無源の秋 〜竜の翼は風雲に舞う〜【毎週金曜12:00&日曜19:00更新】 作:くコ:彡の本棚
戦勝の宴から一夜明ければ、やるべきことは山積みだった。
その後ろ姿を見ながら、《
敷地の東にある櫓。そこに一人で立ち、貝殻の首飾りを握り締めて瞑目する
きっと、祈りだったのだろう。決して失いたくない者の、無事の帰還をひたむきに願う祈り。それが川を越え、遠く東へと届いたことは疑う余地も無い。
「おい、起きているか?」
肩を揺すり、現の世界に引き戻してやる。慌てて挨拶をする
まるで、一処に二人が寝ていたかのようだ。
「お前、酒は強いと思っていたがな。二日酔いを抜くために、少し今後の話をしよう」
蒙昧なふりをして、話を進める。多分、喜ばしい何かが起こったのだろうが、それは
身繕いをして二人で入ったのは、単に書庫と呼ばれる地下の一室だった。
商館が取り扱う物産の数、貯蔵状況、交易相手の名前、泊の位置や荷下ろしの場所。それから軍の荷駄や兵糧の集積地、周辺の地勢や農地の現状。
商館の、そして軍の内情全てを克明に記した書類が収められていた。
書庫の事物を外に出すべからず。それは、旗揚げ以来の鉄則だった。必要に迫られればその都度写しを取り、使い終わればその場で焼き捨てるという徹底ぶりなのだ。
書類を分野や時系列に合わせて整然と並べ、さらにその過程で内容の多くを頭に入れたという。いわば、後方の統括たる男の原点である。
・新兵を加えた軍の再編と調練
・土豪と協議しての農地復旧
・賊の残党に対する仕置
・《
・《
・《
「……差し当たり、こんなものだ」
一つの目的を達し、次の段階に進むため何を為すべきか。
「軍の規模は以前に輪をかけて大きくなりました。義勇兵は徒士(歩兵)二千五百を編入、騎竜武者はほぼ全員がこのまま残りたいと」
「
徒士が八千、騎竜武者が四百。力を均す形で新兵を加え、部隊を組み直す。そして、調練に次ぐ調練。
新たな指揮官の人事も行うこととなる。旗揚げ時より部隊長を務める者には老境に入り、後方に下がるか、帰農を望む者も少なくない。
立場を繰り上げる者の候補は
「俺としては、対術士部隊の編成も早く進めたいな。挙げた通り、《
「
仙気の流れを読んで、術士の詰める営舎を探り当てたという話を聞いて、一つ得心がいったことがある。
さらに麾下の騎竜武者には、同じように存在を知覚するのみならず、大まかな位置さえも読んだ者がいる。そのおかげで、賊の巻き添えにして殺さずに済んだとも言えよう。
決して、一握りの者にのみ許された異能ではない。適切な調練を施せば、部隊を組むだけの要員を確保できる筈だ。
術士の位置を暴き、その中枢を叩く。戦での選択肢は多いに越したことはない。
「賊の残党についてですが、内紛が起きて半数を割り込んでいる模様です。それから、調査を重ねてあるものを見つけまして」
「それは?」
「賊の開墾した田畠です。争いに倦んでいる一派が、未だ耕作を続けているようですね」
海路での補給のみならず、現地での調達も行っていたようだ。考えてみれば自然なことである。規模を聞けば、相当に広大であるらしい。
賊と一括りに言っても、穀物や野菜を育てる術を知る者がいる。かつて鎌や鍬を持って糧を齎してきた民が、武器を手にして同じ民の暮らしを脅かしていた。
賊の手にかかった者、住処を奪われた者を思えば、おいそれと同情はできぬ。しかし、彼らを撃ち破った者として、その事実を忘れる訳にはいかなかった。
「彼らを取り込めれば、大きいと思います。今は商いで兵糧を購っていますが、自給する道も同時に探るべきです」
「お前」
まさしく、
「いいのか?」
「殿の大志を果たすために、やれることは全てやる。自分が今生きている意味とは、それだと思い定めておりますから」
ようやく、吹っ切れてくれた。家族を失いながら生き残ってしまった、負い目と呼ぶべきものが綺麗に消え失せている。《
最早、前線に立ちたがる気配も無く、後方を担う大きな使命を全うする熱意に満ちていた。最初で最後の戦に出して良かった。心からそう思える。
「それにしても、昨日の今日で再びの《
「空で休むさ。疲れを取るには騎上の風が一番だ」
先に列挙した最後の二つ。やらねばならぬことであったが、やりたいと切望してやまぬことでもあった。
せめて端緒だけでも、自ら携わりたい。
話が終われば、すぐに発つつもりでいた。そのために、昨日の宴では酒を一杯しか飲んでいない。酔っていると手綱捌きが怪しくなるのもあるが、何より飛竜は泥酔した人間をひどく嫌う。
「よし、行ってくる。これからが真の始まりだ」
地上に出ると、頭上には既に蒼穹が広がっていた。《
えも言われぬ昂りを感じて、飛竜を繋いでいる処へと駆ける。
鞍を乗せようとした時、傍らに立つ人影に気づいた。
「
率いる軍の規模がどれだけ変わろうと、
「畏れ多いことです。商館の主たる方がわざわざ」
「なに、早うに目が覚めてしまってな。わしも気が昂っておるのやもしれん」
離陸態勢を整えた
「出立だな」
「はい」
おそらくは、自覚しているだろう。交易によって
「……そなたは、強い。若さ故に抱く望みに、挑み続けるという強さだ。わしは若い頃からして、そんな強さを持つことはできなんだが」
「歳を食ったからこその知恵に、救われた者がここにいますよ」
「賢しい口を利くのう」
笑顔を交わして、飛び立った。
川を越えて、東へ。先日の進軍路をなぞる形で翔けた。あの時
川の流れによって運んだ荷駄が空陸の部隊に行き渡るか、それを測っていたというのもある。激戦が予想されたからこそ、直に確かめる機会は逃したくなかった。
《
平野から山岳へと移り変わる境界、高地と窪地が斑を描く一帯を、南北に分けている。川を左に見ながら山を伝っていくと、
不毛の地という訳ではない。地竜が好む状態の土壌で、飛竜が土を食むのに向いている。
ただし、植物が自生するには厳しい地勢だった。木の一本も生えてはおらず、山草や茸、山の獣といった恵みに乏しいのだ。
だから、どの氏族もこんな処に営地を設けたりしない。畑にできそうな平らな場所は多いが、広さだけあっても虚しいだけである。
改善するには、外から、より遠くからの地竜を呼び寄せ、その繋がりを保ち続けることだ。植物を育む滋養を、運び込むのである。
《
それを変えてやろうというのが、《
北岸の各処を検めるために寄り道を繰り返したが、替えの飛竜を行先で用意していたため、三日目の昼には目的地に着いた。先の戦いで布陣した丘である。
上空を舞う幾つもの影。それらが寄り集まったかと思えば、整然と隊伍を成して翔け始めた。そこから十騎単位に分かれ、縦列へと変じ、弾けるように散開する。
新参の皆を加えた騎竜隊の調練は、早くも様になってきていた。
陣借りとして、《
調練の指揮を取っていた一人が、降りてくる。青灰色の煌めきを纏いながら。それは、男の駆る飛竜の鱗が照り返す光だった。
「よう」
「調練を見に来た、という風ではないな」
単身で敵陣に潜り込んで、術士長を討ち取った。その活躍は戦終わりの軍に瞬く間に知れ渡り、腕試しを挑む者が続出した。以前に《
二十人あまりの全員が、十合と保たなかった。八人は一度馳せ違っただけで、鞍から打ち落とされている。皆が囃し立てる声は、息を呑む気配に塗り替えられた。
皆が教えを請いたがった。自然の成り行きと言うべきか、陣借りである筈の
流されるままに、という体でありながら、調練は激しくも理に適ったものだった。突出せず、皆と呼吸を合わせることで、各々の力は何倍にも引き上げられる。それを、体に教えているようでもあった。
軍に、加えたい。熱い思いが
抑え難く湧き上がるそれを、先日ぶつけた。以前《
「仕える気は無い。しかし、雇われてもよい」
それが、返答だった。
その時に結んだ契約が、今は続いているという格好である。次に大きな戦いが終わった時、改めて継続か解消かを考えることとなっていた。
「話しておきたいことがあってな。調練が終われば、向こうに来てくれ」
「いや、俺がいなくとも続けるように言ってある。行こうか」
主君と家臣ではないから、人の目が無い処では砕けた話し方になる。
二つに分かれ、交差しながら翔ける調練に入った騎竜隊を頭上に見ながら、物陰の岩に二人で座り込んだ。
「で、だ。話したいことというのは、《
「城でも築くのか?」
「いいや。宝の山にする」
「飛竜の停留地を、《
「飛竜の恵みを集めるためにか。牧場のように」
「確かに、近いな。ただ、俺としては《
そもそも《
八百年の昔。その者達は遥か東より、長い長い空の旅を経て大陸へとやってきた。「大いなる禍」を避けるために、飛竜発祥の大山岳地帯を目指して、民族全てを挙げての大移動を始めた。
《
その中継地点となった《
即ち、今に続く《
「今、《
「俺も気になって、
かいつまんで言えば、《
現在その影響は消えて久しいらしいが、地竜は世代を経てもその事実を忘れず、避けているようなのだ。飛竜と同様、互いに交感して生きる高い知性を持った生物なのである。
「大地そのものに問題は無い。むしろ、地中の滋養も仙気も、相当に富んでいる。我らの手で一度呼び寄せてやることだ。《
自分の内心を地図に写すつもりで、
《
「このようにして、地竜の群れを導く。一つの、確固たる道を啓くのだ。繋がりを作れば、そこから全てが始まる」
大規模な地竜の群れが、秋には南下してくる。今の内に、その道標を立てておきたかった。
天地を問わぬ竜同士の結びつき。その情報網は驚く程速く、隅々まで糧の在処を広める。それは、信ずるに足るものだとよく分かっている。
地竜が訪れては去る処に、飛竜は喜んでやってくる。土を食み、生え替わる鱗を落とす。
「地竜が通るには、良い地勢だと思う。だが、お前達には《
「心配いらん。先の戦で城をどうやって陥としたか、話したことはあったかな」
荷を積んだ船で《
「必要な人足は、
胸の奥底から湧き上がってくるものがある。
それは熱意、あるいは希望と呼ぶべきものだった。
────────
声がする。人の声、竜の声。それに木の声、土の声、風の声に獣の声。
森を抜けて開けた場所に出ると、波の声と船の声もそれに重なった。見はるかす先に《
潮の匂いと共に鼻から吸い込んだ息を、
知り人を訪うために、ここまで来た。いつもは飛竜の背を借りるところ、此度は自らの足で《
土中を行き交う地竜の動きを知りたく思った時、そうするのだ。
《
漁から戻ってきた船と、交易の荷を積んだ船。それぞれ違う泊に導かれ、待機していた者達に取り付かれていた。荷揚げに勤しむ威勢の良い掛け声、一仕事終えた充足感を湛える笑声が、潮風と共に届いてくる。
それに耳をくすぐられながら、多くの櫃を積んだ荷車が南へと向かうのを、
「
呼びかけてくる声はあどけない少年のものだったが、以前聞いた時より少し低く思える。
「やあ、わざわざ迎えに来てくれたのかい?」
「はい。前に貸してくれた本、読み終わったことを早く伝えたくて」
「それは貸した甲斐があるというものだね、
ちょうど、星の光を磨き上げたような。
目的とする庵までの道のりを二人で歩く中、《
山の産物を加工し《
休漁期の仕事として、そうしたことを行なっている者も少なくない。
これらは紛れもなく、かけがえのない《
それに目を向ける者が、今はあまりに少なすぎた。
丘陵地帯を抜け、入り組んだ岩場に入った。苔むした岩肌はどれも同じに見えて、きわめて小さな、しかし確かな違いがある。
それを見定めつつ、迷路のような道で曲がることを繰り返しながら進むと、渡廊下で繋がる二つの庵が見えてきた。
「彼は、庵にいるのかな」
「昨日まで、港に泊まっていたんだよ。朝に戻ると言っていたから、もういる筈なんだ」
戸口に立つと、何やらどたどたと走り回る気配が伝わってくる。二つの声。少女が男を咎め、追い回している遣り取り。
「
「嘘……もうっ!
戸口が開かれると、手に剃刀を持った少女の笑顔があった。
一つ年長の
「相変わらず苦労しているね」
「そうなの。お客様が来るという日に、髭を剃ろうとすらしないなんて」
「いいんだよ、そんなもん気にする仲じゃねえんだ」
刺々しい髪を後ろに纏めた男。無精髭に覆われた顎を撫でつつ、呆れたような目線を
名を、
「誰に会うにも身綺麗にするのは当たり前でしょ?だから私がやってあげるっていうのに」
「剃ってもらう代価に、顎が血塗れになるのは御免被る。一度だけでたくさんだよ」
「失敗は、ただの一度じゃない。大人の繰言は本当にみっともないったら」
昨今の《
昼時には皆で囲炉裏を囲み、
出汁の効いた米、ほろほろと崩れながら旨味を醸す切り身を口にしながら、他愛も無い話に花を咲かせた。姉弟の身長が伸びたこと、市場に出回り始めた手の込んだ装飾品を、
「港への仕事にもっと連れて行ってよ。薬草乾かして書類と睨めっこには、飽きちゃった」
「慣れない餓鬼にちょろちょろされてもな」
「だったら、術で芸をして見物料を貰うとか」
「馬鹿を言え。自分から見せ物になりにいく奴があるか」
それも荷揚げや船の整備といった力仕事以上に、出し入れする荷の数量把握に、運搬に必要な人足の計算と確保、道の状態把握といった、知恵が求められるものだ。
外から見ていても、働きぶりは実に見事だった。街の商人や漁師達も、それを認めている。雑炊の具材である海産物は上質なものばかりで、普段の貢献の返礼として贈られたのだろう。
「もっと、大きなことができる人だと思うんだけどな」
否、聞こえないように言ったのだろう。あるいは、
────────
昼餉が終わり、
隊商を、目で追う。多くの荷が列をなして向かっているのだ。南へと。
「南へ行くのが気になるのか?」
「最近、《
「そうなのか?」
「船で、川を遡るんだろう。その方が一度に多くの荷を運べるし、そこに至るまでの道も、今までよりずっと平坦だ」
南との交易が始まって、まだ十年にも達していない。これまで《
それが、突然南への道が啓かれた。取り扱われる山の産物の量も、種類も飛躍的に増え、卸す者達は少しずつ潤い始めている。
「ところで、
「と、言うと」
「いいんだ。大方、わしにもっと働けと言っていたのだろうし」
庵に住まうようになる前の
陣借りをしていたのだ。それも、勇を振るうのでなく、知をもって戦に身を投ずる陣借りである。
奇襲知らず。それが当時の異名だという。空を越えて襲い来る敵や賊の襲撃を予見し、主力を退避させる。あるいは奇襲を受けたふりをして、誘い込み撃滅する。
その頃
戦での知略は図抜けていたし、それに先立つ補給や輸送に関する計画の立案も、きわめて緻密なものだったらしい。
彼なりの熱意や希望が、その時にはあったことだろう。
今から、七年前か。庵に住処を移した
いや、違うだろう。変質し始めた《
「姉も弟も、余計な気を回しすぎる。わしが餓鬼の頃は、如何に大人を食い物にしてやろうかといつも考えていたし、子供なんてそれでいいんだ」
二つ繋がった庵。一方は先程昼餉を共にした皆の生活の場であるが、もう一つは
他国で購った軍学書、知り人から仕入れた噂や情報を書き連ねた書類、地形がびっしりと描き込まれた独自の地図。そうしたものに満たされている。
過ぎ去った夢の名残ではない。つい最近、地図に加筆された跡があったと、前に訪った時
世話になっている身として、弟共々気にせずにはいられない。そうも、言っている。
「話は変わるが、近々地竜の動きがありそうだぞ」
「十日あまり前だったか。
地竜を導くことを、考えている勢力がある。それも、《
「目指す先は、何処なのだろう」
「《
「今の時代にその名を聞くことになるとは」
それにしても、驚くべきは
《
何ら根拠も無く、しかし確かに
────────
飛び起きた。
庵に宛てがわれた一室に宿泊していた
それは全てを押し流す暴れ川を想起させる程、猛々しいものだった。
姉弟を起こさぬように気をつけつつ、それでも急いで庵を出た。東、水平線の向こうから、太陽が姿の半ばを現している。
港町は、とっくに動き出している時刻であろう。
「おっ、来たな」
昨日と同じ、見晴らしの良い高台の岩だった。
「面白いものが見られると思って、ここにいた。これ程早くにとは思わなかったが」
「何か起ころうとしている。悪しきこととは思えないが、それにしても激しい」
気配を感じて振り向くと、瞼が完全に開ききっていない
朝日に照らされる空に、幾つもの影が舞っている。騎竜武者。滑らかな動きで、空を翔けている。《
そこを拠点とする一団の存在は、かねてより知っていた。昨日
その軍閥は賊徒の牙城と化した《
そこまで考えた時、大地を打ちつける音が空を揺るがした。
力強く、律動的な音。一つ一つの音が反響し、高まり合い、山肌にそれがぶつかることで、地の涯てまでも谺するように思えた。
姉弟にとっては、初めての体験に違いない。自分達を囲む巨大な音の塊に怯え、相手を守ろうと身を寄せ合っている。
怖がることはない、と
「何?一体、何の音なの」
「あれはね、鎚打ちというのだよ」
土打ちとも呼ばれる、地竜を導くための《
地竜は光など差さない地中を生息圏としているため、目ではなく音で周囲を認識する。
だから、地面や山肌に鎚を打ちつけることで、地竜を刺激し、望む方向へと導くのだ。
「出てくるぞ」
《
さらに、二匹、三匹。五匹、十匹。五十、百、二百、四百……。荒涼とした山肌に姿を現した地竜の群れによって、山の一画が焼け焦げたようにすら見えた。
姉弟は、もう怯えてはいない。黄金の目を見開き、その光景を見守るだけだ。数百の地竜が列をなして山を下り、《
飛竜の行手に、際立って立派な騎竜武者がいた。駆る飛竜の鱗は煌びやかな青灰色で、その威風が地竜を引き寄せていると思える。
北岸には十幾つもの陣営があり、それぞれに騎竜武者が待機している。やがて、地竜の列が進むのに合わせて大地を打つ規則正しい音が、風と共に響いてきた。
感心している自分に、
今行っている彼らは、それを知悉しているようだった。それを遵守しながら実行する、各々の連携もよく取れている。
軍としても、きわめて高い水準の力を有していると言うべきだろう。
地竜の列、ないし流れは僅かな滞りも見せず、もう一本の大河となって東に注ぎ込むようだった。数日をかけ、《
形容し難い充足感を覚えながら
その両目に、失って久しい筈の光が灯っているように、見えたためである。