーター」
水を巧みに操り、時には水の上や高温の地面の上でさえ走ることのできるコピー能力。
カービィはこれでとある作戦を企てた。
「カービィ?なんじゃその姿は?」
「カービィの能力みたいなもんだよ。吸い込んだものの性質をコピーして変身すんの」
「訳がわからんぞ…」
「りこ!」
カービィは天内の手を取って海の方へと進もうとする。
「ちょ、ちょっ!どこいくんじゃっ!?」
「ぽーよー!!」
困惑する天内をよそにカービィはウォーターの技の一つ___「なみのり」を披露する。
不思議なことに、カービィに引っ張られている天内は沈むことなく海の上を立ったまま滑っていた。
二人乗りサーフィンをしているような感じだ。
「わぁ…っ!海の上を走っとるぞ!!すごいっ」
「あーずりーっ、俺も!」
そこに五条も参戦して、カービィはトーイングチューブでいう二人を引っ張るボートのようになった。
「ぱやーっ!!」
「わあーっ!!」
「ひゅーっ!!」
三人とも爽やかな潮風を受けてテンションが上がり、海の上をぐるぐると広範囲に走り回っていく。
そう、これがカービィの作戦「みんなでなみのりだいさくせん」である。
自身がなみのり中にみんなを引っ張ることで全員がなみのり体験ができるといったものだ。
やっぱりみんなであそぶとたのしい!
しばらくカービィ達三人は、なみのりを盛大に楽しんだ。
なお、途中岩にぶつかってみなバラバラになった。
会話が難しすぎる…