あれから沖縄観光をして、天内の思い出をたくさん作った。
カヌーとか、沖縄名物の沖縄そばとか、水族館とか。
水族館内は流石に多くの人目に触れるので、天内の腕の中でカービィは夏油の言いつけ通りぬいぐるみになるのに徹していた。我慢出来ずに「ぽよ」と喋ったり動いてしまったりして、少しざわつかれたとか、いないとか。
けれども楽しい時間はあっという間で、ついに___護衛任務三日目、同化当日に時間は迫っていた。
場所は都立呪術高専の筵山麓。時間は天内の懸賞金が取り下げられてから四時間後の十五時。
何事もなく、安全に高専の結界内に入れたため、ひとまず息をついた。
「ぽゆっ!」
「これで一安心じゃな!!」
「…ですね」
「悟。本当にお疲れ」
「二度とごめんだ。ガキのお守りは」
「お“?」
五条は発動させていた無下限呪術を解除させた。五条の売り言葉に天内は反応して五条の方を見やった。
___そこには胸部を刃で貫かれていた五条がいたのだ。下手人は黒髪の口元に傷のある男___名は伏黒甚爾。
すぐさま、夏油は巨大な白いワームのような呪霊を放ち甚爾を丸呑みにした。
「さとる!」
「悟!」
カービィと夏油の声が重なる。五条は胸部を刺されていたが、致命傷ではないらしくまだ立っていた。こちらへ駆け寄ろうとする二人に五条は手を前に翳し「問題ない」と制した。
「天内優先。アイツの相手は俺がする。傑達は先に天元様のところへ行ってくれ」
「___油断するなよ」
「ぽよよいっ」
とりあえずここは五条に任せて、カービィと夏油は天内と黒井を引き連れて薨星宮へと向かった。
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専用のエレベーターを使って薨星宮本殿へとやってきた。
中央の巨大な御神木を囲うように数多の建造物が建っている。
黒井とはエレベーターから出た時点で別れた。ここにいるのは夏油、天内、そしてカービィ。
天内は不安や未練を抱えたまま、この場所に来てしまったのだ。目を伏せて晴れない表情のまま俯いている。
夏油は天内に対して淡々と説明をするが…
「それか引き返して黒井さんと一緒に家に帰ろう」
と、天内に定められた運命とは別の選択肢を指し示した。天内は呆気に取られて顔を上げた。
実は任務前に三人でこんな話をしたのだ。
___星漿体が同化を拒否すれば、同化はなし、と。
「私達は最強なんだ。理子ちゃんがどんな選択をしようと、君の未来は私達が保障する」
夏油の肩の上で、カービィは頼もしい顔つきでこくりと頷いた。
天内は目を見開いて___そして、口を開いた。
己は生まれた時から星漿体で、同化のために生きてきた。両親の死も記憶にない。
同化で皆と会えなくなっても大丈夫だと、悲しくも寂しくもなくなるだろうと___普通の少女は涙を溢した。
「…でもっ、でもやっぱり。もっと皆と…一緒にいたい。
もっと皆と色んなところに行って、色んな物を見て…もっと!!」
今になって溢れ出した感情は、天内の本音だった。
カービィと夏油は互いを一瞥して、微笑んだ。
そうとなれば、もう帰ってしまおう。ここに用などもうないのだから。ここよりも、帰るべき場所がある。
「帰ろう、理子ちゃん」
「りこ!」
一人は長い手を、一人は短い手を差し伸ばした。
「…うん!!」
天内はそれを見て笑顔になり、その手を取ろうと___
___銃声。
バタリと力無く天内は倒れ、頭から血を流している。その血はじわじわと地面を侵食していく。千切れたヘアバンドはひらりと舞って、流れていく血に染まる。
「…りこ?」
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
天内が倒れたということだけしか分からなかった。
カービィは慌てて夏油の肩から降りて倒れた天内の元へ駆け寄った。
ゆさゆさと揺さぶってみた。起きない。
つんつんとついてみた。起きない。
もう一度「りこ」と呼んでみた。起きない___。
「ハイお疲れ。解散解散」
五条と戦っているはずの男が軽薄な笑みを浮かべ、銃を持ち、そこにいた。
「なんでオマエがここにいる」
夏油は目を見開いて甚爾の姿を捉えて離さない。
「なんでって…あぁそういう意味ね」
甚爾はニヤリと歯を見せるように不敵に笑った。
「五条悟は俺が殺した」
「そうか、死ね」
夏油は怒りを滲ませながら虹龍と口裂け女を顕現させた。
そして夏油と甚爾の対峙をよそに___天内のそばにいたカービィの手の中で、何かが桃色に光り輝いた。
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青空の下、春の風が吹き抜けて、緑の草原を揺らしていく。
馴染みのアレがあって、蝶が飛んでいる。
平和でのんびりとした場所。
カービィの住む、ポップスターにあるプププランドのような風景が広がっていた。あまりに広大で、どこか底知れないものも感じる。
近くには白くて丸いカービィの家が建っていた。
何かに追われて急かすこともなく、ただただ一定の時間が流れていくような感覚。
天内は、柔らかな草の上で目を覚ました。重たい身体を腕で押して、上半身を起き上がらせる。
暖かくて優しい空気が身体を包んで、身体の重さはじきに忘れていった。ぼやける頭をなんとか働かせて、意識を覚醒させようとする。
「ここ、は…」
寝起き特有の、掠れた声が喉から出た。少し痛むのを我慢して辺りを見渡した。
りこ。おはよう。
「____カービィ?」
天内が声のした方向を向くと、可愛らしいピンクだまがいた。ぽてぽてという擬音がつくような足取りで天内の方へ歩んでいく。
よくわからないけど、ここはぼくのこきょうににてるんだ。そっくり。なんでだろうね。
この空間に負けず劣らずのんびりとした口調でカービィはそう言った。
「私、どうなったの?」
天内はイマイチ、自分が意識を失う前どうなったか覚えていない。
夏油に、カービィに、自分の気持ちを吐露した。もっとみんなと、いろんなことをして、いろんなものを見たい。そうしたら二人は帰ろうと言って、手を差し伸ばした。だから、その手を取ろうとして________そこから、記憶がない。
だからもう、私は________。
今までの思い出が、走馬灯みたいに駆け巡った。
カービィはよっこらせ、と天内の横に座り気持ちの良い青空を眺めながら口を開いた。
りこはね、いまはねているんだ。またいつかおきるよ。ここでひとりはちょっとさびしいかもだけどね。
「…そ、っか」
おきたらさ、ともだちとごはんをたべて、たくさんおはなしして、いっぱいおひるねしよう。
「うん」
ひゅう、と少し強い風が吹いて葉っぱが舞うので天内は目を閉じた。目を開けると、カービィの姿は薄くなっていた。
ごめんね。ぼくはもうそろそろいっちゃうんだ。
「また、会える?」
星に願いを込めて。
________もちろん!
ピンクのヒーローは笑顔を浮かべてそう言った。
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「フレンズハート」
カービィと同じピンク色に輝くハート型の物体なのだが、これを敵対する者にぶつけると洗脳___ではなく味方にすることができる。
カービィは、頭を撃ち抜かれ倒れた天内にフレンズハートをぶつけたのだ。これが何を意味するか___
かつてジャマハートが至る所にばら撒かれ友が昔の悪行を繰り返そうと動いた事件が起こった。もちろんカービィは黙っていない。当然ぼこぼこにしにいく。
そこらへんを歩いている雑魚敵やカワサキのような中ボスをもとりあえずこてんぱんにして、フレンズハートを投げつけたところ、ボロボロだった姿は一変して変わり完全復活。状態がリセットされたのだ。
フレンズハートをぶつけられた者は、カービィの軍門に下る。
そして先程の光景は、カービィの心象風景だ。天内の魂は、フレンズハートに触れたことでカービィの魂に引き寄せられ、その中に入っていった。
天内はカービィの心象風景の中に住むことになったのだ。
そして、天内はフレンズハートによってカービィ側の法則が適応されるようになった。
カービィ側の法則とは何か。
例えば、よくカービィが冒険に出掛けると蹴散らされる道端のワドルディやブロントバートのような雑魚敵たち。
彼らはカービィの攻撃によって消滅するが___しばらくすると元通りに戻るだろう。
カービィのいた世界では、魂が死なない限り肉体を再び取り戻して何度でも蘇ることができるのだ。
それほどまでに、カービィの世界では死という概念が希薄なのだ。
天内は、少し気質がカービィ寄りになった。
だからと言ってたった今死んだ肉体に魂が戻って蘇ることは無い。
ただ、天内の完全な死が保留になった。その程度。
それでも___
描写に誤りがあったので訂正しました!
元の文章→ かつてジャマハートの影響を受け暴れ回っていた友をとりあえずこてんぱんにして、フレンズハートを投げつけたところ、ボロボロだった姿は一変して変わり完全復活。状態がリセットされたのだ。
訂正後→かつてジャマハートが至る所にばら撒かれ友が昔の悪行を繰り返そうと動いた事件が起こった。もちろんカービィは黙っていない。当然ぼこぼこにしにいく。
そこらへんを歩いている雑魚敵やカワサキのような中ボスをもとりあえずこてんぱんにして、フレンズハートを投げつけたところ、ボロボロだった姿は一変して変わり完全復活。状態がリセットされたのだ。
フレンズハートをぶつけられた者は、カービィの軍門に下る。