秘封世界単話集   作:見張

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1話「はじめに」

 

注意事項

①本作は『秘封倶楽部』の世界を舞台とした単話集になります。ですので、博麗 霊夢等の所謂『幻想郷組』は設定として描写される事はあっても登場はしません。

②『秘封倶楽部』の世界が舞台ではありますが、宇佐見 蓮子とマエリベリー・ハーンが必ずしも登場するとは限りません。

③本作では過去(日本の首都が東京であった時代)が舞台の話もあります。

④独自の解釈・設定を採用しています。

⑤駄文。

 

以上の点を許容できる方はよろしくお願いします。

 

 

K県某高等学校での女子高生の会話――

 

「ねぇ、昨日の『NINAのオカルティックラジオ』聞いた?」

 

「聞いた聞いた!キリストが日本に渡って死んだとか凄いこと言い出して笑っちゃった!」

 

「でもね、実際に青森にキリストの墓ってあるらしいよ」

 

「え!?マジ?」

 

「マジマジ。実際はどうかしらないけど、キリスト教っぽい風習が昔からあるんだって」

 

「それマジだったら凄いじゃん!」

 

「ねぇ凄いよね。それに比べてウチの学校は七不思議の"な"の字も無い」

 

「出たよ、オカルトナイナイ」

 

「何それ意味わかんない」

 

「そのまんま.........ああ、そういえばさ、教頭から聞いたんだけどだいぶ前に『秘封倶楽部』ってオカルトサークルが空き教室不法占拠してた事あったんだって」

 

「知ってる。代表が3年間マトモに授業受けなかったのにテストは毎回学年トップの才女。名前は確か.....うさ......うさ...ぎ?」

 

「何それカワイイ〜!」

 

「でね、そのウサギさんは卒業したあと霊能力者だったか超能力者としてバトルロワイヤルに参加したとか赤道付近の国を救ったらしいんだって」

 

「絶対デマだってそれぇ」

 

「いやいや、私は本当だと思うね」

 

「その心は?」

 

「その方がロマンがあるから!イェーイ!」

 

「イェーイ!」

 

■■年後の日本国京都府のとある大学。その敷地内に建てられた旧世代的古風なカフェテラスは、今日も学生達で繁盛していた。

 

店員の制服は和服。メニューに並ぶは日本茶と和菓子のみ。席は全て座敷と徹底した雰囲気作りは、日本国の首都であり『古都』と評される京都府を体現しているようであった。

 

「幼い頃、おばぁちゃんから聞いた事があったんだけど、親戚に超能力が使える人がいたんだって」

 

そう語ると金鍔(きんつば)を頬張り、言葉では無く満面の笑みでその美味しさを表現する女子大生――宇佐見(うさみ) 蓮子(れんこ)

 

「......」

 

座卓を挟んで呆れた表情で蓮子の笑みを見るもうひとりの女子大生。金髪に白い肌、淡い紫色の瞳が日本人では無いと語る。彼女の名は、マエリベリー・ハーン。蓮子は呼びづらいからと『メリー』と呼んでいる。

 

メリーが呆れているのには当然理由がある。先程まで蓮子は「行き過ぎた科学は魔法と変わらないのならば、魔法使いは数世代先を行く科学者ではなかろうか?」と真剣に語っていたにも関わらず突然話題を変えたからだ。

 

「なによ突然、藪から棒に」

「いやぁね、魔法使いの話してたらふと思い出したのさ!」

「...それで、その親戚がどうしたの?」

 

非難しても何もメリットは無いと話題を合わせる事にしたメリー。蓮子は日本茶で喉を潤し語り始める。

 

「その親戚、名前は忘れたからA子さんは幼少期から物体を浮かせられたの。サイコキネシスってヤツね。空中浮遊とか別の場所にある物を出現させられたりとかしたみたい。そんなA子さんは高校生の頃、昼夜問わず頻繁に眠るようになったの。最初は何かの病気かと心配したみたいだけど、眠るようになってから人生を達観して退屈そうにしてたのが嘘の様にニコニコと嬉しそうに笑うようになった。それでおばぁちゃんは聞いたみたい......何がそんなに嬉しいの?って。するとA子さんは......私の本当の居場所を見つけた。退屈しない"楽園"があるのって答えたそうよ」

 

■■年前と比べれば格段に科学技術が進歩した昨今、"楽園"と呼べる物はバーチャルリアリティ専門の施設で1時間5000円から体験出来る。依存性を軽減する為に幾つかの制限がかけられているが、現実ではなし得なかった幸福や快感...あるいは刺激が得られると人気である。蓮子に言わせれば「所詮は仮想現実。リアルには劣るわ」とのこと。

それはそうと、A子が見つけた(体験した?)"楽園"。蓮子は勿論、メリーにとっても興味深いワードであった。

 

「超能力なんて当時からしてみても異端中の異端。使う機会なんてほとんど無いでしょうし、ヘタに披露しても見世物にされるのがオチでしょ?」

「黒服に拉致られるかもしれないわ」

「かもね。相当ストレスが溜まっていたのが想像できるわ。だからこそ、自由に力を使えるのならば夢の中だとしても"楽園"なんだわ......もしかしたらメリーがたまに行く世界と関係あるかも...」

 

メリーは特別な目を持っている。「結界の境目を見る目」と自称しているその目は、最初こそ境目を通して別世界を観測する程度の物であったが、夢を見る形で別世界へ干渉したり、物理接触によって他者へ別世界を視認させたり、遂には肉体ごと別世界に介入するまでに至った。

蓮子と行動を共にするようになって力が進化したのか、はたまた眠っていた力が覚醒したのかは本人にも定かではない。

 

本人に解らなければ蓮子にも当然解らない力の真相。その力の変化は、蓮子とメリーふたりだけの不良オカルトサークル『秘封倶楽部』の活動にとって価値ある変化であると同時に無視できない不安でもあった。

 

だが、そんな事で尻込みするふたりではない!『科学世紀』と称される現代日本でオカルトに傾倒する...それも心霊スポットだ怪談なんて在り来りなモノでは無く「封じ秘められた真実を暴く」不良オカルトサークルなのだ!

 

「真相を確かめる為にもメリーの力でぇ...」

「できるワケないでしょ。コントロールできるモノなら今まで何度も死にかけてないわ」

 

残念ながらメリーの力は、常時電源が入ったラジオの様な物だ。境目は常に視えているし本人の意思に関係無く境目を跨いでしまう。長年の経験と最近の変化によりある程度"分別"できるようになってきたがコントロールできてるとは言い難い。

 

「そうよね。だから今週の土日に行ってみない?」

「そのA子さんの家に?」

 

蓮子は首を横に振る。

 

「A子さんの家は、確かもう無かったハズ。だから何かのきっかけがあったハズの高校に行こうと思うの」

「まだ残ってれば良いけど」

「そうね。最悪更地になっててもメリーの目で視れば何か見つかるかもよ?」

「あまり期待しないでよね」

「ええ、期待しているわ」

 

こうして蓮子とメリーの『秘封倶楽部』は、次の活動に胸を弾ませる。

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