AI凄すぎてワロタ   作:AI最強時代

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AI凄すぎてワロタ

鉄錆の味が、これほどまでに甘美に感じられるとは。

 

雪の降り積もる深夜の峠道。私は、かつて人間であった男の、今はもう動かなくなった喉笛から口を離した。

口端から溢れた紅い雫が、純白の雪の上に点々と、まるで毒々しい椿の花のように散る。

 

「……ふむ。やはり、村の外れでくすぶっていた悪党の血は、少々脂ぎっておるな。だが、空腹に勝る調味料はないということか」

 

私は己の手を見つめる。

白磁のように滑らかで、月光を反射するほどに透き通った肌。そして、指先に絡みつくのは、夜の闇を黄金に塗り替えるような、長く美しい金髪だ。

 

キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード。

かつて西尾維新という作家が紡いだ物語の中に君臨した、怪異の王。鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼。

 

今の私が、それだ。

 

前世の記憶というやつは、実にあやふやなものだ。自分がどこの誰だったか、どんな仕事をしていたか、そんな細部は吸血鬼としての本能と圧倒的な「個」の力に塗りつぶされて消えかかっている。

だが、不思議と『物語シリーズ』の知識だけは、脳の片隅に鮮明に焼き付いていた。

 

自分がこれから、どのようにして四肢を失うのか。

どのようにして、あの阿良々木暦という少年に出会うのか。

そして、どのようにして「忍野忍」という無力な名を与えられ、ドーナツを貪るだけの存在に成り果てるのか。

 

「……カカッ。誰が、あんな悲惨な末路を辿るものか」

 

私は自嘲気味に笑い、死体の傍らに落ちていた外套を拾って羽織った。

原作知識があるからといって、人間を食べるのを止めるという選択肢はなかった。

綺麗事では腹は膨らまない。この体の渇きは、魂を削るような暴力的なまでの「飢え」なのだ。それを否定することは、私という存在そのものを否定することに他ならない。

 

私は「人間だった頃の倫理観」を、とっくの昔に吸血鬼としての「食欲」の生贄に捧げていた。

 

「次は江戸か、あるいは南蛮の地か。忍野メメのような厄介なスペシャリストに見つかる前に、もう少しこの『最強』を謳歌させてもらうとしよう」

 

足を踏み出す。

一歩。それだけで、数町(数百メートル)の距離が背後に消える。

人間としての常識を超越した身体能力。視界に入る全てを支配できるという万能感。

 

道中、襲いくる山賊や、私を「化け物」と呼んで退治しようとする自称・勇者たちもいた。

彼らは皆、私の胃袋の中で一つになった。

皮肉なものだ。彼らを食らうたびに、私の中の「人間」としての成分が補填されるような気がする。知識としての「私」と、生物としての「キスショット」が、血を通じて混ざり合っていく。

 

ふと、足を止めた。

遠くの空が、わずかに白み始めている。

 

「太陽……。本来なら忌むべきものだが、今の私には、それさえも美しく見えるな」

 

私は金色の瞳を細め、昇りゆく朝日を見つめた。

吸血鬼にとっての死の光。だが、今の私の影は、以前よりもずっと濃く、深く、地面に根を張っている。

 

原作の通りに動くつもりはない。

阿良々木暦に出会うのか、それとも彼が生まれる前にこの世界を飽き果てるのか。

あるいは、私を殺しに来るドラマツルギー、エピソード、ギロチンカッターの三人を、逆に返り討ちにしてその肉を喰らってやろうか。

 

「運命などという言葉で、この我を縛れると思うなよ」

 

私は、血の染み付いた唇を舌でなぞった。

次に食べるのは、もっと「物語」の味がする人間がいい。

 

冷たい風が、私の金髪をなびかせる。

怪異の王としての旅は、まだ始まったばかりだ。

 

「……まずは、そうだな。腹ごなしに、次の街で一番美味そうな人間を探すとしよう」

 

私は、朝日が昇り切る直前、影の中に溶け込むようにして姿を消した。

背後に残されたのは、真っ白な雪と、無残に散った紅い椿——そして、誰にも予測できない「新説・化物語」のプロローグだけだった。

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